住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入している場合の相続税
住宅ローンを借りてマイホームを購入する場合は、団体信用生命保険に加入することが多いです。この団体信用生命保険は相続税に影響を与えるため、気を付ける必要があります。
住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入している場合、相続税にどのような影響を与えるか解説します。
1.住宅ローンは負の財産
相続財産といえば、現金や預金、不動産などを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、現金や預金、不動産といったものだけではありません。相続財産には大きく分けて「本来の相続財産」「みなし相続財産」「負(マイナス)の財産」があります。
①本来の相続財産 | 本来の相続財産は、現金や預金、不動産など、 相続開始時点で被相続人(亡くなった人)が 実際に所有していた財産のことです。 |
---|---|
②みなし相続財産 | みなし相続財産は、相続開始時点で被相続人の手元にはないが、 相続財産と同じとみなす財産のことです。 例えば、死亡後に支払われる生命保険金や退職金などです。 |
③負(マイナス)の財産 | 相続では、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も引き継ぎます。 負の財産とは、借入金といった負債などです。 負の財産がある場合は相続財産から控除することができます。 |
では、住宅ローンは上記3つのどれに該当するでしょうか。住宅ローンは借入金と同じで負の財産です。そのため相続税の計算上、財産総額から控除できます。
例えば、現預金1,000万円、住宅4,000万円、住宅ローン残高2,000万円を引き継いだ時の相続財産の価値は、現預金1,000万円+住宅4,000万円-住宅ローン残高2,000万円=3,000万円になります。
2.団体信用生命保険に加入している場合
では、住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入している場合について見ていきましょう。
団体信用生命保険とは、住宅ローン専用の生命保険のことです。住宅ローンを借りた人が亡くなった場合や高度障害の状態になった場合に、その時点の住宅ローンの残高が保険金で借入先の金融機関に支払われ、住宅ローンの残高は消滅します。この場合、相続税にはどう影響を与えるのでしょうか。
団体信用生命保険の保険金により、住宅ローンの残高が消滅するということは、住宅の評価額がそのまま本来の相続財産として残ることになります。
例えば、上記の例の場合は、現預金1,000万円+住宅4,000万円=5,000万円が相続財産の価値となります。
現在では、団体信用生命保険に加入することが住宅ローンの契約ができる条件となっていることがほとんどです。そのため、相続財産に住宅ローンを借りて取得した住宅がある場合は、団体信用生命保険に加入しているかどうか契約内容の確認をする必要があります。
住宅を購入してから長い年月を経過している場合は、住宅そのものの価値も低くなっていることが多いので、影響が少ない場合もありますが、住宅ローンを組んだばかりの夫婦で住宅の所有者が亡くなると、突然、大きな相続財産になってしまいます。
例えば、都内では時価5000万円以上のマンションも多くあります。その場合は相続税の金額が高くなったり、相続人同士のトラブルが起こる可能性もあるので、注意が必要です。
2-1.通常の生命保険と団体信用生命保険との違い
ちなみに、一般的な生命保険と団体信用生命保険との違いは、次のとおりです。
団体信用生命保険 | 一般の生命保険 | |
---|---|---|
①死亡保険金 | 手元に保険金が入らない | 手元に保険金が入る |
②住宅ローン | 住宅ローンがなくなる | 住宅ローンは残る |
③相続財産 | 生命保険金は相続財産にはならない (住宅の評価額が、 そのまま本来の相続財産) | 生命保険金が、 みなし相続財産(※)になる |
※ただし、500万円 × 法定相続人の数の非課税限度額があります。
3.抵当権抹消の手続き
団体信用生命保険に加入している場合は、住宅に抵当権が設定されています。団体信用生命保険により住宅ローンがなくなったとしても、金融機関が抵当権を抹消することはありません。そこで、相続人が抵当権抹消の手続きをする必要があります。
原則、相続人が抵当権抹消をする場合は、先に自宅の相続登記を済ませておかなければなりません。そのため、住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入している場合は、相続登記と抵当権抹消登記はセットで行います。実は抵当権抹消登記は、義務付けされているわけではありませんが、後々のトラブルを避けるためも必ずしておきましょう。
相続登記や抵当権抹消登記は自分でもすることができますが、書類の作成方法など、わからないことがあれば司法書士に相談することをおすすめします。また、相続税の申告等で税理士に依頼している場合は、税理士から司法書士を紹介してもらえることもあります。一度、依頼している税理士に相談してみるのも1つの方法です。