相続税・贈与税の延滞税と加算税はどのくらいか?
相続税や贈与税を納税しないで期限を過ぎてしまったり、本来の金額より少なく申告・納税してしまうと、通常の税金のほかに、…[続きを読む]
110万円を超える贈与を受けると、贈与税が発生し、申告する必要があります。
しかし、人間誰しも、支払うお金は少しでも減らしたいもので、まじめに贈与税を申告しても、税務署では申告書のとおりに受理されるだけで、特に何か調査されるわけでもなく、「申告しなくてもバレないのでは?」と、魔が差すことがあるかもしれません。
はたして、贈与税は無申告でもバレないのか? もし、バレルとしたら、いつバレるのかを詳しく解説していきます。
目次
今回は、山野家に登場してもらいます。夫婦と、長女(姉)、長男(弟)がいます。
たとえば、父親が長男に、510万円を贈与すると、本来なら50万円の贈与税がかかります。でも、長男(弟)は、いい加減な性格なので、「贈与税、申告しなくてもバレなくない?」と言って、申告しませんでした。大丈夫なのでしょうか?
実は、今はバレなくても、いつかバレます!
「いつかバレる」とは、どういうことかといいますと、いくつかバレるタイミングがあります。
まず、1つ目は、相続のときです。贈与したときにバレなくても、相続でバレてしまいます。
2つ目は生前で、不動産を登記したとき、保険金を受け取ったとき、金地金を換金したときなどです。
そして、3つ目は、通報や密告によるものです。これが意外と多いのです。それぞれ後で詳しく紹介します。
国税庁のデータを見ますと、実は、贈与税の税務調査は、意外と少ないです。税務調査をされる割合は、所得税だと2.0%、相続税だと13.0%、相続税はやっぱりそれなりに多いです。でも、贈与税だと、わずか、0.7%です。少ないですね!
申告人数 | 税務調査件数 | 調査割合 | |
---|---|---|---|
所得税 | 22,032,084 | 430,923 | 2.0% |
相続税 | 147,801 | 19,267 | 13.0% |
贈与税 | 493,057 | 3,383 | 0.7% |
※所得税・相続税は、実地調査および簡易な接触を含みます。
※税務調査は申告後、ある程度の期間が過ぎてから実施されるため、ここでの税務調査件数は、2019年よりも前の申告に対するものです。
【出典】
・国税庁 統計情報
・国税庁:令和元事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について
・国税庁:令和元事務年度における相続税の調査等の状況
実は、税務署では、基本的には、贈与税の税務調査はしません。なぜかというと、贈与税は相続税とセットの税金ですので、相続税の税務調査で、過去の贈与をあわせて調査するからです。
贈与税というのは、もともと、相続税の補完的な役割の税金です。生前にたくさん贈与して、相続財産を減らして、相続税を免れるのを防ぐために、贈与税があります。
ただ、贈与税の調査がまったくないわけではありませんので、どういうときに調査されるのかというと、こんな場合です。
たとえば、保険金を受け取ると、保険会社が税務署に、支払調書という、保険金を払ったことを示す書類を提出します。すると、税務署は、受け取った人がもし申告していなかったら、「申告していませんがどうなっていますか?」と、尋ねます。
贈与税の税務調査が入った時点で、すでに無申告であることがバレている可能性が非常に高いです。
「令和元事務年度における相続税調査等の状況」の「3 贈与税に対する調査状況」によると、贈与税に対して行われた実地調査3,383件のうち約95%である「申告漏れ等の⾮違件数」が3,217件で、非違とされた3,217件のうち、無申告が2,724件と非違件数の84.7%を占めています。申告漏れの課税価格は、218億円となっています(※)。
【出典】「令和元事務年度におけ相続税調査等の状況」Ⅱ 調査に係る主な取組 3.贈与税に対する調査状況|国税庁
すでに述べましたように、お金を贈与しても、その時点では、調査されることはありません。なぜなら、国民のすべての贈与を調査することは、税務署の人手が足りず、不可能だからです。
だからといって、長男は父親から、家も車も株も贈与してもらって、「調査されないなら申告しなくてもバレないでしょ!」と言っていますが、本当に大丈夫でしょうか。
世の中そんなに甘くありませんよね。贈与税を申告しなくても、相続のときにバレてしまいます。
人が死亡すると死亡届を提出しなければならず、その通知は税務署へも入ります。
そのうえ、税務署は、相続税申告が発生しそうな被相続人の財産について、把握することが可能です。
国税庁は、全国の国税局・税務署をネットワークで結び、あらゆる税金の申告・納税事績や各種情報を入力した国税総合システム(通称KSK)を運用しています。これにより、税務署は、被相続人の収入やどのような財産を取得・相続したかを把握しています。
相続税の申告が想定される相続人から申告がなければ、税務調査に入ります。
そこから、過去の財産に不自然な流れがあれば、税務署は贈与についても調査をします。
加えて、税務署には、強い調査権限があり、亡くなった人だけでなく、家族や親戚の銀行口座を、過去約10年間さかのぼって調査することができ、相続発生時点で調査すれば、過去の贈与も明らかになります。
実際に、相続税申告における税務調査で、贈与税の課税対象であったことががばれることは、少なくありません。
そのうえ、2018年からは、任意ですが、新規開設口座に対するマイナンバーの紐づけが開始されています。各銀行口座がマイナンバーで紐づけられていれば、預金額とお金の流れをより簡単に追うことが可能になります。
タンス預金を直接受け渡す贈与であれば、税務署にばれることもないと思われるでしょうか?
確かに、少額のタンス預金を直接手渡せば、ばれる可能性は低いでしょう。しかし、高額であれば、ばれる可能性は高くなります。
タンス預金と言っても、贈与する人が、タンス預金の元になるお金を、銀行口座を通さずに入手することはまず不可能です。したがって、贈与する人は、タンス預金をするためのお金を、銀行から降ろして貯めなければなりません。結局、タンス預金が高額になればなるほど、不自然なお金の流れが通帳に残ってしまうのです。
また、タンス預金を受け取った人も、盗難や火災のリスクに晒されるため、現金で保管しておくわけにはいきません。銀行に預ければ、受け取った人の通帳にも、不自然なお金の流れが残ります。
贈与税には時効があって、6年です。もし過去の贈与がバレて、6年以内なら、贈与税として追徴課税されます。でも、6年以上たっていたら、時効が切れています。
「やった、ラッキー!」と思うかもしれませんが、そうは問屋はおろしません。実は、相続税がかかります。無申告の過去の贈与は、税務署が贈与と認めてくれず、贈与した財産は、すべて相続財産とみなされて、相続税がかかるのです。
相続のときだけでなく、生前の取引でも、贈与がバレるタイミングがいくつかあります。
まずは、不動産を登記したときです。
不動産を贈与したとしても登記をしなければ、所有者は贈与者(贈与した人)のままです。不動産の贈与を成立させるためには、不動産所有者の名義を受贈者(贈与された人)に変更する必要があります。
たとえば、父親が全部持っている自宅を、子供に半分贈与して、その登記をしたとします。
税務署は、不動産登記の情報を法務局から得ており、各種申告と照合することが可能です。
贈与により、不動産の所有権が移転した場合は、登記原因に「贈与」と記載されます。税務署は、その登記簿を確認して、もし贈与税の申告がなければ、贈与された子供に、「不動産を贈与されましたよね」と通知を出して、追及します。
次に、保険金を受け取ったときです。保険金は、契約者、被保険者、そして、受取人が誰かによって、かかる税金が違います。
一番上の、契約者と被保険者が父親で、受取人が子供の場合は、相続税がかかります。これは、一番よくあるパターンです。
次に、契約者と受取人が同じ場合は、所得税となります。
さいごに、ちょっと変わったパターンですが、契約者が母親、被保険者が父親で、受取人が子供の場合は、母親から子供にお金をあげた形になるので、贈与税がかかります。
保険会社は、1回あたりの支払額が100万円を超える場合は、税務署に対して以下の内容を記載した「法定調書(支払調書)」を提出しなければなりません。
もうバレバレですね。すると、税務署は、受け取った子供に、「申告していませんがどうなっていますか?」と、尋ねることになります。
次に、贈与された金地金や貴金属を、業者を介して売却したときです。たとえば、親から贈与を受けた子供が、500万円分の金地金を売却すると、貴金属業者は、1回の取引が200万円を超える場合に、「法定調書(支払調書)」の税務署への提出義務を負っています。
この支払調書には、以下の情報が、記載されます。
すると、税務署は、「まだ若いのに、500万円分の金をどうやって手に入れたんだろう?」と疑問を抱きます。そして、受け取った子供に、「金はどうやって入手されたのですか?」と尋ねることになります。
贈与税の無申告がばれるケースは、他にもあります。
現在、税務署に提出が義務付けられている法定調書は60にも及び、他に贈与税に関するものとしては、国外への送受金が挙げられます。
提出されたこのような法定調書によって、税務署は、誰にどれくらい贈与税を課税すべきかを把握することができます。
贈与がバレるタイミングとして、実はありがちなのは、誰かに通報されることです。相続でもめている場合は、よく通報されることがあります。
贈与されたことを気にいらないと思っている、別の相続人が、税務署に通報するのです。信憑性の高い情報なら、税務署は捜査して、やがて、税務調査に来られてバレてしまいます。
では、無申告がバレると、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
通常の場合の贈与の時効は6年、意図して贈与を隠した場合の時効は、7年です。
しかし、時効が成立しなければ、過去の贈与すべてに対して、次のようなペナルティが課せられます。
最悪の場合、刑事罰(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)を課されてしまいます。
贈与税の無申告がばれたときのペナルティについて、詳しくは、是非、以下の関連記事をご一読ください。
また、税理士も、違法行為を手助けするような申告の依頼は受けてはくれません。
贈与税の無申告が税務署にばれていなくても、相続税で経験を積んでいる税理士であれば、遺産総額の調査時に、過去に不自然な財産の移動があったことはわかります。
仮に、違法行為に目をつぶり依頼を受けてしまうと、その税理士も責任を問われてしまうため、相続税申告の依頼も断られてしまうことになりかねません。
相続税対策の一つとして、配偶者や子供に少しずつ財産を生前贈与することで、将来の相続財産を減額し支払うべき相続税を減らすという方法があります。
1年間に贈与された金額が110万円以下であれば贈与税は非課税となるため、毎年、110万円以下の範囲で贈与していけば、贈与税を払うことなく、確実に財産を家族に移していくことができます。
贈与税申告から税理士に相談し、相続税対策へとつなげていくことが理想です。税理士に贈与を使った相続税対策をしてもらっていれば、仮に相続税申告後に税務調査に入られても、追徴課税されることもなく、結果的に、相続税を最小限に抑えることができる可能性が高まります。
賢く贈与を使うことが、相続税の節税にも繋がっていくのです。
もし、贈与や贈与税についてお悩みがあれば、是非、相続税に強い税理士にご相談ください。相続税まで見据えた対策を講じてくれるでしょう。