有価証券の相続税評価方法

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金融 お金

相続税における財産評価は専門性が高く難しいです。なかでも有価証券は種類が多く、また近年新しい商品も出てきていますので、それぞれの商品に応じた評価方法を理解しておく必要があります。有価証券の相続税評価方法について、商品ごとに解説します。

1.上場株式の評価方法

上場株式は、次の4つのうち最も低い価額で評価します。

  • 課税時期の終値
  • 課税時期の属する月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均額

なお、課税時期の終値がない場合は、課税時期前後で最も近い日の値とします。

1-1.終値がある場合の計算例

これだけではわかりにくいかもしれません。終値がある場合の具体例で見てみましょう。
例えば、上場株式を保有している人が亡くなり、死亡日が2017年2月23日(木)で、

2017年2月23日(死亡日)の終値600円
2017年2月(課税時期の属する月)の毎日の終値の平均額550円
2017年1月(課税時期の属する前月)の毎日の終値の平均額580円
2016年12月(課税時期の属する前々月)の毎日の終値の平均額520円

である場合、最も低い価額である520円を評価額とすることができます。

1-2.終値がない場合の計算例

では、終値がなく、最も近い日が2つある場合の評価はどうなるのでしょうか。具体例で見てみましょう。
例えば、上場株式を保有している人が亡くなり、死亡日が2016年11月23日(祝)で、

  • 2016年11月21日(月)の終値:767円
  • 2016年11月22日(火)の終値:765円
  • 2016年11月23日(祝)の終値:取引なし
  • 2016年11月24日(水)の終値:763円
  • 2016年11月25日(木)の終値:771円
  • 2016年11月(課税時期の属する月)の毎日の終値の平均額:780円
  • 2016年10月(課税時期の属する前月)の毎日の終値の平均額:798円
  • 2016年9月(課税時期の属する前々月)の毎日の終値の平均額:768円

である場合ですが、死亡日の2016年11月23日は祝日となっており株式の取引がありません。このときは、その課税時期前後で最も近い日の最終価格で評価します。そして、その最終価格が2つある場合はその平均額で評価することになります。

事例では最も近い日は、死亡日の前日の11月22日と翌日の11月24日です。
よって、評価額は(765円+763円)÷2=764円となります。

1-3.注意点

上場株式の評価については、以下の点に注意が必要です。

  • 国内の2つ以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者が金融商品取引所を選択することができます。
  • 新株の権利落ち等がある場合は、取引価格および評価方法について特例があります。
  • 負担付贈与や個人間の対価を伴う取引により取得した株式については、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格により評価します。

2.気配相場等のある株式の評価方法

気配相場等のある株式とは、例えば、日本証券業協会により登録されている登録銘柄、同協会により指定されている店頭管理銘柄、所定の要件を満たす公開途上にある株式のことです。これらの評価方法は次のようになっています。

2-1.登録銘柄および店頭管理銘柄

上場株式に準じた評価方法とします。
この場合、「終値」を「日本証券業協会が公表する課税時期の取引価格」と読み替えます。またこの取引価格に高値と安値がある場合は、その平均額とします。負担付贈与や個人間の対価を伴う取引により取得した登録銘柄および店頭管理銘柄については、日本証券業協会の公表する課税時期の取引価格により評価します。なお上場株式同様、課税時期に取引価格がない場合や新株の権利落ち等がある場合は取引価格および評価方法について特例があります。

2-2.公開途上にある株式

株式の公開に際して公募または売出が行われる場合は、その公開価格とします。公募または売出が行われない場合は、課税時期以前の取引価格等を勘案して評価します。

3.非上場株式の評価方法

1.の上場株式や2.の気配相場等のある株式以外の株式を、非上場株式とよびます。非上場株式は、取引相場のない株式、未公開会社の株式などとよばれることもあります。
非上場株式の評価方法は複雑なため、ここでは詳細は割愛しますが、基本的には、①同族株主等に該当するか否か、②大会社、中会社、小会社のどれに該当するか、③特定会社に該当するか否かの判定により評価方式が決まります。評価方式には「原則的評価方式」と「特例的評価方式」の2つがあり、原則的評価方式はさらに「類似業種比准方式」、「純資産価額方式」、「併用方式」に分かれます。特例的評価方式の評価方法は「配当還元方式」となります。

【参照】上場株式と非上場株式の評価方法

4.利付公社債の評価方法

利付公社債の評価額は、次のようになります。なおいずれの場合も「既経過利子の額」は、課税時期において利払い日の到来していない利息のうち、課税時期現在の経過分に相当する金額のことをいいます。

4-1.金融商品取引所に上場している利付公社債

(最終価格+既経過利子の額-源泉徴収税相当額)

なおこの場合の最終価格は、日本証券業協会において公社債店頭売買参考統計値(売買参考統計値)が公表される銘柄として選定されている場合、最終価格と売買参考統計値の平均値との低い方で評価します。
また、複数の取引所に上場している公社債については、原則として東京証券取引所の最終価格としますが、納税義務者の選択により納税地の最寄りの取引所の最終価格とすることができます。

4-2.売買参考統計値が公表される銘柄として選定された利付公社債
(金融商品取引所に上場しているものを除く)

(売買参考統計値の平均値+既経過利子の額-源泉徴収税相当額)

4-3.その他の利付公社債

(発行価額+既経過利子の額-源泉徴収税相当額)

4-4.個人向け国債

個人向け国債は、課税時期において中途換金した場合に支払いを受けることができる金額として評価します。具体的な計算式は次のとおりです。

(額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額)

4-5.計算例

実際の計算方法についてですが、利付公社債は株式や投資信託と違って個人投資家にあまりなじみがないかもしれません。そこでここでは、上記の4種類の商品のなかで、現在個人投資家にもっともなじみがあると思われる個人向け国債の例で見てみましょう。

例えば、変動10年の第18回国債で、額面100万円、課税時期を2017年3月6日とすると、

・中途換金する額面金額:1,000,000円
・経過利子相当額:194円(=100万円×0.05%(適用利率)×142日/365日(経過日数))
・中途換金調整額:398円(={100万円×0.05%(適用利率)×1/2(計算期間)}×2×0.79685(調整率))
です(経過利子相当額と中途換金調整額の計算式自体は、ここでは覚える必要はありません)。

よって、この個人向け国債の評価額(課税時期において中途換金した場合に支払いを受けることができる価額は、
1,000,000円+194円-398円=999,796円となります。

金融 株価

5.割引公社債の評価方法

割引債の評価額は、次のようになります。割引公社債は利付公社債と異なり利息の概念がないため、評価方法は利付公社債よりややシンプルです。

5-1.金融商品取引所に上場している割引債

取引所の公表する最終価格等(複数の取引所に上場している公社債については、原則として東京証券取引所の最終価格としますが、納税義務者の選択により納税地の最寄りの取引所の最終価格とすることができます)

5-2.売買参考統計値が公表される銘柄として選定された割引債
(金融商品取引所に上場しているものを除く)

売買参考統計値の平均値

5-3.その他の割引債

発行価額+{(券面額-発行価額)×発行日から課税時期までの日数/発行日から償還日までの日数}
なお、この{ }の部分はやや専門的ですが、既経過償還差益といいます。

6.転換社債の評価方法

転換社債の評価額は、次のようになります。転換社債は「株式への転換」という概念が入ってくるため、評価方法は利付公社債よりやや複雑になります。なおいずれの場合も「既経過利子の額」は、課税時期において利払い日の到来していない利息のうち、課税時期現在の経過分に相当する金額のことをいいます。

6-1.金融商品取引所に上場している、あるいは店頭転換社債として登録されている転換社債

(最終価格+既経過利子の額-源泉徴収税相当額)

6-2.上記以外の転換社債で、発行会社の株式の価格≦転換価格の場合

(発行価額+既経過利子の額-源泉徴収税相当額)

6-3.上記以外の転換社債で、発行会社の株式の価格>転換価格の場合

株式の価格×100円/(転換価格(行使価格))

なお、発行会社の株式が取引相場のない株式の場合は、所定の算式により修正を行った金額を発行会社の株価とします。この算式は複雑なため、ここでは割愛します。

7.貸付信託の評価方法

貸付信託の評価額は、次のようになります。

元本+(既経過収益-源泉徴収される所得税相当額)-買取手数料(買取割引料)

8.投資信託の評価方法

投資信託の評価額は、日々決算型の投資信託(MMFやMRF、中期国債ファンドなど)か、その他の一般的な投資信託かで異なります。
一般的な投資信託の評価額は、次のとおりとなります。

{課税時期の1口当たりの基準価額×口数-課税時期において解約請求等をした場合に源泉徴収されるべき所得税相当額-信託財産留保額および解約手数料(消費税に相当する額を含む)}
なお、1万口あたりの基準価額が公表されている場合は、1口を1万口に読みまえます。

8-1.計算例

実際の計算方法につき、簡単な例で見てみましょう。

  • 1万口あたりの基準価額:11,000円
  • 1万口あたりの取得単価:10,000円
  • 保有口数:100口
  • 源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額:15,315円{=(11,000円-10,000円)×100×15.315%}
  • 信託財産留保額および解約手数料:なし

この場合、評価額は、11,000円×100口-15,315円=1,084,685円 となります。

なお、日々決算型の投資信託の評価額については、ここでは割愛します。

【関連】投資信託の相続税評価と売却時の税金

計算 お金

9.J-REIT(国内不動産投資信託)の評価方法

J-REIT(不動産投資信託)は比較的新しい金融商品ですが、上場していることからその評価は基本的に上場株式に準じます。つまり、次の4つのうち最も低い価額で評価します。

  • 課税時期の終値
  • 課税時期の属する月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均額
  • 課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均額

課税時期の終値がない場合は、課税時期前後で最も近い日の値とします。また、その他の注意点についても上場株式と同じです。
なお、ETF(上場投資信託)もREITと同じ評価方法になります。

10.ストックオプションの評価方法

ストックオプションの評価額は、次の3つの要件を満たすか否かで異なります。

  • 会社法2条21号に規定する新株予約権が無償で付与されたもの
  • その目的たる株式が上場株式または気配相場等のある株式であること
  • 課税時期が権利行使可能期間内にあること

これら3つの要件を満たす場合のストックオプションの評価額は、次のとおりとなります。

(課税時期における株式の価額-権利行使価額)×ストックオプション1個の行使により取得できる株式数

この場合の「課税時期における株式の価額」は、1.の上場株式の評価方法と同じです。

10-1.計算例

実際の計算方法につき、具体例で見てみましょう。
例えば、課税時期における株式の価格が800円、権利行使価格が500円、行使できる株式数が10,000株とすると、ストックオプションの評価額は(800円-500円)×10,000株=3,000,000円となります。

株式の時価が800円だからといって、ストックオプションの評価額が8,000,000円(=800円×10,000株)になるわけではありません。時価より300円低く購入する権利を保有しているわけですから、評価額については「権利行使してすぐに(時価で)売却したら、いくらの利益になるか」という観点で算出することになります。

まとめ

以上見てきたように、有価証券の相続税評価は複雑でややこしいです。全て覚える必要はありませんが、基本的な知識を身につけておけば、実際の相続発生時に随分助かるでしょう。ただし、専門性が高いため、もし不明点があれば、税理士や最寄りの税務署に相談することをお勧めします。

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