こんな場合でも発生するの?みなし贈与にご注意を
借金を免除してもらったり、何かを低額で購入したりなど、何気ない行動が「みなし贈与」として贈与税の対象になってしまうこ…[続きを読む]
生前贈与は、確かに相続税対策として有効です。しかし、贈与したからと言って安心してはいけません。
相続開始前3年以内の贈与は、遡って相続財産に加算されてしまうのです。
そこで、今回は、相続開始前3年以内の生前贈与加算の対象となる者、加算されないケース、注意点などについて解説します。
目次
まずは、生前贈与加算の制度の概要についてご説明します。
相続税法では、被相続人から生前に贈与を受けた金額のうち、相続開始前3年以内に行われた贈与額については、相続税課税価格に加算して計算しなければなりません。 この規定のことを生前贈与加算といいます。
死亡する直前に駆け込みで行われた贈与については相続財産に含み、贈与がなかったことにすることで、租税回避行為を防止する目的で設けられています。
生前贈与加算の対象になる贈与は相続税の課税価格に含まれるため、生前贈与はなかったものとなってしまいます。
では、贈与時に贈与税を納めていた場合には、支払った贈与税はどうなるのでしょうか?
生前贈与加算される贈与について既に贈与税を支払っている場合には、加算後に算出された相続税からその納付済み贈与税を差し引くことができます。これを贈与税額控除といいます。
ただし、納付済みの贈与税の額が発生した相続税の額を超える場合には、相続税は0円となりますが、差額の還付を受けることはできません。
条文によれば、生前贈与加算の対象となるのは、「相続または遺贈により財産を取得した者」です(相続税法19条)。
したがって、遺贈や「みなし贈与」によって財産を取得した人は、相続人ではなくても生前贈与加算の対象となり得ます。
対して、相続人であっても、被相続人の死後、遺贈をされず、相続もしなかった人は対象外です。
生前贈与加算として相続税の課税価格に加算される金額は、その財産の贈与があった時の時価で計算します。
例えば、贈与財産である土地の価格が、贈与時から相続開始時まで下がり続けていた場合には、高かった贈与時の地価が生前贈与加算されることなります。
反対に、贈与後、贈与財産の価格が上がり続けている場合には、万一生前贈与加算の対象となったとしても、贈与時より低い価格が相続税課税価格に加算されるためメリットがあります。
贈与税には、年間110万円の基礎控除という非課税枠があります。しかし、生前贈与加算では、110万円以下の贈与であっても、相続開始前3年以内であれば、相続税課税価格に加算されます。
生前贈与加算の対象となるのは、相続開始前3年以内の贈与です。被相続人が死亡した日の前日以前3年間分であり、被相続人が死亡した年に行われた贈与ももちろん対象となります。
「死亡した年の贈与だから、もう相続財産として申告しよう」では通用しません。相続開始日を境にきっちりと分けなくてはなりません。
相続または遺贈により財産を取得した人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産であっても、次のように加算しなくてよい例外的なケースもあります。
被相続人の生前に贈与された財産であっても、次の特例の適用を受けた場合は、控除額相当額、非課税の適用を受けた額は、生前贈与加算の対象外となります。
相続人が被相続人の相続続開始前3年以内に贈与された財産であっても、その相続人に相続や遺贈による財産の取得がなかった場合には、生前贈与加算の対象外となります。
相続人以外の人が被相続人の相続続開始前3年以内に贈与を受けていたとしても、遺贈やみなし財産の取得がなければ、生前贈与加算の対象外となります。
例えば、孫や子供の配偶者などに相続開始前3年以内に贈与を行ったとしても、その人に遺贈やみなし贈与がない場合は、生前贈与加算の対象外となります。
生前贈与加算で見落としやすいポイントを解説します。
孫は相続人ではないため遺贈・みなし贈与がない限り、生前贈与加算の対象外となります。
ただし、孫の親(被相続人の子供)が既に死亡している場合には、孫が代襲相続人となり、その孫に相続開始前3年以内に贈与をすれば、生前贈与加算の対象となります。
生命保険金は生前に受取人を指定することができ、誰に財産を渡すか被相続人が決めることができます。このような財産をみなし相続財産といいます。
みなし相続財産は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはなりません。よって、生命保険の受取人である孫に相続開始前3年以内に贈与をすると、遺贈と同じ扱いとなり生前贈与加算の対象になってしまいます。
被相続人が相続時精算課税制度を選択していた場合には、相続開始前3年以内の贈与に限定されず、これまで相続時精算課税が適用されてきた贈与財産のすべてを相続税の課税価格に加算して相続税を計算しなければなりません。
相続時精算課税制度について、詳しくは、以下の関連記事を是非お読みください。
相続税対策として贈与をしても、3年以内に相続が開始してしまえば、せっかくの対策が無駄になってしまいます。
そのためには、できるだけ早めに贈与を開始することです。
また、相続人に該当しない孫などに対しての生前贈与や、加算対象から外れる特例の適用なども併せて検討すべきです。
相続税対策としての贈与についても、相続税に強い税理士に相談することをお勧めします。