子供・孫への教育資金贈与が1500万円まで非課税に

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相続税対策の一つとして、子供や孫・ひ孫に教育資金を一括で贈与した場合に1,500万円まで贈与税が非課税になる制度があります。
上手に利用すれば便利な制度ですが、利用上の注意点もありますので、一度、詳細を抑えておきたいところです。

1.制度の目的

日本で個人の金融資産を一番多く所有している年代は、60代といわれています。
全体の個人金融資産の中に占める割合が、60代以上で6割を占めています。
また、60代の1人あたりの平均的な金融資産の金額は、1,600万円以上となっています。

これに対して、子育て世代である30代の平均的な金融資産の金額は400万円、40代では700万円となっています。
しかし、この世代の多くは、住宅ローンを抱えていて、住宅ローンが金融資産の金額を上回っており、実質はマイナスの状況です。
そこで、この子育て世代の教育資金(孫の教育資金)と60代以降の相続税対策として、平成25年に、『祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』という制度が制定されました。

つまり、祖父母などから教育のための資金を一回で贈与された場合に非課税になる特例です。最高1,500万円の非課税枠があります。贈与の対象は子供でも孫でもどちらでも大丈夫ですが、30歳未満という年齢条件を考えると、実質は、孫を対象とした贈与税の非課税制度といえます。
以前は、『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』という呼び方があり、同じ内容です。

2.制度の概要

贈与の特例-教育資金

『祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』とは、2013年(平成25年)4月1日から2019年(平成31年)3月31日までの間に、直系尊属(父母や祖父母)である贈与者が、30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括贈与し、金融機関でその子や孫の名義の口座に預入れた場合、1,500万円までを非課税とする制度です。

適用対象者贈与者(あげる人):受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)
受贈者(もらう人):30歳未満の子や孫など
適用方法・金融機関に受贈者(子や孫など)の名義で教育資金口座の開設を行い、贈与者から受贈者に対して一括で贈与し、その金額を教育資金口座に預け入れること
・金融機関を通じて、教育資金非課税申告書を提出すること。(個人での税務署での手続きは不要)
非課税となる教育資金・学校等に支払われる入学金や授業料など
・学校等以外に支払われる金銭のうち一定のもの(塾や習い事の月謝など)
・通学定期券代、留学渡航費
非課税限度額受贈者一人につき1,500万円(学校等以外への支払いは500万円まで)

3.対象となる教育資金とポイント

非常に便利な制度ですが、教育資金といっても幅が広く、どんなものが対象となるのか分かりづらいです。自分の中では教育資金だと思っていても、定められた定義に当てはまらなければ非課税とはなりません。どんなものが非課税制度の対象となるのか確かめていきましょう。

3-1.対象となる教育資金

非課税制度の対象となる教育資金には、大きく「学校に支払うもの」と「学校以外に支払うもの」の2つに分けられます。

学校に支払うものとは、主に、入学金や授業料、入学試験の検定料、修学旅行費などが当てはまります。細かいところでは、PTA会費や卒業証明書の手数料なども対象となります。また、学校の範囲は、「教育機関」であると認められているものとなります。「小学校」や「中学校」だけでなく、「幼稚園」や「保育園」、「職業訓練校」なども該当しますので、非常に幅広く使用できます。

学校に支払うものがある程度分かりやすいのに対して、学校以外に支払う場合には注意が必要です。学校以外に支払うものには、「塾や習い事の月謝」や「通学定期券代」などが該当します。こちらの場合も幅広く対象が決められていますが、上限は1,500万円ではなく「500万円まで」となっています。

さらに、この500万円は非課税制度の上限である1,500万円の中に含まれています。ですので、上限いっぱいに使用すると、学校に支払うものが1,000万円~1,500万円、学校以外に支払うものは500万円、合わせて1,500万円までとなります。どちらの教育費を重点的に使用するのかを決めておかないと、後から足りない、利用できない、ということもありますので、使い道には十分に気をつけましょう。

なお、留学をする場合には、「学校」として認められた海外の教育機関に支払うことを前提としています。よって、個人で語学学校に通ったり、海外の学校等に通わないホームステイ、海外ボランティア、海外インターンシップ、ワーキングホリデー等は、留学には該当せず教育資金として認められません。

子供 孫 学校

3-2.対象にならない教育費用

教育と認められていれば多くのものが、非課税制度の対象となりました。では、同じ教育費用のように思えても、非課税対象とならない支払はどのようなものがるのでしょうか?

対象にならない費用は、原則として「教育に関わりのないもの」です。個人の趣味として行う活動や物品の購入費用などが当てはまります。授業で紹介された映画を見た場合や、鉛筆やノートを購入した場合などは、制度の対象とはなりません。また、「部活動で必要な物品の購入費用」や「予防接種」など、教育費用として認められそうなものも対象外となっています。

ただし、これらが一律で認められない訳ではなく、例外的に認められるケースもあります。それは、学校が必要だと認めている場合です。
例えば、学校側から用意された業者で部活動で使う物品を購入した場合や、教育実習に参加するために予防接種を行う場合などです。このようなときは、学校が必要と判断した費用とみなされ、非課税制度の対象となる教育費用として認められています。同じことをしても、対象となる場合とならない場合がありますので注意が必要です。

3-3.見極めるポイントは?

非課税制度の対象となる費用、ならない費用には同じものでも状況によって変化してしまいます。さらに、対象になる場合でも2つの制度のうちどちらを使用すればよいのか判断に迷うこともあります。そこで、非課税制度の対象を見極めるポイントを考えていきましょう。

まず、制度の対象となるかならないかのポイントです。上記でも触れましたが、学校が必要だと認めているかどうかが判断の基準となります。ですので、学校から配布される資料やプリントなどから判断します。

例えば、入学時などに必要な物品を購入するように物品リストを渡され、依頼されることがあります。このリストに書かれているものの購入費用は制度であれば、原則として対象となります。ですが、極端に高額なものや自作するための材料費などは対象外となる場合があるので注意しましょう。

また、学校に支払ったものか、学校以外に支払ったものなのかを判断するポイントは「領収書」です。受取った領収書に通学中の学校名が書かれていれば「1,500万円内」、業者名などが書かれていたら「500万円内」にそれぞれ該当します。副教材や教科書など、学校内で購入しても業者に支払っている場合は「500万円内」に該当しますので、必ず領収書をチェックしておきましょう。

4.金融機関での手続きと利用の流れ

教育資金贈与の非課税制度を利用する場合、既存の口座にお金を入れてはいけません。必ず、贈与する教育資金用に新しく専用の口座を開設する必要があります。ですので、金融機関でどのような手続きを行えば良いのか、その流れや方法を確かめましょう。

4-1.非課税制度の流れ

教育資金贈与の非課税制度を利用するためには、金融機関で専用のサービスに申し込み手続きを行います。では、どのように非課税制度を利用するのか、その流れをまとめます。

  • ①金融機関で非課税制度の利用手続きをする(口座の新規開設と入金)
  • ②教育費用として使用する(費用を立て替える)
  • ③金融機関へ立て替えた費用を請求し、お金を受取る

非課税制度を利用する場合は、上記の3つのステップが必要となり、利用開始後は用途に応じて②と③を繰り返します。②に関してはこれまで詳しく見てきましたので、①と③についてこれから詳しく確認していきましょう。

4-2.非課税制度の利用手続き

非課税制度を利用するためには、金融機関に専用の口座を作りそこに教育用の資金を預けなければなりません。専用口座を開設できる金融機関は1金融機関の1営業所に限定されます。

新しく開設する口座はお金を受取る人、つまり子供や孫の名義となります。これは、祖父母から孫へ贈与するため、受取る口座の名義も孫でなければいけないからです。

また、非課税制度の利用手続きには、一般的に本人の印鑑や身分証明書、戸籍謄本などが必要です。そして、口座の名義が孫となりますので、孫の印鑑や身分証明書も必要です。具体的な手続きは金融機関ごとに異なりますので、あらかじめ担当者などに相談、確認しておくのがオススメです。

4-3.お金の請求と受け取り

非課税制度のために贈与されたお金は、原則として勝手に引き出すことはできません。ですが、教育費用に充てるためであれば、支払後(費用を立替えた後)に同等額のお金を引き出せます。ただし、この場合には立替えたことを証明するために、領収書や、学校で配られた書類などの提出が必要です。ですので、こうした書類はなくさないようにきちんと保管しておきましょう。

また、金融機関によっては教育費用として支払前に引き出すことも可能です。入学金など高額な費用を手元に用意できないケースでよく使用されています。この場合は領収書がありませんので、学校からの書面や支払用紙などを持参し、支払後に領収書を提出します。

ただし、どちらの場合にも引き出すお金にはルールがあります。「領収書の支払日と同じ年に限る」または「領収書の支払日から1年以内が対象」という定めです。金融機関によって異なりますが、教育費用だったらいつでも請求できる、引き出せる訳ではありません。場合によっては非課税にならず贈与税などが発生することもありますので、お金の引き出しについてもきちんと把握しておきましょう。

金融機関での手続き方法については、こちらでさらに詳しく解説しています。
【関連】教育資金贈与信託の金融機関での手続き方法

4-4.孫が30歳になったらどうなる?

教育資金贈与の非課税制度は、受取った子供や孫が30歳になったときに終了します。この期限を過ぎると新しく贈与することができません。では、もし贈与したお金が30歳になるまでに使い切れなかった、余ってしまった場合はどうなるのでしょうか?

教育資金贈与の非課税制度が終了すると、預けていたお金は全て贈与された人に払い出されます。しかし、残ったお金は課税対象となりますので、金額に応じた贈与税を支払うことになります。ですので、もしものときのために節約しながら使うことも大切ですが、きちんと使い切ってしまいましょう。

なお、教育用途以外で使ったお金(たとえば、車の購入や就職活動の費用など)は対象になりませんので、仮に口座残高がゼロであったとしても、その金額も残額とみなされて贈与税が課税されます。

4-5.贈与者が死亡した場合

贈与者が死亡した場合、その時点では特に何の影響もありません。贈与を受けた子供や孫が30歳になるまで引き続き非課税で利用できます。

5.主要金融機関のサービスと違い

教育資金贈与の非課税制度は金融機関と連携して行います。そこで、全国に展開している主要金融機関のサービスを紹介します。今回紹介するのは、「三井住友信託銀行」「三菱UFJ信託銀行」「みずほ信託銀行」の3つです。それぞれどんな違いがあるのか比較していきましょう。

5-1.三井住友信託銀行

三井住友信託銀行では、提供している教育資金贈与信託サービス「孫への想い」を提供しています。

  • 信託報酬(管理料):無料
  • 郵送で領収書の送付:できる
  • 支払前の引き出し:できる
  • 銀行払い:できる
  • 申し込み金額:5000円以上1500万円以下(1円単位)
  • 追加贈与:できる(5000円以上、1円単位)
  • 払い出し条件:領収書に記載された支払日より1年以内

【出典】三井住友信託銀行:教育資金贈与信託〈愛称:孫への想い〉

三井住友信託銀行での教育資金贈与信託サービスは、上記のような特徴があります。基本的に手数料などは無料なのですが、贈与用の口座から直接学校などの口座へ支払う場合は振込手数料が必要です。このときの手数料は教育費用とは認められないため、別途用意しておくなど注意しておきましょう。

5-2.三菱UFJ信託銀行

三菱UFJ信託銀行では「まごよろこぶ」という名称で教育資金贈与信託サービスを用意しています。

  • 信託報酬(管理料):無料
  • 郵送で領収書の送付:できる
  • 支払前の引き出し:できる
  • 銀行払い:できる
  • 申し込み金額:10万円以上1500万円以下(定めなし)
  • 追加贈与:できる(定めなし)
  • 払い出し条件:領収書の支払日が払い出しと同じ年(領収書の提出は翌年3月15日まで)

【出典】三菱UFJ信託銀行:教育資金贈与信託「まごよろこぶ」

基本的な部分については、三井住友信託銀行と特に変化はありません。ただし、払い出し条件が少し異なりますので注意しておきましょう。

また、三菱UFJ信託銀行独自のサービスとして、写真や祖父母からの直筆メッセージを通帳に記載することが可能です。将来孫がこの通帳を手にしたときに、祖父母からの贈られたお金であることが分かるため、温かみのある人気のサービスとなっています。

5-3.みずほ信託銀行

みずほ信託銀行の教育資金贈与信託サービスは「学びの贈り物」として展開しています。

  • 信託報酬(管理料):無料
  • 郵送で領収書の送付:できる
  • 支払前の引き出し:できる
  • 銀行払い:できる
  • 申し込み金額:5000円以上1500万円以下(1円単位)
  • 追加贈与:できる
  • 払い出し条件:領収書に記載された支払日より1年以内

【出典】みずほ信託銀行:教育資金贈与信託「学びの贈りもの」

見比べてきた基本的なポイントでは、三井住友信託銀行と大きく変わりませんでした。というのも、教育資金贈与の非課税制度自体が法律などで定めており、その法律がベースとなってサービスが作られています。ですので、大きな違いは生まれにくいのかもしれません。

そこで、比較する際には申し込み金額の下限や払い出し条件、領収書の提出方法などを見比べてみましょう。このあたりは金融機関ごとに特徴が現れやすいので、あなたが便利に活用できる金融機関でサービスを利用してください。

6.教育資金贈与の非課税制度の利用状況

一般社団法人信託協会がウェブサイトで公表している情報によると、平成27年9月時点の教育資金贈与信託の契約数(累計)は141,655件、信託財産設定額(累計)は 9,639億円となっています。平成26年9月時点からの伸びを見ますと、契約数は52,554件(前年比約59%)、信託財産設定額は3,591億円(前年比約59%)増えており、利用者が確実に増加していることがわかります。1件当たりの信託財産設定額は約680万円です。

【出典】一般社団法人信託協会:教育資金贈与信託の受託状況(平成27年9月末現在)

教育資金贈与が非課税となる期間は、もともと2015年(平成27年)12月31日まででしたが2019年(平成31年)3月31日まで延長されています。2015年(平成27年)1月に相続税が増税されたこともあり、節税対策として関心が高まっていると考えられます。

7.メリット/デメリット

この制度のメリットとしては、

  • 相続財産を生前に減少させることができる
  • 教育資金を確保することができる
  • 祖父母からの贈与の場合、健康なうちに自分の意志で孫などに贈与することができる
  • 一世代飛び越えて大きな金額を贈与させることができる

などが挙げられます。
最近では、高齢者の認知症が問題化されていますので、この制度を利用すれば、本人が元気なうちに可愛い孫に自分の意思で贈与することができます。

一方、デメリットとしては、

  • 金融機関に専用の口座開設が必要なこと、領収書を保管し金融機関に提出が必要なこと
  • 使用用途が教育に限定されていること
  • 万が一、一括贈与した教育資金を子や孫が30歳になるまでに使いきれなかった場合は贈与税が課税されること
  • 老後の資金からの捻出なので、贈与することにより、老後資金が、目減りしてしまうことと

などが挙げられます。

特に老後の資金が目減りしてしまうことについては注意が必要です。制度を利用した結果、生活や趣味に必要なお金がなくなってしまったら元も子もありません。また、お金をあげた孫が自分の意志とは反して、高校や大学に行かずに就職してしまったら意味がなくなってしまいます。

そもそも、日常的に必要な生活費や教育費の贈与に対しては贈与税がかかりません。一人暮らしをしている大学生の子供に生活費の仕送りをしたり、大学の入学費・学費を払って、税務署から贈与税の支払いを要求されることはありません。私立大学の医学部ともなれば、年間の学費が200万円、300万円と高額なケースもありますが、これらの金額を子供に贈与しても学費であれば贈与税はかからないのです。

まとめ

以上、『祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』について解説しましたが、メリット、デメリット両方を考慮しながら、この制度を有効活用することが重要です。

祖父母に多くの余裕資金があり、孫が大学・大学院に進学して勉強することを望んでいる場合は、この制度を利用する意味があるといえます。

一方で、祖父母の余裕資金はそれほど多くなく、孫の進路も確定していない場合は、この制度は利用せずに、必要に応じて随時教育費を払っていくほうが賢明といえます。

参考サイト

国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/01.htm

文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/1332772.htm

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