FXポジションの相続手続きと相続税

相続税の対象になる財産には、現金や預金、不動産など多くの物があります。では、被相続人(亡くなった人)がFXをしていた場合はどうなるのでしょうか。この場合、FXポジションについて相続税の対象となります。ここでは、被相続人が行っていたFXに関する相続手続きと相続税申告について解説します。
1.FXとは?
FXとは「外国為替証拠金取引」ともいい、異なる2国間の通貨を売買し、その為替差益を運用する取引のことです。自己資金である証拠金を証券会社などの取引専用口座を預け入れ、それを担保に証拠金以上の外貨を売買することができます。
例えば、1ドル100円の時に10,000ドル購入したら購入金額は100万円です。それを1ドル105円の時に105万円で売却すれば、差額の5万円の為替差益を得ることができます。
この例では買いから入って売りましたが、逆に売りから入って買うこともできるのがFXの特徴です。
FXでは為替差益以外にも利益を得ることができます。それが「スワップポイント」です。スワップポイントとは、2国間の金利差を利益として受け取れるというものです。金利の安い通貨を売って、金利の高い通貨を買うと、ポジション(ある通貨を保有し、利益や損失がまだ確定していない状態。後で詳しく説明します)を決済するまで毎日受け取ることができます。FX取引で決済が行われると、その利益(または損失)分が取引専用口座に預けられている証拠金にプラス(またはマイナス)されます。
2.FXポジションの相続税評価額
では、FXに関する相続税評価について見ていきましょう。
FX取引では、FXポジションとスワップポイント、証拠金(預り金)について相続税評価を行う必要があります。
まずはFXポジションです。FX取引は売りからも買いからも行うことができますが、決済をしたときにはじめて損益が確定します。FXポジションとは、FX取引を売り、または買いから初めて、まだ未決済の状態のことです。当然、損益も確定していません。では、確定していないFXポジションの相続税評価額はどのように評価するのでしょうか。
FXポジションは、被相続人が死亡した日の最終価格で評価します。被相続人が死亡した日の最終価格で評価するのは、スワップポイントや証拠金(預り金)も同じです。被相続人が死亡した日の最終価格で評価することで、決済したのと同様に損益が生まれます。その損益を証拠金(預り金)と相殺した金額が相続税評価額となります。
FX取引では、利益だけでなく損失も発生します。場合によっては証拠金(預り金)を超えた損失が出る場合もあります。その場合は、相続人が損失分の支払いをする必要がでてきます。FXのほかに引き継ぐ財産よりも、FXの損失分が多い場合は、相続放棄の検討も必要となってくるでしょう。
3.相続の手続き
FXポジションなどは、被相続人が死亡した日の最終価格で評価します。では、FXを相続する場合、どのような手続きが必要なのかを見ていきましょう。
相続が開始されると、まずはFX取引をしている証券会社などに連絡する必要があります。連絡を受けた証券会社は、取引専用口座を凍結し、FXポジションも決済されることになります。相続人は決済後に口座に残った金額を相続することになりますが、通常、銀行のようにその口座を名義変更することはできません。相続人が新たに証券会社など口座を開設し、そこに残高を移すことになります。
証券会社によって、相続があった場合の必要書類は異なりますが、一般的な必要書類は次のようになります。
- 口座閉鎖依頼書
- 残高証明書発行依頼書
- 相続に係る委任状兼依頼書
- 相続人代表者の口座開設申込書
- 被相続人の戸籍謄本(発行日から6ヶ月以内)…被相続人の出生から亡くなった時点までの戸籍情報の履歴がわかるもの
- 相続人全員の戸籍謄本(発行日から6ヶ月以内)…被相続人と相続人全員の関係が記載されたもの
- 相続人全員の印鑑登録証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 遺産分割協議書
相続が開始されたことを証券会社に連絡すると、口座閉鎖依頼書や口座開設申込書などの必要書類が送付されてきます。送られてきた書類に必要事項を記載し、戸籍謄本や印鑑登録証明書などを添付して、証券会社に返送する流れになります。
必要書類は、証券会社によって異なるため、あらかじめどんな書類が必要か、取引専用口座のある証券会社に問い合わせてください。また、これらの手続きに当たって手数料等は無料の場合が多いですが、残高証明書などの発行などを行う場合は別途手数料がかかることがあります。
また、証券会社によっては、FXポジションを決済(反対売買)せずに外貨として受け取れるサービスがある会社もあります。証拠金については、円から外貨へ両替して出金します。この場合の手数料は、無料から数千円と証券会社などによってバラバラです。また、そもそも外貨として受け取れないところも多いため、外貨として受けとりたい場合は、あらかじめ、取引専用口座のある証券会社に問い合わせましょう。