事実婚の相続税はどうなる?事実婚の相続税と相手に財産を遺す方法

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近年、夫婦の在り方は多様化しており、事実婚を選ぶカップルも増えています。あわせて、事実婚が後ろめたいというイメージも払拭されつつあります。

メリットも多い事実婚ですが、相続税においては事実婚と法律婚では大きな差があることをご存じでしょうか。 今回は、事実婚のまま配偶者の相続を迎えてしまったときどうなるのか、財産を遺すためにはどうしたら良いのかを解説します。

1.事実婚のパートナーには相続権がない

事実婚とは、事実上では夫婦であっても婚姻届けを出していない夫婦のことをいい、内縁関係などと呼ばれます。
これに対して、婚姻届けを出している夫婦は「法律婚」といいます。

事実婚である夫婦のどちらかが死亡した場合、その配偶者に相続権はありません。 また、内縁関係は法律上では他人であり、法定相続人の範囲に含まれないので法定相続人になれません
法律婚の夫婦と同様に何十年連れ添ってきたとしても、何も対策を講じないまま死亡すると、内縁の配偶者に自分の財産を渡すことができないのです。

内縁の配偶者に財産を渡す方法については、「3.内縁関係でも相続する方法」で詳しく解説します。

2.相続税の計算ではデメリットばかり

相続税の計算上、事実婚は法律婚で受けられる各種特例や控除が適用できません。 同じ夫婦であっても婚姻届けの提出の有無だけで、算出される相続税額に大差が出てしまいます。

2-1.配偶者控除を受けられない

「配偶者には相続税がかからない。」とはよく言われますが、その理由は配偶者の税額軽減制度があるからです。
配偶者は被相続人の財産の形成に貢献していることや、被相続人死亡後の配偶者の生活を守るために配偶者が相続した財産については、法定相続分または1億6,000万円まで相続税がかからないようになっています。

ただし、これが適用できるのは法律婚の配偶者であって、事実婚では適用できません。 さらに、贈与税にも最大2,000万円の配偶者控除がありますが、相続税と同じく事実婚では適用できません。

2-2.小規模宅地等の特例を受けられない

被相続人の自宅や事業用に使用していた宅地等については、小規模宅地等の特例を適用することで、その評価額を最大で8割も減額することができます。
特に配偶者が相続した場合は優遇されており、他の親族にはある要件を満たす必要がなく、単にその宅地等を相続するだけで適用対象となります。

ただし、この配偶者も法律婚に限られます。事実婚の配偶者は法律上の配偶者ではなく、親族でもないため小規模宅地等の特例は適用できません。

2-3.障害者控除を受けられない

法定相続人に障害者がいる場合には、10万円または20万円に85歳に達するまでの年数を乗じた金額を相続税額から差し引くことができる、障害者控除という制度があります。
ただし、事実婚の配偶者が障害者であっても法定相続人ではないため、障害者控除は適用できません。

2-4.基礎控除額が増えない

相続財産から、次の算式で計算した基礎控除額を差し引いた残額に対して相続税がかかります。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

相続税額に大きく影響する基礎控除額ですが、事実婚の配偶者は法定相続人ではないため、基礎控除額を増やすことができません。
相続人が事実婚の配偶者のみである場合の基礎控除額は、3,000万円(3,000万円+600万円×0人)となります。

2-5.保険金の非課税枠が増えない

死亡保険金には非課税枠が設けられており、次の算式により計算した金額までは相続税がかかりません。

非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

基礎控除額と同じく、法定相続人の数に含まれない事実婚の配偶者は、非課税枠を増やすことができません。
また、この非課税枠が適用されるのは法定相続人に限られるため、法定相続人ではない事実婚の配偶者が受け取った保険金からは差し引くことができません。保険金全額に対して相続税がかかります。

2-6.2割加算の対象になる

相続税の計算では、配偶者と1親等以内の血族以外の人が財産を取得した場合には、相続税額が2割加算される制度があります。配偶者と1親等の血族の相続税の1.2倍納めなくてはならないということです。

遺産は通常、配偶者、親、子供が相続するものであり、それ以外の人が相続した場合には、ラッキーだったという要素が強いため、相続税が割り増しされるようになっています。 事実婚の配偶者は、法律上は他人であるため2割加算の対象となります

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2-7.例外|遺族年金はもらえるかも

生計を維持していた人が亡くなった時に、残された家族が生活に困らないように支給される遺族年金ですが、事実婚の配偶者であっても事実上の夫婦であり、生計維持関係にあったと認められた場合には遺族年金が支給されます。

3.事実婚でも相続する方法

事実婚の配偶者には相続権はありませんが、次の方法により財産を渡すことができます。

3-1.遺言書による遺贈をする

被相続人が配偶者に財産を譲る旨を記載した遺言を作成しておくことで、事実婚の配偶者にも財産を渡すことができます。遺言による財産の譲り渡しは、相続ではなく遺贈といいます。

遺言は被相続人の最後の意思であり、相続人書かれている内容に原則として、従わなければなりません。 ただし、4.で解説する遺留分侵害額請求には注意しましょう。

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3-2.生前贈与をする

被相続人の生前に配偶者に贈与をしておくことで、希望の財産を確実に渡すことができます。
ただし、以下の3つのポイントに注意が必要です。 

  • 年間110万円の基礎控除額を超える部分には贈与税がかかる
  • 贈与税の配偶者控除は受けられない
  • 遺留分侵害額請求の可能性がある
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3-3.死因贈与をする

死因贈与とは、被相続人の死亡を機に行われる財産の贈与で、財産を贈与したい人と生前に契約を交わします。この時に証拠資料として、「死因贈与契約書」を作成しておいた方が安心です。

ただし、死因贈与は被相続人の死亡後に行われるものであるため以下の3つの点に留意しましょう。

  • 相続税の対象となる
  • 事実婚の配偶者は2割加算の対象である
  • 遺留分侵害額請求の可能性がある

3-4.生命保険金の受取人にする

事実婚の配偶者を受取人とした生命保険を契約しておくことで、被相続人死亡後に配偶者が死亡保険金を受け取ることができます。

さらに保険金は受取人固有の財産であり、遺留分の対象にもならないため、自分の死後に配偶者が遺留分侵害額請求を受けて困る思いをさせずに済みます。

事実婚の配偶者は生命保険の受取人になれるのか?

ただし、問題となるのは事実婚の配偶者が受取人になれるのかということです。
保険金の受取人は基本的に、「戸籍上の配偶者及び2親等以内の血族」とされているので、事実婚では対象になりません。

しかし、近年の世相を加味して、事実婚の配偶者でも受取人になれる保険会社は増えてきており、次のような要件を満たしている場合には契約することができます。

  • 夫婦の両方に戸籍上の配偶者がいないこと
  • 同居している、生計が一であるなど夫婦同様の生活をしていること

審査ではねられた場合の対処法

もしも、審査で事実婚が認められなかったり、これらの審査を受けることが手間であるなどの場合には、契約時には受取人をいったん、「戸籍上の配偶者及び2親等以内の血族」にしておき、遺言書に保険金の受取人を事実婚の配偶者に変更する旨を記載しておくことで、保険金の受取人は配偶者になります。

ただし、最初に受取人として契約する人に事前に承諾を得ておくことが大前提となります。勝手に行ってしまうと、相続トラブルの元となりますので注意しましょう。

3-5.特別縁故者になる

特別縁故者とは、被相続人に法定相続人がいない、または法定相続人が相続放棄したなどで財産を相続する人がいない場合に、財産分与を受けられる人として家庭裁判所に認められた人のことをいいます。
特別縁故者になれば相続権が与えられ、被相続人の財産を相続することができます。

特別縁故者として認められるには、被相続人と生計を共にしていた、被相続人の療養看護に努めた人などである必要があり、夫婦として生活していた事実婚の配偶者は十分該当します。

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4.遺留分侵害額請求に要注意

遺留分侵害額請求とは、かつては「遺留分減殺請求」と呼ばれていたもので、法改正により2019年7月1日に名称が変更されました。
遺留分とは、最低限の相続財産を確保できる権利のことで、次の相続人が請求することができます。兄弟姉妹にはありません。

  • 配偶者
  • 直系尊属(父母、祖父母、孫など)

例えば、被相続人に離婚歴があり、元配偶者との間に子が1人いる場合、財産のすべてを事実婚の配偶者に遺贈してしまうと、何も相続できなかった子から配偶者に対して遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。

この場合には、元配偶者は相続人ではなく子だけが相続人となるので、本来であれば被相続人の財産の100%を相続する権利があります。
子の遺留分は1/2なので、3,000万円の相続財産があったとしたら、1,500円については子に取得する権利があるということになります。

事実婚の場合には遺留分侵害額請求にあう可能性が高く、特に相続人に配偶者の存在を知らせていなかった、夫婦になることを反対されていた場合などでは、相続人の反感を買いやすいので注意しましょう。

まとめ

税務上ではまだまだ事実婚の立場は弱く、各種控除や特例の対象外となってしまいます。
相続税のうえでは事実婚にメリットはありません。 この事実をご存じいただき、相続対策が必要な場合には早めに税理士に相談されてください。

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