生前贈与したお金を子供に無駄遣いさせないための4つの対策術

三世代家族

相続税対策として、子供や孫への生前贈与が盛んになってきていますが、ある悩みが原因で贈与に踏み切れない人も多いのではないでしょうか。その悩みというのは、「お金をあげたら子供が無駄遣いをするのではないか?」ということです。

贈与される子供や孫の側から見て、突然、何百万円あるいは何千万円ものお金が自分の預金口座に入ってきたら、誰しも心が揺さぶられるものです。祖父母や親から「使わずにためておきなさい」と注意されたとしても、贈与された以上は自分のお金であり自由に使えますので、やはりあれば使いたくなるものです。

実際、贈与されてお金が手に入ると、その人の生活水準は上がると言われています。ちょっと高級な家具を買ったり、外食や旅行の回数が増えたりします。これは、本人の立場からすると、無駄遣いという認識はなくプチセレブの仲間入りといった感じでしょうか。

ただ、生活水準が一度あがってしまうと元に戻すのは大変です。気づいたらほとんど全部使ってしまったということにもなりかねません。裕福な生活から貧乏生活に戻るのはみじめなものです。

そこで、「自分の息子/娘だけはそんな人生になって欲しくない」と心配されている方に、生前贈与しても勝手に無駄遣いをさせないための対策方法をお教えします。

対策術①:贈与資金で生命保険を組む

贈与資金を無駄遣いさせない方法の1つ目は、「贈与資金で生命保険を組む」方法です。誰でも出来ることで、比較的取り組みやすい方法と言えるでしょう。

ポイント:生命保険の組み方を工夫する

生命保険と一口に言いましても、契約の仕方には様々なパターンがあります。パターンを間違えてしまうと贈与にならず将来の相続税が増えてしまいます。贈与資金で生命保険を組むには次のようにします。

契約者被保険者受取人
子供(受贈者)被相続人(贈与者)子供

契約者を子供とすることで、子供(受贈者)は毎月の保険料を支払う必要が生まれます。その結果、子供は贈与資金を保険料に充てるため自由に使うことができません。

また、被相続人が亡くなった際に、生命保険金から相続税の納税資金を捻出できます。ただし、契約者=受取人のパターンですので、保険金を受け取った子供には、所得税・住民税がかかります。

【参考】生命保険と相続

注意点:途中解約されにくい金融商品を選ぶ

生命保険によっては、途中解約ができる場合もあります。その結果、子供が途中解約をして贈与資金を無駄遣いする可能性もあります。

もちろん、親心としては「途中解約などしない」と信じたいものです。しかし、万が一の可能性もありますので、契約時点で「途中解約がしにくい保険」や「解約返戻金が少ない保険」を選ぶようにしておくといいでしょう。

対策術②:現金ではなく賃貸物件を贈与する

贈与資金を無駄遣いさせないための2つ目の方法は、「賃貸物件を贈与する」方法です。現金と違って、不動産は簡単に売却・処分できないため、そのまま持ち続ける可能性が高く、賃貸収入も得られるというメリットもあります。

ポイント1:賃貸物件を建設・登記後に贈与する

賃貸物件がすでに存在する場合は大丈夫ですが、新たに建設する場合、まず、親(贈与者)が建設して自分の名義で登記したうえで、子供に贈与することが重要です。なぜなら、親が建設資金を出して子供の名義で登記すると、建設資金自体が贈与金額とみなされる可能性があるからです。

不動産の贈与の場合、贈与税の計算の基となる不動産の評価額は、売買金額ではなく別の指標が利用されます。土地であれば時価の約80%路線価、家屋であれば時価の約70%固定資産税評価額によって決まります。つまり現金よりも不動産の評価額のほうが安くなるのです。さらに、賃貸物件については、空き室でなければ、土地は貸家建付地、家屋は貸家と判定されますので、さらに評価額が小さくなります。

【参考】宅地・家屋の分類と評価

しかし、建設して子供名義で登記してしまうと、建設資金である現金を贈与したとみなされてしまう可能性があり、贈与税も高くなってしまいます。ですので、自分の名義で登記したうえで「不動産として」贈与することがポイントです。

ポイント2:子供(受贈者)に不動産経営を学ばせる

もう一つのポイントは、贈与した賃貸物件の管理運営を子供に任せてやらせることです。子供(受贈者)が賃料収入を受け取り、また管理運営費・税金を支払うことで、不動産経営を学ばせることができます。それなりの期間、不動産賃貸業を経験すれば、賃借人との契約のやりとりや、賃料の相場観、利回りの概念など自然と身についていくはずです。それによって、資産を維持・増殖させるための方法を学び、将来安定して子孫に引き継いでいくことが可能になります。

注意点:賃貸物件を売却されないようにする

賃貸物件を贈与すると、その管理・処分は子供(受贈者)の自由になります。よって、賃貸物件を勝手に売却される可能性もあります。

現実的には需要と供給の関係から、売却までに時間はかかります。また、売却に費用もかかるため、メリットは多くありません。しかし、子供(受贈者)が決心すれば、いつでも売却できるため、賃貸物件を処分され、無駄遣いされてしまう可能性もあるでしょう。

なお、賃貸物件の贈与に当たっては、税理士等にご相談のうえ正しく評価を行ったうえで進められるのが良いでしょう。

対策術③:民事信託を利用する

対策術②の注意点である「勝手に売却される」ことを防ぐ方法として、民事信託を活用する方法もあります。契約次第で簡単に贈与できるため、オススメの方法です。なお、正しく契約するために、相続問題に詳しい弁護士等の専門家に必ずご相談ください。

ポイント:自己信託の契約をする

民事信託とは委託者受託者受益者の三者によって成り立つ契約のことです。簡単に説明をすると、「委託者は受託者に委託内容を依頼し、受託者はその通りに行為をして、その行為によって得た利益を受益者が受け取る」契約です。そして、下記の通りに信託契約を結びます。

委託者受託者受益者
被相続人(贈与者)被相続人(贈与者)子供(受贈者)

この「委託者」と「受託者」が同一人物の、信託契約方法を「自己信託と言います。この契約をすると、契約をした時点で賃貸物件は子供に贈与されたことになりますが、賃貸物件を管理する権利は被相続人が持っていますので自ら賃貸経営を行い、その利益を子供に贈与できます。その結果、賃貸物件を勝手に売買されることを防げます。

【参考】相続対策のための「民事信託」、基本から活用方法まで

注意点:公証証書が必要になる

自己信託を結ぶには、公証証書で契約書を作成する必要があります。翻って言うと、公証証書以外で作成された契約書は、一切の効果を持ちません。したがって、被相続人は面倒ではありますが、公証証書の手続きを経る必要があります。

なお、手続きが大変な場合は、配偶者など別の人を受託者としたうえで下記の通りに信託契約を結ぶ方法もあります。

委託者受託者受益者
被相続人(贈与者)配偶者子供(受贈者)

この契約内容であれば公証証書は必要ありません。もし契約内容に心配事があれば、弁護士等に相談をするようにしましょう。

対策術④:NISAを活用する

子供に無駄遣いをさせない方法の4つ目に「NISA」を活用する方法があります。「NISA」は株式の売買利益や配当額について一定金額まで非課税になりますので、一度検討してみるのもいいでしょう。

ポイント:ジュニアNISAを活用する

NISAの種類の1つに「ジュニアNISA」と呼ばれる金融商品があります。この商品の特徴は20歳未満の子供向けに口座開設ができる点です。本来のNISAは20歳以上でないと組めませんが、未成年でもNISAを利用できます。

また「ジュニアNISA」の場合は、口座管理は親権者が代理で行うことになりますので、子供が勝手にお金を引き出して、無駄遣いをする恐れがないのです。

注意点:20歳以上になると引き出し可能

ジュニアNISAは、20歳未満の子供向けに開設されていますので、未成年の子供の場合に限り、親権者の許可なく払い出しができません。

しかし、20歳を超えると、本人の意思で払い出しができるようになります。成人すると無駄遣いされる可能性があるため、効果が限定的だと認識しておくべきでしょう。

ジュニアNISAは本格的に子供・孫への贈与に利用するというよりも、株式の運用を通して子供・孫にお金の概念を学ばせ、贈与しても大丈夫な人間に成長させるくらいの感覚でいたほうが良いかもしれません。

贈与資金を子供に無駄遣いさせないための対策術のまとめ

生前贈与したお金を子供に勝手に無駄遣いさせない方法を4つ紹介しました。どの対策も一定の効果がありますが、欠点もあります。ただし、名義預金をしておくよりも、少なくとも効果はあるでしょう。もし贈与を検討しているのであれば、いずれかの方策を取ってみるのも良いかもしれません。

あとは、王道ですがやはり子供にしっかりお金の管理・運用に関する教育をすることが重要と思われます。子供がしっかりしていさえすれば、何の心配もなく贈与できるのですから。

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