家族信託でかかる税金、相続税・贈与税など

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「家族信託」は、最近注目を浴びている新しい財産管理方法です。「家族信託」を利用することで、財産の持ち主の判断能力が低下した場合などに起こる「資産凍結」のリスクを避けることができ、相続対策に有効な手段として知られています。

では、税金面ではどのような税金が「誰」に「いつ」課税されるのでしょうか?

今回は、「家族信託」を利用した場合の課税関係について詳しくご紹介します。

1.家族信託の基本的な仕組み

「家族信託」を利用した場合に、「受益者」には様々な税金が課税されるおそれがあります。まず、「家族信託」に登場する人物を簡単におさらいしましょう。

委託者(依頼人)

「信託を依頼する人」を「委託者」といいます。委託する財産を持っており、その財産を家族に託す人のことを指します。

受託者(管理・運用人)

「委託者」に管理・運用を託された人のことを言います。「家族信託」では、「委託者」の家族が担う場合が多いです。

受益者(利益を得る人)

「受託者」が運用を行い得た利益を受取る人のことを言います。

「家族信託」とは、「委託者」が自分の財産を「受託者」に運用させ、その利益を「受益者」が得る制度のことです。「家族信託」を利用する場合、次の3つの段階で税金が発生します。

  1. 信託の設定時
  2. 信託財産の管理・運用時
  3. 信託の終了時
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2.家族信託の種類

「家族信託」では、登場人物の構成により課税関係が異なります。「家族信託」で一般的に利用される構成は、次の2つのパターンです。

2-1.他益信託

「委託者」≠「受益者」の場合のことを「他益信託」と言います。

例えば、「委託者」が父、「受託者」が母、「受益者」が子の場合が該当します。

2-2.自益信託

「委託者」=「受益者」の場合のことを「自益信託」と言います。

例えば、「委託者」が父、「受託者」が子、「受益者」が父のような場合が該当します。

3.受益者に課される税金の種類

3-1.受益者課税の原則とは?

「家族信託」設定時に、「委託者」から信託された財産の所有権は「受益者」に移転し、その財産の名義は「受益者」名義へと変更されます。

信託された財産は「受託者」により運用され、その財産から生じる利益は「受益者」が受取ります。信託された財産から生じる利益は「受益者」のものになるため、税法では実際に利益を受取る「受益者」に課税することとされています。これを「受益者課税の原則」と言います。

「受益者課税の原則」により、「受益者」は次のタイミングで課税が生じることになります。

3-2.受益者の信託設定時の課税

他益信託

家族信託の構成が「委託者」≠「受益者」の「他益信託」の場合、信託設定時に無償で信託財産の所有権が移転するため「贈与税」が課税されます。

「贈与税」は、相続税に比べて高額になるため注意が必要です。ただし、一部の信託には贈与税が課税されないものもあります。

他益信託における贈与税課税の例外

  • 確定給付企業年金信託、年金信託
  • 特定障害者扶養信託契約
    (6,000万円または3,000万円。障がいの程度により異なる。)
  • 教育資金贈与信託
    (1,500万円まで。学校等以外の教育資金の場合は500万円まで。)
  • 結婚/子育て支援信託
    (1,000万円まで。そのうち、結婚に関する費用については300万円まで)

贈与税以外には、不動産などの登記が必要な財産の場合、登録免許税が課税されます。

信託分の登録免許税は「固定資産税の4/1,000」となっています。土地については軽減措置があり、「固定資産税の3/1,000」となっています。(令和3年3月31日まで)

自益信託

家族信託の構成が「委託者」=「受益者」の場合、実質的な所有者は変わっていないため贈与税の課税はありません

不動産などの登記が必要な財産については、他益信託と同様に登録免許税が課税されます。

3-3.受益者の信託された財産の管理・運用時の課税

信託期間中に、信託財産から生じる利益は「受益者」に対して所得税が課税されます。

所得の種類は信託財産によって異なり、不動産所得、雑所得、利子所得、配当所得に分類されます。

「収益発生時」に課税される信託財産

  • 不動産信託
  • ファンドトラスト/特定金銭信託
  • 有価証券信託
  • 単独運用指定金銭信託

「収益分配時」に課税される信託財産

  • 証券投資信託、外国投資信託
  • 確定給付企業年金信託などの年金信託
  • 特定公益信託
  • 合同運用指定金銭信託

受益者に課税される税金

 信託の種類税金の種類
信託設定時他益信託贈与税
登録免許税(※)
自益信託登録免許税(※)
信託期間中所得税

※ 登記が必要な財産について登記の際に課税されます。

4.受託者に課税される税金の種類

「受託者」は、信託財産の管理・運用を行うため財産を所有する人とはみなされません。そのため、無償で財産の移転を行った場合に課税される「贈与税」や、信託財産から発生する利益に課税される「所得税」は、「受託者」に課税されることはありません

「所得税」と「贈与税」は課税されませんが、信託財産が不動産の場合「固定資産税の納税通知書」は登記簿上の所有者になっている「受託者」に届きます。

しかし、「受託者」は「受益者」のために信託財産の管理・運用をしているため、通常は信託契約書により固定資産税は受益者が負担するように定められています。

また、その信託財産が不動産事業に使用されている場合は、固定資産税は不動産所得の経費として取り扱われます。

5.委託者に課される税金の種類

他益信託

他益信託(委託者≠受益者)の場合は、どの税金も課税されることはありません

自益信託

自益信託(委託者=受益者)は、信託財産の所有権は移転していないため「贈与税」が課税されることはありませんが、信託財産の管理・運用時には信託財産から生じる利益について「所得税」が課税されます。

委託者に課税される税金

他益信託なし
自益信託所得税

6.その他のケースにかかる税金の種類

ここまで、通常の家族信託で課税される税金の種類をご紹介しました。「家族信託」では通常のケース以外で課税される税金もあります。いくつかご紹介します。

5-1.信託受益権を第三者に移転した場合

「受益者」が、保有している信託財産から利益を受取る権利「信託受益権」を第三者に贈与、または有償譲渡した場合は、税法上課税されます。

贈与者(売り主)にかかる税金

「信託受益権」を贈与した場合には、受贈者に「贈与税」が課税されるため、贈与者には課税される税金はありません

「信託受益権」の有償譲渡を行った場合は、通常の資産の譲渡と同様に所得税(譲渡所得)が課税されます。

受贈者(買い主)にかかる税金

「信託受益権」を贈与された場合は、受贈者には「贈与税」が課税されます。贈与税の計算には「信託受益権」の相続税評価額の計算が必要になります。この相続税評価額は、信託財産である不動産などの相続税評価額により計算されます。

「信託受益権」を有償で購入した場合は、市場適正価格であれば買い主に税金は課税されません

最近では、不動産の「信託受益権」の売買(不動産証券化)は頻繁に行われていますので、課税関係をしっかり理解しておくと良いでしょう。

信託受益権の贈与・売買による課税

贈与者なし
売主所得税
受贈者贈与税
買主なし

6-2.受益者死亡により信託受益権を取得した場合

「家族信託」では、信託契約に「受益者が死亡した場合」についての定めがないケースでは、亡くなった「受益者」が保有していた「信託受益権」は、通常の相続財産と同様に相続されます。

「信託受託権」の相続が遺言書に記載されている場合は、一般的には遺言書に従って相続が行われます。「信託受益権」の相続人は、信託財産の相続税評価額をもとに「信託受益権」の相続税評価を行い、相続税の納税が必要です。

6-3.信託終了後の残余財産にかかる税金

信託が終了すると、清算受託者により信託の清算が行われます。

信託終了後の信託残余財産は、「帰属権利者」に移転します。「帰属権利者」とは、信託が終了する時にその信託財産が帰属する先として指定されている人のことを言います。

「受益者」と「帰属権利者」が同一人物の場合は、贈与税などの課税は発生しません。しかし、「受益者」と「帰属権利者」が異なっていて、適正な対価の支払いが無い場合は、「帰属権利者」に贈与税の課税が生じます。

まとめ

今回は、「家族信託を利用した場合の税金」についてご紹介しました。「家族信託」では、基本的に「受益者」が課税されることになります。

また、制度上、「家族信託」は生前贈与となるため、「相続税」より税率の高い「贈与税」が家族信託設定時に課税されるおそれがあります。

「家族信託」は、財産の持ち主の判断能力が低下した場合などに起こる「資産凍結」のリスクを避けることができ、相続対策には有効です。

しかし、相続税対策には活用することが難しく、信託設定時に多額の贈与税の資金を用意しなければなりません。ケースによっては課税関係が複雑になったり、「遺言信託」などの他の信託制度の方が有利になったりする場合もあります。

「家族信託」を利用する場合は、税理士などの専門家を交えて検討することをおすすめします。

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