一般社団法人を利用した相続税逃れが難しくなります

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2018年税制改正で、一般社団法人等に対する相続税や贈与税の課税基準が明確化される予定です。これにより、一般社団法人を利用し将来の相続税課税から逃れようという租税回避行為が阻止されます。
以下では一般社団法人の基本から、これを利用した租税回避行為の仕組み、税制改正の内容などについて、詳しくわかりやすく解説します。

1.一般社団法人とは

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された、営利を目的としない非営利法人で、人が集まって初めて法人格を取得することができます。

1-1.株式会社との違い

一般社団法人は株式会社と比較して何が違うのでしょうか。以下4点について比較していきましょう。

1-1-1.設立に必要な人数

  • 一般社団法人:2人以上
  • 株式会社:1人以上

一般社団法人は、設立時に2人以上の社員(法人でも可)が必要ですが、これに対して株式会社は、発起人または設立時株主が1人から設立可能です。

1-1-2.出資金の額

  • 一般社団法人:不要
  • 株式会社:1円以上

一般社団法人は、株式会社の資本金に当たる出資が不要です。これに対して株式会社は、1円以上の出資金が必ず必要です。

1-1-3.設立に必要となる費用

  • 一般社団法人:12万円程度
  • 株式会社:21~25万円程度

設立登記に必要となる、定款の収入印紙代や登録免許税などが異なるため、一般社団法人の方が10万円程度安く設立することができます。

1-1-4.利益(剰余金)の分配

  • 一般社団法人:分配できない
  • 株式会社:分配できる

一般社団法人は、利益が出たとしても、それを社員などに分配することはできません。これに対して株式会社は、配当金として株主に分配することができます。

1-2.今まで相続上有利であった理由と注意点

個人が所有している収益不動産や同族会社株式などの資産を一般社団法人に移し、子が一般社団法人の理事に就任することによって資産の管理をすることで、社員に相続が発生しても相続税は課されません
なぜなら、上記「1-1-1.設立で必要な人数」で解説した通り、一般社団法人には株式会社のような出資金や持ち分という概念がないためです。 また、上記「1-1-4.利益(剰余金)の分配」で解説した通り、一般社団法人は利益の分配はできません。

しかし、理事になっている社員に対して報酬を支払うことは可能なので、法人から現金を手に入れる手段はあり、実質的に損はないのです。
ただし、個人の資産を一般社団法人に贈与することで、不当に贈与者親族の相続税や贈与税を減少させると認められる場合には、一般社団法人が個人とみなされ、贈与税や相続税が課されますので注意しましょう。

2.一般社団法人を利用した節税

一般社団法人を使ってどのような節税対策をすることができたのか、具体的に見ていきましょう。

2-1.一般社団法人に資産を移すと相続税が発生しなかった

不動産を例にとった場合、マンションなどの収益不動産を所有し家賃収入を得ている人は、高い所得税が課されることや後々相続が発生した場合の相続税問題があります。
一般社団法人を設立し、収益不動産を移転してその管理を法人に任せることで、家賃収入は法人の収入になり、課税所得を個人と法人に分けることができます。

こうすることで、全ての所得を所得税で納めるよりも、所得税と法人税で納めた方が、合計の納付税額が少なくなり節税に繋がります。また、移転された収益不動産の所有者は法人となるので、相続税の課税対象財産から外れ相続税が課される心配もなくなります。

2-2.過去数年、一般社団法人が一気に増加

一般社団法人を設立運営していくハードルを下げた、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が施行された2008年以降、一般社団法人の新設法人数が増加の一途をたどっています。

2012年2013年2014年2015年2016年2017年
3698社4274社5000社5552社5996社6000社(予測)

毎年500社前後増加しており、一般社団法人には多くのメリットがあることが分かります。

【参考サイト】2016年「一般社団法人」の新設法人調査 : 東京商工リサーチ

2-3.一般社団法人を利用した相続税対策の仕組み

多くの資産を持っている人は、相続発生時に多額の相続税がかかります。それを避けるために一般社団法人を利用するのですが、どのような仕組みで節税ができるのでしょうか。
次のような流れが、よく行われている典型的な例です。

  1. 資産家である親が代表者となり一般社団法人を設立する。
  2. 資産を一般社団法人に売却などの方法で移す。
  3. 代表者を子に変更する。

こうすることで、資産は親所有ではなく法人が所有することになり、相続とは関係がなくなります。更には、子だけではなく孫やその先の代までこの仕組みで資産を受け継いでいくことができるのです。

不当に低額な譲渡には注意

ただし、この仕組みを利用する場合には最初に資産を移すときに注意が必要です。方法を誤ってしまうと何らかの税金がかかってしまうからです。
節税を目的とした多くの場合は、実質的に無償で資産を移そうとするので、その場合には資産を無償譲渡した親に譲渡所得税が課され、無償で譲り受けた一般社団法人に法人税の受贈益課税がなされます。
次に、一般社団法人に資産を贈与等したことにより、その代表者である親の相続税または贈与税が不当に減少したと認められる場合には、その一般社団法人が個人とみなされて相続税または贈与税が課されます。

一般社団法人自体で銀行融資などを使い適正に資金を準備し、適正な価格で資産を購入する場合には何の問題もありません。 ケースバイケースで一概には言えませんが、資産移転の方法は適正価格での売却によるのがベストの場合が多いでしょう。

事業承継

3.税制改正で一般社団法人利用に規制

上記2-2.の一般社団法人増加からも明らかなように、法人を隠れみのにした租税回避行為が広がっています。このような状況を国が野放しにするはずはなく、2018年税制改正で規制が入ることになりました。

3-1.改正内容をわかりやすく

3-1-1.一般社団法人等に対する相続税の課税

今までは、一般社団法人の役員が死亡しても、一般社団法人を個人とみなして相続税が課されることはありませんでした。
今回の改正によって、死亡した役員(理事に限る)に対応する純資産額を、一般社団法人等が遺贈で取得したとして相続税が課されるようになります。 要するに、上記2-3で解説した典型例が封じられます。

3-1-2.一般社団法人等に対して贈与等があった場合の贈与税課税の見直し

一般社団法人は、非営利徹底法人と認定されている場合には、個人から資産を譲り受けても贈与税などは課税されません。
しかし、今までこの非営利徹底法人がどのような法人なのかという点が曖昧でした。 今回の改正によって、次の4つの要件のいずれかを満たさなければ贈与税または相続税が課されるようになります。

  1. 持分の定めのない法人の運営組織が適正であり、定款等に理事等に占める親族関係者の割合が3分の1以下とする定めがあること
  2. 贈与又は遺贈者、法人の役員等、もしくは社員又はこれらの者の親族等に施設利用、金銭貸付、資産譲渡、給与支給、役員選任その他の財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益を与えないこと
  3. 定款等において、法人解散の場合に残余財産が国、地方公共団体その他の公益法人等に帰属する定めがあること
  4. その公益法人等につき公益に反する事実がないこと

これらの要件は既にあったのですが、いずれか1つでも満たさない場合には、贈与税または相続税を課税すると規定が明確化されました。

3-2.適用時期

2018年4月1日以後の理事等の死亡に係る相続税及び、贈与または遺贈により取得する財産に係る贈与税または相続税について適用されます。
ただし、設立が2018年3月31日までの一般社団法人等については、2021年4月1日以後の理事等の死亡に係る相続税について適用されます。

4.公益財団法人による節税

一般社団法人に似た名称で、公益財団法人という法人があります。一般社団法人を利用した節税方法があるように、公益財団法人による節税方法もあります。

4-1.公益財団法人とは

公益財団法人とは、名称通り公益を行うことを目的とする法人です。
社団は人の集まりに法人格を与えたもの、財団は物の集まりに法人格を与えたもので、公益を目的とするのが公益社団法人、公益財団法人と認定されます。
公益事業は「学術・技芸・慈善その他の公益に関する事業」として認められている、次の23の事業に限定されています。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 別表(第2条関係)
一 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
二 文化及び芸術の振興を目的とする事業
三 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
四 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
五 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
六 公衆衛生の向上を目的とする事業
七 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
八 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
九 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
十 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
十一 事故又は災害の防止を目的とする事業
十二 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
十三 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
十四 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
十五 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
十六 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
十七 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
十八 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
十九 地域社会の健全な発展を目的とする事業
二十 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
二十一 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
二十二 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
二十三 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

4-1-1.設立方法

公益財団法人の設立は、非常に厳しい条件をクリアしなければなりません。容易に設立できる一般社団法人とは、勝手が違いますので注意しましょう。

公益財団法人は、いきなり設立することはできません。従来の財団法人か新たに設立した一般財団法人から移行する必要があります。 まずは一般社団法人、一般財団法人として設立し、次のような認定基準を満たしたら申請することになります。
申請する先は都道府県知事です。複数の都道府県に事務所がある場合などは、内閣総理大臣となります。

  • 公益目的事業を行うことが主な目的か
  • 公益目的事業の収入がそれに係る適性費用を超えないか
  • 公益目的事業比率が50/100以上の見込みか
  • 有給財産額が一定額を超えない見込みか
  • 親族など密接な関係にある理事や監事が総数の1/3以下か

この他にも認定基準があり、全部で18項目あります。詳しくはこちらをご確認ください。
【参考サイト】公益法人協会:公益認定の基準 18 項目

4-1-2.優遇税制

公益財団法人の事業には、公益事業と収益事業があります。

  • 公益事業に係る法人税は非課税
  • 利子等、配当等、給付補てん金、利息、利益、差益及び利益の分配を受ける場合の所得税は非課税
  • 収益事業での一部収益を公益事業のために支出した場合には、一定金額までみなし寄付
  • 公益財団法人に寄付を行った人は、寄付額に応じて税額控除

4-2.公益財団法人を利用した相続税対策は可能か?

可能ですが、上場会社オーナーなど一定規模の人が対象となるのが一般的であり、それ以外の人は一般社団法人で相続税対策をした方がメリットがあるというのが結論です。

財団法人は、財産が集まることで成り立ちます。ある目的のために財産が集められ、その財産に対して法人格が与えられるのです。
切り離された財産は自分の所有物ではなくなり、その財産が法人格を持つことで、活動していくことになります。 上記で解説してきた一般社団法人と同様に、財団に移した財産は自分の所有物ではないので相続と無関係になり、相続税対策になります。 また、公益財団法人には上記「4-1-2.」で解説した優遇税制や、社会貢献をすることができるなどのメリットもあります。

しかし、公益財団法人の元となる一般財団法人を設立し運営する場合には、7名(理事3名、評議員3名、監事1名)が組織として最低限必要です。 相続税対策のためにそれだけの人を確保することは、上場会社オーナーなど一定規模の人でないと難しく、また費用対効果を考えても難しいということなどが上記結論の理由です。

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