子供・孫への住宅取得資金の贈与が1200万円まで非課税に

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 1.祖父母/父母から住宅取得用資金の贈与を受けた場合の非課税制度

1-1.制度の概要

贈与税には、さまざまな目的に対して非課税制度が設けられています。その中で住宅取得用に設けられた非課税制度が、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与贈与を受けた場合の非課税制度」です。

これは2021年(平成33年)12月31日までに、20歳以上の人が住宅を取得するための資金を親や祖父母から援助を受けたとき、一定金額が贈与税の非課税になる制度です。

非課税額については、平成31年9月までは最高1,200万円まで、消費税10%増税後の平成31年10月以降は最高3,000万円になります。

【出典】国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

1-2.制度が作られた理由

この制度ができたのは平成21年のことです。もともと、将来の不安から特に高齢者を中心に貯蓄してお金を使わないという風潮がありました。景気をよくするためにはお金を回さなければなりません。

そこで平成15年、贈与時には贈与税をかけずに、相続時の贈与分も含めた資産に相続税をかけるという「相続時精算課税制度」ができました。
しかし、あまり効果がなく数年続いたため、新しく住宅取得用資金に着目した贈与税非課税制度が作られました。

20代や30代の若者にはマイホームを持ちたいという潜在的欲求があり、一定の制度利用者が見込まれることや、住宅購入には大きなお金が動くことから景気対策の一端を担うのではないかという考えからです。その後、適用期限が延長され、現在は2021年(平成33年)までとなっています。

2.住宅取得用資金の非課税制度の詳細

住宅取得用資金の贈与税の非課税制度には、贈与者(あげる人)/受贈者(もらう人)、購入する家などに一定の要件があります。その要件を見ていきましょう。

贈与税非課税特例ー住宅取得資金

2-1.贈与者(あげる人)の要件

贈与者は受贈者の父母や祖父母などの直系尊属に限られます。贈与者である父母や祖父母に年齢等の制限はありません。
あくまで受贈者の父母や祖父母なので、配偶者の父母や祖父母からの贈与はこの制度は利用できません。

2-2.受贈者(もらう人)の要件

受贈者には以下のような要件があります。

年齢

贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上である必要があります。贈与を受けたときが20歳以上ではありません。
1月1日生まれ以外で、贈与を受けた年に満20歳となるという人は、この制度を利用できないため注意が必要です。

所得

贈与を受けた年の所得が2,000万円以下でなければなりません。この基準は所得であり、収入(年収)ではないので注意してください。

サラリーマンで収入が給料収入だけの場合は、年収2,220万円以下(平成29年時点の法令による)なら利用できます。
個人事業主の場合は収入から費用を差し引いた利益(青色申告特別控除がある場合は控除後)が所得です。

土地の売却といった譲渡所得などがあると計算が複雑となるため、この制度が利用できるかどうか不安な場合は税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。

旧制度の利用がない

平成21年から平成26年までの贈与税の申告で旧非課税制度(住宅取得等資金の非課税制度)の適用を受けていないことが要件です。

※贈与者が贈与を受けたときに日本国籍を所有し、かつ日本に住所があれば問題ありませんが、海外に住所があったり、日本国籍でない場合はその他にも要件があるため注意が必要です。

2-3.住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の要件

この制度は、購入した家屋などにも次のような要件があります。

2-3-1.住宅を取得または新築した場合

面積

取得または新築した建物が日本国内にあり、登記簿上の床面積(マンションの場合は専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。また、床面積の1/2以上を居住用に使っている必要があります。

中古住宅取得の場合

中古住宅の場合は、その建物が耐火建築物の場合は築後25年以内非耐火建築物の場合は築後20年以内のものに限られます。
※耐火建築物かどうかは、建築確認申請書やハウスメーカーなどで確認します。

2-3-2.住宅を増改築等した場合

この制度は既に所有している住宅を増改築等する場合で、父母や祖父母から資金の贈与を受けたときにも適用できます。

面積

増改築等した建物が日本国内にあり、登記簿上の床面積(マンションの場合は専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。また床面積の1/2以上を居住用に使っている必要があります。

工事代金

増改築等の工事にかかった費用が100万円以上であること。

証明

増改築等工事証明書などで一定の基準であることを証明されたものである必要があります。すべての増改築等が認められるわけではないので注意が必要です。

2-4.非課税限度額

この制度は、贈与を受けた年や取得した住宅の種類によって非課税限度額が異なります。

①下記以外の場合
契約の締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
~平成32年 3月31日1,200万円700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日1,000万円500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日800万円300万円
②住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%の場合
契約の締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
~平成32年 3月31日3,000万円2,500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日1,500万円1,000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日1,200万円700万円

※省エネ住宅とは省エネルギー対策等級4である住宅など、耐震住宅とは耐震等級2以上または免震建築物である住宅などのことをいいます。建設住宅性能評価書の写しや住宅性能表明書などに記載されています。

消費税率が5%から8%に上がったときには、増税前の住宅購入の駆け込み需要などがおき、増税後には住宅の売れ行きが大きく落ち込みました。
その経験を活かし、10%に増税されるときにはできるだけ住宅の需要が平準化するよう、消費税10%の家屋を購入する場合の方が非課税限度額を大きくしています。
また、中古住宅を個人間で売買する場合は消費税がかからないため、①の表に該当します。

3.贈与税の申告が必要

この制度を利用するためには、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。
納める贈与税がなかったとしても申告の必要があるので注意しましょう。申告書のほかに必ず次の添付書類が必要です。

  • 受贈者の戸籍謄本と住民票の写し
  • 住宅の登記事項証明書
  • 新築や取得の契約書
  • 源泉徴収票などその年の所得金額がわかる書類

上記以外については、取得する住宅が新築なのか中古なのか、または今の住宅の増改築なのかなどにより必要書類が異なります。申告期限をすぎるとこの制度の適用ができなくなるので、どの書類が必要か不明な場合は、出来るだけ早く税理士などの専門家や税務署に相談しましょう。

贈与税申告書-1

4.他の贈与税制度との併用

この住宅取得用資金の非課税制度は、暦年課税制度相続時精算課税制度との併用が可能です。
贈与額のほうが住宅取得用資金の非課税限度額より多い場合は、暦年課税制度または相続時精算課税制度を使います。

暦年課税制度と相続時精算課税制度はどちらか一方しか利用することができないため、3つの制度を併用することはできません。

4-1.暦年課税制度との併用

暦年課税制度とは、通常の贈与税の制度です。年間110万円まで非課税限度額があります。

例えば住宅取得用資金の非課税限度額が1,200万円の場合は、暦年課税制度の非課税限度額と合わせて 1,200万円+110万円=1,310万円 までの贈与であれば贈与税がかかりません。
暦年課税の場合、相続時精算課税制度と違い、後の相続税の計算で適用分の財産を加える必要がありません。そのため1,310万円までの贈与であれば、暦年課税制度との併用が有利になります。

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4-2.相続時精算課税制度との併用

相続時精算課税制度は最大2,500万円までの非課税枠があります。

例えば住宅取得用資金の非課税限度額が1,200万円の場合は、暦年課税制度の非課税限度額と合わせて 1,200万円+2,500万円=3,700万円 までの贈与であれば贈与税がかかりません。ただし、後の相続税の計算では、1,200万円を超えた相続時精算課税制度利用分の財産を加える必要があります。

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4-3.併用時の要件

相続時精算課税制度および住宅取得等資金の非課税制度にはそれぞれの要件がありますが、併用する際には、両方の要件をほぼ合わせたような形になります。

本来の要件とは一部異なる部分が出てきますので、その部分は、「住宅取得等資金贈与に係る相続時精算課税制度の特例」として、特例となっています。
精算課税制度および住宅取得等資金の非課税制度のもともとの要件とは異なる部分だけ列挙しておきます。

贈与者の年齢

相続時精算課税制度では、贈与者の年齢の条件は、1月1日時点で満60歳以上ですが、住宅取得等資金の非課税制度と併用すると60歳未満でも適用可能になります。
そして、一度、相続時精算課税制度を適用すれば、その後の贈与についても年齢に関係なくすべて相続時精算課税制度が適用されます。

受贈者の所得金額

住宅取得等資金の非課税制度では、その年の受贈者の所得金額が2000万円以下という条件がありますが、相続時精算課税制度と併用した場合は、所得に関する条件はありません

住宅の面積

住宅取得等資金の非課税制度では、対象の住宅の登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下という条件がありますが、相続時精算課税制度と併用した場合は、50㎡以上という条件だけであり、上限の条件はありません

 相続時精算課税制度住宅取得等資金の非課税制度併用
贈与者の年齢1月1日時点で満60歳以上条件なし条件なし
受贈者の所得金額条件なし2000万円以下条件なし
住宅の面積条件なし登記簿上の床面積が
50㎡以上240㎡以下
登記簿上の床面積が
50㎡以上

5.住宅取得用資金の非課税制度の注意点

ここからは、注意点について見ていきましょう。

①契約および引き渡しの時期に注意

この制度を利用するためには、翌年の3月15日までに住宅の購入及び建物の引き渡しまで完了しておく必要があります。
注文住宅などの場合で土地を先行取得してる場合は棟上まで済んでいれば新築とみなしますが、マンションの場合は例外なく3月15日までに引き渡しの完了が必要なので注意しましょう。

②贈与を受けた金額の全額を住宅取得に使うこと

この制度の要件の1つに、住宅取得金等の全額を翌年3月15日までに使って、住宅の新築や増改築等を行うことがあります。
全額を使って」ですので、一部だけ頭金として支払っていても、計画が狂い、翌年3月15日にまだ残額がある場合は適用できないため注意が必要です。

③居住日に注意

この制度を受けるためには、翌年3月15日までにその住宅に居住するまたは翌年12月31日までに確実に居住する見込みである必要があります。
何らかの事情で翌年12月31日までに居住できない場合は、すでに申告済の贈与税申告を修正申告する必要があります。

④親族から住宅を取得した場合は適用できない

一定の親族から住宅を購入したり、親族が営んでいる建築業者などに工事を依頼する場合は、この制度を適用できない可能性があります。

⑤床面積の判定

この制度を利用して取得・新築、増改築した住宅には床面積50㎡以上240㎡以下という要件があります。
この面積はあくまで登記簿謄本に記載されている面積で判断します。登記簿に登録した時点の面積と現状の面積が異なることは多くあります。
住宅販売用のパンフレットなどに記載されている面積とは異なることがあるので注意が必要です。

⑥贈与を受けた資金を、住宅ローンの返済に充ててはいけない

この制度を使って非課税になるのは、住宅購入のために直接使ったものに限られます。
良い物件があったので、贈与が行われる前に住宅ローンを組んで購入し、贈与を受けた資金をその後の返済に充てた場合、この制度の適用を受けることはできません。
贈与を受ける時期と支払いが発生する時期を考えて、住宅購入の契約を結ぶ必要があります。

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