相続で戸籍が必要な理由

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戸籍の疑問

遺産相続をする際、戸籍はしばしば必要な書類として用いられます。

しかし、戸籍は1つではなく、数種類の戸籍関連書類があり、相続時には出生から死亡するまでの全ての戸籍が必要となります。また、遺産相続を受ける場合には、相続する側だけでなく、相続される側の戸籍が必要になり、集めるだけでも大変な作業です。

なぜこんなにも大量の書類が必要になるのか、疑問をお持ちの方も多いと思います。
そこで今回は、相続において「なぜこんなにも大量の戸籍関連書類が必要になるのか」という点を解説していきます。

1.相続の仕組みと戸籍の関係

そもそもなぜ相続には戸籍関連書類が必要なの?
そんな疑問を理解するために、まずは相続制度と戸籍について簡単に解説します。

1-1.相続開始→相続人を確定

日本民法882条は、「相続は、死亡によって開始する」と規定しています。
この規定の通り、相続は被相続人(相続される側)が死亡した時点を境に開始します。

そして、民法896条は「相続人は、相続開始の時点から被相続人に属した一切の権利義務を承継する」と規定しています。つまり、被相続人が死亡した時点で、被相続人の財産などの権利義務が相続人に移ります。

相続の効力が発生したら、次は相続人の確定が行わなければなりません。
最近は子供の数も少なく、核家族の家庭が多いので、「そんなの簡単」と思う方もいらっしゃる方もいるでしょう。しかし、これが意外と複雑です。

例えば、夫婦A, Bがいて、子供C, Dがいるとします。そして、夫であるAがなくなり、相続人は妻Bと子供C, Dの3人で確定。一見シンプルです。しかし、実はAには前妻Eがいて、子Fもいた。更に、養子Gや子Dが亡くなって孫のHもいた。
こうなると、相続人は多数にのぼります。

このように、相続は法律上被相続人の死亡により開始し、被相続人の権利義務や財産を引き継ぐために相続人の確定が必要になります。

1-2.「戸籍」とは?

では、どのように相続人を確定するのでしょうか。

答えは、戸籍です。
戸籍とは、人の出生から死亡までの出来事を記録した文書のことをいいます。そして、戸籍はその内容が正しいものであると証明する公的な資料として利用されています。
戸籍には、父母の名、生年月日、出生地、婚姻者、婚姻年月日、死亡日、死亡地など、個人を特定するために必要な重要な事項が記載されています。現在は、親と子で1つの戸籍を作ることになっています。

このように説明すると、「住所や職業以外は、戸籍1つで証明できるのでは?」と思うかもしれません。しかし、戸籍は1つではなく、複数の種類があります。
皆さんが「戸籍」と言っているものは、おそらく戸籍謄本のことですが、実際は戸籍というと、戸籍の総称を指していることになります。

1-3.「戸籍」の種類は大きく4つ

戸籍の種類は、大きく分けて4つあります。
①戸籍謄本、②除籍謄本、③改正原戸籍、④戸籍の附票です。そして、①と②にはそれぞれ別に妙本と呼ばれるものがあります。これらが分けられているのには、それぞれの経緯・理由があり、相続の際に必要となるのにも、意味があります。

では、戸籍について大まかに理解したところで、相続にはどの書類が必要であるのかについてみていきましょう。

2.数種類の「戸籍」が必要な理由とは?

2-1.「戸籍」のすべてが必要?

まず、相続手続きを開始するために、被相続人の確認と相続人の確定が必要になります。そのため、原則として、①被相続人の出生から死亡までの戸籍と②相続人全員の戸籍が必要になります。

まず、①被相続人の出生から死亡までの戸籍としては、最低でも戸籍謄本(・妙本)、改正原戸籍、除籍謄本の3つ必要となります。
なぜそんなにも必要なのかというと、例えば、生まれたときには親の戸籍に入ることになりますが、結婚すると別の戸籍が作られます。すると、相続人を確定するためには、生まれた時に入っていた親の戸籍と、現在の結婚後の戸籍が必要となってきます。
昔は戸籍が1つだったのですが、現在は家族単位で作られるようになり、戸籍自体も少し複雑化しています。

このように、相続開始には、戸籍のすべてとはいかなくても、被相続人の戸籍だけでも最低3つの書類が必要となります。

2-2.「戸籍謄本」は、被相続人・相続人の身元確認のため

戸籍謄本とは、現在の戸籍を役所に発行してもらった文書のことを指し、戸籍に書かれているすべての家族の情報を証明する書類となります。
戸籍謄本は現在本籍のある場所でしか発行することができません。本籍地がわからない場合は、免許証などの公的証明書にて確認することができます。
また、戸籍妙本は、戸籍の一部の人の情報を証明する文書のことで、戸籍一部事項証明書と呼ばれる場合もあります。
戸籍妙本に記載されている内容は、個人の生年月日、結婚・離婚の有無のみですので、個人の証明が必要なパスポート等発行の際に必要となります。

被相続人の出生から死亡までを公的文書を用い、被相続人の死亡を確認するために、現在の戸籍謄本(・妙本)が必要になります。これにより、相続が開始されたことを証明できるのです。
他方、相続人の身元を確認し特定するためには、相続人の現在の戸籍謄本が必要になります。

このように、戸籍謄本は被相続人の死亡により相続が開始されたことを公的に証明するためと、相続人を確定するために必要になります。

戸籍

2-3.「除籍謄本」は、相続人を確定するため

除籍謄本とは、戸籍を除籍になった人全員が記載されている文書のことです。除籍とは、結婚や離婚、死亡などを原因とし戸籍から個人を除くことを意味します。
仮に戸籍から全員が除籍されると、その戸籍自体が戸籍簿から除かれることになり、除籍簿という別の管理に移されることになります。
また、除籍妙本とは、戸籍を除籍になった個人のみの情報が記載されている文書で、除籍一部事項証明書と呼ばれることもあります。

では、除籍謄本はなぜ必要なのでしょうか。

実は、新しい戸籍が作られる際は、古い戸籍に載っているすべての情報が書き写されることにはならないのです。出生地や両親の名前などは書き写されるのですが、婚姻や転籍などは記載されません。あくまで現在の情報のみが記載されます。

例えば、結婚の前に離婚歴がある場合に、子どもがいたとします。しかし、子どもは離婚相手の戸籍に移っている場合、2度目の結婚後の戸籍には子どもの情報は明らかではありません。実際に婚姻していた場合だけでなく、認知した子がいる場合も新たに編成された戸籍には書き写されないのです。
つまり、現在の戸籍に「子」の記載がないということだけでは、「子」が本当にいないということを確認できないのです。

このように、相続人の正確な数を確定するために除籍謄本が必要となります。

2-4.「改正原戸籍」は、昔の情報が必要だから

改正原戸籍とは、戸籍法改正によって、戸籍が書き換えられる前の戸籍情報のことです。戸籍法は改正が行われた場合、新しい法律に合わせた戸籍に作り変えられることになりますが、この改正前の元の戸籍のことを原戸籍と呼んでいます。

改正原戸籍には、その時に有効な事項しか載っていません。つまり、死亡や離婚等による除籍は省略されます。
例えば、夫婦どちらかに離婚歴があり、子供がいた場合、子供が離婚した相手と共に除籍した場合に、その後で法が改正されると新しい戸籍には離婚歴も子供も載っていないことになります。つまり、法改正前の改正原戸籍を見ない限り、他に子どもがいるかどうかが確認できないということになります。
したがって、改正原戸籍を見ないと相続人の数が正確に把握できず、相続人それぞれの相続の額も確定できないのです。

このように、改正原戸籍は、相続人の正確な数を確定するために必要となります。

2-5.「戸籍の附票」が必要なのは、相続財産の確定に便利だから

戸籍の附票とは、戸籍に記載されている本人の住所の履歴を記録した文書のことです。
例えば、現住所が変わり新しい住所になったとします。それを役所に届け出ると、住民票が変更されるだけでなく、戸籍の附票にも追加して記載されるんです。住民票は基本的に、現住所と1つ前の住所しか記載されていません。しかし、戸籍の附票なら、戸籍ができた時からのすべての住所が記載されるので、昔の住所を遡らないといけない場合に便利です。

ですが、戸籍の附票は、実は相続の手続きに必ず必要というわけではありません。しかし、被相続人名義の預貯金や不動産がある場合、登録時の住所が昔の住所であったなら、その昔の住所が記載されている戸籍の附票が必要となることがあります。昔から所有している不動産などがある場合には、過去の住所地を探すのに便利です。

このように、戸籍の附票は必須ではないのですが、相続財産の確認に必要となるケースがあります。

3.「戸籍」の取り寄せはどう行う?

3-1.「戸籍」の確認は自分でできる

では、実際の相続手続きの場合、すべての戸籍を自分で用意することはできるのでしょうか?

結論からいって、自分で取り寄せることも可能で、手数料も数百円です。本籍地や過去に本籍をおいていた地で申請をすれば良いのです。
しかし、自分で戸籍をすべて取り寄せることができたとしても、他の問題が残ります。

相続人を確定するためには、戸籍を遡る必要があります。戸籍に書かれたすべての内容を読み込んでいかなければならず、また、誰が相続人であるのかを戸籍1枚ずつチェックしながら、取り寄せていかなければいけません。そして、相続人が死亡している場合は、その子が代襲相続するなど法律上の理解が必要なケースもあります。
仮に自分ですべて取り寄せ、必要な書類をチェックし法務省や銀行に戸籍をもっていったとしても、「これだけでは相続人を特定できません」と言われてしまうケースもあります。

このように、本当にすべての戸籍関連書類が揃っているのかは素人では判断しかねる場合もあります。

では、どのような場合に、専門家に相談すべきなのでしょうか。

3-2 .自分で「戸籍」をすべて見つけるは難しい

自分で必要な戸籍すべてを見つけるのが難しいのが、相続人が多くなってしまうケースです。

相続人が多くなると、集めなければいけない戸籍関連書類の数が多くなり、すべて収集するのが難しくなってしまいます。
例えば、被相続人が亡くなった後しばらく時間が経過しているような場合は、相続人が多くなる可能性があります。

また、知らない親戚である相続人に連絡を取らなければいけない等、書類を集める以外の作業も、相続手続きにおいて必要になります。

このような場合は、税理士や司法書士、弁護士などの専門家に相談してみましょう。戸籍の取り寄せから専門家に依頼すると、相続に関わることすべてがスムーズに進みやすくなります。
戸籍を読み解くのが難しいと感じた場合や、相続人が多くなってしまうケースの場合は、専門家に相談してみることも必要です。

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