2023年の路線価| 対前年比1.5%の上昇はコロナからの回復か
2023年の路線価が国税庁から公表されました。2022年には、コロナ禍からようやく脱した感のある路線価。
路線価は、相続税や贈与税が課税される際の基準となる価格です。2023年の路線価は、コロナ禍からの回復が鮮明になってきています。
本記事は、2023年の路線価について解説します。
ご自分の土地の路線価をお知りになりたい場合には、国税庁の以下HPをご活用ください。
【参考外部サイト】「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」|国税庁
目次
1.2023年の都道府県別路線価の傾向について
ここでは、7月1日に公表された路線価をもとに、路線価を都道府県別の対前年比を見てみることにしましょう。
最初に、都道府県別の路線価の対前年比を見てみましょう。
2021年 | 2022年 | 2023年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
全国 | △0.5 | 0.5 | 1.5 | 三重県 | △1.2 | △0.9 | △0.4 |
北海道 | 1 | 4 | 6.8 | 滋賀県 | △1.2 | △0.8 | 0 |
青森県 | △0.9 | △0.4 | △0.3 | 京都府 | △0.6 | 0.2 | 1.3 |
岩手県 | △0.4 | △0.2 | 0.1 | 大阪府 | △0.9 | 0.1 | 1.4 |
宮城県 | 1.4 | 2.9 | 4.4 | 兵庫県 | △08 | △0.2 | 0.5 |
秋田県 | △0.9 | △0.6 | 0.2 | 奈良県 | △1.1 | △0.7 | △0.2 |
山形県 | 0 | △0.1 | 0.2 | 和歌山県 | △1.2 | △1.3 | △1.2 |
福島県 | △0.1 | 0.5 | 0.4 | 鳥取県 | △1.3 | △0.7 | △0.3 |
茨城県 | △0.7 | △0.6 | 0.4 | 島根県 | △1.0 | △0.4 | △0.2 |
栃木県 | △1.1 | △0.5 | △0.1 | 岡山県 | △0.4 | 0.3 | 1.3 |
群馬県 | △1.0 | △1.0 | △0.7 | 広島県 | △0.3 | 0.9 | 1.4 |
埼玉県 | △0.6 | 0.4 | 1.6 | 山口県 | △0.1 | 0.1 | 0.4 |
千葉県 | 0.2 | 0.8 | 2.4 | 徳島県 | △1.3 | △0.9 | △0.7 |
東京都 | △1.1 | 1.1 | 3.2 | 香川県 | △1.1 | △0.9 | △0.6 |
神奈川県 | △04 | 0.6 | 2 | 愛媛県 | △1.4 | △1.1 | △0.9 |
新潟県 | △0.9 | △0.7 | △0.6 | 高知県 | △0.9 | △0.4 | △0.3 |
富山県 | △0.8 | △0.4 | △0.1 | 福岡県 | 1.8 | 3.6 | 4.5 |
石川県 | △1.3 | 0.2 | 1.1 | 佐賀県 | 0.4 | 1.1 | 1.9 |
福井県 | △0.8 | △0.9 | △1.0 | 長崎県 | △0.8 | 0.5 | 0.6 |
山梨県 | △1.1 | △0.8 | △0.6 | 熊本県 | 0.1 | 0.6 | 2.3 |
長野県 | △0.5 | △0.4 | 0 | 大分県 | △0.1 | 0.1 | 0.7 |
岐阜県 | △1.4 | △0.9 | △0.5 | 宮崎県 | △0.6 | △0.4 | △0.2 |
静岡県 | △1.6 | △0.7 | △0.3 | 鹿児島県 | △1.1 | △0.6 | △0.2 |
愛知県 | △1.1 | 1.2 | 2.6 | 沖縄県 | 1.6 | 1.6 | 3.6 |
※△はマイナスを表しています。
まず、2023年における全国の路線価の対前年比は1.5%と、2022年の0.5%から大きく上昇しています。
また2022年には、対前年比がマイナスになっているのは27県であったのに対し、2023年には20県に減少しており、新型コロナからの回復を示しています。
また、10県ほどが1%に満たない上昇率となっていますが、2022年には13県だったのと比較すると、回復傾向にあると考えられます。
都道府県別の路線価では、2023年で対前年比の上昇率が最も高かったのが6.8%と、2022年に続き北海道でした。次いで、福岡県の4.5%、宮城県の4.4%と続きます。
一方、下落が最も大きかったのが和歌山県で、1993年から31年連続の下落となっています。同様に、福井県も1%のマイナスと、こちらも30年連続のマイナスとなっており、四国の4県も弱含みとなっています。
2.2023年都道府県庁所在地の最高路線価について
次に、都道府県庁所在都市の最高路線価です。
令和4年 都道府県庁所在都市の最高路線価
都市名 | 最高路線価の所在地 | 最高路線価 | 対前年変動率 | ||
---|---|---|---|---|---|
2022年分 | 2023年分 | 2022年分 | 2023年分 | ||
(千円) | (千円) | (%) | (%) | ||
札幌 | 中央区北5条西3丁目 札幌停車場線通り | 6,160 | 6,680 | 4.8 | 8.4 |
青森 | 新町1丁目 新町通り | 155 | 155 | 0.0 | 0.0 |
盛岡 | 大通2丁目 大通り | 225 | 220 | △2.2 | △2.2 |
仙台 | 青葉区中央1丁目 青葉通り | 3,390 | 3,470 | 2.7 | 2.4 |
秋田 | 中通2丁目 秋田駅前通り | 125 | 130 | 0.0 | 4.0 |
山形 | 香澄町1丁目 山形駅前大通り | 175 | 175 | 0.0 | 0.0 |
福島 | 栄町 福島駅前通り | 195 | 200 | 2.6 | 2.6 |
水戸 | 宮町1丁目 水戸駅北口ロータリー | 220 | 220 | △2.2 | 0.0 |
宇都宮 | 宮みらい 宇都宮駅東口駅前ロータリー | 310 | 320 | 3.3 | 3.2 |
前橋 | 本町2丁目 本町通り | 130 | 130 | 0.0 | 0.0 |
さいたま | 大宮区桜木町2丁目 大宮駅西口駅前ロータリー | 4,400 | 4,750 | 3.3 | 8.0 |
新潟 | 中央区東大通1丁目 新潟駅前通り | 440 | 450 | 0.0 | 2.3 |
長野 | 大字南長野 長野駅前通り | 280 | 280 | △1.8 | 0.0 |
千葉 | 中央区富士見2丁目 千葉駅東口駅前広場 | - | 1,940 | - | - |
東京 | 中央区銀座5丁目 銀座中央通り | 42,240 | 42,720 | △1.1 | 1.1 |
横浜 | 西区南幸1丁目 横浜駅西口バスターミナル前通り | 16,560 | 16,800 | 3.0 | 1.4 |
甲府 | 丸の内1丁目 甲府駅前通り | 260 | 260 | △1.9 | 0.0 |
富山 | 桜町1丁目 駅前広場通り | 500 | 510 | 2.0 | 2.0 |
金沢 | 堀川新町 金沢駅東広場通り | 890 | 900 | △3.3 | 1.1 |
福井 | 中央1丁目 福井駅西口広場通り | 330 | 350 | 0.0 | 6.1 |
岐阜 | 吉野町5丁目 岐阜停車場線通り | 470 | 490 | 0.0 | 4.3 |
静岡 | 葵区紺屋町 紺屋町名店街呉服町通り | 1,140 | 1,140 | △1.7 | 0.0 |
名古屋 | 中村区名駅1丁目 名駅前通り | 12,480 | 12,800 | 1.3 | 2.6 |
津 | 羽所町 津停車場線通り | 190 | 190 | △2.6 | 0.0 |
大津 | 春日町 JR大津駅前通り | 275 | 280 | 1.9 | 1.8 |
京都 | 下京区四条通寺町東入2丁目御旅町 四条通 | 6,730 | 6,970 | 3.1 | 3.6 |
大阪 | 北区角田町 御堂筋 | 18,960 | 19,200 | △4.0 | 1.3 |
神戸 | 中央区三宮町1丁目 三宮センター街 | 4,900 | 5,000 | △5.8 | 2.0 |
奈良 | 東向中町 大宮通り | 690 | 730 | 1.4 | 5.8 |
和歌山 | 友田町5丁目 JR和歌山駅前 | 360 | 360 | 0.0 | 0.0 |
鳥取 | 栄町 若桜街道通り | 100 | 97 | △4.8 | △3.0 |
松江 | 朝日町 駅通り | 140 | 140 | 0.0 | 0.0 |
岡山 | 北区本町 市役所筋 | 1,500 | 1,640 | 1.4 | 9.3 |
広島 | 中区胡町 相生通り | 3,290 | 3,390 | 3.5 | 3.0 |
山口 | 小郡黄金町 山口阿知須宇部線通り | 145 | 145 | 0.0 | 0.0 |
徳島 | 一番町3丁目 徳島駅前広場 | 295 | 290 | 0.0 | △1.7 |
高松 | 丸亀町 高松丸亀町商店街 | 350 | 360 | △2.8 | 2.9 |
松山 | 大街道2丁目 大街道商店街 | 660 | 670 | 0.0 | 1.5 |
高知 | 帯屋町1丁目 帯屋町商店街 | 210 | 210 | 0.0 | 0.0 |
福岡 | 中央区天神2丁目 渡辺通り | 8,800 | 9,040 | 0.0 | 2.7 |
佐賀 | 駅前中央1丁目 駅前中央通り | 205 | 210 | 2.5 | 2.4 |
長崎 | 浜町 浜市アーケード | 760 | 770 | 0.0 | 1.3 |
熊本 | 中央区手取本町 下通りアーケド | ,2060 | 2,040 | △1.9 | △1.0 |
大分 | 末広町1丁目 大分駅北口ロータリー | 530 | 540 | 0.0 | 1.9 |
宮崎 | 橘通西3丁目 橘通り | 230 | 230 | 0.0 | 0.0 |
鹿児島 | 東千石町 天文館電車通り | 900 | 910 | △1.1 | 1.1 |
那覇 | 久茂地3丁目 国際通り | 1,420 | 1,450 | △0.7 | 2.1 |
※△はマイナスを表しています。
ここでも、全国の中で最も大幅な上昇を示しているのは、札幌市内の「中央区北5条西3丁目 札幌停車場線通り」となっています。これには、札幌の再開発が大きく影響していると考えられます。
札幌の近隣にある千歳市には、先端半導体「Rapidus」の工場が2025年完成予定となっており、地価の上昇傾向に拍車をかける可能性も高いでしょう。
相変わらず最高額の路線価は、「東京都中央区銀座5丁目銀座中央通り(鳩居堂前)」です。2022年ではマイナスでしたが、2023年には、プラスに転じました。
2023年4月にコロナによる入国制限を撤廃後、訪日外国人観光客も順調に増え続け、5月には推計値で190万人近くとなっており(※)、観光客が訪れる商業地は堅調な回復傾向にあるようです。事実、浅草の雷門通りでは、対前年比が7%程度(2022年の対前年比は1%程度)となっています。
インバウンド需要が堅調に継続すれば、商業地の路線価は順調に回復するのではないかと考えられます。
一方、新型コロナが3類から5類へと移行したことに伴って、出社制限を見直す企業が現れたことにより、丸の内の人流が7割回復したこともニュースになっています。これに対してテレワークがある程度定着したことで、アフターコロナの働き方を探りオフィスの規模を縮小する企業も出てきました。
そのため、オフィス街の路線価は、これからも需要と供給のバランスを注視していく必要があるでしょう。
※「 訪日外客数(2023 年 5 月推計値)」|日本政府観光局
3.路線価についてのよくある質問(FAQ)
路線価とはどんなもの?
路線価は、道路に面した1㎡当たりの土地評価額を指します。
国税庁が路線価を公表する年の1月1日の評価額で、相続税や贈与税を算出する際に用いられています。
路線価は、市場価格の70~80%程度、公示地価の8割程度とされており、路線価がないエリアについては、倍率方式で土地の相続税評価額を算出します。
詳しくは、「相続税における土地の評価方法:路線価方式と倍率方式」をご一読ください。
路線価と固定資産税評価額との違いは?
固定資産税評価額とは、その名の通り、土地の固定資産税評価額を算出するための1㎡当たりの土地単価です。
固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税を算出する際に用いられ、路線価が1,000円単位であるのに対し、固定資産税評価額は、1円単位となっています。
また、路線価は国税庁が評価するのに対し、固定資産税評価額は、市町村と東京都が評価します。