1.調布市の相続税申告の特徴
調布市は、NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」の舞台となった市として知名度を上げました。
調布市は、東京都のほぼ中央部、多摩地区と東京23区の境目に位置しています。東側は世田谷区と狛江市、北側は三鷹市と小金井市、西側は府中市、南側は多摩川を挟んで稲城市と神奈川県川崎市に隣接しており、周辺の市と同様に、東京23区のベッドタウンとして機能しています。
JリーグのFC東京や東京ヴェルディがホームスタジアムにしている「味の素スタジアム」は、サッカー観戦はもちろん、多目的スポーツ施設として様々なイベントが行われており、都内外から多くの人が訪れる市となっています。
同じ「調布」でも大田区の田園調布は高級住宅街として有名ですが、調布市には、そういったブランドのあるエリアはありません。
しかし、東京23区に隣接していること、発達した交通網などから、都心で働く高所得サラリーマンは多く居住しており、相続税が課税される可能性が高い市であることに変わりはありません。
それでは今回は、調布市の相続税申告について詳しく解説します。
1-1.調布市の相続税申告状況
調布市を管轄している武蔵府中税務署、東京都、全国における、令和元年の相続税申告状況は次の通りとなっています。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
武蔵府中税務署 管轄エリア | 24.23% | 17.24% | 2,311万円 |
東京都平均 | 22.56% | 16.25% | 3,029万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万円 |
武蔵野府中税務署は、すべての数値において全国平均を大きく上回っており、東京都平均についても納付税額以外は上回っています。
ただし、武蔵府中税務署は複数の市を管轄している税務署であり、調布市、府中市、狛江市を管轄しています。武蔵府中税務署が公表している平均値は、この3市の平均値となっています。
東京都の地価は都心部に近い程、高くなる傾向があり、この3市の中で都心部に最も近いのは調布市であることから、府中市と狛江市に比べて富裕層が多いと考えられます。
調布市のみでの数値は公表されていませんが、この3市の中では調布市が最も課税割合が高いと考えられることから、この3市の中では相続税が課税される可能性は高いエリアとなっていると推測されます。
1-2.全国的に圧倒的トップの東京都平均をも上回っている
全国47都道府県における課税割合ランキングにおいて、東京都の16.25%といいう数値は圧倒的なものであり、2位愛知県13.93%、3位神奈川県12.60%という数値と比べると、東京都の高さがお分かりいただけると思います。
よって、その東京都の平均を超えている武蔵府中税務署の管轄エリアは、より相続税の課税に注意しなければならない市であるということになります。
2.調布市の特徴
調布市の面積は、東京都の1%程度になる21.58平方キロメートル、人口は東京23区と25市の中で4番目になる約24万人を有しています。
中心となる調布駅は、2012年に再開発が行われ、すべての電車を地下に移動したことによって広いスペースが生まれました。2017年には「トリエ京王調布」が誕生し、都会的な街並みとなっています。
しかし、都会にありがちなごちゃごちゃとした雰囲気はなく、さらに駅前から北側の深大寺の方へ少し歩くと、空気の綺麗な自然が広がっており、都心への近さと、都心にはない自然を併せ持つのが調布市の魅力です。
それでは調布市の特徴と、それが相続税課税へどのように影響しているのかをみていきましょう。
2-1.新宿駅まで2駅
調布市には東西に京王線が走っており、8つの駅があります。
そして、その路線と並行して国道20号線が通っており、調布インターチェンジに接続していることから、多摩地区の重要な流通拠点となっています。
市中央に位置する調布駅から新宿駅までを、特急で20分以内に行くことができる立地の良さは、ベッドタウンとして申し分ないでしょう。
2-2.つつじヶ丘は高給取りサラリーマンが多い住宅地
市の西部に位置している「つつじヶ丘」は富裕層が多く住むエリアではありませんが、高級感のある住宅地として知られています。
調布駅より都心に近く、レトロな商店街富士見街や京王リトナードなどがあるため買い物に困ることもない閑静な住宅地で、ファミリー層が多く居住しています。
便利で人気があることから、土地が売りに出されることが少ないため、高額になる傾向にあります。
特に、つつじヶ丘駅に近い程高く、深大寺側に離れるほど安くなる傾向があり、つつじヶ丘駅より徒歩10分以内だと、中古住宅でも6,000万円を超える物件が多く、購入できる層は限られるでしょう。
2-3.調布市の地価
調布市の平均地価は1㎡あたり41万7,571円で、東京都全59位中28位です。
なお、武蔵府中税務署の同管轄内にある府中市は36万円で30位、狛江市は34万円で31位となっており、似たり寄ったりの金額ではありますが、調布駅周辺の再開発の影響もあってか、調布市が少しだけ抜け出ている印象です。
市内で最も地価が高いエリアは、調布駅周辺で1㎡あたり57万円、特に駅から200メートルほどにある小島町は155万円と破格の金額になっていますが、商業地であることから相続税の課税への影響は少ないでしょう。
人気のつつじヶ丘は1㎡あたり37万円で、最も高額なのはつつじヶ丘3丁目の61万円でした。40坪の土地で8,000万円を超えることから、居住できるのは富裕層に限られます。
反対に、最も地価の低いエリアは深大寺で、1㎡あたり27万円となっており、最下位でもこの金額であるということは、調布市はその全域において地価が高いということでもあります。
調布市の場合には、どこに住んでいても相続税課税の可能性があると思っていた方が良いでしょう。
3.調布市の税理士情報
全国には令和4年1月末日時点で80,011人の税理士がおり、その3割にあたる23,809人が東京都に、そして調布市には91人の税理士がいます。
なお、武蔵府中税務署の管轄と同じ3市を管轄する東京税理士会武蔵府中支部には、300人弱の税理士がいます。
人数だけでは、足りているのか足りていないのかイメージが付かないでしょう。
武蔵府中税務署の令和元年における相続税申告数は1,140件でした。これを税理士300人に当てはめてみると1人当たりの申告数は0.26件となり、税理士1人頭年間約4件の相続税申告をしている計算になります。
法人税や所得税とは違い、相続税の申告は当然ながら頻繁にあるものではなく、税理士1人あたり年間に依頼が1件あるかないかといわれています。
それにもかかわらず年間4件という数字になっているということは、東京都の相続税申告の多さと、それによる税理士不足の状況が明確になっています。
3-1.23区内中心の税理士探しがおすすめ
調布市には91人の税理士が、府中市と狛江市を合わせると300人弱の税理士がいますが、いずれの市もファミリー層が中心のベッドタウンであることから、富裕層の複雑な相続税申告を頻繁に行っているような税理士は、ほぼいないと推測されます。
相続税は、税理士の実力差が大きく出る税金であり、相続税に強い税理士と弱い税理士では納税額に数百万円の差が出ることもあるため、相続税申告は相続税に強い税理士に依頼できるか否かに命運がかかっているといっても良いでしょう。
そこで調布市での税理士探しは、目と鼻の先にある東京23区を中心に行われることをおすすめします。
東京都には23,809人の税理士がいますが、なんとこの9割は東京23区に集中しているのです。
23区には現地に家を持てる超富裕層が集中しています。その分、相続税申告の需要が多く、対応する税理士のレベルも非常に高いものになっていきます。
東京23区内であれば、調布市内よりも容易に相続税に強い税理士に出会うことができるでしょう。
【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、東京税理士会公式サイト、東京税理士会武蔵府中支部