死亡退職金に課税される相続税について詳しく解説!
死亡退職金は、いざ受け取るとなると税金がかかるのか、かかるとしたらどんな税金なのか迷ってしまいませんか?死亡退職金は…[続きを読む]
会社の在籍中に被相続人がお亡くなりになると、会社から遺族に、故人を弔うための「弔慰金」が渡されることがあります。
その弔慰金は相続税法上、どのような扱いをされるのかをご存知でしょうか? 今回は、弔慰金と相続税の関係について、具体例とともに詳しく解説していきます。
目次
慶弔金は、お祝い事や、ご不幸事があった時に支払われるお金です。 中でも、亡くなった時に支払われるのが弔慰金(死亡弔慰金)で、国や多くの企業ではこの「弔慰金」の制度が設けられています。
国には戦没者やその遺族に対して支給される「特別弔慰金」や、自然災害や事故によって亡くなった方の遺族に対して支給される「災害弔慰金」の制度があり、新型コロナウイルスによる「災害関連死」と認定された遺族に弔慰金を支払う制度を設けた自治体があるのは記憶に新しいところです。
また、企業で制度として「慶弔見舞金」を導入しているのは、8割を超えています*。
弔慰金は、お亡くなりになった人の労をねぎらい、その遺族の生活の支えとなるようにお見舞いとして送られるお金です。
したがって、弔慰金は被相続人の遺産ではなく、受取った相続人固有の財産となり、相続放棄しても、受け取ることができます。
*【出典】「企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―」|独立行政法人 労働政策研究・研修機構
一方、死亡退職金は、本来退職金を受取る権利があった亡くなった社員の代わりに、企業から遺族へ支給されるものです。
弔慰金と同様に死亡退職金も、企業に制度がなければ支給されません。
どちらも、社員が亡くなった時に遺族が受け取るお金という観点では同じですが、死亡退職金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になりますが、家族の生活保障として以下の非課税枠が設けられています。
死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
弔慰金は原則、相続税の課税対象とはならず非課税です。
しかし、会社から支払われた弔慰金が多額の場合には、非課税枠を超える部分が死亡退職金に加算され、相続税の課税対象になります。
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額が非課税になります。
月給30万円の人が死亡した場合
非課税額=30万円×36ヶ月=1,080万円
被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額が非課税になります。
月給30万円の人が死亡した場合
非課税額=30万円×6ヶ月=180万円
普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいい*、基本給だけではなく、ボーナスを除く諸手当も含めた毎月の支給合計額となります。
また、雇用主以外(例えば、以前に勤めていた会社など)から多額の弔慰金をもらった場合は、相続税の対象とはならず、遺族の一時所得などとなり、所得税等の対象となる場合もあります。 このよう場合は、税務署や税理士にご相談ください。
【出典】「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」|国税庁
弔慰金の非課税枠を超えた部分は、死亡退職金に加算され、相続税の課税対象になります。それでは、以下の事例を使って死亡退職金への加算額を計算してみましょう。
事例
- 最終月給:30万円
- 弔慰金:1,000万円
この場合は、支払われた弔慰金は非課税枠内であり、死亡退職金への加算はありません。
上記の例で、業務上の死亡ではないときの計算をすると
したがって、死亡退職金として820万円を加算します。
弔慰金の非課税枠の計算方法についてはお分かりいただけたと思います。では、実際に弔慰金がある場合に、相続税はどのように計算すればいいのでしょうか。
ここではその概略をお伝えします。
弔慰金がある場合には、まず弔慰金の非課税枠を計算し、死亡退職金への加算額を算出します。
次に死亡退職金の非課税枠を計算し、弔慰金の非課税枠を超えた部分から差し引きます。
最後に死亡退職金の非課税枠を超えた部分を相続財産の総額に加算して、相続税を計算します。
では、弔慰金と死亡退職金とを共に会社から受け取った場合には、どのように計算すればいいのでしょうか。
まず、弔慰金の非課税枠を算出し、弔慰金の非課税枠を超える部分を死亡退職金に加算します。
弔慰金の非課税枠を超えた部分と死亡退職金を加算した額から、死亡退職金の非課税枠を差し引いて、超えた部分を相続財産総額に加算して相続税を算出します。
相続税の計算方法について詳しくは以下の記事をご一読ください。
支給された弔慰金が非課税枠を超え、相続税の納税が必要な場合には、相続税申告書第10表(退職手当金などの明細書)の提出が必要です。
【出典】相続税の申告のしかた(令和6年分用)「❹相続税の申告書の記載例」P.94|国税庁
注意すべきは、「受取金額」の記載方法です。
受け取った弔慰金の金額をそのまま記載するのではなく、弔慰金と死亡退職金の非課税枠を超えた相続税の課税対象になる金額を記載します。
ここまで、弔慰金と相続税についてご説明しました。
原則として、弔慰金は相続税の課税対象ではありません。 しかし、 弔慰金の金額が大きい場合には、 弔慰金にも相続税が課されることがあります。
多額の弔慰金を受け取ることや、業務上の死亡か業務外での死亡か判断が難しいこともあります。また、死亡退職金か弔慰金なのか判別できない場合もあるでしょう。
こうした場合には、相続税に強い税理士に一度相談してみることをお勧めします。