相続税の計算をする際に葬儀費用は相続財産から控除が可能!
葬儀費用について「どこまでが控除できるのか分からないな?」といった疑問をお持ちの方も多いと思います。そこで、今回は、…[続きを読む]
相続税を抑えるために活用できる債務控除。便利な制度ではありますが、一方でどんな債務が控除されるのが、どのような人が利用できるのか分かりづらいことが多いのも確かです。
そこで、債務控除を十分に活用できるようになるために、基本から解説していきます。制度の概要や中身を正しく理解して、賢く節税しましょう。
目次
借金など、特定の人へ金銭やものを渡したり支払ったりする義務を債務と呼びます。相続税の債務控除とは、相続する財産から債務の額を差し引き、残った金額にだけ相続税を課税する制度です。
財産を相続する場合、現金や土地、住宅などプラスになるものだけでなく、借金やローンなども一緒に相続しなければいけません。そのため、相続によって相続人の負担が少しでも軽くなるように、この控除制度が設けられています。
相続税の債務控除となるのは、医療費や公共料金など決められた範囲の債務です。どのような債務が対象となるのか、代表的な例を紹介する前に、債務控除の対象となる債務についての3つのルールをご紹介しておきます。
被相続人の債務で亡くなった後に支払うことが確定しているものということです。
被相続人の金融機関の住宅ローン(※1)や個人からの借入金の残金は、債務控除の対象です。
連帯債務も債務控除の対象となります。「後に支払うことが確定している」からです。
対して、保証債務は、債務控除の対象とはなりません。保証債務とは、「主債務者が支払わないときに、保証債務者が支払う」契約なので、保証債務者が支払うことが確定していないからです(※2)。
※1 ただし、住宅ローンを団体信用生命保険(通称、団信)付きで契約している場合には、「確実と認められる債務」には該当しませんので、控除対象になりません。
※2 ただし、「債務者に求償権を行使しても、履行の見込みがない場合」、「債務者には履行が難しく、保証債務者が履行することが確実な場合」は、控除の対象となります。
債務控除の対象となる場合で重要な債務が医療費です。例えば、入院中に亡くなった場合、本人が治療費や入院費などを支払えません。そこで、こうした支払いを相続人が支払った場合には、相続した財産から支払った医療費を控除できます。
また、相続人が被相続人の医療費を支払った場合、同居しているなど生計を一にする親族の医療費のときには、相続人はその医療費を医療費控除として確定申告で利用できます。つまり、条件を満たすことで2つの控除を利用できるため、覚えておくと節税効果が高くなります。
生活の中で発生する電気代や水道代などは、亡くなることを予期して支払うことはできません。そのため、亡くなった後にこうした公共料金を被相続人の代わりに支払った場合、その費用は債務控除の対象となります。
また、電話料金やクレジットカードの支払いなど、生活に密接に関わる費用の多くも債務控除の対象です。ただし、債務控除は原則亡くなった後に確定する費用が対象となります。前払いしていた家賃などは債務控除の対象ではありませんので、相続財産から控除できません。
亡くなった後にも税金を納めることに、疑問を持たれるかもしれません。しかし、所得税や自動車税、固定資産税など、亡くなった後に納める税金が確定されることは少なくありません。こうした税金は、被相続人が納めるべき債務ですので、相続人が建て替えて納税したときの費用は債務控除の対象です。
ただ、固定資産税の場合は注意が必要で、複数名の家族で共有している場合には、その共有割合に応じた金額が債務控除の対象となります。また、相続人の都合で延滞金などが発生した場合には債務控除の対象ではありません。
一方で、被相続人によって発生した延滞金などは債務控除の対象となり、この違いにも注意が必要です。あくまでも、被相続人が支払うべき金額だけが対象となることに気をつけましょう。
葬式に必要な費用は、相続人が相続した財産から支払うものという考え方から、葬式に関連した費用も債務控除の対象となります。
また、医療費にも含まれる死亡診断書は、葬式に必要な費用と同様の考え方により債務控除の対象となっています。
上記でも少し触れましたが、債務の中には債務控除の対象とならないものも多くあります。例えば、お墓や仏壇など、もともと相続税が課税されない非課税財産の購入ローンなどは、債務控除の対象ではありません。
さらに、葬式費用の中で必要な香典返しの費用も対象外です。これは、香典がそもそも非課税であるため、非課税財産に対する費用が控除の対象外となるのと同じ考え方です。
ただし、どんなものが香典返しに該当するかは判断が難しいため、詳しくは税理士へ相談するのが良いでしょう。
債務控除の対象とならないもの
また、相続によって土地などの不動産を取得した場合の登記費用なども控除の対象外です。こうした費用は確かに相続によって発生しますが、被相続人がもともと支払うべき費用ではありません。相続人が負担しなければならない費用のため、債務控除の対象とはなりません。
債務控除が利用できるのは、相続人と包括受遺者と呼ばれる人です。これらに該当する人は、プラスになる財産とマイナスとなる財産、どちらも相続しなければいけません。そのため、債務控除の対象者となっています。
債務控除が利用できる者
※包括受遺者:遺産の全部または割合的一部の遺贈を受けた者で、民法上相続人と同一の権利義務を有する者
一方で、次に該当する人は債務控除を利用できません。
債務控除を利用できない者
特定受遺者とは、遺贈する財産をあらかじめ被相続人が決めており、その他の財産を受け取らない人です。つまり、マイナスになる債務を相続する必要がないため、債務控除を利用できません。
また、相続放棄して全ての財産を相続しない人や、国内に住所がなく海外で生活している制限納税義務者なども債務控除は利用できません。ただし、相続放棄をした人は葬式費用のみ、制限納税義務者は国内財産にかかる債務のみに対して債務控除が受けられます。
ただし、これらに該当する人の債務控除は判断が少し難しくなります。そのため、該当する可能性がある人は、あらかじめ税理士などの専門家へ相談し、利用できるかどうか、どうしたら利用できるのかなどを確かめてきましょう。
債務控除を受けるための方法は簡単です。相続税申告書の第13表に対象となる債務と葬式費用を記載するだけです。
何のための費用なのか、相続人の誰が負担したのかなど、種類や細目を記載するようになっています。
難しく思うかもしれませんが、記載する内容は領収書などから転記してくるのみです。表記が多少異なっていたとしても、それが理由で控除を受けられないということはありませんので安心してください。
【出典】相続税の申告のしかた(平成30年分用)|国税庁
債務や葬式費用の領収書は、対象になるかどうか不明なものも含めて、貰う都度必ず保管しておきましょう。
相続税申告書の第13表に正確な情報を記載するため、また後に税務調査が入った時のための証拠書類として重要です。
お布施や心づけなど領収書がない費用でも、支払った金額や内容をメモに残しておくことで債務控除として認められます。 領収書がないからと諦める必要はありません。忘れずにメモしておきましょう。
相続税の債務控除は、本来被相続人が支払うべき債務を相続人が代わりに支払った場合などに、その分の費用が相続税の対象から外れる制度です。支払いが確定しているため、もともと相続しなかったと考えると分かりやすいかもしれません。そのため、制度を利用しないと損してしまいますが、利用すれば必ず得をする制度とは言えません。
ただし、葬式の費用に関しては得となることが多いです。兄弟で出し合った場合でも、それぞれの出資割合によって控除が受けられるため、割合を調整することで相続税を0円にすることも可能です。税理士などと相続した遺産と相続税、控除額を相談しながら、上手に債務控除を利用して節税しましょう。