離婚した際の財産分与に贈与税はかかるのか?

厚生労働省の「人口動態統計月報年計」によれば、2022年の離婚件数は17 万 9,096 組、離婚率は、人口1,000人あたり1.47 と推計されます(※)。

離婚の場合、やはり気になるのは、次のことではないでしょうか。

  • 離婚時の財産分与で、いくらもらえるのか
  • 財産分与でもらった財産には、税金がかかかるのか

そこで、今回は、離婚したときの財産分与に伴う贈与税などの税金について解説します。

※ 「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」|厚生労働省

1.離婚時の財産分与

1-1.離婚時の財産分与とは

離婚時の財産分与には、大きく分けて次の3つの種類があります。

  • 清算的財産分与
    夫婦の収入差を考慮せず、妻が専業主婦であっても、2分の1の割合で財産を分配する
  • 扶養的財産分与
    夫婦の一方に離婚による生活の困窮が想定される場合、離婚後、経済的余裕のあるほうが、経済的に安定するまでの一定期間生活費を補助する
  • 慰謝料的財産分与
    夫婦の一方に離婚の有責性がある場合、肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料としての性質を持たせて財産を分配する

以上3つの財産分与のうち、最も一般的なのが清算的財産分与です。

そこで、今回は、夫婦が婚姻期間中に形成した共有財産のを分け合って清算する「清算的財産分与」について見ていきます。

1-2.清算的財産分与とは

清算的財産分与の対象となる財産が、共有財産です。法律上、夫婦が婚姻期間中に築いた財産(共有財産)は夫婦二人で分与するということが規定されています(民法768条1項)。

「離婚原因が夫にあるのか妻にあるのか」に関係なく、婚姻期間中に築いた財産は夫婦の共有財産と考え、共有財産を夫婦2人で分けて清算することを、「清算的財産分与」と言います。

仮に、専業主婦で収入がなかったとしても、その財産の名義が夫・妻のどちらであっても、婚姻期間中に築いた財産は共有財産となり、財産分与の対象になります。

ちなみに、清算的財産分与では、離婚原因を作った側であっても、財産分与の請求が認められています。

1-3.共有財産とは

夫婦の財産には、財産分与の対象となる財産(共有財産)と、財産分与の対象にならない財産(特有財産)があります。

まずここでは、財産分与の対象となる共有財産について見ていきます。

共有財産とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いてきた財産のことです。婚姻期間中に取得した財産であれば、どちらか一方の収入だけで購入したとしても、また、名義がどちらか一方となっていても、共有財産となります。

共有財産には、次のものを挙げることができます。

  • 預貯金
  • 不動産(土地、建物)
  • 有価証券(株券など)、投資信託
  • 生命保険
  • 会員権(ゴルフなど)
  • 生活必需品(車、家具など)
  • 高額な骨董品、美術品などの財産
  • 退職金
  • 年金
  • 夫婦の生活を維持するための借金やローン(マイナス財産)

1-4.特有財産とは

一方、財産分与の対象にならない財産は、特有財産と呼ばれています。

婚姻前に既に持っていた財産や、婚姻期間中であっても親族からの相続や贈与などによって得た財産は特有財産と呼ばれ、夫婦で協力して築いてきた財産ではないため、財産分与の対象になりません。

特有財産には、次のものを挙げることができます。

  • 相続や贈与で取得した財産
  • 結婚前にそれぞれが所有していた財産
  • その他、夫婦の協力で築いていない財産
  • 収入や生活レベルと比べて明らかに高額な個人的な買い物や浪費のための借金、ギャンブルのための借金(マイナス財産)

1-5.離婚時の財産分与に贈与税はかかるのか?

基本的には、離婚時の財産分与に贈与税はかかりません。財産分与された財産は、相手側から贈与を受けたのではなく、夫婦で協力して築いてきた財産を分割(分与)したにすぎないからです。

ただし、財産分与が、贈与とみなされることがあり、その場合は、財産分与を受けた側が贈与税を支払う必要があります。

2.贈与税の対象になる財産分与

離婚時の財産分与でも、次の場合には贈与税がかかります。ここでは、この2点について解説します。

  • 財産分与の額が高額すぎる場合
  • 租税回避(脱税)が目的である場合

2-1.財産分与の額が高額すぎる場合

分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額や、その他すべての事情を考慮してもなお多すぎる場合には、その多すぎる部分に贈与税がかかることになります

贈与税が発生する財産分与の額に明確な基準はなく、個別の事情に応じて判断されます。したがって、妥当な額を分与して、贈与税を回避する方法もあります。

しかし、贈与税を支払ってでも、なるべく多くの財産分与を受けたいと考えるのが一般的でしょう。

2-2.租税回避が目的である場合

贈与税や相続税を免れるために離婚(偽装離婚)したと認められれば、財産分与によって取得した財産すべてに贈与税がかかります

その理由は、全ての離婚に対して財産分与を非課税としてしまうと、同じ相手と結婚・離婚を繰り返すことで、贈与税や相続税を払わずに資産を移動することができてしまうからです。

3.この場合は、贈与税はかかる?

ここでは、贈与税の課税の判断が微妙なケースについて見ていきます。

3-1.離婚成立前に住宅の名義を変更する場合

婚姻中に財産を移転すると、財産分与とはならず、贈与となってしまい贈与税がかかります。

ただし、20年以上婚姻期間のある夫婦間では、居住用不動産を贈与しても、一定の要件を満たすことで、2,000万円までの部分は贈与税を課さない「贈与税の配偶者控除」と呼ばれる贈与税の軽減措置があります。

一方で、離婚による財産分与として不動産を譲渡する場合は、離婚届を提出して正式に離婚した後に、不動産の名義を変更する必要があります。

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3-2.離婚後に住宅の名義を変更する場合

ローン返済中

離婚時に、財産分与としてローンを返済している住宅の名義を変更しても、贈与税はかかりません。

また、住宅ローンを財産分与に含めておけば、離婚後、離婚相手が住宅ローンを払い続けても贈与には当たらず、贈与税はかかりません。

なお、分与財産にローンが残った住宅がある場合には、離婚後の争いを回避するためにも、住宅ローンの取り扱いについても公正証書、もしくは覚書に記載しておくことをお勧めします。

ローン返済済み

ローンが残っていなければ、財産分与として住宅の名義を変更しても、贈与税はかかりません。

財産分与として、不動産の名義変更を行います。

3-3.離婚後、かなりの時間がたってから慰謝料を払った場合

慰謝料は、肉体的・精神的な苦痛に対して支払われる賠償金です。そのため、原則として、慰謝料には贈与税はかかりません。

ちなみに、離婚に伴う慰謝料の時効は3年であり、原則、離婚後3年を過ぎてしまえば、慰謝料を要求できません。

しかし、時効が完成した後でも、慰謝料請求に対して相手が慰謝料を支払う意思を示せば、その時点で時効の事実は無効になり、慰謝料を受取ることができ、原則、贈与税もかかりません。

財産分与の時効は、離婚後2年です。慰謝料と時効の時期が違うため、注意が必要です。

3-4.子や親族などの第三者に対して財産を渡した場合

財産分与は夫婦間だけに適用されます。

したがって、離婚した親が子や孫、親族などに財産を渡せば、贈与となり贈与税がかかります。子や親族などに財産を移したければ、贈与税の特例を活用して財産を移転することを考えましょう。

4.財産分与にかかるその他の税金

金銭以外の財産を財産分与すると、次の税金が発生する可能性があります。

4-1.財産分与した側にかかる税金

譲渡所得税がかかる可能性

不動産や株式などの有価証券が、購入時の時価よりも、分与時における時価が上がっていると、その差額を譲渡益とみなし、財産分与をした側に譲渡所得が発生したことになり、所得税の課税対象になります。

4-2.財産分与された側にかかる税金

固定資産税

不動産所有者には、年1回固定資産税の納付義務があります。財産分与に不動産が含まれていれば、分与された側は、固定資産税を毎年納めなければなりません。

不動産登記には登録免許税

財産分与で不動産を取得し、法務局で所有権移転の登記をすると、登録免許税が発生します。

不動産取得税は原則非課税

不動産を新たに取得すると、不動産取得税がかかりますが、財産分与によって不動産を取得すれば、不動産取得税はかかりません。

ただし、不動産の取得が離婚後の扶養料や慰謝料とみなされると、不動産取得税が課税されるため、この点にも注意が必要です。

まとめ

離婚を考えている方にとっては、離婚後の生活設計をする上で、いくらくらいの財産分与を受けられるのかは重要な問題です。

まずは、財産分与の対象となる財産を「見える化」することが重要です。しかし、「見える化」と言っても、不動産を始め評価が難しい財産もあります。分与対象なのかどうかの判断が難しい財産もあります。

税理士などの専門家に相談することで、離婚に伴う財産分与を、公平かつスムーズに行うことが可能になります。また、税制上の特例を活用することで、効率的に財産を移転することもできます。

離婚における税務についての判断がご自分では難しい場合には、専門家に相談することをお勧めします。

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