生命保険の保険金額はいくらにすれば良いか?

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計算

 生命保険に加入するとき、「いくらくらい入ればよいか?」と悩んだことはありませんか。特に、死亡保障のある保険に加入する場合は迷ってしまうものです。保険金額の設定について、ライフプランニングの観点から基本的な考え方を解説します。

1.生命保険に加入する意義

日本は世界でも有数の「保険大国」です。公益財団法人生命保険文化センター「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によれば、生命保険の世帯加入率は89.2%にも達しています。

では、そもそも何のために生命保険に加入するのでしょうか。これは人により異なりますが、基本的には将来のリスクに備えるためといえるでしょう。保険会社の営業の人が「保険加入は社会人の常識」というセールストークで勧誘することがありますが、決してそんなことはありません。ただし、生命保険の商品は多様化しており、商品により加入意義が異なります。商品ごとに見てみましょう。

1-1.定期保険(死亡保険)

定期保険(死亡保険)は、主に自分(=保険契約者・保険料負担者)が死亡あるいは高度障害状態になった場合の遺族の生活保障のために加入します。

1-2.医療保険

医療保険は、自分が病気にかかったときの想定外の出費に備える保険です。貯蓄が十分でない場合や、今は健康だが将来は自信がない場合、そもそも心配性の人などは加入する意義があるといえます。

1-3.がん保険

がん保険は、数ある病気のなかでもがんに特化した保険です。がんに罹患した場合の収入減少、再発時の治療費増加、メンタル面の低下が心配な人、親族にがんにかかった人が多く気になる人などは、加入する意義があるといえます。
なお、貯蓄性のある保険(終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険)や外貨建ての保険については、ここでは割愛します。

2.保険金額はいくらにすればよいか?(定期保険の場合)

では、生命保険の保険金額はいくらにするのがよいのでしょうか?一家の大黒柱が亡くなったとき、もらえる保険金が多ければ多いほど残された家族は助かりますが、一方、月々の保険料の支払いは厳しくなります。支払保険料と受け取る保険金額のバランスを考える必要があります。ここでは定期保険を例にとり、「妥当な保険金額の設定方法」について考えます。

2-1.基本的な考え方(必要保障額の算出)

定期保険の保険金額を設定する場合、一般的に「ライフプランニング」の考え方を用います。つまり、「現時点での必要保障額」を算出し、それをカバーできるだけの生命保険に加入するのです。必要保障額とは、万一の場合に遺族が必要とするお金のことで、「将来の支出の見込み総額」から「現時点の貯蓄額+将来の収入の見込み総額」を差し引いて算出されます。

2-2.(夫死亡の場合の)遺族のキャッシュフロー表の作成

必要保障額を算出するためには、「遺族のキャッシュフロー表」を作成する必要があります。ここで重要なことは、通常の、つまり家族が元気で生活する場合のキャッシュフロー表ではなく、一家の大黒柱に万一の事態が発生した場合の遺族のキャッシュフロー表を作成するということです。キャッシュフロー表とは、将来にわたって家計がどのように推移するかを表した収支予測表のことで、収入項目から支出項目を差し引いた年間収支に現在の金融資産残高を合わせることで、家計の純資産がいくらになり、またそれが今後将来にわたってどのように推移するかを確認できます。

キャッシュフロー表を作成するのは難しいですが、ここでは「30歳代半ばの会社員・子ども2人・妻は扶養の範囲内で働く」で、夫が亡くなった場合の遺族のキャッシュフロー表を作成してみます。

2-3.キャッシュフロー表に反映する収入項目の検証

キャッシュフロー表は将来の収支予測表ですので、条件設定が重要になります。ではまず、遺族の収入面について、項目ごとにそれぞれ検証しましょう。なお、キャッシュフロー表に使用する数値はあくまでも年ベースのものです。

2-3-1.死亡時の収入

夫死亡時の収入としては、まず生命保険の死亡保険金が挙げられます。そして、勤務先からの弔慰金や死亡退職金も入ってくるでしょう。

2-3-2.妻の収入

妻については、現在働いていて年収がある場合は、勤務をこの後何年継続するか決めます。会社員の場合は賞与も今後の昇給率も検討し、年収推移を決めます。定年時の退職金や定年後の再雇用時の年収も含めます。なお、いずれも手取りベースではなく名目、つまり税金・社会保険料控除前の収入を計上します。

2-3-3.遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)

遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金で構成されます。中高齢寡婦加算がつく場合もあります。それぞれの年金の受給要件と計算式の詳細は省きますが、遺族年金は、妻の収入と同じく、遺族の生活を支える重要な柱となるため、漏れのないよう計上しましょう。

2-3-4.企業年金、確定拠出年金、個人年金、その他収入

夫が勤務先で加入していた企業年金(確定給付企業年金、厚生年金基金など)も忘れないようにしましょう。確定拠出年金に加入していた場合は、死亡一時金が支給されます。また妻が自分で個人年金に加入している場合、自分の公的年金に上乗せされて支給されることになります。
それ以外にも例えば夫がアパート経営をしていて不動産収入がある場合や、こどもが中学卒業まで支給される児童手当、相続や親族からの贈与などについても反映します。

2-4.キャッシュフロー表に反映する支出項目の検証

次に、遺族の支出面について、それぞれ検証します。キャッシュフロー表では、支出項目を次の2-4-1から2-4-8までの8項目に分類することが多いです。

2-4-1.基本生活費

基本生活費は、食費・外食費・水道光熱費・被服費・医療費・交通費・雑費・お小遣いなどの合計額です。なお、物価上昇率を加味する場合もあります。

2-4-2.住宅関連費

住宅関連費は、賃貸の場合は家賃や更新料、持ち家の場合は管理費や修繕積立金、固定資産税・都市計画税などを含めることになります。

2-4-3.住宅ローン

住宅ローンがある場合は、年間の返済額を用います。ただし、夫の単独名義で住宅ローンを組んでいる場合は、通常、団体信用生命保険の保険金でローンが完済されることになります。

2-4-4.こどもの教育費

こどもの教育費は、入学金や授業料、施設整備費などの学校教育費と、学校給食費、学校外活動費の合計額です。学校外活動費には、学習塾や習い事、おけいこ事、クラブ活動に関わる費用も含みます。今後の進路が公立か私立かで金額がかなり変わってきますので、もし設定が難しい場合は、文部科学省が発表している「子供の学習費調査」のデータを用いるとよいでしょ
う。

2-4-5.支払保険料

支払保険料には、加入している生命保険や損害保険、共済などの保険料を計上します。

2-4-6.その他の支出・臨時支出

基本生活費に含まれない支出、臨時的な支出も含める必要があります。例えば、旅行費用、帰省費用、家電製品や家具の買い替え費用、冠婚葬祭費用などです。自動車関連の支出(ガソリン代や車検費用など)や駐車場代、駐輪場代もここに含めましょう。

2-4-7.その他の借入金

住宅ローン以外に借入金がある場合はここに計上します。学生時代の奨学金や自動車ローン、カードローン、親族への借入金などが考えられます。

2-4-8.税金・社会保険料

所得税や住民税、健康保険や国民年金、厚生年金の保険料はここに計上します。会社員であれば、前年の源泉徴収票をベースに、自営業の場合は、確定申告書をベースに計上するとよいでしょう。

2-5.キャッシュフロー表作成上の注意点

キャッシュフロー表はあくまでも将来予測ですので、作った瞬間から数値が変わってきてしまうこともあります。あまり細かく条件設定すると、「必要保障額を算出する」という本来の目的からかけ離れてしまいますので、ある程度の割り切りも必要になります。

2-6.キャッシュフロー表の読み方

表を見てください。これは、前述の「30歳代半ばの会社員・子ども2人・妻は扶養の範囲内で働く」で、夫が亡くなったと仮定した場合の遺族のキャッシュフロー表です。
(表のサイズが大きいため、PDFファイルでご覧ください。)

キャッシュフロー表(PDFファイル)

キャッシュフロー表

今年度2017年度にもし夫が死亡した場合、死亡保険金や死亡退職金・弔慰金が入ってくることに加え、遺族年金の支給も開始され、妻自身も収入があることから、今年度の金融資産残高は1,500万円になり、十分やっていけるように見えます。
しかし、この「金融資産残高」の欄を右に見ていくと、次第に金額が減少し、13年後の2030年にマイナス転落することがわかります。マイナス転落ということは、家計が債務超過に陥り、破綻してしまうことを意味します。これは防がなければなりません。そして、この金融資産残高欄のマイナスの数値そのものが「必要保障額」となります。
このように、将来の収支予測ができるのがキャッシュフロー表の大きな特長です。この例では、現在夫が加入している定期保険の死亡保険金額500万円だけで、死亡保障は著しく不足しているということが読み取れます。つまり、夫は定期保険を増額、あるいは追加加入する必要があるのです。

2-7.必要保障額から見た死亡保険金額の設定

では、夫は定期保険の保険金額をいくら増額、あるいは追加加入すればよいでしょうか。これには、「どの時点までの遺族保障をカバーすべきか」という観点から、二つの考え方があります。

2-7-1.末子の大学卒業時点の必要保障額を準備

一つの考え方は、「末子の大学卒業時点の必要保障額を保険金額に設定する」というものです。
この例でいえば、ちょうど20年後の2037年度の金融資産残高は▲2,690万円ですので、約2,700万円程度、定期保険を増額するという選択肢が考えられます。つまり、「こどもが社会に出るまでの必要保障額を準備する」という考え方です。子どもが社会に出れば、こども自身が収入を得ることになり、世帯の基本生活費も減少するため、その時点までの遺族保障があれば十分
と考えるものです。

2-7-2.妻の公的年金開始時の必要保障額を準備

もう一つの考え方は、「妻の公的年金開始時の必要保障額を保険金額に設定する」というものです。
この例でいえば、32年後の2049年度に妻の公的年金が開始しますが、この時点の金融資産残高は▲5,133万円ですので、この分をカバーできるまで定期保険を増額するという選択肢も考えられます。つまり、「こどもが安定的な職業に就けるかわからないし、妻の収入にも不安があるので、妻が年金収入を得られるまでの必要保障額を準備する」という考え方です。もちろん、子どもが希望どおりに就職できるとは限らないですし、同居を継続したら世帯の基本生活費も減少しない場合もあるため、遺族保障を準備する期間を、妻の公的年金開始時まで延ばすわけです。
基本的には、この二つの考え方のどちらかに沿って、保険料負担も考慮して保険金額を設定することになります。

2-7-3.注意点

この例では、妻の収入は60歳まで100万円で変わりませんが、子どもが大きくなったら勤務時間を増やして年収が増える可能性もあるでしょう。こどものアルバイトの収入や奨学金、社会に出てからの収入などが加わることもあるでしょう。こういった他の要素によっても必要保障額は変わってくることに注意しましょう。

3.まとめ

見てきたように、遺族のキャッシュフロー表を作成すると必要保障額を正確に算出することができます。適正な保険金額がわかり、過剰な保障を防ぐことができるため、保険会社の営業職員のセールストークに乗せられることもなくなるでしょう。逆に、保障が不足していることに気がつくこともあるかもしれません。

ただし、キャッシュフロー表は万能ではありません。作成自体も大変ではありますし、条件設定を一つ変えるだけで、算出される必要保障額が大きく変わることもあります。過度に保険に頼りすぎないよう、日頃から「万一のことが起きた場合の生活設計をどうするか」を、家族でよく話し合っておくことも大事といえるでしょう。

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