1.千葉市の相続税申告の特徴
千葉市は県の中央より少し北部、東京からほど近い位置にあります。
令和元年の相続税申告状況のデータによると、千葉市の申告割合は11.63%、課税割合は8.92%、1件当たり納付税額1,305万円となっています。
千葉県全体では、申告割合は11.06%、課税割合は8.50%、1件当たり納付税額1,395万円で、千葉市は県の中心都市ではありますが、相続税申告関しては県平均並みの数値となっています。これは千葉市よりも東京に近い市川市や浦安市の方が地価が高く、高級住宅地もあるため、千葉市よりもその2市に相続税課税が集中していることが理由として考えられます。
全国平均の申告割合10.71%、課税割合8.35%、納付税額1,714万円と比較してみると、申告割合と課税割合については同水準ですが、納付税額は低くなっています。
全国平均並みと聞くと、千葉市の相続税課税は少ないように感じるかもしれませんが、課税割合8.35%は、全国の県の順位に当てはめると12位あたりになるため、千葉市は、市川市や浦安市には劣るけれども、相続税が課税されやすい状況が整った市であるといって良いでしょう。
2.千葉市の課税割合の特徴
下記の表は、千葉市内にある管轄税務署エリアごとにおける、課税割合などの相続税申告状況表です。
千葉市には6つの行政区があり、それらを3つの税務署が管轄しています。
そのうち、千葉東と千葉西の課税割合は9%台と高い数値となっていますが、千葉南に関しては6%台と市の平均値を下げる存在となっています。
千葉市全域が、相続税に注意しなければならないというわけではありません。
税務署名 | 管轄地域 | 申告件数 | 課税件数 | 1件当り 納付税額 (万円) | 申告割合 | 課税割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
千葉東 | 中央区(※) 花見川区(※) 稲毛区(※) 若葉区 美浜区(※) | 572 | 463 | 1,499 | 11.90% | 9.64% |
千葉南 | 中央区(※) 緑区 市原市 | 453 | 342 | 1,078 | 9.24% | 6.98% |
千葉西 | 花見川区(※) 稲毛区(※) 美浜区(※) 習志野市 八千代市 | 761 | 565 | 1,283 | 13.45% | 9.99% |
千葉市 | 1,786 | 1,370 | 1,305 | 11.63% | 8.92% |
※ 印の付いたエリアについては、税務署の管轄が跨っているため、死亡者数を管轄税務署により按分して計算
それでは次項にてそれぞれの区の特徴を見ていきましょう。
2.各区の特徴
前述した通り、千葉市には6つの行政区があります。
中央区が市の中心であり、それより東西に離れていくほど地価は下がり、相続税課税が発生しにくいエリアになっていきます。特に西部の若葉区と緑区は、他の4区の半額以下の地価となっています。
千若葉区と緑区以外は複数の税務署の管轄に分けられているため、課税割合が混ざって計算されています。そのため、千葉市の課税割合は少し分かりにくい表示となっている点に注意しなければなりません。課税割合も重要ですが、区ごとの特徴からも相続税課税について考えていきましょう。
それでは、相続税課税の注意レベルが高い順に、それぞれ相続税の課税状況、街の特徴や地価などを詳しく見ていきましょう。
2-1.中央区
中央区は千葉市の中央南部に位置しています。市役所や県庁をはじめとする行政機関が集積しており、県で最も重要な役割を果たしている区です。
県の交通の要所でもあるJR千葉駅周辺には、金融機関やビジネスビル、デパートなどが林立し、多くの人で賑わっています。
中央区の地価は1㎡あたり78万円で、2位の稲毛区に20万円以上の差を付けて市内1位となっています。しかし、東京に隣接している市川市、浦安市の地価は、両市とも1㎡あたり119万円で県内トップ2となっており、中央区は千葉県の中心都市でありながらも、県内順位に当てはめるとこれら2市に次ぐ3位となっています。
名が知れている有名な高級住宅街こそありませんが、大企業で働く高所得者も多いエリアであることは間違いなく、青葉町、市場町、汐見丘町、中央港などには富裕層が多く居住しているようです。
中央区は千葉東税務署、千葉南税務署が管轄しており、課税割合は9.64%と6.98%となっています。いずれも中央区が相続税課税の平均値を底上げしていると考えて良いでしょう。
2-2.花見川区
花見川区は市の最西部に位置し、稲毛区と美浜区に隣接しています。
「花見川」という綺麗な区名は、区を縦断している花見川が由来で、その流域には農地が広がり、緑が多い環境の良さが魅力のエリアになります。
しかし決して田舎というわけではなく、都心へのアクセスの良さを生かして古くから住宅街として発展してきました。特に幕張本郷や花園などの街は、高級住宅街として知られています。
地価は1㎡あたり48万円で市内では4位となっていますが、県内で見るとトップクラスの金額です。
花見川区は千葉東、千葉西税務署が管轄しており、いずれの課税割合も9%台です。東京都心への通勤者がいるベッドタウンであること、有名な高級住宅街がある点で相続税課税の条件にマッチしており、花見川区に居住している人は相続税が課税されることに対して十分注意しておいた方が良いでしょう。
2-3.稲毛区
稲毛区は千葉市の中央から少し西部に位置し、中央区と若葉区に隣接しています。
東京駅まで40分程度で行ける抜群のアクセスの良さが魅力のエリアであり、東京のベッドタウンとして住宅街が広がっています。
また文教都市としても知られており、千葉大学など3つの大学のキャンパスがあるため若者が多く、街には活気があります。
稲毛区は千葉東、千葉西税務署が管轄しており、いずれも高い課税割合を記録しています。
理由としては東京への通勤者が多いことから高所得者が多いこと、地価も1㎡あたり55万円で市内2位の高さであることが挙げられます。
双方の税務署において、相続税の課税率を押し上げている存在といえるでしょう。
2-4.美浜区
美浜区は千葉市の南西部に位置しており、全域が埋立地からなっていることから、長方形のような直線的な地形をしています。
海浜幕張駅周辺エリアは幕張新都心と呼ばれ、大手企業の本社や幕張メッセ、ZOZOマリンスタジアム、アウトレットモールなどがあり、常に多くの人で賑わっています。
1990年頃から開発がすすめられた新しく洗練された綺麗な街並みには、高層マンションやタワーマンションが並び、中には1億円近くする物件もあります。海に面している景観の良さからも、千葉県の富裕層に人気のエリアとなっています。
地価は1㎡あたり53万円で市内3位、幕張新都心のみでは85万円と中央区の平均地価を超えており、富裕層の居住者が集中していることが分かります。
美浜区も花見川区、稲毛区と同様に、千葉東、千葉西税務署が管轄しており、この2つの税務署の管轄エリアを1区ずつ見ていると、千葉南税務署よりも高くなっているのは納得できます。
2-5.若葉区
若葉区は中央区より東側、千葉市の東北部に位置し、市内最大の面積を擁する区です。
東西で特徴がはっきりと分かれている区であり、中央区に近い西部は都賀駅を中心としたニュータウンが形成され、中央区で働く人のベッドタウンとなっています。
一方で、東部は農地が広っており、市内の農業の中心地として多くの農産物が生産されています。
地価は1㎡あたり27万円で、千葉市内ではお手ごろな価格です。他の区に比べて高級感はありませんが、ファミリー層がマイホームを持つエリアとして根強い人気があります。
若葉区は千葉東税務署が単体で管轄しており、その課税割合は9.64%となっています。
相続税課税発生の可能性が高いエリアに含まれてはいますが、地価の状況などから相続税の課題を心配する必要がある区ではないと考えられます。
2-6.緑区
緑区は千葉市の南東部に位置する自然豊かな区であり、特に北部は田園の田舎風景が広がっています。
田舎というわけではなく、あすみが丘ブランニューモールや、イオンタウンおゆみ野などのショッピングモールもあり、生活していくうえの不便はありません。JR外房線の沿線には住宅街が点在し、続々と造成されているニュータウンは子育て世代に人気のエリアとなっています。
特に「おゆみ野」や「あすみが丘」は、県内では有名な高級住宅街であり、居住者は「チバリーヒルズ族」と呼ばれています。
しかし、緑区を管轄している千葉南税務署の課税割合は6.98%となっており、千葉市内3エリアの中で最も低い数値となっています。同じ管轄内に中央区の一部が含まれたうえでのこの数値であることから、緑区単体ではもっと低い数値となるでしょう。
「おゆみ野」や「あすみが丘」は高級住宅街であり、その地価は1㎡あたり70万円近いエリアもありますが、緑区全体の平均地価は22万円と低めで市内最下位となっていることが理由として挙げられます。緑区の相続税課税は富裕層の一部に限られているようです。
3.千葉市の税理士情報
千葉県の税理士は千葉県税理士会に所属しており、その税理士登録者数は2,538人(令和3年11月末日現在)です。
そのうち、千葉市にいる税理士数については正確な情報はありませんが、市川市、浦安市、船橋市など、課税割合の高い市と税理士を分け合っている状況にあると予想できます。千葉市は県庁所在地ではありながらも、税理士を独占している状況にはないでしょう。
千葉県内における相続税申告1件当たりの税理士数は0.36人となっており、全国平均の1.9人と比較すると非常に不足していることが分かります。
その理由としては、千葉県が東京都に隣接していることが挙げられます。千葉市は直接東京都と隣接しているわけではありませんが、東京駅まで電車で数十分と、行き来にストレスを感じる距離ではありません。
また千葉市出身の税理士が、仕事の多い東京で事務所を開設していることも多くあります。
東京都も税理士探しの範囲に入れると、その税理士数は十分といえるでしょう。