相続税・贈与税の延滞税と加算税はどのくらいか?
相続税や贈与税を納税しないで期限を過ぎてしまったり、本来の金額より少なく申告・納税してしまうと、通常の税金のほかに、…[続きを読む]
110万円を超える贈与を受けると、原則として贈与税が発生し、申告する必要があります。
しかし、人間誰しも、支払うお金は少しでも減らしたいもので、まじめに贈与税を申告しても、税務署では申告書のとおりに受理されるだけで、特に何か調査されるわけでもなく、「申告しなくてもバレないのでは?」と、魔が差すことがあるかもしれません。
贈与の金額にもよりますが、数百万円程度であれば、実際、贈与税の申告をしなくても、すぐにばれる可能性は低いかもしれません。
しかし、いずれは、ばれる可能性は決して低くはありません。
ここでは、贈与税の無申告がばれるケースの代表例を取り上げて、ばれる理由や贈与による相続税対策についても触れたいと思います。
目次
贈与税が無申告の場合、ばれる可能性が高いことは、以下の国税庁の調査からも明らかです。
「令和元事務年度における相続税調査等の状況」の「3 贈与税に対する調査状況」によると、贈与税に対して行われた実地調査3,383件のうち約95%である「申告漏れ等の⾮違件数」が3,217件で、非違とされた3,217件のうち、無申告が2,724件と非違件数の84.7%を占めています。申告漏れの課税価格は、218億円となっています(※)。
【出典】「令和元事務年度におけ相続税調査等の状況」Ⅱ 調査に係る主な取組 3.贈与税に対する調査状況|国税庁
では、次項から、実際にどこからどうやってばれるのかを、具体的に説明しましょう。
贈与税の無申告がばれてしまうタイミングの一つが不動産登記です。
不動産を贈与したとしても登記をしなければ、所有者は贈与者(贈与した人)のままです。
不動産の贈与を成立させるためには、不動産所有者の名義を受贈者(贈与された人)に変更する必要があります。
税務署は、不動産登記の情報を法務局から得ており、各種申告と照合することが可能です。
贈与により、不動産の所有権が移転した場合は、登記原因に「贈与」と記載されます。贈与税の申告がなければ、いずれ、税務署が把握することになるでしょう。
不動産以外の現金や預貯金の贈与も、最終的には、相続発生のタイミングでばれることになります。
相続税が発生する可能性が高いのに申告がない、申告に誤りがあるといった場合は、税務調査が入ります。その際に、贈与税の無申告も発覚する可能性が高いのです。
口座間で、預金の移動による贈与があれば、相続をきっかけに、贈与税の無申告がばれてしまいます。
例えば、夫婦間で、夫が自分の口座から現金を下ろして妻に贈与し、妻が自分の口座に入金したとしても、そのままでは、税務署にばれる可能性はとても低いでしょう。しかし、夫が死亡し、相続が開始した時点で、贈与がばれる可能性は高くなります。
そのうえ、2018年からは、任意での新規開設口座に対するマイナンバーの紐づけが開始されています。各銀行口座がマイナンバーで紐づけられていれば、預金額とお金の流れをより簡単に追うことが可能になります。
ちなみに、マイナンバーと既存口座との紐づけについても、義務化が検討されています。
タンス預金を直接受け渡す贈与であれば、税務署にばれることもなさそうです。
確かに、少額のタンス預金を直接手渡せば、ばれる可能性は低いでしょう。しかし、高額であれば、ばれる可能性は高くなります。
タンス預金と言っても、贈与者が、タンス預金の元になるお金を、銀行口座を通さずに入手することはまず不可能です。したがって、贈与者は、タンス預金をするためのお金を、銀行から降ろして貯めなければなりません。結局、タンス預金が高額になればなるほど、不自然なお金の流れが通帳に残ってしまうのです。
また、タンス預金を受け取った受贈者も、盗難や火災のリスクに晒されるため、現金で保管しておくわけにはいきません。銀行に預ければ、受贈者側の通帳にも、不自然なお金の流れが残ります。
人が死亡すると死亡届を提出しなければならず、その通知は税務署へも入ります。
そのうえ、税務署は、相続税申告が発生しそうな被相続人の財産について、把握することが可能です。
国税庁は、全国の国税局・税務署をネットワークで結び、あらゆる税金の申告・納税事績や各種情報を入力した国税総合システム(通称KSK)を運用しています。これにより、税務署は、被相続人の収入やどのような財産を取得・相続したかを把握しています。
相続税の申告が想定される相続人から申告がなければ、税務調査に入ります。
そこから、過去の財産に不自然な流れがあれば、税務署は贈与についても調査をします。
加えて、税務署には、強い調査権限があり、税務署は過去約10年間の被相続人だけでなく相続人の銀行口座の履歴を調査することができ、相続発生時点で調査すれば、過去の贈与も明らかになります。
実際に、相続税申告における税務調査で、贈与税の課税対象であったことががばれることは、少なくありません。
贈与税の無申告がばれるケースは、他にもあります。
贈与された金やプラチナといった貴金属を業者を介して売却した場合も、贈与税無申告がばれるきっかけになります。
貴金属業者は、1回の取引が200万円を超える場合に、「法定調書(支払調書)」の税務署への提出義務を負っています。
この支払調書には、以下の情報が、記載されます。
死亡保険金は、受取人によって課税される税金が変わります。被保険者、契約者(保険料を負担する者)、受取人この三者が異なる者の場合は、贈与税がかかります。
保険会社は、1回あたりの支払額が100万円を超える場合は、税務署に対して以下の内容を記載した「法定調書(支払調書)」を提出しなければならなりません。
提出されたこのような法定調書によって、税務署は、誰にどれくらい贈与税を課税すべきかを把握することができます。
現在、税務署に提出が義務付けられている法定調書は60にも及び、他に贈与税に関するものとしては、国外への送受金が挙げられます。
このように、税務署には、大きな財産の動きは、把握されていると考えたほうがいいでしょう。
では、無申告がバレると、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
意図して贈与を隠した場合の時効は、7年です。
しかし、時効が成立しなければ、過去の贈与すべてに対して、延滞税、さらに仮装・隠蔽の疑いで、重加算税が課されます。
最悪の場合、刑事罰(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)を課されてしまいます。
贈与税の無申告がばれたときのペナルティについて、詳しくは、是非、以下の関連記事をご一読ください。
また、税理士も、違法行為を手助けするような申告の依頼は受けてはくれません。
贈与税の無申告が税務署にばれていなくても、相続税で経験を積んでいる税理士であれば、遺産総額の調査時に、過去不自然な財産の移動があったことはわかります。
仮に、違法行為に目をつぶり依頼を受けてしまうと、その税理士も責任を問われてしまうため、相続税申告の依頼も断られてしまうことになりかねません。
相続税対策の一つとして、配偶者や子供に少しずつ財産を生前贈与することで、将来の相続財産を減額し支払うべき相続税を減らすという方法があります。
1年間に贈与された金額が110万円以下であれば贈与税は非課税となるため、毎年、110万円以下の範囲で贈与していけば、贈与税を払うことなく、確実に財産を家族に移していくことができます。
贈与税申告から税理士に相談し、相続税対策へとつなげていくことが理想です。税理士に贈与を使った相続税対策をしてもらっていれば、仮に相続税申告後に税務調査に入られても、追徴課税されることもなく、結果的に、相続税を最小限に抑えることができる可能性が高まります。
賢く贈与を使うことが、相続税の節税にも繋がっていくのです。
もし、贈与や贈与税についてお悩みがあれば、是非、相続税に強い税理士にご相談ください。相続税まで見据えた対策を講じてくれるでしょう。