1.松戸市の相続税申告の特徴
松戸市は千葉県の北西部、西側は埼玉県三郷市と東京都葛飾区、南側は市川市に隣接しており、都心から20キロ圏内、電車で約30分と利便性が高いことから、周辺都市部のベッドタウンとして機能しています。
東京23区への通勤者の割合は37%となっており、高所得者が多いと考えられるため、相続税申告への影響が気になります。
それでは、今回は松戸市の相続税申告について掘り下げいきましょう。
2.松戸市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、松戸市を管轄している松戸税務署の申告割合は12.96%、課税割合は9.90%、1件当たり納付税額は1,895万円となっています。
ただこの数値は、松戸税務署の管轄エリアである流山市と、鎌ヶ谷市も含まれている点に注意しましょう。松戸市単体での数値は公表されていませんが、この3市の中で松戸市が最も東京都に近いことを考えると、松戸市単体では、より高い数値になると考えられます。
2-1.船橋市と全国都道府県・千葉県全体との比較
全国における平均値は、申告割合10.71%、課税割合8.35%、納付税額1,714万円となっており、全国47都道府県と比較すると千葉県の課税割合の順位は9位となります。
一方で、千葉県全体の申告割合は11.06%、課税割合は8.50%、1件当たり納付税額1,395万円で、松戸税務署はいずれも1%以上上回っています。
税務署管轄エリアごとにおける県内の課税割合の順位では15位中6位ということで、全国的に課税割合の高い千葉県の中でも、松戸市は高い位置にあることが分かります。
相続税に大きな注意を払わなければならない市であることが、お分かりいただけると思います。
3.松戸市の特徴
松戸市は東京都、埼玉県との間に江戸川を挟んだ位置にあり、県内では市川市、鎌ヶ谷市、流山市、柏市に隣接しています。
市内には、JR常盤線、JR武蔵野線、新京成電鉄、東武鉄道野田線、流鉄流山線、北総鉄道北総線と6本の鉄道が通っており、東京都心部まで30分で行けてしまう利便性の高さとを誇っています。
主要都市圏へ向かう通勤通学者にとって非常に優れた立地にあることから、住宅都市として発展し続けており、人口は約49万人と千葉市、船橋市に次ぐ県内3位を誇ります。
近年の積極的な開発によって、人口はさらなる増加傾向にあり、今後の発展も期待される市です。
3-1.全域が住宅地
中心駅の松戸駅周辺には、百貨店や家電量販店、ショッピングモールなどの繁華街が広がっていますが、駅から離れるにつれて住宅街になっていきます。駅近くには分譲マンションや、単身者用の賃貸マンションが多く、それを過ぎると一気に戸建てが並ぶ閑静な住宅街が広がります。
主要都市部へのベッドタウンとして機能している市であるため、東京都に近く、かつ多くの路線が乗り入れる松戸駅に近い程、地価が高くなる傾向があります。地価については次項で詳しく解説します。
3-2.松戸市の地価
松戸市の地価は1㎡あたり18万円で、県内54位中4位の高さとなっています。
中心都市となる千葉市は16万円で7位となっており、千葉県の地価は東京都にいかに近いかで決まっているようです。
松戸市内で最も高い地価は、松戸駅周辺です。平均地価は、1㎡あたり35万円と市内平均の倍近くになります。南東部に行くほど地価は下がり、最も低い六実駅周辺では1㎡あたり7万円となっています。
ただし、最下位でも7万円という点に注意しなければなりません。7万円を県内順位に当てはめてみると、12位に入るからです。
松戸市内であればどこに住んでいたとしても、土地はそれなりの相続税評価額になると考えられ、そこに都心部で得た高所得が合わさることが、相続税の課税割合の高さに繋がっているのでしょう。
3-3.松戸市に超富裕層はいない
松戸市には、都心部に多く居住する経営者や資産家などの超富裕層は非常に少ないです。
その理由は、松戸市の南側に位置している市川市と浦安市が、松戸市よりも東京都に近く、市の名前から連想できるほど、高級住宅街が多い市になるからです。
よって、富裕層はそちらに流れているため、松戸市はどちらかというと一般的なサラリーマンでも戸建てを購入することができるお手頃エリアという位置づけになります。
ただし、地方よりも収入や相続税評価額のベースが確実に高いことが、9.90%という高い課税割合に繋がっていることを忘れてはいけません。
4.松戸市の税理士情報
千葉県の税理士は千葉県税理士会に所属しており、その税理士登録者数は2,546人(令和3年12月末日現在)です。
このうち、松戸市の税理士は千葉県税理士会松戸支部に所属し、松戸市に事務所を置いているのは255人となっています。
その他の所属は、流山市56人、鎌ヶ谷市39人、柏市4人、野田市1人であり、このエリアの税申告の中心は松戸市であることがわかります。相続税に限定してみても、その人口数と地価などから、松戸市が中心地であることは変わらないでしょう。
松戸税務署の相続税申告件数は924件であったことから、松戸市、流山市、鎌ヶ谷市の税理士の合計350人に対する相続税申告1件当たりの税理士数は0.37人となり、税理士1人あたり年間3件近くの相続税申告をこなしている計算になります。全国平均の1.9人と比較すると、税理士が圧倒的に少ない市であることが分かります。相続税を取り扱っていない税理士もいることを考慮すると、もっと少ない人数になるでしょう。
ただし、税理士不足は松戸市に限ったことではありません。この数値は千葉県全体においても0.36人と低くなっており、千葉県全体が抱える問題です。
4-1.松戸市の税理士が不足している理由
松戸市をはじめとして、千葉県の税理士が非常に不足している理由には、東京都に隣接している点が挙げられます。
やはり東京都はあらゆる面でレベルが高く、全国各地から様々な人々が自分の力を試すために上京してきます。それは税理士にとっても同じことで、東京で成功したいと事務所を構えるのです。
東京都に隣接している松戸市の税理士の場合には、それが容易に叶うため、千葉県出身であっても事務所は東京という税理士が多いのです。
4-1.松戸市の税理士の探し方
千葉県税理士会松戸支部の中では松戸市の税理士は圧倒的に多く、探しやすいと思われたかもしれません。ただし、人口も多い点を忘れないようにしなければなりません。
人口が多ければ、その分、相続税申告が増えることになります。松戸市に関しては、課税割合が高いこと、東京都へ通勤する高給取りが多いこと、管轄エリアの中で最も地価が高いことを考えると、流山市や鎌ヶ谷以上に税理士が不足している可能性があり、松戸市だけで税理士を探すことは非効率であるといえます。
松戸市で税理士を探す場合には、東京都の税理士をまず候補に入れましょう。余力がある場合には、周辺の市も候補に入れて比較してみましょう。
【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、千葉県税理士会HP、千葉県税理士会 松戸支部HP