[図説]暦年課税制度の贈与税申告書の書き方
自分以外の人から財産を譲り受け、贈与税の申告が必要となった場合には、期限内に所轄税務署へ贈与税申告書を提出しなければ…[続きを読む]
「住宅取得等資金贈与の非課税制度」を使えば、一定金額まで非課税で、子や孫に住宅資金を渡すことができます。
住宅資金を子や孫にあげて喜ばれ、また、相続財産も圧縮できて相続対策にもなります。
この非課税特例は、過去何度も延長されてきましたが、そのたびに、非課税の限度額が変更されてきました。
制度の概要と、2022年(令和4年)以降の最新の状況についてもご紹介します。
本記事の内容は、国税庁のホームページを参照しています。
【参照】国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
目次
子や孫に住宅用の家屋の新築、取得または増改築等のための金銭を贈与する場合、一定の要件を満たす時は、非課税限度額まで、贈与税が非課税となる制度です。
正式には「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」といいます。国税庁では、「住宅取得等資金の特例」とも略されています。
非課税限度額は、次の通りです。(令和4年度の「税制改正大綱」により、非課税限度額が変更されました。)
新築等をする住宅用の家屋の種類ごとに、契約の締結日に応じた金額となります。
耐震、省エネ又は バリアフリーの住宅用家屋 | 左記以外の住宅 |
---|---|
1,000万円 | 500万円 |
この制度を利用できるのは、令和5年(2023年)12月31日までです。
何度か延長されていますので、再度、延長される可能性はあります。
贈与者は受贈者の父母や祖父母などの直系尊属に限られます。贈与者である父母や祖父母に年齢等の制限はありません。
あくまで受贈者の父母や祖父母なので、配偶者の父母や祖父母からの贈与はこの制度は利用できません。
受贈者には以下のような要件があります。
贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上(令和4年3月31日以前の贈与の場合は20歳以上(※))である必要があります。贈与を受けたときが18歳以上ではありません。
1月1日生まれ以外で、贈与を受けた年に満18歳になるという人は、この制度を利用できないため注意が必要です。
※令和4年度の民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられたため、受贈者の年齢の要件も変更されました。
贈与を受けた年の所得が2,000万円以下でなければなりません。この基準は所得であり、収入(年収)ではないので注意してください。
サラリーマンで収入が給料収入だけの場合は、年収2,195万円以下(令和2年以降)なら利用できます。
個人事業主の場合は収入から費用を差し引いた利益(青色申告特別控除がある場合は控除後)が所得です。
もし、新築等をした住宅の家屋の面積が40㎡以上50㎡未満である場合は、所得が1,000万円以下(給与収入1,195万円)以下でなければなりません。
土地の売却といった譲渡所得などがあると計算が複雑になるため、この制度が利用できるかどうか、税理士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて、住宅用の家屋の新築・取得または、増改築等を行う必要があります 。
贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または、その後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれることが必要です。
贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住していない場合は、この非課税制度を利用できませんので、修正申告をすることになります。
平成21年から令和3年までの贈与税の申告で、旧非課税制度(過去の、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度)の適用を受けていないことが要件です。つまり、過去に一度でもこの制度を利用していると、利用できません。
贈与者が贈与を受けたときに日本国籍を所有し、かつ日本に住所があれば問題ありません。海外に住所があったり、日本国籍でない場合はその他にも要件があるため注意が必要です。
住宅の取得または増改築等とともに、その土地等の取得も含みます。
また、対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。
この制度の対象となる住宅の主な要件は、次の通りです。
- 住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されるものであること
- 住宅が次のいずれかに該当すること
- ㋐建築後使用されたことのない住宅用の家屋
- ㋑建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以降に建築されたもの
- ㋒建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることが、一定の書類により証明されたもの
- ㋓上記㋑㋒のいずれにも該当しない場合は、一定の条件のもと、耐震改修を行い、贈与を受けた翌年3月15日までに耐震基準に適合することが一定の証明書等により証明されたもの
受贈者の条件の一つに、「贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて、住宅用の家屋の新築・取得または、増改築等を行う」という条件がありますが、これを満たすのは次の場合です。
贈与を受けた年の翌年3月15日時点で、屋根(その骨組みを含む)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態にあるもの
贈与を受けた年の翌年3月15日において増築又は改築部分の屋根(その骨組みを含む)を有し、既存の家屋と一体となって土地に定着した建造物として認められる時以後の状態にあるもの
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、取得した家屋の引渡しを受けていること。
建売住宅または分譲マンションを購入したときは、建築中で引き渡しを受けていなければ、非課税制度を適用できません。
住宅資金贈与の非課税制度を利用するためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。
非課税制度を適用した結果、納める贈与税が0円になったとしても、申告の必要があるので注意しましょう。
贈与税の申告書のほかに、次の必要書類があります。
贈与税の申告書
- 贈与税の申告書第一表
- 贈与税の申告書第一表の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)
添付書類
- 受贈者の戸籍謄本と住民票の写し
- 源泉徴収票など、贈与の年の所得金額が分かる書類
- 登記事項証明書
- 新築や取得の契約書の写しなど
- 省エネ等住宅に該当する場合は、住宅性能証明書など、それを証明する書類
※マイナンバーを記載した申告書等を提出する際には、マイナンバーカード等の本人確認書類の提示または写しの添付が必要になります。
上記以外については、取得する住宅が新築なのか中古なのか、または今の住宅の増改築なのかなどにより必要書類が異なります。
申告期限をすぎるとこの制度の適用ができなくなるので、どの書類が必要か不明な場合は、出来るだけ早く税理士などの専門家や税務署に相談しましょう。
贈与税の申告方法については、以下のサイトを参照してください。
【参照】贈与税の申告|国税庁
贈与には、次の2つの方法があります。
年間(1月1日から12月31日)の贈与額の合計で贈与税を支払う贈与の方法です。ただし、暦年贈与には基礎控除額が110万円あり、110万円以下であれば贈与税がかかりません。
贈与された財産を、相続時に加算して相続税を計算し、相続時に税金を清算する制度です。非課税になる制度ではなくて、相続時まで税金の納付が猶予されて、相続時に清算します。
相続時精算課税を選択した場合、贈与時には、2,500万円までの贈与について税金の納付が猶予され、2,500万円を超える部分に20%の贈与税が課されます。
その後、贈与者が亡くなった際に、その贈与財産(贈与時の評価額)を相続税に加算して相続税を計算し、贈与時に支払った贈与税と相殺します。
相続時精算課税制度および住宅取得等資金の非課税制度にはそれぞれの要件がありますが、併用する際には、両方の要件をほぼ合わせたような形になります。
本来の要件とは一部異なる部分が出てきますので、その部分は、「住宅取得等資金贈与に係る相続時精算課税制度の特例」として、特例となっています。
精算課税制度および住宅取得等資金の非課税制度のもともとの要件とは異なる部分だけ列挙しておきます。
相続時精算課税制度では、贈与者の年齢の条件は、1月1日時点で満60歳以上ですが、住宅取得等資金の非課税制度と併用すると60歳未満でも適用可能になります。
そして、一度、相続時精算課税制度を適用すれば、その後の贈与についても年齢に関係なくすべて相続時精算課税制度が適用されます。
住宅取得等資金の非課税制度では、その年の受贈者の所得金額が2,000万円以下という条件がありますが、相続時精算課税制度と併用した場合は、所得に関する条件はありません。
住宅取得等資金の非課税制度では、対象の住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下という条件がありますが、相続時精算課税制度と併用した場合は、40㎡以上という条件だけであり、上限の条件はありません。
相続時精算課税制度 | 住宅取得等資金の非課税制度 | 併用 | |
---|---|---|---|
贈与者の年齢 | 1月1日時点で満60歳以上 | 条件なし | 条件なし |
受贈者の所得金額 | 条件なし | 2000万円以下 | 条件なし |
住宅の面積 | 条件なし | 登記簿上の床面積が 40㎡以上240㎡以下 | 登記簿上の床面積が 40㎡以上 |
上記の暦年贈与と相続時精算課税は、どちらか片方しか選べません。今回のテーマの住宅取得等資金贈与の非課税制度と、暦年贈与の基礎控除(110万円)や相続時精算課税制度は併用できます。
以下のケースを想定して、具体例を見ていきます。
【事例】
- 住宅取得等資金贈与の非課税限度額が1,000万円
- 実際の贈与が4,000万円
上記のケースで、暦年課税を利用した場合の贈与税の額は、以下の通りです。
暦年課税額
実際の贈与額4,000万円 - 非課税限度額1,000万円 = 3,000万円
↓
贈与税の課税価格
暦年課税額3,000万円 - 基礎控除110万円 = 2,890万円
↓
贈与税額
贈与税の課税価格2,890万円 × 税率45%- 控除額265万円 = 1,035.5万円
暦年課税の場合は、贈与税額が1,035.5万円となります。
一方、先程のケースを相続時精算課税を利用すると、次の通りとなります。
相続税精算課税の対象額
実際の贈与額4,000万円-非課税限度額1,000万円 = 3,000万円
↓ 2500万円まで納税を猶予
贈与税額
残り500万円 × 贈与税率20% =100万円
生前に支払う贈与税額は100万円です。
贈与者が亡くなった際に、相続時精算課税の対象の2,500万円を相続財産に加算して相続税を計算し、支払い済みの贈与税と相殺します。
仮に相続財産が9,500万円で、配偶者と子2人がいる場合、相続税額は480万円
生前の贈与税を精算
480万円-支払済の贈与税100万円 = 380万円→相続税額
↓
贈与税と相続税の合計額
相続税380万円+贈与税100万円=480万円
以上より、相続財産がどの程度かにもよりますが、贈与額が大きいと、贈与税が相続税より大きくなりますので、通常は暦年贈与より相続時清算制度を利用したほうが節税につながります。
ここでは、贈与に関して、住宅取得等資金贈与の非課税制度以外の非課税制度についてご紹介します。
配偶者への贈与に関して、居住用不動産あるいは居住用不動産を買うためのお金のいずれかを配偶者に贈与した場合、一定条件を満たせば、2,000万円までの贈与が非課税となる制度です。
贈与されたお金を教育目的に利用することを条件に、一定の条件を満たせば、原則として1,500万円までの贈与が非課税となる制度です。
贈与された財産を結婚・子育てに利用することを条件に、一定の条件を満たせば、原則として1,000万円までの贈与が非課税となる制度です。
A.住宅取得資金の非課税制度では、受贈者1人につき1,000万円が限度となります。父と祖父から合計2,000万円の贈与を受けていますが、そのうち1,000万円までが非課税の対象となります。
A.新しい非課税制度では、取得した資金を、住宅用家屋の敷地の用に供する土地等の取得に充てる場合も対象となりますが、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その取得した土地の上の住宅用の家屋を所有する(共有持分を有する場合も含む)ことにならない場合は非課税制度の適用を受けることはできません。
A.マンションや建売住宅の場合は、住宅取得等資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までにその引渡しを受けていなければ、非課税制度の適用を受けることができません。
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、一定金額まで贈与税が免除される制度ですので、子供や孫が住宅を購入・建築する際には、使わない手はありません。
また、この制度以外にも、贈与税の非課税制度はいくつかあります。資産継承(相続)対策の一環で、これら贈与の非課税制度を活用する事をお勧めします。
より詳細をお知りになりたい方や、また、実際に制度を利用する予定の方は、最寄りの税務署や贈与税や相続税の詳しい税理士に相談することをお勧めします。
住宅取得等資金の贈与の非課税限度額は、次のように、過去何度か変更されてきました。
契約の締結日 | 省エネ等住宅(※)の 非課税限度額 | 左記以外の住宅の 非課税限度額 |
---|---|---|
~平成27年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月1日~令和2年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
令和2年4月1日~令和3年12月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
契約の締結日 | 省エネ等住宅(※)の 非課税限度額 | 左記以外の住宅の 非課税限度額 |
---|---|---|
平成31年4月1日~令和2年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
令和2年4月1日~令和3年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
※「省エネ等住宅」とは、省エネ等基準に適合することが証明されている住宅用の家屋のことです。
令和4年(2022年)度税制改正で、住宅資金等資金贈与の非課税制度は、次の点が改正されました。