相続税対策としての一時払い終身保険の特徴とメリット

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一時払い終身保険は、昔から貯蓄性の高い生命保険として知られており、また最近では、相続対策商品としても注目されています。しかしこのところ、販売休止の動きも見られます。一時払い終身保険について解説します。

1.一時払い終身保険の仕組みと特徴

一時払い終身保険とは、保険料の払い込みを1回で終える終身保険のことです。保険料の払込方法には月払い、年払いなどがありますが、一時払い終身保険は契約時に一時払い保険料を一括で払い込みます。保険期間は終身で、満期はありません。被保険者の死亡時に死亡保険金(所定の高度障害状態に該当したときは、高度障害保険金)が支払われます。

通常、付加できる特約は限定されており、医療特約や3大疾病特約など保障系の特約はつけることができないケースが多いです。逆にいえば、終身保険のなかでも最もすっきりした形態、わかりやすい保険といえます。なお、積立利率変動型の一時払い終身保険の場合は、死亡保険金は一時払い保険料が最低保証されているケースが多いです。現在販売中のおもな生命保険会社の一時払終身保険は、次のとおりです。

現在販売中のおもな生命保険会社の一時払終身保険(名称)
日本生命ニッセイ一時払終身保険(マイステージ)
住友生命終身保険(一時払)
明治安田生命Everybody 10(5年ごと利差配当付一時払特別終身保険)
第一フロンティア生命プレミアレシーブ(円建)(定期支払金付積立利率変動型終身保険)

2.一時払い終身保険のメリット

一時払い終身保険には、次のようなメリットがあります。

2-1.保障性も貯蓄性も高い

通常、払込保険料より大きな保障(死亡・高度障害保険金額)があります。そして何といっても重要なことは、一定期間経過後は、払込保険料を上回る解約返戻金が期待できることです。通常、契約から数年間は、中途解約すると解約返戻金が払込保険料を下回る、いわゆる「元本割れ」の状態が続きますが、途中でこれは逆転し、解約返戻金が払込保険料を上回ってきます。そしてそれ以降、どの時点で解約しても元が取れる、つまり利益が出る状態になります。

これは、最初に保険料をまとめて払い込むので、生命保険会社が運用する期間が長くなり、また徐々に積立部分の割合が増えていくからです。このため、一時払い終身保険はよく「利回り商品」、「貯蓄性の高い保険」とよばれます。退職金で加入する人も多いです。なお、この「損益分岐点」の経過年数は、商品により、また加入時の年齢や性別により異なります

2-2.告知が簡単で加入しやすい

一時払い終身保険は通常、告知がとても簡単です。職業告知だけで申し込める場合や、そもそも告知が不要な場合も珍しくありません。また、高齢者でも加入することができる場合が多く、相続対策にも適しています。

2-3.資金使途は自由

中途解約は自由で、資金使途にはもちろん制限がありません。生前に解約返戻金を有効活用して相続対策に充てることも可能です。

3.一時払い終身保険のデメリット

一方、一時払い終身保険には、次のようなデメリットもあります。

3-1.加入時にまとまった資金が必要で、契約後数年間は資金が固定される

一時払いですので、当然ながら加入時にまとまった資金が必要です。また、メリットの2-1.にもありますが、通常、契約後数年間は中途解約すると元本割れになる状態が続きますので、その間資金が実質的に固定されることになります。ですので、一時払い終身保険には余裕資金で加入するのがよいでしょう。

3-2.インフレや低金利に弱い

一時払い終身保険の将来の解約返戻金は、契約時に決まります。そのため、将来もしインフレ(モノの値段が持続的に上昇する傾向が続く状態)が起きた場合、一時払い終身保険の実質的な価値は目減りすることになります。また、現在のような超低金利状態においては、契約者に約束する予定利率は引き下げられることが多く(一時払い終身保険にすでに加入している場合は、通常、予定利率が引き下げられることはありません)、これは一時払い終身保険料の上昇と実質利回りの低下を招き、解約返戻金が払込保険料を上回ってくる時期も延びてしまいます。そうなると、商品としての魅力は薄れてしまいます。

4.相続対策として一時払い終身保険に加入する意義

2015年1月からの相続税の基礎控除引下げに伴い、おもに以下の点から、一時払い終身保険が相続対策商品として注目を浴びることが多くなってきました。

預貯金で一時払終身保険に加入し、生命保険の死亡保険金の非課税枠を使うことで、相続税の課税対象財産を圧縮できる

被相続人の預貯金はそのまま相続時の課税対象財産になってしまいますが、預貯金を一時払い保険料に充当して一時払い終身保険に加入することで、課税対象財産を圧縮することができます。生命保険の死亡保険金は相続財産ではありませんが、みなし相続財産として扱われます。相続税における死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用できるため、法定相続人が多いときには特に有効といえます。

指定した保険金受取人に保険金を残せ、遺留分減殺請求にも対応できる

生命保険の死亡保険金は通常の相続財産と異なり保険金受取人の固有の財産となりますので、指定した保険金受取人に直接財産を残せる点も魅力です。遺言と同じような効力を期待できるといえるでしょう。遺留分減殺請求への対応原資として死亡保険金を活用することも可能です。

終身保険のため、いつ相続が発生しても対応できる。

相続はいつ発生するかわからないため、終身保険でいつでも相続に対応できる点も魅力といえるでしょう。

2次相続にも活用できる

1次相続発生後の2次相続では、配偶者の税額軽減が使えず多額の相続税が発生することがあります。このような場合にも、一時払い終身保険は有効です。

高齢者でも加入しやすい

一時払終身保険は加入年齢範囲が広いのが特徴で、高齢者でも加入しやすくなっています80歳まで加入できる商品が多く、なかには「90歳まで加入可能」という商品もあります。相続対策を行わなかったため不動産などを活用した相続対策がすでに難しくなっているような場合でも、一時払終身保険が「最後の砦」となるかもしれません。なお、審査方法(告知方法)により、同じ商品でも加入対象年齢が変わる場合があります。

5.加入上の注意点

一時払い終身保険は相続対策として有効ですが、加入形態には注意しましょう。生命保険は保険契約者(=保険料負担者)、被保険者、保険金受取人の組み合わせにより、対象となる税の種類が以下の表(死亡保険金の場合)のとおり変わってくるため、慎重に検討する必要があります。(ただし、一時払終身保険の場合、③の加入形態はありません)

加入形態契約者被保険者受取人税金の種類
相続税(死亡保険金非課税枠あり)
相続人以外相続税(死亡保険金非課税枠なし)
所得税(一時所得)
贈与税

また、生命保険料控除についても注意が必要でしょう。一時払い終身保険の場合、生命保険料控除は保険料を払い込んだその年しか適用されません。月払いや年払いなどと異なり、いわゆる「控除の使い残し」が大きく発生することになります。

予定利率の確認も必要です。一時払い終身保険の予定利率は、金融庁が定める「標準利率」をもとに生命保険会社が独自に決定します。一時払いの保険商品の標準利率は、通常年4回(月払いなどの平準払いの保険商品の場合は年1回)見直されます。標準利率が下がったからといって必ずしもすぐに予定利率が下がるわけではありませんが、長期金利(おもに10年国債の流通利回り)が大きく低下しているような場合は、「予定利率もいずれ引き下げられる」と考えておいたほうがよいでしょう。

最後に、一時払い終身保険は、営業職員経由あるいは銀行窓口など、どのルートで加入するかでそもそもの商品の名称や告知方法など加入時の条件が変わる場合があり、やはり注意が必要です。

6.一時払い終身保険販売休止の背景

日本は長らく超低金利が続いており、デメリットで見たように、低金利に弱い一時払い終身保険はその影響を受け、近年利回り商品としての魅力が薄れています。加えて、2016年2月16日からの日銀によるマイナス金利政策の導入で長期金利が急低下したことから、貯蓄性商品の運用が困難になった生命保険会社が一時払い終身保険の販売休止や予定利率の引き下げに動くケースが相次いでいます。2016年からのおもな動きは以下のとおりです。

1.現在(2017年1月10日現在)、販売休止(停止)中の保険会社

  • 朝日生命、ソニー生命、大同生命、東京海上日動あんしん生命など

2.予定利率を引き下げた保険会社

  • 日本生命 2016年10月1日より、一時払終身保険の予定利率を0.5%から0.25%に引き下げた。
  • 住友生命 2016年7月1日より、5年ごと利差配当付終身保険(一時払契約)の予定利率を0.6%から0.5%に引き下げた。
  • 明治安田生命 2016年7月2日より、5年ごと利差配当付一時払特別終身保険の予定利率を0.5%から0.35%に引き下げた。

例えば日本生命の場合では、この予定利率の引き下げで50歳・男性が保険金額500万円で一時払終身保険に加入する場合の保険料は、4,687,350円から4,957,600円と270,250円(増減率+5.8%)上がることになります。

3.販売を再開した保険会社

ただし、2016年9月21からの日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入により、以降それまでの長期金利の低下が一服し、逆にゼロを上回る水準で推移する場面も見られることから、以下のように一時払終身保険の販売再開に踏み切る生命保険会社も出始めています。なお、外貨建ての一時払終身保険は標準利率改定の影響を受けないため、これまでと特に変わらず外資系の保険会社を中心に販売されています。

  • 第一フロンティア生命 2016年3月に取りやめていたが、2016年12月1日より銀行窓口販売分の販売を再開した。
  • 明治安田生命 2016年7月2日より、2016年4月より販売を休止していた5年ごと利差配当付終身保険(一時払)の販売を再開した。

この一時払い終身保険の販売休止の情報は、各社がプレスリリースしないケースが多いです。関心のある商品がある場合は、各社に個別に照会したほうがよいでしょう。

7.まとめ

一時払い終身保険は商品そのものの仕組みは単純でわかりやすく、メリットは多いですが、やはり生命保険商品ですので注意すべき点は多く、相続対策で加入する場合は事前の慎重な検討が必要です。

相続財産完全防衛額(死亡保険金が相続税と同額になるように加入すること)のシミュレーションも必要でしょう。また、資産運用として加入する場合は、預貯金や他のリスク性商品と合算してご自身のポートフォリオ全体のリスク許容度を検討してから加入金額を決める必要があります。一時払い終身保険の仕組みやメリット・デメリット、加入にあたっての注意点などを正しく理解し、有効に活用したいところです。

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