相続税の申告期限に間に合わないときの対処法、延長できるの?
相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。期限に間に合わないと、罰則の税金が課せられ、特例の適用も受けられなく…[続きを読む]
相続では、被相続人から相続人へと大きな財産が動くため、相続人間での遺産分割争いが付き物です。「相続」をもじって「争続」という言葉があるくらいなのです。
一度過熱してしまった相続争いは収拾がつかなくなることも多く、相続人全員で同じ申告書を提出するということすら難しくなってしまうことがあります。
そこで今回は、相続税申告は、相続人ごとに別々に申告することができるのか、解説していきます。
目次
通常、相続税は、相続人全員で1つの申告書に連署と押印をして申告します。しかし、相続人全員が共同で申告しなければならないという決まりはありません。
相続という性格上、相続人間に何らかの揉め事が発生してしまい、申告書の作成がスムーズに行えないということも当然に出てくるため、兄弟や姉妹、親子といった相続人同士の関係にかかわらずそれぞれが別々に単独で申告することも可能となっています。
中には自分以外の相続人が連れてきた税理士など信用できないというケースもあり、相続人それぞれが、別々の税理士に申告を代行してもらうことも可能です。
例えば、相続人5人それぞれが別々の税理士に依頼した場合には、5人の税理士が作成した5つの申告書が、被相続人の住所地を所轄する同じ税務署に提出されることになります。
相続人が、別々に単独で申告する場合に気を付けなければならないのが、申告期限です。期限内に申告しなければ、無申告加算税と延滞税が発生してしまうからです。相続人が別々で申告する場合でも、期限内に申告できなければこれらのペナルティがかかってしまいます。
一般的に、申告期限までに遺産分割が終わらない場合には、それらの財産を法定相続分で按分し、それぞれの相続人が取得したものとみなした申告書を期限内にいったん提出し、それに応じた相続税を納めます。
そうすることで期限後の申告になることを避け、加算税を避けることができるのです。
他の相続人が申告をする気がない、申告書の作成に非協力的であるなど共同で申告することができないといった状態にある場合には、自分だけでも期限内に法定相続分で申告してしまいましょう。
期限後に、納めた相続税額が不足していたことがわかっても、延滞税や無申告加算税はかからず、税務調査の事前通知が来る前に修正申告すれば、過少申告加算税もかかることがありません。
相続税は、可能な限り相続人全員が共同で申告することがベストです。
相続人が別々に個別で申告することにはどのような問題があるのか解説します。
相続人全員が1人の税理士にまとめて依頼できれば1人分の税理士費用で済みます。しかし、別々に依頼するとその分税理士費用の総額は膨れ上がっていきます。
例えば、5人相続人がいて、1人の税理士に依頼した場合には100万円だった税理士費用も、5人別々の税理士に依頼すると総額500万円になります。共同で依頼した場合には1人当たりの負担が20万円だった費用が、別々に依頼すると100万円になるのです。
ただ、相続人同士の協力が難しい状況であれば、税理士費用のことまで考えるのは難しいかもしれません。
相続人各自で個別に申告しようとなった場合でも、その中に心を許せる人がいるのであれば、その人とだけでも共同で申告すると良いでしょう。
相続税申告書には、すべての相続人について、取得する財産額から相続税の計算までを記載しなければなりません。相続人ごとに単独で申告する場合であっても、自分だけではなく他の相続人についても記載しなければならないことに変わりありません。
相続税の計算は複雑であり、考え方1つで結果が変わります。 同じ相続について10人の税理士が申告書を作成したとすると、内容の異なる10通りの申告書ができるといわれています。
すべての相続人の申告内容が一致することは、まずありません。例えば、自分の申告書では、納税額が100万円だったとしても、他の相続人の申告書に記載されている自分の納税額は120万円になっているかもしれないのです。
したがって、相続人ごとに別々の申告書を提出するということは、税務署に1つの相続に対して複数の内容の申告書が届くことになり、各相続人の相続税額が何パターンも存在するということになるのです。
これによって次に解説する問題が発生します。
同じ相続に関して何通りもの異なった申告書が届いた税務署は、個別の申告だからですねと黙って受理するわけにはいきません。
1つの相続税申告に矛盾が生じている状況なので、税務署は税務調査を行って真実を確認し、申告内容を統一させる必要があります。
税務調査によって相続税を過多に収めていたことがわかれば、更正の請求によって返還される可能性もありますが、一方で、申告漏れや納税額に間違いが発見され、足りない納税額を収める場合には、過少申告加算税が課税される可能性があります。
追加の税金が発生するのもしないのも、相続人ごとの申告次第としないためにも、相続人間での擦り合わせが必要になるのです。
税務調査が入る確率を下げるためには、最初から税務調査が入らないことを目指した申告書を提出することが重要です。
そのためには、別々で申告する場合であっても、申告書を提出する前に税理士同士で申告内容の擦り合わせを行い、最終的な納税額を一致させた申告書を提出することが必要です。 そうすることで、1つの相続に対して1つの内容の申告書が複数提出されることになり、税務署も税務調査により内容を一致させる必要はなくなります。
ただし、相続人同士の仲がこじれていると、自分の申告内容を知られたくないといった理由で、擦り合わせを行うことすら難しいことも少なくありません。調停や裁判に進んでいるのであれば尚更です。
擦り合わせが行えなかった場合には、税務調査は覚悟のうえで申告を提出するしかありません。
ここまで解説した通り、相続税申告は、相続人が別々で行うことが可能です。相続人全員で足並みをそろえる必要はありません。
他の相続人が協力してくれないのであれば、自分だけでも期限内に申告することを最優先にしましょう。
相続に詳しい税理士に相談すれば、全力でサポートしてくれます。