贈与税の基礎控除で110万円までの贈与が非課税に
贈与税では「基礎控除」という非課税枠があり、ある一定の金額までは贈与税が課されることはありません。贈与税の基礎控除に…[続きを読む]
夫婦間であっても、一定金額以上の贈与に対しては贈与税がかかる場合があります。
夫婦間でどんな贈与をすると贈与税がかかるのか、贈与税がかかる場合とかからない場合について具体例を挙げながら解説します。
なお、同様の内容を動画でも解説しています。
目次
最初に贈与税は、いくらの贈与からかかるのでしょうか?
贈与税には年間110万円という基礎控除額があります。夫婦間の贈与かどうかに関わらず、贈与した金額が年間110万円以下なら贈与税はかかりません。
これをうまく利用すれば、生活費とは全く関係ないお金であっても毎年100万円くらいは無税で配偶者にお金を渡すことができます。
夫婦間の贈与で、贈与税がかからないものに、「扶養義務者相互間において通常認められる生活費・教育費のための贈与(※)」があります。
婚姻関係であっても、内縁関係であっても、夫婦間には「扶養義務」が生じていることから(民法752条及び752条の準用)、「夫婦間の生活費」に該当するものであれば、贈与税は発生しません。
「通常必要と認められる」とは扶養者・被扶養者の資力などを考慮して、社会通念上適当と判断される範囲を言い、生活費とは日常生活を営むのに必要な費用を、教育費は、被扶養者の学費や教材費などを指します。
したがって、夫婦間で、社会通念上適当と判断される範囲の生活費・教育費については、贈与税がかからないことになります。
※【出典】「No.4405 贈与税がかからない場合 「2夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」|国税庁
夫が妻に現金200万円を渡し、妻がそのお金を使って高級な家具を購入したとします。この家具は家族の生活に利用するものですから、贈与税はかかりません。
まだ博士課程の学生で研究をしている夫の学費のために、妻が夫の口座に300万円を振り込んだ場合には、大学の学費に充てる目的であるため、贈与税はかかりません。
買い物用の車として夫が150万円を支払い、妻名義の自動車を購入しました。この車は生活に必要なものであり、贈与税はかかりません。
ただし、派手なスポーツカーなど生活用ではなく明らかに嗜好品としてみなされるものであれば贈与税がかかる可能性はあります。
お祝いやお見舞い用の贈答品や金銭などの贈与は、「社会通念上相当と認められるもの」であれば贈与税は課税されません。
「社会通念上相当」についてですが、世間一般の平均で評価するのではなく、文化・風土・地域・慣習・生活レベルなど幅広い概念を考慮したうえで決定されます。年収1億円クラスのセレブたちが互いに数百万円の贈り物をすることが日常的に行われているとしたら、200万円の時計も「社会通念上相当」の範囲内となるでしょう。
土地や建物など不動産の所有権の一部を譲渡すると、贈与税の課税対象になります。
しかし、婚姻期間20年以上の夫婦間であれば居住用不動産の配偶者控除を活用することができ、2,000万円まで非課税となります。
詳しくは、以下の関連記事を、是非ご一読ください。
生活費・教育費に該当しない贈与や110万超の夫婦間の贈与に対しては、贈与税がかかります。
夫から生活費として毎月30万円程度もらっていましたが、うまく節約したら毎月10万円、年間で120万円ほど貯金できたので、それを株式投資に回しました。この場合、もはや生活費とは言えません。贈与税がかかります。
配偶者からもらったお金をへそくりとして貯蓄し、配偶者が亡くなると、その貯蓄が相続財産とされて相続税が課税される可能性もあります。
保険契約をした保険料負担者、被保険者、保険金受取人が3者とも異なる場合は、贈与税の課税対象となります。
夫が保険契約をし、子が被保険者、妻が保険金の受取人だった場合は、保険金に贈与税が課税されることになります。
銀行などの金融機関が破たんした場合には、元本1,000万円+利息分は保証されますが、それを超える預金は戻ってこない可能性があります。
そこで、夫の退職金2,000万円を妻の口座に1,000万円を移動したとします。
この場合、その妻の口座を実質誰が管理しているかが問題となります。もし、妻が管理しておりいつでも自分で自由に引き出せる状態であれば、1,000万円の退職金の贈与とみなされて贈与税が発生するでしょう。
反対に、印鑑・通帳とも夫が管理している、いわゆる名義預金であれば、相続財産として相続税の課税対象となります。
税務署が、名義預金と判断するポイントについて、詳しくは、以下の関連記事をお読みください。
マンションや住宅の名義変更はよく検討されますが、不動産の名義変更も贈与とみなされます。名義変更によって、元の名義人から変更後の名義人へと所有権が移転するからです。
例えば、夫が4,000万円で夫名義のマンションを購入し、その後、マンションを妻名義に変更すると、4,000万円の夫から妻への贈与と考えられ、贈与税が発生します。
共働きの夫婦が、夫名義で住宅を購入し、月額15万円の連帯債務型の住宅ローンを組みましたが、夫がリストラされてしまい、妻が代わりに全額返済していた場合には、年間180万円のローン返済分のお金を妻から夫に贈与したことになり、贈与税がかかります。
同様に、夫の借金を妻が代わりして全額返済すると、贈与とみなされてしまう可能性が高くなります。
夫名義の自宅をリフォームする場合に、妻がリフォーム代を出すと、本来名義人である夫が維持・管理義務を負っている夫の肩代わりをしたとみなされ、110万円を超える部分は、贈与とみなされる可能性があります。
マイホームを取得したら「登記」手続きが必要になります。
夫婦で不動産を購入したとき登記の方法として、「単独名義」と「共有名義」が考えられます。この名義次第で贈与税が発生することもあるので注意が必要です。
共有名義とはその字のとおり「複数人で名義を共有する」ことを言います。対象となる不動産が、名義人たちの共有の持ち物として扱われます。
実際には、夫婦や親子での共有名義が多くなります。
共有財産を考えるうえで重要なのが持分割合です。自分が所有する不動産の割合を表すのが持分割合です。
不動産を共有名義にする場合は、持分割合を正しく登記する必要があります。なぜなら、この持分割合が、共有者間の負担割合と異なれば「贈与」とみなされることがあるからです。
持分割合は基本的に当事者の出資額によって決まります。例えば3,000万円の物件を夫が1,500万円、妻が1,500万円出資して購入すれば、出資割合は1/2ずつです。したがって、夫婦の登記上の持分割合も、1/2ずつとなります。
しかし、同じ物件を、夫が2,000万円、妻が1,000万円出資し、持分割合を1/2ずつで登記すると、実際の出資割合とは異なる権利を有することになります。その結果、夫から妻が500万円分の所有権を贈与したと判断され、課税対象になってしまうのです。
なお、支払いは頭金だけでなく、住宅ローンの支払い割合なども関係するので注意が必要です。
妻名義のNISA口座の資金を夫が準備すると、年間110万円を超えた部分については、贈与税が発生します。
2024年以降には、年間投資枠が拡大され、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円の合計360万円です。投資枠一杯まで妻名義のNISAを夫が利用すると、基礎控除額を大きく超えてしまいます。
贈与税の税率には、一般税率と特例税率とがあり、夫婦間の贈与では、一般税率が使われます。
特例税率とは、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の子や孫が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用され、一般税率は、その他の場合に適用される税率です。
一般税率は、以下の通りです。
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 3,000万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
基礎控除後の課税価格とは、贈与下額から基礎控除額110万円を差し引いた額です。
例えば、夫婦間で年間1,000万円の贈与があった場合の贈与税額は次の通りです。
(1,000万円ー110万円)×30%ー65万円=202万円
最後に、「夫婦間であれば、贈与をしても税務署にバレないのでは?」と考えている方は、是非以下の関連記事をお読みください。
詳しくは、以下の記事に譲るとして、基本的に、夫婦間の贈与であっても税務署にはバレると考えておいた方がいいでしょう。過去約10年間に及ぶ銀行口座の履歴の調査権限など、税務署の調査権限は絶大です。
贈与税の時効は、意図的に隠していたときは7年ですが、時効が認められないこともあります。延滞税、仮装・隠蔽として重加算税が課され、最悪の場合、刑事罰を課されてしまいます。
ここまでご紹介した通り、夫婦間では、基本的に、「通常認められる生活費・教育費」や110万円以下の贈与であれば、贈与税の課税対象とはなりません。しかし、中には、預貯金のように、相続税が課税されるのか贈与税が課税されるのか判断に困るケースもでてきます。
贈与税の申告に困ったときは、税理士に相談して、賢く節税することをお勧めします。
このサイトでも贈与税申告について対応している多くの税理士が、お問い合わせをお待ちしております。