相続で大金を手にして破滅しないために

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インパクト
資産をたくさん持っていた親や兄弟が亡くなって、突然、大金を手にすることがあります。相続に限らず、宝くじや賠償金など、突然、大金を手にした人たちは独特な心理状態になるといわれています。今までほとんど貯金がなかった自分の銀行預金通帳の残高欄に、49,000,000円、あるいは、492,000,000円などと、8桁~9桁の数字が並んでいたら、気を引き締めないといけないと頭ではわかっていても、どこか心が緩んでしまうものです。

昨今は異常な低金利や長引く不況により、銀行などの金融機関や保険会社は厳しい状況に置かれていますので、大金を手にした人に対して積極的な営業をかけ投資商品を購入させたり、保険に加入させたりすることがあるようです。ただ、全く投資経験のない人がそういった高額な投資商品に手を出すことは非常に危険ともいえます。

大金を手にした人がどうすればいいか、明確な答えはないですが、大金が原因で破滅せずに良い人生を送るために検討しておく必要はあります。

預貯金・有価証券の相続財産が増えている

日本では相続財産として不動産が多く平成26年度時点でも46.9%とも約半分を占めていますが、その割は年々減ってきており、逆に、現金・預貯金と有価証券の割合が増えています。現金・預貯金の割合は、平成6年:9.4%→平成26年:26.6%に増加しており、有価証券の割合も、平成6年:8.3%→平成26年:15.3%に増加しています。
有価証券の多くは株式であり、上場株式であれば自由に売買ができるためすぐに換金できます。そういう意味では、約4割近くの財産が、自由に使えるお金とみなすことができます

また、相続財産が不動産の場合でも、不動産を分割したり共有持分にするとトラブルになる傾向があるため、特定の一人が不動産を相続して、他の相続人には現金を渡すことも多く見られます(代償分割)。また、非課税枠のある生命保険を活用して、特定の相続人に多額の保険金を受け取らせるケースも増えています。

相続で大金を手にするとどうなるのか?

実際に相続で大金を手にしたYさんのケースを見てみましょう。

男性のYさんは、IT系企業の会社員で年収700万円くらい、妻と子供2人と一緒に郊外の賃貸アパートで暮らしていました。資産は、マイホーム購入のためにためている預金1000万円くらいでした。Yさんの母親は病気で他界、父親は物心ついた時にはおらず、母親と離婚して音信不通となっていました。

ところがある時、Yさんの父親の子供と名乗るSさんから、Yさんの父親が亡くなったと連絡が入りました。Yさんの父親は離婚後、別の女性と結婚し子供のSさんを設けていたのです。Sさんが相続に当たり父親の戸籍を調査していたら、Yさんの存在が明らかになったとのことです。

Yさんの父親は母親と別れた後、事業を立ち上げて大成功を収め、相続財産は現預金・株式等を含めて約8億円にものぼりました。相続人は、Yさんの父親の後妻および後妻との間に生まれた子であるSさん、そして前妻との子であるYさんの3人でした。遺言はなく遺産分割は法定相続分に基づいて行い、Sさんが父親の事業を引き継ぎ株式を相続しましたので、Yさんは全体の4分の1である現金2億円を相続しました。そして、相続税を支払っても1億3440万円が手元に残りました。Yさんの預金通帳の残高欄には、すでに持っていた1000万円と合わせて、144,000,000円と表示されていました。

Yさんは今まで父親はいないものと思ってずっと生きてきましたので、相続は想定外のことであり、また、入金された金額にも大変驚くばかりでした。夢のような気分でしたが、一方で、自分も富裕層の仲間入りを果たしたような、上機嫌な気分にもなっていました。

その後、YさんのメインバンクのA銀行が訪ねてきて、B国の外貨定期預金を勧めてきました。日本は低金利ですがB国の金利は高く年間の利回り5%以上だから預金したほうが良いと勧められ、5000万円を外貨定期預金することにしました。
さらに、C不動産から連絡が入り、都心のDマンションを購入しないかとのことでした。長年マイホームを夢見てきたYさんは、都心の港が一望できる新築マンションを内見して気にいってしまい、早速、現金5000万円にローン5000万円を追加して1億円で購入して引っ越しました。
また、今までは倹約生活を送ってきたのですが、まだ残り4000万円以上ありましたので、車や家具を高級なものに買い替え、外食や旅行の回数も増えるようになりました。子供2人も塾に通わせ有名私立大学に進学させることができました。

ところが、それから10年後、B国の政情不安で為替市場でB国の通貨が急落し、銀行から、円に換算した価値が約半分に下がったと聞かされ、慌てて解約してしまい、もともと5000万で開始した定期預金が2500万円しか残りませんでした。
また、世界的な不況が発生し、Dマンションの価格が急落しました。不動産業者の話では、1億円で購入したマンションの資産価値は現在は6000万円くらいに下落、ローン残高は4000万円もありました。さらに悪いことにはYさんの勤めていた会社が倒産し仕事がなくなってしまいました。
10年くらい預金残高を気にしていなかったのですが、改めて見たら、なんと500万円しか残っていませんでした。定期預金解約後の金額と合わせて3000万円です。

月々のローン返済と管理費を合わせた金額は30万円、その他、セレブ生活が身に付いたYさん家庭の出費額は月50万円、合計して80万円にものぼっており、仕事を失ったYさんにとっては日々、預金残高が減るいっぽうでした。預金が底をつきかけたとき、Yさんはファイナンシャルプランナーに相談し、マンションを売って郊外の安い賃貸アパートに引っ越すように勧められ、その通りにしました。マンションを売ったお金で幸いローンを全額返済できましたが、手元には1000万円しか残りませんでした。

気づいてみたら、相続前と同じ状態に戻っていたのです。ただ、再就職できたものの年収は500万円に減り、浪費癖はなおも抜けず、貯金を切り崩す厳しい状態が続いています。

相続で破滅しないために

相続で大金を得た人みんながYさんのようになるわけではありませんが、大金を手にして破滅する人は多いと聞きます。Yさんはまだ貯金がゼロになったわけではなく一応暮らしていけていますので、まだ大丈夫なほうかもしれません。

相続で大金を手にしたら、どうしたらいいのでしょうか?

落ち着いてしばらく何もしない

大金が手に入ってどうしたらいいかわからない人は、まずは落ち着いて何もしなければいいのです。超低金利の現在では普通預金に入れておいただけでは増えませんが、一方で減りもしません。相続を終えたばかりは、遺産分割や親戚関係などいろいろあって気も騒いでいるでしょうから、落ち着くまでは何もしないほうが良いでしょう。銀行や不動産業者が訪ねてきて何かの商品を勧めてきても断れば良いのです。
どうしても、お金に手をつけてしまいそうな人は、定期預金にして簡単には引き出せない状態にしておけば良いでしょう。

生活レベルをあげない

お金があるとどうしても財布も心の紐も緩みがちですが、まずは、そのお金はもともとあなたのものではなく、あなたの被相続人やその祖先が努力して築いた資産であることを覚えましょう。そして、生活レベルをあげることなく、今のままの生活を維持することが大切です

なぜなら、人は一度、生活レベルをあげてしまうと元に戻すことが大変難しくなるからです。高級車に乗り出したら普通の車に乗れなくなります。高級レストランに行きだすと、あれもこれも食べたくなったくなってどんどん行くようになります。海外旅行に行けば、世界のあちらこちらを見て回りたくなります。人間の欲望は切りがないのです。

もともと浪費癖のある人には難しいことですが、なるべく生活レベルをあげずに今のままを保ちましょう。

ハイリスク、高額な投資商品に手を出さない

お金をただ普通預金に預けておいてももったいないですので、落ち着いてきたら運用をしてみるのもありかと思いますが。ただし、気をつけたいのは、突然、ハイリスク、高額な投資商品に手を出さないようにすることです。特に今までほとんど投資経験がない人が、最初から高額で始めるのは禁物です。5000万円も投資につぎ込んで想定外のことが発生して元本割れしたら数百万円を簡単に失います。また、外貨預金や外国株式は一般的に利回りが高いですが、為替変動によるリスクがあること、政情不安等による急落リスクがあることを念頭に入れておく必要があります。

まずは、国債や国内の安定企業の株式等を購入し、利回りが低くても確実に利益が出る方法で、投資の方法を学ぶことです。最初は利回り1%でもあれば良いほうです。

全額を同じ投資商品につぎ込まない

全額を同じ投資商品につぎ込めば、うまくいけば大きな利益を得られますが、失敗すれば大損失をもたらします。一般的には、資産を3つに分けて投資すると良いと言われています。
まず一つは、全く投資しないか確実に元本が保証されるものに投資します。世の中がどのような状況になったとしても確実に資産を残すためのお金です。
二つ目は、ローリスク・ローリターンの分野で投資します。いくらリスクが低いといっても、完全にリスクがない投資商品というものはありませんので、リスク分散のために、国債、国内株式(安定株式)、外国債といった複数の分野の投資商品を混ぜ合わせます。投資信託で割合だけ指定し信託会社に運用してもらう方法もあります。
三つ目は、ハイリスク・ハイリターンを狙います。発展途上国の外国債、外国株式や値動きの激しい国内株式などがあります。ただし、仮に失っても生活に支障がない範囲で行います。

仕事を辞めない

何億円も手にすると、しばらくは働かなくても生活していけると考えて仕事を辞めてしまう人がいますが、これは絶対にお勧めできません。誰でも仕事は大変ですが、実は、人間は仕事することによって自己実現をしたり充実した生活パターンを作り出していることも多いものです。特に男性の場合、突然、仕事を辞めてしまうと、仕事上の人間関係がなくなり毎日暇を持て余すようになりますので、生活リズムが大きく狂い、再度就職することが不可能な状態になってしまいかねません。

まずは、今の仕事をそのまま続けましょう。資産が多くできたことで、万が一、降格や左遷されても生活に影響はでなくなりますので、逆にしがらみにとらわれず思い切って仕事してみてはいかがでしょうか。

最初から大きな事業を始めない

もう一つ、大金を元手に事業を始める人もいますが、最初から大きな事業を始めることはお勧めできません。企業の生存率は、創立から1年で40%、5年で15%、10年で6%と言われています。なんと10年で85%が失敗して倒産するのです。さらに、20年で0.3%、30年で0.02%ですので、30年間、生き残れるのは、5000社でわずか1社です。
あなたが、今まで相当に市場を研究し準備されてきたなら別ですが、ただお金があるだけで何の経験も知識もないまま起業したら、失敗するのがオチです。むしろ、お金があることを理由に各方面からのカモにされて身ぐるみはがされるかもしれません。

だからといって、事業をするなというわけではなく、事業を行うことは、勉強にもなりますし利益が出れば嬉しいですし、従業員を雇用すれば社会への貢献にもなりますので良いことです。大切なのは、今の自分の生活に影響を与えない範囲で、まずはスモールスタートで始めることです。最初から何億円もつぎ込まずに、まずは一般の起業家と同じように、数百万円くらいでできるところから始めてみてはいかがでしょうか。
会社員として働くのとは異なり、事業では何でも自由にできますが、何でも自分の責任で行わなければなりません。失敗があることを前提とし、仮に失敗しても立ち直れる範囲で行うことが大切です。

アメリカでは無一文から始めるベンチャースピリットがもてはやされていますが、投資家から資金の提供を受けた起業家らは、短期間で利益をあげ投資家にリターンをもたらさなければならず、非常に大変なものです。事業方針も自由にならず株主である投資家の意見に左右されることも多いです。最初から現金があるということは、資金繰りに悩まされずに済みますので、事業を行ううえで大きなアドバンテージなのです。

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