新型コロナウイルス感染症による相続税申告への影響
新型コロナウイルス感染症は、健康や経済だけではなく税金の申告にも大きな影響を与えています。今回は、現在分かっている「…[続きを読む]
新型コロナウイルス感染症の流行を予防するため、人と人との距離を保つソーシャルディスタンスが世界中で取り組まれています。その1つの方法として、会社ではテレワークが推奨されており、ビジネスのオンライン化が急速に進んでいます。
税理士などの士業も例外ではなく、ビデオ通話を利用した相続税の相談サービスが普及しつつあります。東京の代々木にある上原会計事務所なども、積極的にZoomによる相談を受け付けています。今回は、注目を浴びている税理士のオンライン相談サービスをご紹介します。
目次
2020年、士業業界のオンライン化が急速に進んでいます。特に、税理士事務所のオンライン化は他の弁護士や社会保険労務士よりも進んでおり、半数以上の税理士事務所でテレワークが導入されています。
そのうち、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークを導入した税理士事務所は40%以上(※)にのぼり、いかに新型コロナウイルス感染症が税理士業界を変化させたかを物語っています。
税理士業界のオンライン化は、税理士に相続税の相談を依頼したいと考えている方にとって、利便性が大変向上しています。
※士業事務所のテレワーク導入率は36%。全国の士業事務所に緊急アンケートを実施|PR TIMESより
税理士業界では、依頼者と対面しての税務相談業務が基本でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により対面での相談にリスクが生じる事になりました。
多くの税理士は、いつウイルスが終息するか分からないため、新しい体制へ移行して不測の事態に対応できるシステムを構築しています。
当初、「税理士のオンライン化」は、税理士法上の観点からその是非が問われてきましたが、日本税理士会連合会や東京税理士会が「税理士のオンライン化を容認する」と捉えられる見解を行ったことにより、税理士業界全体のオンライン化が進んでいます。
税務署のe-taxの導入やマイナンバー制度の導入により、税務申告についての税理士業界のオンライン化の下地は既に用意されていました。また、税理士業務の1つである会計業務についても、freeeなどのクラウド会計サービスやDrop boxなどのオンラインストレージサービスが開発されたことにより、税理士のオンライン化は一層便利なものになっています。
相続税の分野では、「オンライン相続税相談サービス」を実施している税理士の数はあまり多くありませんでしたが、2019年10月に相続税申告書がe-taxに対応したことと今回の新型コロナウイルス感染症の影響により、「オンライン相続税相談サービス」は急速に拡大していくと思われます。
相続税の分野での税理士のオンライン化は、依頼者にとっても税理士にとってもメリットが多くあります。
税理士がオンライン化することは、相続税の相談を依頼する人にとって多くのメリットがあります。
税理士のオンライン化の最大のメリットは、時間が節約できることです。
遺産相続手続きでは、誰が・何を・どのように相続するのかを決定することが一番重要です。相続人全員が十分納得した上で遺産分割を行わなければ、後々揉め事になるケースも少なくありません。
揉め事にならないためには、遺産の内容をしっかり把握し、相続手続きのスケジュールを共有し、税理士より相続人全員に財産について説明することが重要です。
ところが、相続人全員が時間を合わせて相続について話し合うことは簡単ではありません。相続人が遠方または海外に住んでいる場合や、病気で入院している場合などもあり、しばしば相続手続きで問題になることがあります。
しかし、税理士がオンライン化し、テレビ会議システムなどを利用して相続の話し合いの場を提供すれば、相続人全員に、公平に相続財産についての説明をすることができます。相続人は、自宅などのインターネット環境が整った場所で説明が聞けるので、実際に集まる必要がないため移動時間が節約できます。
税理士にとっても相続人宅へ訪問する必要がないため時間の節約になります。また、税理士が直接相続人に相続財産の説明を行うことにより相続人の安心感にも繋がり、後々揉め事になる可能性も低くなります。
インターネットを利用してコミュニケーションを行うため、交通費や送料などの費用を節約することができます。
相続税の申告を税理士に依頼すると、相続税の申告が終わるまでの長い間、多くのやり取りが必要になります。
また、相続税の申告が終わってからも二次相続についての相談や税務調査など、継続して連絡を取り合うことになります。
何度も税理士のオフィスに向かう必要があるため、決して少なくない交通費がかかってしまいます。オンラインで相続税の相談を行っている税理士に依頼することで交通費を節約することができます。
また、税理士側の交通費も節約することができ、通常は依頼者が負担する税理士の交通費についても負担する必要がなくなります。
「税理士は相続税の専門家」と思われがちですが、一般の税理士にとって相続税は特殊な税金です。税理士によって得意不得意の税法があるため、全ての税理士が相続税について熟知しているわけではありません。どの税理士に相談するかによって相続税の節税対策方法が異なりますし、最終的な相続税額も異なってきます。
通常、相続税の相談を行う場合は、お住いの地域の税理士に依頼される場合が多くありますが、相続税が得意な税理士ではないこともありえます。その点、オンラインで税理士に相続税の相談を行う場合は、距離が関係なくなるため依頼者にとって相談する税理士の選択肢が広がります。
相続税を専門に行っている税理士にオンラインで相談することも可能になり、より洗練されたサービスを受けることができます。
税理士がオンライン化する事は、今回の新型コロナウイルス感染症だけではなく他の予期せぬ災害が起こった場合でも対処することができます。
例えば、地震や台風などの自然災害が起こり被災した場合、同じ地域の税理士も被災し、相談や手続きが行えない状況になってしまいます。税理士がオンライン化しておけば、そのような状況を回避することができます。
また、税理士事務所のオンライン化が進んでいれば、事務所職員がテレワークで仕事が行えるため、申告期限に遅れたりすることもありません。実際に、最近では災害時でも対処できるよう、行政でもインターネットを使った出願や申請などを採用しています。
オンライン化は、ペーパーレス化に繋がります。
税理士への資料は全てデータ(PDF)で送信し、相続税申告書の控えも税理士からデータでもらうことができます。相続税の申告がe-taxに対応したことで、相続税についてのほぼ全ての作業をペーパーレスで行うことができます。
依頼者にとっては、データをバックアップすることで相続税申告書の紛失をさけることができ、税理士にとっては資料の保管場所の問題に対処することができます。
税理士のオンライン化は、多くのメリットがありますがデメリットはあるのでしょうか。オンライン化のデメリットは、決して多くはありません。
オンラインで税理士に相談するためには、一定のパソコンスキルが必要です。
例えば、ビデオ会議システムソフトのダウンロードやヘッドセットなどの設定、メール機能などを使ったファイルの送受信などです。難しい設定が必要ではありませんが、あまりパソコンに慣れていない方にはサポートが必要になります。
オンラインには、インターネット環境が必要不可欠です。地域によってはインターネットが遅い地域もあり、通信障害が起こってしまうことがあります。
インターネットの通信が安定していなければ、ビデオ通話を行うことができません。
事前にインターネットの速度を測るなどして、通信環境を整える必要があります。
オンラインで税理士に相談する場合、税理士が使用しているコミュニケーションツールを事前にダウンロードする必要があります。
ここでは、一般的な税理士がオンライン相談で利用するコミュニケーションツールをご紹介します。
オンライン会議システムとは、ビデオ通信を複数人で行うシステムです。音声や映像以外にもチャット機能やパソコン画面の共有、ファイル送信などの機能があるものが多く、テレワークやリモートワークに必要不可欠なシステムです。オンライン会議システムと言っても、システムの導入が難しいわけではなく、ほとんどのオンライン会議システムはインターネット上でソフトをダウンロードするだけです。
また、ほとんどの機能を無料で使えるソフトが多くあります。税理士業界では、「Zoom」と「Skype」というオンライン会議システムがよく利用されています。
【関連外部サイト】Zoom
Skype で気軽に連絡を取り合う|Skype
チャットツールとは、メッセージでコミュニケーションを行うツールです。
よくプライベートで利用されているLINEのビジネス版と考えて頂ければ想像しやすいと思います。税理士業界で最近よく利用されているツールは、「Chatwork」と「Slack」です。どちらのツールもブラウザ上で利用でき、アプリをダウンロードすればスマートフォン、タブレットでも利用することが可能です。
【関連外部サイト】ビジネスコミュニケーションをこれ一つで|Chatwork
Slack なら、メンバーがどこにいてもチームを 1 つに|Slack
クラウドストレージサービスとは、インターネット上にデータやファイルを保管することができるサービスです。
インターネット上にファイルを保存し、特定の人と共有設定することで、複数人でデータを共有することができます。共有設定者が誰でも同じデータにアクセスすることができるため、データのやり取りが容易に行えます。また、e-mailに添付することができない容量の大きなデータでも共有することができます。税理士業界でよく利用されているクラウドストレージサービスは、「Google Drive」や「Drop Box」などがあります。
【関連外部サイト】すべてのファイルをどこからでも|Google Drive
チームに必要なものをすべて 1 か所に|Drop Box
今回は、「相続税のオンライン相談」についてご紹介しました。
税理士業界は、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン化が急速に進んでいます。税理士がオンライン化することにより、時間やコストの節約や安全性などが大幅に向上します。行政システムもオンライン化が進んでいますので、ますます利便性が向上することでしょう。
近い将来、依頼者が税理士事務所に来所して相談を行うよりも「オンライン相談」が一般的になる可能性もあります。相続税について税理士に相談したいと思われている方は、オンラインで相談できる税理士を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。