相続税・贈与税の税率、速算表 | 相続税理士相談Cafe
この記事では、相続税・贈与税の税率、速算表について解説いたします。自動計算ツールも載せておりますので、参考にしてくだ…[続きを読む]
110万円を超える贈与を受けると、贈与税が発生します。
ただ、贈与税は自ら申告して納税するものであり、税務署に知らせなければバレないのでは?と、悪い考えが頭をよぎる人もいることでしょう。
そんな方のために、贈与税を申告しなかったら、どうなるのかを解説していきます。
目次
はじめに、一般論として、相続税対策の一つとして、生前に配偶者や子供に少しずつ財産を贈与することで、将来の相続財産を減額し支払うべき相続税を減らすという方法があります。
ある人が1年間に贈与された金額が110万円以下であれば贈与税はかかりませんので、毎年、110万円以下の範囲で贈与していけば、贈与税を払うことなく、確実に財産を家族に移していくことができます。
贈与された金額が110万円以下であれば、贈与税の申告は必要ありません。
ただ、財産がそれなりにある人や、ある程度高年齢になってから対策を開始した人は、毎年110万の贈与ではなかなか財産を配偶者や子供に移すことは難しいでしょう。
その場合、毎年310万円以下の贈与であれば、基礎控除額110万円を除いた金額に対して、贈与税は最も低い率の10%ですので、毎年310万を贈与することで、確実に財産を家族に移していくことができます。
仮に贈与額が310万円としたら、贈与税は、(310万円-110万円)×10%=20万円となります。
完全に無税で相続税対策をすることは難しく、ある程度、贈与税を払って財産を配偶者や子供に移していくことが得策といえます。
さて、ここで本題に入りますが、人間は欲深い生き物、支払うお金は少しでも減らしたいものです。最初は贈与税をまじめに申告して払っていたとしても、これ申告しなくてもばれないんじゃないかと、魔が差すことがあるかもしれません。
確かに毎年、税務署に行って申告し納税するだけで、特に何か調査されるわけでもないですし、こちらが書いたとおりに受理されるだけですので、別に申告しなくても特に気付かれないんじゃないかと思いそうです。
贈与の金額にもよりますが数百万円程度であれば、今までであれば、実際、贈与税の申告をしなくても、すぐにばれる可能性は薄いと考えられます(あくまでも推測であり、断定はできませんのでご注意ください)。税務署が扱う案件は非常に多く、全国民のお金の流れを絶えず追っているわけではありませんので、すぐにばれることはないでしょう。
ただし、強調表示しましたが、「今までであれば」「すぐに」ばれる可能性は薄いですが、逆に、①これからは、②いつかは、ばれる可能性が高いといえます。
まず、「①これからは」ばれるについてです。皆さま、ご存じのとおり、2016年(平成28年)から所得税の源泉徴収など一部の分野で、マイナンバー制度が適用されました。
個人、企業が作成する関連書類にはマイナンバーを記入する必要があり、この番号をもとにして、税務署では個人の収入を把握しやすくなります。
給与収入や不動産の家賃収入などの所得金額は確実に税務署に抑えられ、ごまかしがきかなくなってきます。
そして、2018年(平成30年)からは任意ですが新規で開設する口座に対してマイナンバーを適用します。さらに、2021年には既存の口座にもマイナンバーを適用していく可能性があります。
銀行など金融機関のシステム修正も必要ですが、国の施策であれば金融期間も従うしかないでしょう。各銀行口座がマイナンバーで紐づけば、預金額とお金の流れを簡単に追うことが可能になります。
たとえば、ある年に父親Aさんから息子Bさんに振込で合計300万円を贈与したとしましょう。すると、Aさんの口座からBさんの口座へ合計300万円が移動しています。
システムで、親子間で一定額(たとえば300万円)以上、預金の移動があったケースを抽出すれば、簡単にわかってしまいます。
ならば振込ではなく、現金で下ろして渡せば見つからないと思うかもしれませんが、もらった人がそのまま現金で保管しておくとは考えられず、銀行に入金すれば結局見つかってしまいます。
この場合、Aさんの口座の預金額が300万円減り、Bさんの口座の預金額が300万円増えているはずです。システムで、まず預金額が一定額(例えば300万円)以上減った人を抽出し、次に、その人の配偶者、子供、孫の預金額が一定額以上増えたケースを抽出すれば、だいたい贈与ではないかと当たりはつけられます。
あとは、税務調査に来られて無申告がばれるのがおちでしょう。
マイナンバー制度から完全に逃れるには、最初から家で現金で保管していたお金を現金で手渡し、もらった人もまた家で現金としてずっと保管するしかありません。ただ、もし盗難にあったらそれまでです。
おそらく現金は戻ってきません。そんなリスクを犯すくらいであれば、最初から贈与税を払ったほうが良いでしょう。
次に、「②いつかは」ばれるについてです。贈与したその瞬間は見つからなかったとしても、どこかのタイミングでばれてしまいます。
その一つが不動産登記のタイミングです。不動産を贈与したとしても登記の変更をしない所有者は元のままです。不動産の贈与を成立させるためには、登記変更が必要であり、そのタイミングで税務署に知らされてしまいます。
不動産以外の現金や預貯金の贈与も、最終的に、相続発生のタイミングでばれます。死亡届が提出されますので、被相続人から相続人へ財産が移ることが明らかになります。税務署は過去約10年間の銀行口座の履歴を調査する権限を持っていますので、相続発生時点で調査すれば、過去の贈与もわかってしまいます。
贈与税の時効はあり、意図的に隠していたときは7年となりますが、時効が認められないこともありますので、そうなれば、過去の贈与すべてに対して、延滞税(年14.6%)、さらに仮装・隠蔽の疑いということで、重加算税(35%~40%)が課されます。
最悪の場合、刑事罰(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)を課されます。
結論ですが、贈与税を無申告でいた場合、「今までであれば」「すぐに」ばれる可能性は薄いですが、「これからは」「いつかは」ばれると言えます。
また、そんな違法行為をしている人の相続税申告を税理士も請け負いたくありません。相続で経験を積んでいる税理士であれば、相続税の遺産総額の調査をする段階で過去おかしな財産移動があったのではないかと勘ぐりはできます。仮に違法行為に目をつむって請け負ってしまうと、その税理士も責任を問われますので、おそらく相続税申告を依頼してもお断りされるでしょう。
むしろ、贈与税申告も税理士にお願いして、毎年、贈与税を正しく申告・納税していくことで、正しい相続税対策へとつながり、仮に相続税申告後に税務調査に入られても否認されて追徴課税されることもなく、結果的に、相続税を最小限に抑えることができる可能性が高いです。
2016年5月にパナマ文書が公開されてタックスヘイブン(租税回避地)がクローズアップされました。世界中の政治家や実業家、著名人、富裕層などがタックスヘイブンに資産を移して税金を免れているという内容です。
それなら、現金を隠し持って海外のタックスヘイブンに持っていき現地で口座開設してそこから贈与してしまえば、ばれないのでしょうか?
これは定かではありませんが、実際、富裕層の中では数百万円単位で現金を海外に持っていき現地の口座に入金して、日本の税務署の目が届かないようにしているという話はちらほらと聞かれます。ただ、これはグレーゾーンであり決して推奨できるものではありません。また、日本の相続税法では、日本在住の人どうしで海外資産を贈与した場合も贈与税の対象になりますので、海外資産での贈与を隠したら脱税行為になります。
本気でやるのであれば、家族まるごとタックスヘイブンに移住し、国内資産を全部海外に移してしまうことです。たとえば、シンガポールでは相続税・贈与税が無税ですので、富裕層が次々と移住していると言われています。
それならと言ってすぐに家族でシンガポールに移住できる人は限られるでしょう。だいいちシンガポールに移住してもすぐに仕事がありません。マンションの家賃も非常に高いです。
周囲の人々の考え方も生き方も日本とは全く異なります。ベンチャースピリットを持って捨て身の覚悟で旅立つなら良いのですが、ただ贈与税回避のためだけにタックスヘイブンに移住するのはちょっと馬鹿げていそうです。
タックスヘイブンというのは、世界中にどこへでも自由に簡単に移り住むことができる一部の限られた超富裕層の人たちの特権だと思ったほうが良いでしょう。結局、日本で普通に暮らしている場合は、払うべき贈与税はコツコツ払いながら、確実な節税をしていくほうが得策といえます。