相続時精算課税制度で2500万円までの贈与が非課税に

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 親族などに財産を引き継ぐ方法として「相続」と「贈与」の2つがあります。
相続は財産を持っている人が亡くなった後に財産を引き継ぐこと、贈与は生前に財産を引き継ぐことです。

この相続と贈与にはそれぞれ相続税と贈与税がかかり、資産を引き継いだ(もらった)側が税金を支払う必要があります。
相続によって税金がかかるのは仕方がないにしても、贈与で資産を引き継いだ(もらった)側に税金を支払う必要があるなら、資産を渡す側も引き渡しにくいですね。そんなときのために「相続時精算課税制度」があります。

1.相続時精算課税制度とは

では、相続時精算課税制度の概要とこの制度ができた背景を見ていきましょう。

1-1.概要

相続時精算課税制度とは簡単にいうと、「相続の時に引き継がれる財産を、前倒しして生前に贈与してもいいよ」という制度です。あくまで前倒しなので、贈与時には贈与税がかからず、相続時に生前に引き継いだものも含めた財産全てに相続税をかけます。

相続時に生前贈与分を精算する制度なので、「相続時精算制度」といいます。生前の贈与時に贈与税がかからないので、贈与がしやすくなる効果があります。とはいえ、あまり多くの財産を不特定の人に贈与するには問題があるので、贈与する相手や金額などに一定の制限があります。

1-2.背景

ここで相続時精算課税制度ができた背景を見ていきましょう。この制度ができたのは平成15年のことです。ちょうど、世界的なITバブルの崩壊などによる不景気から少しずつ景気が回復しつつある時期でした。しかし、まだ国民には景気の回復の実感がなく、将来への不安から、特に高齢者を中心に貯蓄してお金を使わないという風潮が続きました。お金を使わないと景気は良くなりません。

そこで、考え出されたのが相続時精算課税制度です。贈与時に税金がかからないとなれば、高齢者は子に財産を贈与しやすくなります。贈与された子は、高齢者よりも多くのお金を使ってくれる可能性があります。

なおかつ当時、相続税がかかるケースは今ほど多くありませんでした。相続時に贈与した資産を加えるといっても、そもそも相続税がかからないので、生前贈与時に税金をかからなくすれば、お金の流れが活発化し景気が少しでも良くなるだろうという考えのもと相続時精算課税制度が導入されたのです。

2.相続時精算課税制度の詳細

贈与税非課税特例-相続時精算課税制度 

前述したとおり、あまり多くの財産を不特定の人に贈与することは問題があるので、相続時精算課税制度には、贈与する相手や金額などに一定の制限があります。

2-1.制度を利用する人

そもそも、相続税や贈与税を納めるのは誰でしょうか。それは財産を受け取った人です。そのため、相続時精算課税制度を利用する人も財産を受け取った人になります。
財産を受け取った人が、財産を贈与する人ごとに制度を利用するかどうかを選択します。

例えば、祖父と祖母から長男と長女がそれぞれ贈与を受けた場合、長男は祖父と祖母の両方分に相続時精算課税制度を利用し、長女は祖父の分だけ利用するといったことが可能になります。

2-2.適用対象者

受け取った人がお金を使うこと、そして相続が行われることが前提となる制度なので、財産を贈与する人(贈与者)と贈与される人(受贈者)には次の要件があります。

  • 贈与者:贈与した年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母(正確には直系尊属
  • 受贈者:贈与を受けた年の1月1日で20歳以上子供(相続時に相続人と推定される人に限る)または(相続時に相続人と推定される人でなくても良いが、相続時の相続税が高くなる)
    (代襲相続人、養子もOK)

2-3.対象資産

贈与する財産の種類や回数などに制限はありません。

2-4.非課税限度額

贈与財産の合計が2,500万円までは非課税です。2,500万円を超える分は、一律20%の税金がかかります。

2-5.手続き

相続時精算課税制度は、受け取った人がその制度を利用するかどうか選択します。税務署ではその制度を利用したかどうかわからないので、利用した旨を届ける必要があります。

また、贈与を受けているので贈与税の申告をする必要もあります。
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署で申告を行います。

2-6.必要書類

「贈与税の申告書」と「相続時精算課税選択届出書」を所轄税務署に提出します。
その他に、以下のような添付書類が必要となります。詳しくは税務署にお問い合わせください。

  • 受贈者の戸籍謄本または抄本
  • 受贈者の戸籍の附票の写し
  • 贈与者の住民票または戸籍の附票の写しなど(受贈者の状況で異なる)

住民票 印鑑登録

3.暦年贈与との違い

通常の贈与税(暦年贈与)と相続時精算課税制度の違いについて見ていきましょう。

3-1.贈与者・受贈者

暦年贈与の場合は、贈与者・受贈者ともに親族だけでなく第三者でも問題ありません。
相続時精算課税制度の場合は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子供または孫への贈与に限られます。

3-2.選択

相続時精算課税制度では、財産を受け取った人が財産を贈与する人ごとに制度を利用するかどうか選択します。
暦年贈与には選択すべきことがらはありません。

3-3.非課税限度額

暦年課税は毎年110万円まで非課税。相続時精算課税制度は相続が開始されるまでの期間において、合計2,500万円まで非課税です。

3-4.税率

暦年課税は贈与された金額により10%から55%まで税率が変動します。
相続時精算課税制度は2,500万円を超えた部分に一律20%の税率となっています。

3-5.申告

暦年課税は、非課税限度額の110万円までの贈与の場合は申告不要です。
一方、相続時精算課税制度は、非課税限度額の2,500万円以下の贈与でも申告が必要です。

3-6.相続時

暦年課税は相続した財産のみ申告。
相続時精算課税制度は、贈与された財産を贈与時の評価額で相続財産に合算します。

ここで重要なポイントは、相続時に精算するときは、相続時の評価額ではなく贈与時の評価額で精算することです。
たとえば、過去の贈与時に評価額1,000万円であった土地が、相続時には評価額2,000万円に値上がりしていたとしても、1,000万円を相続財産にプラスします。

以上をまとめると以下の表のようになります。

区分歴年贈与相続時精算課税制度
贈与者・
受贈者
親族だけでなく
第三者でも問題なし
60歳以上の父母または祖父母から
20歳以上の子供または孫への贈与に限られる
選択不要財産を受け取る人が、
贈与する人ごとに制度の利用の有無を選択
非課税
限度額
毎年110万円まで相続開始までの間に、
合計2,500万円まで非課税
税率10%から55%2,500万円を超えた部分に一律20%
申告110万円までの贈与の
場合は申告不要
非課税限度額の2,500万円以下の
贈与でも申告が必要
相続時相続した財産のみ申告贈与された財産を
贈与時の評価額で相続財産に合算

3-7.計算例

暦年贈与と相続時精算課税制度のそれぞれの税額について、計算例を挙げておきます。

(例)父から子へ、1年目1,000万円、2年目2,000万円を贈与した場合

暦年課税の場合

親から子への贈与ですので、特例税率を利用します。

1年目:
(1,000万円-基礎控除110万円)×30%-控除額90万円=177万円

2年目
(2,000万円-基礎控除110万円)×45%-控除額265万円=585.5万円

合計762.5万円

【関連】贈与税の特例税率

相続時精算課税の場合

1年目
1,000万円-2,500万円=0 のため納める税金なし 控除残額1,500万円

2年目
非課税額2,500万円のうち1年目で使った残りが1,500万円あるため
(2,000万円-1,500万円)×20%=100万円

合計100万円

上記のとおり、贈与だけを考えると相続時精算課税制度の方が有利です。

4.相続時精算課税制度利用の注意点

相続時精算課税を利用する場合にはいくつか注意をしないといけないことがあります。

4-1.歴年課税に戻せない

一度、相続時精算課税を選択してしまうと、通常の暦年課税には戻せなくなります

上述した通り、暦年課税では毎年110万円の控除があります。
一方、相続時精算課税を利用すると、その人からの贈与は合計2,500万円しか控除がありません。
長い期間にわたって贈与を受ける場合には、暦年課税の方が特になる場合もあるので注意が必要です。

4-2.小規模宅地等の特例の適用ができない

こちらは、自分が住んでいる土地などを贈与すると、後の相続の時に優遇措置を受けられなくなるというものです。
居住用の財産はあくまで住むためのものなので、相続税をかけるのは良くないという考えから、相続税の計算の時にその価値を大きく減額してもらえます。

相続時精算課税を利用するとこの特例がなくなります。土地なので当然価値は大きくなるため、そこにかかる相続税も高くなってしまいます。
もし自分が住んでいる土地などを贈与しようとする場合は注意してください。

【関連】小規模宅地等の特例

4-3.相続時に課税される

相続時精算課税は、贈与時には贈与税がかからなかったとしても、相続時に生前に引き継いだものも含めた財産全てに相続税をかけます
財産が大きい場合などは相続対策などをすることもしばしばありますが、この制度を使ったことを忘れていると、思わぬ高額な相続税がかかる場合もあります。

暦年課税で相続した財産は相続時に合算されることはありませんので、どちらが得なのかトータルでシュミレーションする必要があります。

5.相続税法改正で孫へも適用可能に

平成27年度の相続税法の改正により孫に贈与した場合も、相続時精算課税制度を適用できるようになりました。

【関連】相続時精算課税制度の改正で孫にも適用可能に

例えば財産Aを親から子供に引き継ぐと、そこに贈与税や相続税がかかります。次にその財産Aを子供から孫に引き継ぐと、またそこに贈与税や相続税がかかります。
しかし、親から孫に相続した場合は、一度だけ贈与税や相続税を支払えばよいので、家族単位でみると納める税金が少なくなる可能性があります。

上記の例は限られた条件での話なので必ず税金が安くなるということではありませんが、孫に財産を残したい場合の選択肢が1つ増えたので、いろいろな対策がとれるようになりました。

6.他の非課税制度との併用

祖父母や父母からの財産の贈与には他にも非課税の制度がいくつかあります(次表参照)。
相続時精算課税制度と併用して使うことで、より節税効果を得ることができます。

制度内容最高非課税額
住宅取得等資金住宅を建てたり、購入したりする資金1,200万円
教育資金の一括贈与学校に支払う入学金やその他の教育資金1,500万円
結婚・子育て資金の一括贈与結婚式の費用や新居費用、妊娠や出産、
幼稚園や保育所などの子育て費用
1,000万円

相続時精算課税を考えるときは、こういった制度が使えるかどうかも一緒に考えましょう。

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