消費税の準確定申告書の書き方と記入例

亡くなった被相続人が事業を営んでいた場合は、被相続人の確定申告を行う必要があります(準確定申告)。
被相続人が課税事業者であった場合は、準確定申告は、所得税だけでなくと消費税も必要です。
消費税の準確定申告書の書き方を記入例付きで、わかりやすく解説します。
目次
1.消費税の準確定申告
死亡した人の確定申告のことを準確定申告といい、被相続人が個人事業主(事業所得)や不動産経営者(不動産所得)で、一定の課税売上高がある場合には消費税申告も必要となります。
1-1.消費税申告が必要な場合
消費税の準確定申告は、被相続人が課税事業者(消費税の納税義務がある事業者)である場合に必要となります。
被相続人が課税事業者に該当するのは、基準期間(死亡した年の前々年)における課税売上高が1,000万円超である場合です。
また、1,000万円以下であっても課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者となっている場合にも申告納税が必要になります。
【関連】相続で個人事業を承継した場合の、消費税の納税義務の特例
1-2.申告期限
被相続人が課税期間の途中や、課税期間終了後から申告期限までの間に申告しないまま死亡した場合には、相続人はいずれの場合にも、相続開始日の翌日から4ヶ月以内に申告納税しなければなりません。
申告種類 | 死亡日 | 申告期限 |
---|---|---|
準確定申告 | 課税期間の途中 | 相続開始日の翌日から4ヶ月以内 |
課税期間終了から申告期限までの間 | ||
確定申告 | - | 課税期間終了日の翌日から2ヶ月以内 |
通常の確定申告と比べて、倍の期限が設けられ猶予が与えられていることが分かります。
1-3.申告書の提出先
準確定申告書を提出するのは、被相続人の死亡当時の住所地を管轄している税務署です。相続人の所轄税務署ではありませんので注意しましょう。
1-4.相続人が複数いる場合の納税義務
相続人が複数人いる場合は、原則として、1通の準確定申告書に各相続人が連署して提出します。
また各相続人の納付税額は、それぞれの相続分により按分計算した金額となります。
1-5.相続税計算における納付税額と還付税額の取り扱い
準確定申告における消費税の納付税額は、相続税計算では債務として扱われ、債務控除の対象となります。
これに対して還付税額は、財産として扱われ、課税財産に含まれます。
2.提出が必要な書類
準確定申告を行う際に必要な書類を一覧にしました。
一般課税用 | 簡易課税用 | |
---|---|---|
申告書 (通常) | 消費税及び地方消費税の準確定申告書 第一表 第二表 | |
付表(通常) | 付表1-3 付表2-3 | 付表4-3 付表5-3 |
準確定申告 の場合 | 付表6 死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書 | |
死亡届 | 個人事業者の死亡届出書 |
2-1.消費税及び地方消費税の準確定申告書
様式は通常の確定申告書と同じで、名称を「準確定申告書」と記入して使用します。
確定申告書には一般用と簡易課税用の2パターンがあり、被相続人が原則課税(本則課税、一般課税ともいいます。)の場合には一般用、簡易課税の場合には簡易課税用を使用します。
付表(一般用・簡易課税用)
一般課税では
- 付表1-3 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
- 付表2-3 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
簡易課税では
- 付表4-3 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
- 付表5-3 控除対象仕入税額等の計算表
を確定申告書と一緒に提出する必要があります。
これらの付表は、課税売上割合や控除対象仕入税額の計算過程を記載する書類です。
※上記の付表は、標準税率10%および軽減税率8%適用された取引のみの場合です。旧税率(3%、5%、8%)が適用された取引がある場合は、別の付表を合わせて提出が必要です。
2-2.付表6 死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書
準確定申告特有の明細書で、被相続人の住所氏名をはじめとして、各相続人の情報などを記載する書類です。
2-3.個人事業者の死亡届出書
被相続人が死亡したことを税務署に知らせるための届出書で、死亡後、速やかに提出しなければなりません。
2-4.【参考】消費税の還付申告に関する明細書(個人事業者用)
還付申告(中間納付の還付を除きます。)の場合にのみ提出します。なぜ還付になったのかを記載する書類です。
消費税の還付があるのは原則課税による場合のみです。よって、簡易課税の場合にはこの書類を提出することはありません。
3.書類の書き方
上記の必要書類の書き方を、簡易課税を前提として解説していきます。
3-1.確定申告書(簡易課税用)、付表
準確定申告だからといって特別な書き方はなく、通常通りで大丈夫です。
簡易課税で必要な書類は以下のものです。
- 申告書第一表 【個人事業者用】消費税及び地方消費税の申告書
- 申告書第二表 【個人事業者用】課税標準額等の内訳書
- 付表4-3 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
- 付表5-3 控除対象仕入税額等の計算表
申告書第一表
題名に「準確定」と記載しましょう。
申告書第二表
付表4-3
付表5-3
【出典】国税庁:令和4年分消費税及び地方消費税の確定申告書の手引き
3-2.死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書
事業をしていた被相続人が死亡した場合は、付表6を記入します。
それぞれの相続分の割合に応じて、納税する消費税を按分します。
3-2-1.表題
確定申告書に記載した課税期間をそのまま転記します。
3-2-2.死亡した事業者の納税地・氏名等
被相続人の住所、氏名、死亡年月日を記入します。
3-2-3.相続人等の代表者の指定
相続人の代表者を指定している場合には、その人の氏名を記入します。
3-2-4.死亡した事業者の消費税及び地方消費税の額
確定申告書の「消費税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額㉖」の金額がプラスである場合には、①、②、③に記入し、マイナスである場合には④、⑤、⑥に記入します。
3-2-5.相続人等の納める又は還付される消費税及び地方消費税の額
相続を放棄した人を除く、全ての相続人と包括受遺者について住所、氏名、職業、続柄、生年月日、電話番号、相続分、相続財産の価額、納める消費税額、還付口座などを記入します。
相続分⑦は、取得した財産が法定相続分で計算されている場合には「法定」、遺言による指定相続分の場合には「指定」を〇で囲み、その割合を記入します。
相続財産の価格⑧は、それぞれの人が取得する積極財産(プラス財産)の相続時の時価を記入します。まだ分割が終わっていない場合には、積極財産の総額に⑦の割合を乗じた金額を記入します。
納付税額の計算⑨~⑭については、表下に記載してある端数処理に注意しましょう。
3-3.個人事業者の死亡届出書
記載する内容は見ての通りであり、記入が難しい書類ではありません。
届出者は相続人です。間違って被相続人の名前を記入しないように注意しましょう。
被相続人の事業を廃業せずに引き継ぐ場合には、「事業承継の有無」の欄の「有」を〇で囲み、事業承継者の住所、氏名、電話番号を記入します。
以上の書類の様式はこちらから印刷することができます。