相続税の障害者控除と未成年者控除

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相続税を計算する過程には様々な控除制度があります。全ての相続人に必ずある基礎控除や、配偶者にのみ適用される配偶者控除などが有名ですが、この他にも相続人の属性によって適用できる制度がたくさんあります。

今回は相続人が障害者または未成年者である場合に適用される、「障害者控除」と「未成年者控除」について解説します。

1.障害者控除と未成年者控除は「税額控除」

税額控除とは、納める相続税額自体から直接金額を差し引くことができる制度です。
相続税の控除には、基礎控除と税額控除の2つがあり、基礎控除は相続税が算出される前の課税対象額から控除されるため、差し引かれる段階に違いがあります。

相続税の計算上の図で、基礎控除では、STEP2③で控除しますが、障害者控除と未成年者控除では、STEP3⑧で税額控除します。
【参照】簡単にできる相続税の計算

2.障害者控除について

2-1.障害者控除とは

障害者控除とは、85歳未満の障害者である相続人に対して適用される制度で、相続税額から一定の算式により計算された金額が控除される税額控除の1つです。

この制度が設けられた目的は、相続発生後の障害者自身の経済面への配慮と、遺産分割協議時に障害者に不利な遺産分割が起こることを防止するためです。
扶養されていた人が亡くなった場合などには、障害者はどうしても健常者と比べ、将来への不安が大きくなります。また、遺産相続においても障害者は他の相続人に比べ、不利な内容で協議を進められる恐れがあります。

そこで障害者控除制度を導入することで、障害者に財産を割り当てるメリットを生み出し、公正公平な遺産分割を実現しようとしています。

2-2.適用要件

障害者控除の適用を受けるためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 相続または遺贈により財産を取得していること
  • 財産取得時において「日本国内」に住所があること
  • 財産取得時において「障害者」であること
  • 財産を取得した人が「法定相続人」であること

つまり、日本国内に住所がある障害者の法定相続人が相続財産を取得した場合に限り、障害者控除の適用対象となるということです。

ひと言に障害者といっても、どのような人が障害者として認められるのでしょうか。 実は税法にはきちんと、適用対象となる障害者の要件まで定められています。

一般障害者
・精神保健指定医などにより知的障害者(軽度・中度)と判定された人
・精神障害者保健福祉手帳(2級・3級)の交付を受けている人
・身体障害者手帳(3級~6級)の交付を受けている人
・戦傷病者手帳の交付(軽度・中度)を受けている人
・6か月以上寝たきりで重い介護を要する人で、一般障害者と同等な障害を持つ者として市町村長等の認定を受けている人
・精神または身体に障害のある65歳以上の人で、一般障害者と同等な障害を持つ者として市町村長等の認定を受けている人
特別障害者
・精神保健指定医などにより知的障害者(重度)と判定された人
・精神障害者保健福祉手帳(1級)の交付を受けている人
・身体障害者手帳(1級・2級)の交付を受けている人
・戦傷病者手帳の交付(重度)を受けている人
・原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている人
・6か月以上寝たきりで重い介護を要する人で、特別障害者と同等な障害を持つ者として市町村長等の認定を受けている人
・精神または身体に障害のある65歳以上の人で、特別障害者と同等な障害を持つ者として市町村長等の認定を受けている人

2-3.控除額

控除される金額は、次の算式により計算されます。

【一般障害者】(85歳-相続した時の年齢)×10万円
【特別障害者】(85歳-相続した時の年齢)×20万円
※相続した時の年齢は、1年未満の端数を切り捨てます。85歳まで1年未満のときは、1年として計算します。

例えば、一般障害者で相続した時の年齢が35歳8カ月であった場合には、 (85歳-35歳)×10万円=500万円 となります。

もし、その障害者の相続税額より控除額が大きくなってしまい控除しきれない場合は、その障害者の扶養義務者で同じ相続人の立場の人であれば、控除しきれない部分を自分の相続税額から控除できます。たとえば、病気の母の面倒を子供が見ている場合などです。

今回が2回目の相続で、過去に障害者控除の適用を受けたことがある場合は、その時の控除額によって今回の控除額が変わる場合もあります。

2-4.必要書類

障害者控除を受けるためには、相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」に、上記の障害者要件を満たしていることを証明するための書類を添付して税務署に提出しなければなりません。

具体的には、障害者手帳のコピーが挙げられます。この他の書類であっても要件を満たしていることが証明できるのであれば大丈夫です。

3.未成年者控除について

3-1.未成年者控除とは

未成年者控除とは、20歳未満の未成年者である相続人に対して適用される制度で、相続税額から一定の算式により計算された金額が控除される税額控除の1つです。その仕組みは障害者控除とまったく同じです。

この制度が設けられた目的は、未成年者が成人になるまでに必要となる教育費の負担等を、税額を軽減することで助けることです。

3-2.適用要件

障害者控除の適用を受けるためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 相続または遺贈により財産を取得していること
  • 財産取得時において「日本国内」に住所があること
  • 財産取得時において「20歳未満」であること
  • 財産を取得した人が「法定相続人」であること

つまり、日本国内に住所がある未成年者の法定相続人が相続財産を取得した場合に限り、未成年者控除の適用対象となるということです。

3-3.控除額

控除される金額は、次の算式により計算されます。

【未成年者】(20歳-相続した時の年齢)×10万円
※相続した時の年齢は、1年未満の端数を切り捨てます。20歳まで1年未満のときは、1年として計算します。

例えば、相続した時の年齢が15歳3カ月であった場合には、 (20歳-15歳)×10万円=50万円 となります。

もし、その未成年者の相続税額より控除額が大きくなってしまい控除しきれない場合は、その未成年者の扶養義務者で同じ相続人の立場の人であれば、控除しきれない部分を自分の相続税額から控除できます。一般的には親権を持つ親が該当します。

今回が2回目の相続で、過去に未成年者控除の適用を受けたことがある場合は、その時の控除額によって今回の控除額が変わる場合もあります。

3-4.必要書類

未成年者控除を受けるためには、相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」に未成年者控除の計算を記載して、税務署に提出する必要があります。

3-5.特別代理人が必要な場合

未成年者は原則として法律行為が行えません。遺産分割や相続放棄も法律行為とされているため、未成年者が遺産分割協議に参加する場合には、代理人を立てる必要があります。

代理人には法定代理人と特別代理人がありますが、この場合には特別代理人のみ認められます。
特別代理人は家庭裁判所が選任するため、次の書類を準備して申し立てを行う必要があります。

  • 申立書
  • 申立人と未成年者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 利益相反に関する書類

この他にも、家庭裁判所の指示により必要となる書類がある場合があります。

4.共通点と相違点

最後に、障害者控除と未成年者控除の共通点と相違点をまとめておきます。

4-1.共通点①:2015年度税制改正

2015年(平成27年)は相続税の大改正が行われ、障害者控除と未成年者控除も改正項目に含まれました。
基礎控除の縮小や最高税率の引き上げなど納税者不利となる改正が並ぶ中、障害者控除と未成年者控除については控除額が拡大され、相続税増税に対する緩和措置となりました。

制度改正前(2014年12月31日以前)改正後(2015年1月1日以後)
障害者控除【一般障害者】
(85歳-相続開始時の年齢)×6万円
【特別障害者】
(85歳-相続開始時の年齢)×12万円
【一般障害者】
(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
【特別障害者】
(85歳-相続開始時の年齢)×20万円
未成年者控除(20歳-相続開始時の年齢)×6万円(20歳-相続開始時の年齢)×10万円

4-2.共通点②:以前に適用を受けている場合

以前に発生した相続において、既に障害者控除や未成年者控除の適用を受けている場合には調整計算が必要になります。
調整計算といっても難しいものではなく、今回の相続での控除額から、既に控除を受けた金額を差し引いた残額が控除額になります

4-3.共通点③:控除しきれない部分は繰り越せる

障害者控除や未成年者控除の控除額が、その適用を受ける本人の相続税額を超える場合には、その超過額は障害者控除や未成年者控除の対象となった人の扶養義務者の相続税額から控除することができます。

それでも引ききれない場合には、次回の相続のときに控除することができます。 せっかくある控除額を無駄にしない有難い仕組みです。

4-4.相違点:海外に居住している場合

海外に居住している場合には、障害者控除と未成年者控除では対象となる人が異なりますので注意が必要です。
相続税では、居住地などの状況に応じてそれぞれ次の名称が定められています。

  • 日本に居住している人…無制限納税義務者
  • 海外に居住していて国内・国外すべての相続財産が対象になる人…非居住無制限納税義務者
  • 海外居住で国内の相続財産のみが対象になる人…非居住制限納税義務者

障害者控除の対象となるのは「無制限納税義務者」のみですが、未成年者控除の対象となるのは「無制限納税義務者」と「非居住無制限納税義務者」です。

【参考】国際相続の基本

まとめ

障害者控除と未成年者控除は税額控除であり、相続税額を直接減らす効果があります。
控除額が最低額の10万円であったとしても、相続税が10万円も減るのです。 適用要件に該当する場合には、必ず適用を受けましょう。

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