雑種地の定義と評価方法、土地の区域

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相続財産の中でも土地の評価方法は非常に複雑です。特に難しいのが「雑種地」の評価方法です。
雑種地とはどんな土地をいうのか、また土地の区域毎にどのように評価するのかを解説します。

1.雑種地の定義

相続する土地は、建築物などの役割からいくつかの種類に分けられています。雑種地は土地の分類の1つなのですが、その定義が非常に分かりにくく、多くの人を悩ませています。では、雑種地とはどのような土地を指しているのか、定義や具体例を確かめていきましょう。

1-1.雑種地とは

一言で土地といっても、その役割は多岐に渡ります。自宅として使用していたり、畑として活用していたり、所有している人や家族ごとに違っています。ですが、土地の活用方法によって税金の計算方法が違うこともあり、きちんと定義しなければ大きな混乱を招いてしますのです。そのため、土地の管理を行っている「登記簿謄本」には、土地の活用方法ごとに細かく分類されています。

土地の区分を定めている不動産登記法では、土地は役割や活用方法ごとに「23種類」に分けられています。田・畑・宅地・学校用地・鉄道用地・塩田・鉱泉地・池沼・山林・牧場・原野・墓地・境内地・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝・保安林・公衆用道路・公園・雑種地の23種類の地目に区分されています。これらのどれに当てはまるかは、それぞれの細かい基準に照らし合わせながら決定します。

ただし、雑種地に関しては非常にアバウトな定義となっています。雑種地の定義は、「雑種地を除いた22種類のどれにも当てはまらないこと」です。つまり、雑種地の明確な定義はありません。そのため、初めて登記簿謄本を見たときや相続のときに、どんな土地なのか分からず、税金などへの不安を感じてしまうのです。また、文字の並びもネガティブに見えるため、余計に心配になってしまうこともあるそうです。

1-2.田・畑や宅地と雑種地の定義

雑種地の定義である「それ以外の土地」という説明だけでは、どのような土地が該当するのか、分かりにくいと思います。そこで、代表的な土地の区分である「田・畑」と「宅地」の定義と比べながら、雑種地の提起を考えてみましょう。

まず、田・畑と宅地の定義を確認します。

  • 田・畑:耕作の目的に供される土地
  • 宅地:建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地

例えば、何もない土地でも現在耕作していない休耕地や不作耕地の場合は、雑種地ではありません。ですので、雑種地のように見えても、実は違う区分になっていることもあります。

また、自宅を相続するときは土地も一緒に相続します。この場合の土地は、ほとんどが自宅の敷地となっていますので宅地となり、雑種地ではないのです。他にも、ビルやお店なども宅地に含まれます。
宅地に当てはまらなかっとしても、田・畑に該当すれば雑種地とはなりません。

雑種地とは、これらのどれにも該当しない土地を指しています。

1-3.該当する土地:駐車場、資材置き場、ゴルフ場など

定義を比べながら考えても、区別が難しい雑種地ですが、実際にどんな土地が該当するのか気になる方も多いことでしょう。

実際に雑種地に該当する代表的なのは「駐車場」や「資材置き場」、「ゴルフ場」などです。どれも宅地や田・畑などに該当しないため、雑種地だと判断が付きやすいです。他にも、遊園地や野球場なども、分かりやすい雑種地の1つです。

また、あまり身近ではないところだと、鉄塔が建っているところや変電所など、一般的に出入りができない場所も雑種地に該当します。

駐車場

1-4.注意しておきたいその他の雑種地

具体的な雑種地を確かめてきましたが、気になる疑問が出てきました。田・畑と宅地の定義との兼ね合いです。駐車場は雑種地に該当しますが、自宅に駐車場がある場合は、宅地なのか雑種地なのか、といった疑問です。では、このような2つの定義に当てはまる場合、雑種地はそれぞれどのように定められるのでしょうか?

田・畑と雑種地が混同する場合、見極めるポイントは「手入れがされていること」です。野菜などを生産していなくても、休耕地などに当てはまれば雑種地とはならないことはすでに確認しています。ですが、雑草が伸び過ぎて農地に戻せない場合、休耕地を駐車場など他の事柄に使用している場合などは、雑種地とみなされることがあります。

また、宅地との判断が難しい場合は、面積の割合が1つのポイントとなります。ゴルフ場や遊園地のように、建物が建設されていても、建物の敷地以外の土地の方が面積が広い場合やメインとなっている場合は雑種地に該当することがあるのです。ですので、自宅の敷地よりも駐車場などのスペースが数倍も広い場合は、宅地ではなく雑種地として分類されていることがあります。

このように、他の区分に該当するような場合でも雑種地とみなされる場合があります。そのため、自分で判断してしまうのではなく、必ず登記簿謄本などを確認して正確な情報を集めましょう。

2.市街化区域と市街化調整区域の区分

さて、雑種地の基準や判断は非常に複雑な区別となることがわかりましたが、雑種地の定義以外にも、土地の評価を悩ませてしまう問題があります。それが、「市街化区域」と「市街化調整区域」という地域の区分です。土地の用途ではなく、場所によって決まるこれらの区分は、雑種地の評価方法にも大きな関わりがあります。

2-1.市街化区域

市街化区域とは、都市計画区域の中で「市街地」としてメインに整備する区域のことです。ガスや電気、上下水道などの基本的な設備、公園や道路などを積極的に整備する地域を指しています。そのため、住宅や店舗などが建設されることが多く、その都市の中心地ともいえる区域を表しています。

2-2.市街化調整区域

市街化調整区域とは、市街化区域とは真逆で「自然を残すこと」をメインに据えた区域です。ですので、住宅などの建設物には制限が設けられ、お金があっても自由にに建設することはできません。必ず建設条件に適合するか審査され、許可が降りないと建設できないのです。

また、市街化区域に比べて各種設備が整っていないこともあります。もちろん、生活できないほど整備されていない訳ではありません。ですが、電柱の数が少なく電気を引くために自己負担を求められることもあるため、区域によって差が大きく現れる区分といわれています。

もし、相続する土地が市街化区域と市街化調整区域、どちらに該当するのか知りたい場合は、各区市町村が作成している「都市計画図」を利用しましょう。インターネットで閲覧可能な自治体も多くなっています。
都市計画図では、色分けなどで市街化区域、市街化調整区域が区別されていますので見分けやすくなっています。さらに、雑種地も分かりやすくなっていますので、相続する土地の場所が分かったら、一度都市計画図を見てみましょう。

街並み 区域

3.雑種地の評価方法

3-1.市街化区域内にある雑種地の評価方法

市街化区域と市街化調整区域は、土地の用途によって区分けされた地域を表しますが、土地の価格を決める「評価方法」にも大きな違いを与えています。そこで、同じ雑種地でも評価方法にどのように異なるのか、それぞれを確認していきましょう。

市街化区域にある雑種地の評価方法には、「路線価地域の評価」「倍率地域の評価」といった方法があります。それぞれには以下のような特徴があります。

  • 路線価地域の評価:道路1㎡あたりの評価額(路線価)を土地の評価額として扱う
  • 倍率地域の評価:場所によって決められた倍率を固定資産税評価額に乗じる

基本的には、路線価が定められていれば路線価地域、路線価がなければ倍率地域となります。ですので、場所や地域によってそれぞれの評価方法を使い分けています。

ただし、どちらの場合も雑種地の評価額などが明確に定められておらず、宅地の評価額などを代用して固定資産税評価額の計算を行います。ですが、雑種地は宅地よりも評価額が低くなることが多いため、間違った評価額を算出してしまうことがあります。

そのため、正確な雑種地を算出するためには、形状や各種税金の控除など、さまざまな細かい条件を考慮しながら計算する必要があります。

【関連】相続税・贈与税における土地の評価方法(路線価方式と倍率方式)

3-2.市街化調整区域内にある雑種地の評価方法

市街化調整区域の評価方法は、複雑な市街化区域の評価方法よりも分かりやすいといわれています。基本的に、市街化調整区域でも雑種地の評価額は明確に定められていません。ですので、市街化区域と同じように他の評価基準を代用します。

ただし、市街化調整区域の場合は、雑種地の周りに多い土地の状況によって評価基準を使い分ける必要があります。例えば、周囲に農地が多い場合は「農地比準」を使用して計算するのです。他にも、状況ごとに「山林比準」「原野比準」「宅地比準」があり、状況ごとにそれぞれの基準を使い分けています。

また、市街化調整区域の評価では「しんしゃく割合」を忘れてはいけません。しんしゃく割合とは、市街化の影響度(発展度)や建築制限などを踏まえて、土地を公平に評価するための割合です。しんしゃく割合を正しく活用することで、土地ごとの正しい評価に繋がります。

ただし、しんしゃく割合には明確な基準はありません。しんしゃく割合をどの程度設定するのかは専門家でも判断に迷ってしまう難しい割合だといわれています。

4.雑種地の評価は相続に強い税理士に依頼しよう

相続において雑種地が悩みのタネとなってしまう理由は、区分けが難しいだけでなく、「評価」が非常に難しいからです。土地の評価額は相続する遺産の総額にも大きく関わり、評価額が高くなるほど、納める相続税も高額になります。ですので、土地の評価は慎重に、適切に行う必要があるのです。

しかし、雑種地の評価は市街化区域や市街化調整区域で異なり、どちらの場合も複雑な計算を行わなければいけません。そこで、雑種地の評価は自分で行うのではなく、税理士に依頼することが最も良い解決手段となります。

特に、相続に強い税理士は不動産鑑定士と連携し、より適切な評価額を算出してくれます。そして、評価額を1円でも低くし、納める相続税を抑えてくれるのです。そのため、自宅や空き地などを相続する際にその土地が雑種地だと分かったら、迷わず税理士事務所へ相談に行きましょう。

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相続税申告は税理士によって力量の差がはっきりと現れます。
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相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、税理士はあなたの味方になりますので、まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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服部
執筆・監修
服部 貞昭(はっとり さだあき)
東京大学大学院電子工学専攻(修士課程)修了。
CFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
ベンチャーIT企業のCTOおよび会計・経理を担当。
税金やお金に関する記事を2000本以上、執筆・監修。
「新宿・はっとりFP事務所」を開設し、随時ご相談を受付中。
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