平成29年度税制改正:事業承継に関するポイント

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平成29年度税制改革では事業承継に関する内容も含まれます。この度は「非上場株式の評価見直し」と、「事業承継税制の拡充」の2つが目玉になっています。それぞれについて分かりやすい解説します。

1.平成29年度税制改正の考え方と具体的な内容

平成29年度の経済産業における税制改革の考え方は2つあります。「デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置」と「中堅・中小企業者の支援、地域創生の推進」です。

デフレ脱却・経済再生においては、具体的に研究開発税制や雇用拡大促進の見直しが行われています。また、中小企業者支援・地域創生では設備投資関連の税制優遇などを設けています。このうち、2つ目の「中堅・中小企業者支援、地域創生の推進」の中に、事業承継に関する内容が含まれています。

【出典】経済産業省:平成29年度 経済産業関係 税制改正について

2.非上場株式の評価見直しについて

これは上場企業の進展や株価の変動によって、中小企業の本来の株価を計算に影響を与えないようにするための措置です。
平成29年1月1日以降に発生した相続・贈与から適用されます。

変更前の類似業種比準方式による計算

非上場株式の評価方法にはいくつかあります。たとえば類似業種比準方式や、純資産価額方式併用方式などです。このうち平成29年度改正では類似業種比準方式の見直しが行われます

類似業種比準方式とは、簡単に説明すると、同業種の上場株式を参考にして非上場株式の株価を導き出すというものです。計算式は下記のとおりです。

評価額=類似業種株価×(配当+利益×3+簿価純資産)÷5×勘酌率
斟酌率:大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5

本来であればもう少し複雑な計算ですが、ポイントを理解するためにあえて簡略化しています。
この計算式からわかる通り、ポイントは「配当1:利益3:簿価純資産1」の割合になっており利益が重視されている点です。

次節での解説のために、詳細な式を掲載しておきます。

A:類似業種の評価
B:類似業種の1株当たりの配当金額
C:類似業種の1株当たりの利益金額
D:類似業種の1株当たりの純資産金額
b:評価会社の1株当たりの配当金額
c:評価業種の1株当たりの利益金額
d:評価業種の1株当たりの純資産金額
L:斟酌率(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)

【参考】上場株式と非上場株式の評価方法

類似業種比準方式の4つの変更点

平成29年度改正では類似業種批准方式の4つのポイントを見直すことになりました。

  • (1)類似業種株価(A)を「2年間平均」も選択できる
  • (2)比準要素(B、C、D)を連結会計上の数字にする
  • (3)比準要素(B、C、D)のウエイトを「1:1:1」に変更する
  • (4)会社規模(L)の判定基準を見直す

文中、アルファベット文字は、上記の式の記号を指しています。それぞれについてみていくこととします。

(1)類似業種株価(A)を「2年間平均」も選択できる

現行では類似業種株価(A)は2か月ごとに国税庁より出される金額を参考にしていましたが、加えて過去2年間の平均株価も選べるようになります。これによって上場による急激な株価の変化を緩やかなものへと変えられます。

(2)比準要素(B、C、D)を連結会計上の数字にする

比準要素とは、比較のもととなる、配当、利益、簿価資産額のことを言います。これは今までは上場企業のみの業種別の1株当たりの金額によって決まっていました。そこで上場会社の連結子会社も含めることで、外部だけでなく、内情も反映した評価をしやすくなります。

(3)比準要素(B、C、D)のウエイトを「1:1:1」に変更する

変更前は比準要素の中でも利益が重要であることから割合が「1:3:1」と、利益が3倍になっていました。それをすべて「1:1:1」と均等になるように改め、好成長を遂げている企業の負担を大幅に減らせると期待されています。

(4)会社規模(L)の判定基準を見直す

会社規模によって勘酌率(L)が「大会社0.7」、「中会社0.6」、「小会社0.5」と異なり、残りの割合分はその会社の純資産額で評価します。含み益が多い場合、中小会社のほうが負担が重くなります。会社規模の判断基準を見直して、中小会社の株価を抑える効果が期待されています。

3.事業継承税制の拡充について

事業継承税制とは、非上場の自社株を後継者に相続・贈与する際に、一定の範囲まで相続税・贈与税が猶予される制度です。

【参考】事業承継税制:自社株に対する相続税・贈与税の納税猶予

今回の税制改正では、経営者の高齢化に対応し事業継承をより行いやすくします。具体的に2つの面で拡充が実施されます。

人手不足を踏まえた雇用要件を見直す

事業継承税制の適用を受けるためには雇用要件が存在しており、いままでは「5年間平均で従業員数を80%維持」する必要がありました。けれども、中小企業は5人以下の会社も珍しくありません。昨今の深刻な人手不足の状況では雇用を維持することは大変なことです。仮に、従業員数が4人から3人になれば「75%」になってしまい事業継承税制を適用できませんでした。

そこで従業員数2人~4人の小規模会社でも事業継承税制を活用できるよう「5人以下の場合は1人減った場合でも適用可能」と改めることにしています。これによって今まで事業継承税制を適用できずにいた経営者・後継者も、制度を最大限に活用できるように変わります。

早期取組を促すべく生前贈与の税制優遇強化

事業継承税制の最大のデメリットは、贈与の猶予の適用を受けても途中で要件を満たせなくなると取り消されて高額な贈与税を支払う必要があることです。そこで「相続時精算課税」との併用を認め贈与税の税率20%ですむようにします。

相続時精算課税とは贈与税額のうち最大2,500万円までを控除でき、それを超えた分については、超えた金額の20%を贈与税を払えば良いという制度です。

具体例

たとえば、総議決権株式数10000株、1株30000円、株価総額3億円の会社があり、先代経営者は株式全体の3分の2(2億円)を保有しており、後継者(1人)へ当該株式の全株を移転するとしましょう。

先代経営者から後継者へ株式を贈与した時点では、贈与した株式全部(2億円分)に対して、贈与税の納税猶予を適用されますが、もし要件を満たせずに途中で取り消された場合、最高税率が適用され約1億300万円(※)の贈与税を支払う必要がありました。
(2億円-110万円)×55%-640万円

【参考】簡単にできる贈与税の計算

ところが、相続時精算課税を併用できれば、評価額2億円の株式に対する贈与税は3,500万円(※)ですむようになります。
(2億円-2,500万円)×20%

【参考】相続時精算課税制度のメリット・孫への贈与に活用

また、相続税と贈与税では控除額や税率に差がありすぎるため、この構造自体も見直すべきだと考えています。この見直しが進めば、事前に贈与をしても高額な税負担をせずに済むようになるでしょう。

4.事業継承税制のその他のポイント

平成29年度税制改革において事業継承税制内のセーフティネットも見直しがされます。たとえば自然災害が発生したり取引先企業が倒産した場合、事業継承税制の条件が免除されることもあります。
免除される要件としては「雇用80%確保」や「資産管理会社に非該当」などがあります。

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