東京都多摩地域の公示価格と路線価【2020年(令和2年)】

2020年1月1日を基準日とした公示価格と路線価が発表になっています。
多摩地域は、東京都でありながら、東京23区とは違った姿が見られます。
今回は、東京都多摩地域の公示価格および路線価の実態や傾向を追いながら、その特徴を見ていきます。
この公示価格や路線価の動向や傾向を見ていくことにより、みなさんがお持ちの不動産の有効活用や、今後の相続対策に活かすことができます。
1.東京都多摩地域の公示価格と路線価の特徴について
1-1.公示価格は上昇傾向!
公示価格は、国土交通省が、毎年1月1日を評価時点として3月下旬に発表する指標で、一般的な土地取引の公的指標として扱われています。
多摩地域の公示価格を見てみると、多摩地域全域の住宅地の2020年平均変動率は0.8%になっており、前年の変動率1.0%から0.2%下回った変動率となりました。
変動率が0.2%減少したとはいえ、0.8%のプラスですので、公示価格自体は上昇しています。
多摩地域全域の商業地の2020年の平均変動率は2.5%で、前年の変動率2.4%と比べると、0.1%変動率が上昇しています。
商業地は、公示価格も変動率も順調に上昇しています。
23区内の再開発によって利便性や立地条件が良くなったことで、ベッドタウンとして優れていた多摩地域の住宅地としての利点が少なくなったのが、住宅地の変動率が減少した一因と考えられます。
一方で、郊外に大型商業が多く建設され、都心部からも人気を集めることから商業地としてはプラスになった地域が増え、全体的な公示価格および変動率の上昇に繋がったといえるのではないでしょうか。
ここでは、国土交通省が発表した2020年分の公示価格について、詳細に見ていきます。
多摩地域の公示価格変動率の傾向
まず、公示価格の変動率の傾向を見てみます。
東京圏の地域別対前年平均変動率(変動率:%)
住宅地 | 商業地 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2019年 | 2020年 | 2019年 | 2020年 | |||
全国平均 | 全区域 | 0.6 | 0.8 | 2.8 | 3.1 | |
東京都 | 全区域 | 3 | 2.8 | 6.8 | 7.3 | |
東京都 (地域別) | 東京都区部 | 4.8 | 4.6 | 7.9 | 8.5 | |
東京都区部 | 区部都心部 | 6 | 6.4 | 8.8 | 9.6 | |
区部南西部 | 4 | 3.7 | 6.7 | 7 | ||
区部北東部 | 5.1 | 5 | 7.4 | 7.7 | ||
多摩地域 | 1 | 0.8 | 2.4 | 2.5 | ||
神奈川県 | 全区域 | 0.3 | 0.4 | 2.4 | 2.7 | |
埼玉県 | 全区域 | 0.8 | 1.1 | 1.7 | 2.2 | |
千葉県 | 全区域 | 0.7 | 0.8 | 3.6 | 4.1 | |
茨城県 | 全区域 | △ 0.5 | △ 0.4 | △ 0.2 | △ 0.2 | |
東京圏 | 全区域 | 1.3 | 1.4 | 4.7 | 5.2 |
※1 区部都心部:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区の各区
※2 区部南西部:品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区の各区
国土交通省が発表している2020年公示価格について、全国平均/東京都平均と多摩地域の公示価格を比較してみます。
全国平均/東京都平均/多摩地域平均を見てみると、全て変動率はプラスになっており、平均の土地価格は上昇しているのがわかります。
しかし、個別に見てみますと、住宅地の変動率については、多摩地域0.8%と全国平均と同じであり、公示価格自体は上昇していますが、東京都平均2.8%、東京都23区4.6%と比べるとかなり低いのが見て取れます。
商業地の変動率については、全国平均3.1%に対して、多摩地域では2.5%と全国平均を下回っています。多摩地域2.5%に比べて、東京都平均7.3%および東京都23区8.5%と非常に高い変動率を示していますので、商業地については、住宅地以上に、東京23区と多摩地域の差が開いていっています。
多摩地域の地域別の比較
次に、多摩地域の地域別の公示価格の変動率の傾向を見てみます。
下記は表は、多摩地域各市の地域別対前年平均変動率、および、住宅地の平均価格です。
都県及び市区名 | 住宅地 | 住宅地 | 商業地 | ||
---|---|---|---|---|---|
2020年 | 2019年 | 2020年 | 2019年 | 2020年 | |
平均価格 | 変動率 | 変動率 | 変動率 | 変動率 | |
都区部平均 | 4.8 | 4.6 | 7.9 | 8.5 | |
多摩地域平均 | 1.0 | 0.8 | 2.4 | 2.5 | |
八王子市 | 116,700 | 0.2 | 0.2 | 0.9 | 1.6 |
立川市 | 250,700 | 2.1 | 1.8 | 5.3 | 4.6 |
武蔵野市 | 565,300 | 3.3 | 2.7 | 6.9 | 7.3 |
三鷹市 | 414,000 | 2.9 | 2.2 | 3.5 | 3.4 |
青梅市 | 94,500 | △ 1.0 | △ 1.2 | 0.1 | 0.1 |
府中市 | 292,700 | 1.3 | 1.3 | 2.2 | 2.3 |
昭島市 | 186,700 | 1.3 | 0.5 | 2.1 | 1.9 |
調布市 | 338,000 | 1.6 | 1.9 | 3.4 | 3.8 |
町田市 | 156,700 | 0.1 | 0.1 | 1.6 | 1.9 |
小金井市 | 337,900 | 2.7 | 2.7 | 4.6 | 5.7 |
小平市 | 229,900 | 1.0 | 1.0 | 0.9 | 1.1 |
日野市 | 190,800 | 0.7 | 0.0 | 2.8 | 2.4 |
東村山市 | 187,300 | 0.7 | 0.6 | 0.9 | 1.0 |
国分寺市 | 289,100 | 1.7 | 1.3 | 2.2 | 1.3 |
国立市 | 340,000 | 2.3 | 1.3 | 2.8 | 2.1 |
福生市 | 165,100 | 0.7 | 0.7 | 0.9 | 0.7 |
狛江市 | 308,800 | 1.4 | 2.0 | 2.0 | 2.7 |
東大和市 | 169,500 | 0.7 | 0.3 | 0.2 | 0.2 |
多摩地域全体の変動率を見ると、住宅地では、2019年1%であったのが、2020年0.8%となっており、土地価格は上昇し続けていますが、その変動率は鈍化しています。
一方、商業地では、2019年2.4%であったのが、2020年2.5%と多少ではありますが、変動率も上昇しています。
個別に見てみますと、住宅地については、変動率がマイナスの地域が3箇所ありますが、商業地については、変動率がマイナスの地域はありません。
多摩地域平均で見ると、住宅地より商業地の変動率が大きく、商業地の価格上昇が大きいと読み取れます。
この傾向は、全国平均でも東京都平均でも見られる傾向です。
2020年変動率の上昇が最も大きかった住宅地・商業地は、それぞれ次の2つの市です。
- 住宅地:稲城市2.9%
- 商業地:武蔵野市7.3%
逆に、2020年変動率の上昇が最も小さかったのは、
- 住宅地:青梅市マイナス1.2%
商業地:あきる野市0%
となっています。
住宅地の価格については、武蔵野市が565,300円/㎡で一番高く、青梅市が94,500円/㎡で一番安くなっています。
1-2.路線価も上昇傾向! 公示価格同様に二極化を表す結果に
相続税や贈与税の税額を算定する際に使用される不動産評価額。その基準値となっているのが、国税庁が発表している路線価です。
路線価は、同じ1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に、国税庁が評価して公示されます。
公示価格の約80%が路線価であり、国税庁の路線価と国土交通省の公示価格の変動については、同じような傾向があると考えられます。
令和2年分の「標準宅地の対前年度変動率」の「全国平均」と「東京都平均」は次のようになります。
2019年 | 2020年 | |
---|---|---|
全国平均 | 1.3% | 1.6% |
東京都平均 | 4.9% | 5.0% |
2020年の路線価の全国平均の変動率1.6%なのに対して、東京都全体の平均は5.0%であり、路線価自体の上昇率は比較的高いと考えられます。
一方、全国平均に比べて、東京都平均の変動率自体は昨年からほとんど変化がなく、頭打ちの感があります。
国税庁の路線価と国土交通省の公示価格の傾向はほぼ同じと考えられますので、東京都区部と多摩地域の路線価の傾向の比較については、公示価格の傾向を見てみます。
前述の公示価格のところで見てきましたが、公示価格について、東京都全体でみると変動率が非常に大きいですが、東京都区部と多摩地域を比べると、東京都区部と多摩地域にはかなり差があり、東京都区部と多摩地域の差が開いていっており、二極化を表す結果となっています。
また、多摩地域内で見ても、変動率が比較的高い市と低い市の二極化が見られるようになってきています。
路線価についても、このような公示価格の傾向と同じと考えられます。
2.多摩地域の地域事情と地価について
ここでは、多摩地域の各市の地価の特徴を、特に住宅地についてに見ていきます。
前記の表「対前年平均変動率、住宅地の平均価格」を参照ください。
住宅地価の平均価格を市ごとに見ますと、
40万円以上は、武蔵野市565,300円、三鷹市414,000円の2市、逆に、10万円以下は、あきる野市98,600円、青梅市94,500円の2市と、かなり差があります。
また、同様に、住宅地価の変動率についても、青梅市マイナス1.2%〜稲城市2.9%まで地域によって差があります。
地域によって、それぞれ自治体地域事情や地価/変動率が違います。それぞれの地域事情をしっかりと把握していきましょう。
2-1.武蔵野市
武蔵野市は、学校やアニメーション・飲食業などの企業が多く集まっており、近隣の区市から通勤者や通学者が多いのが特徴です。昼夜人口では昼間の人口のほうが上回っています。この地域が多摩地域の経済の中心地として機能していると考えられます。
武蔵野市の住宅地価平均は565,300円/㎡、前年から2.7%上昇しています。
この地価は多摩地域で最も高額で、変動率も多摩地域で2番目の上昇率となっています。
住宅地と商業地どちらも需要が高く、住宅地だけでなく、商業地の変動率は多摩地域で1番の上昇率となっています。
2-2.三鷹市
武者小路実篤や太宰治など、多くの文豪が暮らした「文士の街」として知られています。
セーフティネットの整備や官民を一体化したプロジェクトなどに古くから積極的に参加しており、さまざまな暮らしやすさ・働きやすさを実現してきた市です。
三鷹市の住宅地価平均は414,000円/㎡、変動率は2.2%で前年よりも地価が上昇しています。三鷹市のほとんどの地域は住宅地として活用されており、利便性と豊かな自然が融合した住宅街が形成されています。
住みやすく暮らしやすい特徴が23区や都心部のベッドタウンとして最適なため、住宅地としての需要が伸び地価の上昇を促しています。
2-3.立川市
商業施設やオフィスビルが集中して建設されており、多摩地域の中心都市として機能しており、商業施設やオフィスが集積しています。中心駅である立川駅は3つの路線が乗り入れるターミナル駅で、多摩地域で最大の乗車数を記録している交通の要にもなっている市です。
立川市の住宅地価平均は250,700円/㎡、前年より1.8%上昇しています。
立川駅周辺は多摩地域の中でも有数の商業地となっており、大型商業施設が立ち並ぶ繁華街が形成されています。地区を代表する商業地域だからこそ、需要が下がることはなく年々地価が上昇しています。
2-4.小金井市
東京都のほぼ中央部に位置している小金井市です。
中心駅である武蔵小金井駅は市の中心に建設されており、東西と南北それぞれを横切るように街道や鉄道が走っているのが特徴的な市です。
小金井市の地価平均は337,900円/㎡、前年からの変動率は2.7%のプラスとなっています。
変動率は、多摩地域で2番目に高い上昇率となっています。
小金井市に拠点を置く企業はあまりなく、市のほとんどが住宅地として活用されています。しかし、市内には公園などの緑が多く存在し、武蔵野市や立川市へのアクセスが簡単な、利便性が高く暮らしやすい住宅街が形成されています。そのため、都心部だけでなく多摩地域の中心地のベッドタウンとして需要が高まり、それが地価の上昇に繋がっていると考えられます。
2-5.国分寺市
企業の研究所などはあるものの、市の大半は住宅地として活用されています。
市の中心駅である国分寺駅には3路線が乗り入れており、各路線の接続駅として機能しています。
国分寺市の住宅地価平均は289,100円、前年より1.3%上昇しています。
国分寺市は立川市に隣接しており、武蔵野市など多摩地域の中心都市から近く、都心部へのアクセスも難しくありません。こうした立地条件が国分寺市のベッドタウンとしての機能を高め、人気を集めているのです。
2-6.調布市
23区のうち世田谷区と隣接しており、神奈川県との県境にもあたります。
市内では現在でも農業が盛んに行われ、都市農業を行うための農地も残されています。加えて、都心に近く高速道路など陸路の交通網が整備されていることから、食品関連の製造業を取り扱う企業が多く、市の重要な産業として発展しています。
調布市の地価平均は338,000円/㎡、前年より1.9%上昇しています。
調布駅や国領駅は市の中心となる駅のため、周辺には大型商業地などが建設され多くの人で賑わっています。
また、調布市は多摩地域の玄関口にもあたるため、この商業の活発さが地価の上昇にも影響を与えています。
商業地の公示価格の上昇率3.8%と、高い上昇率を示しています。
2-7.国立市
文教地区に指定されており、高校や大学などが集まる地域では学校を中心とした街づくりが行われている国立市です。
この文教地区による建築物の制限は、市全体の景観にも影響を与えており、現在のような緑が豊富で閑静な住宅街が出来上がったベースにもなっています。
国立市の住宅地価平均は340,000円、前年よりも1.3%上昇しています。
国立市では農業や工業が市の主要な産業になっているのですが、市の多くは住宅地として活用されています。都心の近くでありながら自然と調和した住宅街が形成されていることから需要を集めている人気エリアです。
2-8.府中市
古代の遺跡が今でも多く残り、時代とともに政治や経済の拠点がおかれていました。
古くからさまざまな中心地として発展してきた歴史があり、府中駅を中心に現在では行政機関や大企業の研究開発所や工場等の大規模な施設が多く、商業施設や高層住宅などが立ち並ぶ都市が形成されています。
府中市の地価平均は292,700円/㎡、変動率は1.3%のプラスです。
府中市は都心部や多摩地域の中心都市に近いのですが、市内にも多くの企業が進出しています。そのため、職場と住居が両立した生活環境が整えられており、ベッドタウンとは違った新たな魅力を作り出したことが地価の上昇に繋がっていると考えられます。
2-9.狛江市
東京都の市の中では最も小さく、全国でも2番目に小さな市である狛江市です。
世田谷区と隣接しており、多摩地域で区部と隣接している5つの市の1つでもあります。面積は小さいのですが人口は増加傾向にあり、人口密度も高くなっています。
狛江市の住宅地価平均は308,800円/㎡、前年から2%上昇しています。
狛江市は面積が小さいことからあまり企業の進出はなく、市の大半が住宅地として活用されています。しかし、区部に近く多摩地域の中心都市へもアクセスが手軽という利便性の高さから、生活拠点としての人気が高まっています。
2-10.西東京市
23区のうち練馬区と隣接し、埼玉県との県境になっている西東京市です。
市内には耕地や水田などが残っていますが、機械製品や食品、不動産に関する事業所が多く進出しており、製造業や建設業が市の重要な産業になっています。
西東京市の住宅地価平均は288,700円/㎡、前年よりも1.6%上昇しています。西東京市の中心駅である田無駅や西武柳沢駅の周辺には商業施設が多く建設されています。また、市内にも事業所はいくつもあるのですが、昼間人口は非常に少なくベッドタウンとしての働きが強く現れている市です。
2-11.小平市
戦後の都心部の住宅不足を補うために住宅地として活用されていた小平市です。
現在でも農業が積極的に行われており、ブルーベリーは3大名産地の1つとなっており、市を代表する名産品としても有名です。
小平市の地価平均は229,900円/㎡、前年から1%上昇しています。
小平市は都心部に代わる住宅地として発展してきた歴史があるため、現代でもベッドタウンとしての機能を発揮し人気を集めています。また、大学や専門学校の誘致が多く行われたことから、若者が多く集まる街としても知られています。
2-12.町田市
東京都の南部に位置していることから、横浜市、川崎市、相模原市という神奈川県の中心都市部と隣接しています。実は、東京都内よりも神奈川県との関わりが強く、盛んに交流が行われている市です。
町田市の住宅地価平均は156,700円、変動率は0.1%で、ほぼ横ばいです。
町田市は南多摩地域や相模原市などを含む総武経済圏の中心的な役割を担っており、飲食業などが活躍する商業地として大きく発展しています。また、東京都心部や横浜市などのベッドタウンとしても優れているため、変動率は高くないですが上昇傾向を示しています。
2-13.多摩市
利便性の高さや市の財政の安定性などから、住みやすさ、暮らしさが高い市として知られている多摩市です。
市の南部には多摩ニュータウンという新興住宅街が広がっており、教育、文化、商業など全ての機能を備えた新しい市街地の形成を目指しています。
多摩市の地価平均は184,400円/㎡、変動率はプラスマイナスゼロです。
多摩市には多摩ニュータウンの他にも、桜ヶ丘にも大規模な宅地開発が行われており、こうした宅地開発によって人口も増えています。ただ、ここ数年は少子高齢化などの影響を受けており、新たな街づくりが行われ始めています。
2-14.東久留米市
小麦の栽培が活発に行われていたことから、現在で柳久保小麦やそれを使用したうどんなどの特産品が有名な東久留米市です。
食品を扱う工場がいくつか建設されていますが、市の大半は基本的には住宅地として活用されています。
東久留米市の住宅地価平均は215,500円/㎡、変動率は0.8%のプラスです。
東久留米市の昼夜人口の差は大きく、特に昼間人口は東京都内で狛江市、稲城市、西東京市に次いで4番目に小さい数字であることからも、市内の企業や工場が少ないことが分かります。また、東久留米市では高齢化が進んでおり、相続が起こる可能性が高い地域でもあります。
2-15.稲城市
梨やブドウの産地として有名な稲城市です。
西武は多摩ニュータウンの一部として開発されたことに続き、鉄道の沿線地域も開発が行われたことから、暮らしやすさが大きく向上しました。こうした大きな都市開発の影響を受けて人口が急増し、現在でも人口増加が続いています。
稲城市の地価平均は228,000円/㎡、前年より2.9%上昇しています。多摩地域では一番の上昇率です。
稲城市は南多摩駅の周辺などには商業施設が多いものの、市のほとんどは住宅地として活用されています。その中で地価が上昇しているということは、大規模な都市開発によって誰にとっても利便性が高い生活拠点として機能しており、大きな人気と需要を集めていることがいえるでしょう。
2-16.東村山市
都心部まで20分前後で移動できるため、古くからベッドタウンとして開発が行われていた東村山市です。
東村山市の地価平均は187,300円/㎡、前年から0.6%上昇しています。ベッドタウンとして開発が行われていたことから、市の多くは住宅地として活用されています。しかし、都心へのアクセスの良さから食品を取り扱う工場も多く、ベッドタウンでありながらある程度市内の産業が成長していることが、地価の上昇に繋がっていると考えられます。
2-17.日野市
かつて甲州街道の宿場町として発展していた日野市です。
大規模企業や大規模団地も進出していますが、多摩地域としては水田や野菜畑などの農地が占める割合が高く、都市農業の代表的な都市として紹介されることもあります。
日野市の住宅地価平均は190,800円/㎡、前年からの変動率はプラスマイナスゼロです。
財政を整えるために工場誘致を行っており、現在でも多くの工場が建設されている工業都市でもあります。そのため、工場の周辺には団地が形成されており、農地などの自然が豊富に存在していることから、工場などの需要以外に住宅地としても需要を集める地域です。
2-18.清瀬市
日野市と同じく農業が市の主要な産業になっている清瀬市です。
農地が市域の40%を占めており、市内農地の80%以上が生産緑地に指定されています。根菜の栽培に適した土地柄であることからニンジンの出荷量が多く、市の名産品としてにんじんジャムやにんじん焼酎などが販売されています。
清瀬市の住宅地価平均は185,600円/㎡、前年と比べて0.5%上昇しています。
清瀬市は農地が広がっており、他の土地は住宅地として活用されており、商業施設などは清瀬駅周辺に集中しています。そのため、地価の上昇は住宅地への人気の高さを表しており、自然が残る閑静な住宅街が清瀬市の魅力になっているのだと考えられます。
2-19.福生市
土地の利用方法が少し特徴な福生市です。
福生市には在日アメリカ軍横田基地が設けられており、市の面積の約3分の1を占めています。そのため、実際に日本が活用できる面積は限られており、その面積は全国の市で3番目に小さい面積となっています。
福生市の住宅地価平均は165,100円、前年から0.7%上昇しています。
活用できる土地は限られているものの、さまざまな企業の本社が置かれており、工業や商業など幅広い事業が市の産業となっています。また、人口減少が目立つものの人口密度は高く、外国人の移住者も増えているため、地価の減少に繋がる大きな要因とまではなっていないようです。
2-20.昭島市
市の東西を通過する路線により北南で土地の利用方法が異なっている昭島市です。
北部ではゴルフ場や公園など敷地の大きな施設が多く、南部は主に住宅地として使用されています。また、北部南部とも団地が形成されており、生活拠点としての役割が強く現れている市です。
昭島市の住宅地価平均は186,700円/㎡、前年と比べて0.5%上昇しています。
昭島市の北部は工場地、昭島駅などの周辺は商業地として活用されています。工業地には工場を中心とした工業団地が建設されており、産業と緑が豊かな住宅地が融合した街が広がっています。
2-21.東大和市
鉄道路線や街道などさまざまな方法での交通の利便性が高い東大和市です。
梨やお茶など古くから農業が盛んな地域なのですが、近年は旧農地の宅地への転用が行われており、年々住宅地が広がっています。
東大和市の住宅地価平均は169,500円/㎡、前年より0.3%上昇しています。
東大和市はもともと工場などで働く事業者のために開発が行われた地域であり、商業と住宅のバランスが良い街です。ここ数年は、工場跡地などに公園や福祉士施設などが建設され、ベッドタウンの機能がより強く現れるようになりました。
2-22.八王子市
東京都の市区町村の中で2番目に広い行政面積を誇り、東京都で初めての中核市となった八王子市です。八王子市の周辺には20以上の大学や専門学校があり、10万人以上の学生が生活する学園都市の側面が強い街です。
八王子市の住宅地価平均は116,700円/㎡、前年から0.2%上昇しています。
八王子市は面積が広いだけでなく人口も多く、都心部や多摩地域の中心地へのアクセスも手軽に行えることから、各駅の周辺には商業施設などが多く建設されています。そのため、商業地、住宅地、ビジネス地、それぞれの特徴を反映した土地活用が行われており、それが地価の上昇に繋がっていると考えられます。
2-23.羽村市
東京都の中で最も人口が少ない市です。
自動車の製造工場や建設業などの誘致を行ったことで、高度経済成長以後大きく発展しました。事業誘致と並行して住宅地の整備も行ったことで、急激な人口増加も起こり東京都のベッドタウンとして注目を集めています。
羽村市の住宅地価平均は140,000円/㎡、前年比0.1%のマイナスです。
羽村市の東部は自動車工場を中心した住宅地が広がっており、公園がいくつも点在した緑の多い住宅街が形成されています。ただ、羽村市は東京都の市の中でも3番目に小さい面積のため、利用できる土地が限られているため、不便さが現れてしまうところもあります。
2-24.武蔵村山市
古くから織物業が営まれており、新たに村山大島紬が人気を集めている武蔵村山市です。
ミカン・ナシ・リンゴ農園があり、特に、みかん狩りなどで多くの人が訪れる人は多く、自然と身近に触れ合える楽しさが人気となっています。
また、以前は多くの田んぼがあり稲作が行われていたが、現在では多くが宅地化され数は少ない。
武蔵村山市の住宅地価平均は122,100円/㎡、前年より0.1%上昇しています。
武蔵村山市は、食品工場などがいくつか建設されているものの、国道が整備されていません。特に、多摩地域で唯一鉄道が整備されていないため、市内に駅はなく、隣接している他の市の鉄道駅が最寄り駅となっています。ただ、自然と共存した住宅地などが人気を集めており、交通の不便さはありますが人口とともに地価は上昇傾向にあります。
2-25.青梅市
多摩地域の西部に位置する西多摩地域の中で最大の市です。東京都の核都市にも指定されています。
市内の産業は綿を用いた織物業や林業などが盛んに行われており、市の東部には工業地帯が形成されています。
青梅市の住宅地価平均は94,500円/㎡、前年よりも1.2%下落しています。
2020年の公示価格の中で地価が下落した3つの市の中の1つが青梅市で、その下落率は一番大きかったです。
青梅市は若者世代を中心に人口減少が起きており、製造業などが盛んであるものの他市へ移り住む人が増加しています。そのため、市内では急速高齢化が進んでおり、こうした影響が地価にも現われていると考えられます。
2-26.あきる野市
矢印のような独特な形をしているあきる野市です。
この特有の市の形から7つの自治体と隣接しており、生活する地域によって近い自治体が異なるのが特徴です。市のほとんどの地域は住宅地として活用され、商業施設などはあまり多くありません。
あきる野市の地価平均は98,600円/㎡、前年からの変動率は0.5のマイナスとなっています。2020年の公示地価で下落した3つの市の中のひとつです。
あきる野市は自然が豊かな住宅地なのですが、その一方で4つの山があることから市域全体での街づくりが行なえません。こうした都市整備へ制限ができてしまうことが、地価のマイナス成長に繋がってしまったのかも知れません。
3.最後に
今回発表された2020年の公示価格や路線価は、2020年1月1日が評価基準日です。
多摩地域は、地価の変動率は、東京23区に比べるとかなり低いですが、それでも、全国平均とほぼ同じ程度の変動率を維持しています。
しかし、ここに来て、新型コロナウイルス感染拡大により経済が停滞して、今後、土地価格にも影響が出る可能性があります。
路線価については、国税庁が今後の地価の推移によっては路線価の減額修正を導入する方針と言われています。
多摩地域は東京23区に比べて住宅街が多く、ベッドタウンとして機能しています。そのため、不動産などの相続が発生しやすく、高齢者が多い地域では相続が特に身近な問題となっています。
また、地域によって地価はさまざまな特徴があり、再開発によって大きく上昇する可能性も秘めています。
少しでも多くの遺産を残したい、有利に相続したいという望みを叶えるためには、新型コロナウイルスの影響もありますので、相続に強い税理士に相談して、適切な相続税対策を講じることをお勧めします。