相続税で名義預金と認定されるポイントと認定されないための対策
被相続人が子や孫の名義で積み立てていた預金など、亡くなった被相続人以外の名義の預貯金であっても、「名義預金」と認定さ…[続きを読む]
「贈与」とはどういった行為でしょうか?
簡単なようでいて、即座に答えられる方はそれほど多くないのではないでしょうか。
ここでは、贈与とはどんなものか、なぜ贈与税がかかるのか、贈与について基本的な事柄について解説します。
目次
「贈与」の簡単な定義は、贈与する側が財産を無償で譲り渡すことを伝え、贈与される側が承諾することで成立する契約の一種ということになります。
「贈与」の意味は、被相続人が亡くなったときに相続財産が相続人に移転する「相続」と比較するとよくわかります。
相続も贈与も、自分の財産が別の者に移転する点は同じですが、財産を譲り渡すタイミングとあげる側/もらう側の意思表示の有無が異なります。
「相続」では、被相続人(あげる側)が亡くなると、当然に財産は相続人(もらう側)に移転します。
被相続人が「あげます」という意思表示をしなくても、相続人が「もらいます」と意思表示をしなくても、相続は成立します。
「もらいたくない」という場合、つまり、相続したくない場合は、相続放棄をしないといけません。
贈与は、一種の契約です。したがって、贈与者・受贈者双方の意思表示が必要になるのです。
「贈与」は、基本的に贈与者(挙げる側)が生前に、「あげます」と意思表示をし、さらに、受贈者(もらう側)が「もらいます」と意思表示をすることで成立します。
したがって、相続税対策として挙げられる、親が子供名義の銀行口座を作り、そこに少しずつ預金を移しておく「名義預金」は、もらう側の子供が口座の存在を知らず、贈与には該当しません。
本人が生きているうちに贈与するので、「相続」と対比して「生前贈与」と言ったりします。
相続 | 贈与 | |
---|---|---|
財産の移転時期 | 死亡時 | 生前贈与:生前 死因贈与:死亡時 |
意思表示 | 不要 | 必要(口頭でも可) |
財産を譲る側/ もらう側の名称 | 譲る側:被相続人 もらう側:相続人 | 譲る側:贈与者 もらう側:受贈者 |
民法第549条には、「贈与」に関する以下の規定があります。したがって、口頭であっても、「あげる」「もらう」の合意があれば、贈与契約は成立します。
民法第549条(贈与)
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
そして、口頭でした贈与契約は、まだ行っていない部分については取り消すことができますが、既に贈与してしまった部分については、取り消すことができません(同法550条)。
民法第550条(書面によらない贈与の解除)
書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
もっとも、「言った」、「言わない」というトラブルを避けるため、贈与契約は、通常、書面で残すことになり、書面で贈与契約をした場合は取り消すことができません。
贈与には、いくつかの種類が存在します。事例を挙げてご紹介します。
定期的に一定の金額を贈与することを指します。
例)「毎年、100万円ずつ20年間贈与する」
財産を贈与された者(受贈者)に一定の義務を負わせる贈与を言います。受贈者が負担を負わない場合には、贈与者(財産を贈与する者)は贈与契約を解除できます。
例)「土地を贈与するので、かわりに、借金を負担してほしい」
財産を贈与する者の死亡によって実現する贈与です。
例)「私が死んだら家をあげる」
死因贈与と同様に、被相続人の死亡により実現するものに遺贈がありますが、贈与が生前に贈与者と受贈者が行う契約に基づくものであるのに対し、遺贈は遺言書に書き記すことで効力が生じ、財産を受け取る側の意思表示は必要ありません。
なお、この死因贈与の場合のみ、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。
上記以外の贈与になります。贈与の都度、贈与契約が行われます。
一般的に相続対策としてよく出てくる「生前贈与」はこの贈与です。
では、なぜ贈与には贈与税が課されるのでしょうか?
相続で財産を承継すると、相続財産の額に応じて相続税を納付しなければなりません。しかし、生前に贈与で財産を移転させ、相続財産を減らしておけば、相続税の額は少なくなり、納付額について不公平が生じることになります。
そこで、生前贈与に対して贈与税をかけることでこの不公平を防止する制度になっています。
ちなみに、法人から個人への贈与や、個人から法人への贈与については、贈与税の課税対象ではありません。
では、贈与税の基本事項についてまとめておきましょう。
誰が払う? | 贈与を受けた受贈者 |
---|---|
いつ払う? | 贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日まで 1年間に贈与された財産を合計し、まとめて申告・納税 |
どこで払う? | 受贈者の居住地を管轄する税務署 |
いくら払う? | 贈与を受けた財産の合計額が110万円を超えた部分に贈与税が課される 贈与税の税率表を使用し計算 |
注意すべきは、贈与者ではなく受贈者が贈与税を払うことです。そして、基本的に、贈与税は現金で一括納付します。
もらった財産が現金や預金なら、そこから贈与税を納めれば問題ありません。しかし、贈与された財産が不動産の場合には、困ることになります。建物や土地などの不動産の一部を分割してお金にするわけにはいかず、別途、納税用の現金を用意しなければいけません。自分の貯金を切り崩すか、最悪の場合、借金をしないといけなくなるかもしれません。
「延納」といって、納税する期間を延ばして分割して払うこともできますが、利息に当たる利子税をとられますので、どちらにしても、不利な状況となります。
複数の人から贈与を受けた場合は、その金額を合計して、贈与税を申告・納税しますが、贈与税には基礎控除という非課税枠があり、贈与で取得した財産の合計額が110万円までであれば贈与税はかかりません。
たとえば、父親から100万円、母親からも100万円を贈与された場合、贈与を受けた金額それぞれは基礎控除額の110万円以下ですが、合計すると200万円になるため贈与税を申告・納税する必要があります。
なお、贈与財産を入力すると簡単に贈与税を計算できる「贈与税の計算シミュレーション」も是非ご活用ください。
ただし、贈与税の課税において、贈与とみなされるのは、民法の贈与より広い範囲に及び、贈与契約を結ばない行為であっても、贈与と同様に経済的利益があれば贈与とみなされ、贈与税がかかることがあります。これを「みなし贈与」と呼びます。
たとえば、不動産の名義を親から子に変更した場合、親子どちらにも贈与をしたつもりがなくても、実質、親から子へ不動産をあげたのと同じ経済的利益があり、贈与税が課税されることになります。
みなしみなし贈与では、思わぬところで多額の贈与税が発生する可能性があり、注意が必要です。
ここまで贈与と贈与税の基本について、説明しました。
贈与税は他の税金に比べ税率が高く、「みなし贈与」もあることから、贈与は慎重に行いたいものです。
一方で、贈与税には負担を軽減できるいくつかの非課税枠があり、上手く利用することで贈与税を節税することができます。
また、贈与は、後に収めることになる相続税まで考慮して行う必要もあります。
贈与や贈与税については、是非一度、相続税に強い税理士にご相談ください。