2023年の基準地価の動向や展望|全国基準地価は2年連続で上昇

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9月19日に国土交通省が、2023年7月1日時点の基準地価を発表しました。

全国の基準地価は、2022年から引き続き連続して全用途平均、住宅地、商業地とも上昇しています。

土地を売買するタイミングを見極めるためにも、地価動向のチェックは欠かせません。相続した土地を売却したい方にとっても、地価の動向は気になるところでしょう。

この記事では2023年の地価の状況や今後の展望について考えます。

1.基準地価とは

基準地価は、国土利用計画法に基づき、各都道府県画主体となって不動産鑑定士が約2万カ所の地点を評価して、国土交通省がとりまとめ公表します。

基準地価は、土地取引の目安として公示地価とともに利用されており、評価方法や金額に大きな違いはありません。土地を売買する時期に応じて評価時点がより近い指標を使えば参考になります。

ただし、公示地価は都市計画区域内が主な対象ですが、基準地価では都市計画区域外も対象に含まれおり、公示地価の調査対象外の地域の地価を知りたいときに基準地価が役立ちます。

この他に国税庁が公表する路線化がありますが、こちらは相続税や贈与税の計算に用いられています。価公示価格等の80%程度が目安となっています。

 基準地価公示地価路線価
調査主体都道府県国税庁
評価時点7月1日1月1日1月1日
発表時期9月3月7月
目的土地取引の目安土地取引の目安相続税、贈与税の計算

2.2023年の基準地価の動向

2023年の基準地価の動向を全国、三大都市圏、地方圏に分けて見ていきましょう。

2-1.全国の基準地価の動向

全国の基準地価は、2022年から連続して全用途平均、住宅地、商業地とも上昇に転じ、上昇率もアップしています。全用途・商業地とも1%以上の上昇率です。

住宅地も3つの中では上昇が低いものの、それでも昨年の0.1%から0.7%に上昇しています。

 2020年調査2021年調査2022年調査2023年調査
全用途平均▲0.6▲0.40.31.0
住宅地▲ 0.7▲0.50.10.7
商業地▲ 0.3▲0.50.51.5

2-2.三大都市圏での基準地価の動向

全用途平均と商業地の基準地価は、東京圏では11年連続、大阪圏では2年連続、名古屋圏では3年連続で上昇しており、上昇率も拡大しています。

住宅地についても、東京圏、名古屋圏では3年連続、大阪圏では2年連続で上昇しており、上昇率も拡大を見せています。

 全用途平均住宅地商業地
2021年2022年2023年2021年2022年2023年2021年2022年2023年
三大都市圏0.11.42.70.01.02.20.11.94.0
東京圏0.21.53.10.11.22.60.12.04.3
大阪圏▲ 0.30.71.8▲ 0.30.41.1▲ 0.61.53.6
名古屋圏0.51.82.60.31.62.21.02.33.4

住宅地・商業地とも基準地価が最も高かったのは昨年と同じ場所です。住宅地・商業地とも3大都市圏で1㎡当りの地価は上昇しています。

 住宅地商業地
住所価格住所価格
東京圏東京都港区赤坂1丁目1424番1『赤坂1-14-11』524万円/㎡東京都中央区銀座2丁目2番19外(明治屋銀座ビル)4,010万円/㎡
大阪圏京都市上京区室町通下立売上る勘解由小路町156番68万円/㎡大阪市北区大深町207番外『大深町4-20』(グランフロント大阪 南館)2,300万円/㎡
名古屋圏名古屋市中区錦1丁目324番1『錦1-3-28』163万円/㎡名古屋市中村区名駅3丁目2701番外『名駅3-28-12』(大名古屋ビルヂング)1,920万円/㎡

2-3. 地方圏での基準地価動向

全用途平均・住宅地とも、31年ぶりに上昇に転じ、商業地も4年ぶりにプラスとなりました。

地方4市では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれについても11年連続で上昇を示し、上昇率も拡大しています。

その他のエリアでは、全用途平均で30年連続した下落から横ばいとなり、住宅地も下落率が縮小し、商業地では32年ぶりに上昇に転じています。

 全用途平均住宅地商業地
2021年2022年2023年2021年2022年2023年2021年2022年2023年
地方圏▲ 0.6▲ 0.20.3▲ 0.7▲ 0.20.1▲ 0.7▲ 0.10.5
地方4市4.46.78.14.26.67.54.66.99.0
その他▲ 0.8▲ 0.40.0▲ 0.8▲ 0.5▲0.2▲ 1.0▲ 0.50.1

※地方四市:札幌市・仙台市・広島市・福岡市
【出典】ここまでの資料はすべて「令和5年都道府県地価調査の概要」|国土交通省によっています。

3.2023年の都道府県別基準地価変動率

2023年の都道府県別の基準地価変動率は下表の通りです。

上昇率では、住宅地と工業地が全国1位、商業地は2位と沖縄県がトップとなっています。

住宅地では東京圏が堅調な上昇を示しており、商業地では同じく東京圏や北海道が、工業地では北海道、千葉県、京都府、佐賀県、熊本県が堅調に上昇しています。

一方で、東北や四国などでは、下降から脱却できない県も目立ちます。

【出典】令和5年都道府県地価調査 第4表

4.2023年基準地価動向のまとめと今後の展望

4-1. 2023年住宅地における基準地価の動向

東京圏と名古屋圏の住宅地の基準地価は、2022年から3年連続で上昇し、上昇率も拡大しています。大阪圏についても、2年連続の上昇を示し、上昇率も拡大しています。

地方圏でも2023年には下降から脱し、地方四市では、11年連続で上昇して、上昇率も拡大傾向にあります。

一方で、地方四市を除くその他の地域では、下落が継続していますが、下落率は縮小傾向を示しています。

4-2.2023年商業地における基準地価の動向

商業地では、東京圏の2023年の変動率が4.3%と11年連続で上昇し、上昇率も拡大しています。また、大阪圏では、2年連続で上昇し、名古屋圏でも、3年連続で上昇し、上昇率は拡大傾向を示しています。

地方圏では地方四市で11年連続で上昇して、上昇率も拡大しています。

一方、地方四市を除くその他の地域では、32年ぶりに上昇に転じることになりました。

4-3.今後の基準地価の展望

2023年の基準地価の上昇のキーワードは、「インバウンドの回復」、「再開発事業」そして「半導体需要」です。

北海道の住宅地、商業地、工業地の上昇が典型のように、北海道では札幌の再開発によって、住宅地や商業地の需要が高まっています。同時に、最先端半導体の量産を目指すラピダスの工場建設が進む千歳市では、工業地や住宅地の上昇傾向が続いています。

沖縄県では、新型コロナの5類移行によって、観光客が増加し、県内景況が上向きになっていることや、コロナ禍でも低金利政策などで一定の住宅需要があったことなどから、全国で最も高い上昇を示していると考えられます。

また、熊本県では、世界的半導体メーカーTSMCの誘致によって、工業地では高い上昇をしています。

しかし、同じ北海道でも、住宅地で8地点、商業地でも6地点が下落率がワースト10にランキングされています。同じ都道府県内であっても、需要のある所とない所での格差が広がっているのです。

また、このままでは、都市圏の需要と地方における需要の格差によって、基準地価の二極化が進む可能性も高いでしょう。

さらに、円安による物価上昇を考えると、個人消費が冷え込んでしまう可能性や、人手不足による供給不足といったマイナス材料から景気回復のテンポが鈍る可能性も高いままです。土地の売買を考える方にとっては、これからも地価の動向には注目していく必要があります。

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