杉並区の相続と税理士事情
東京都の西部に位置する杉並区。中心区のベッドタウンとして人気を集める杉並区は、住宅街が広がっており多くの人が生活しています。しかし、生活の拠点だからこそ気になるのが相続、そして相続税です。では、杉並区にはどのような相続の特徴があるのでしょうか?
1.杉並区の相続事情
杉並区の相続税の申告件数は1,570件、実際に課税された件数は1,113件です。課税割合は25.82%、相続1件あたりの納付税額は約2,700万円となっています。東京都の平均的な課税割合は16.78%、1件あたりの納付税額は約3,000万円です。
そのため、課税割合は平均よりも大きく上回っていますが、1件あたりの納付税額ではやや平均を下回った金額となっています。実際に、23区の中で課税割合は4番目、1件あたりの納付税額は13番目となり、課税割合に比べて1件あたりの納付税額が低くなっています。
また、杉並区は他区の比べて人口が多いため、課税件数は2番目に多い数字です。つまり、課税割合の高さと相まって、杉並区で生活している多くの人に相続税が課されているのです。だからこそ日常的に相続税を考えておき、油断しないように気をつけましょう。
2.地価事情
杉並区は4人に1人が相続税の課税対象となるほど、課税割合が高い地域です。そこで、課税割合の高さを地価から考えてみましょう。
2-1.代表的な地域と地価
2-1-1.阿佐ヶ谷
阿佐ヶ谷駅を中心とした街並みが構成されている阿佐ヶ谷区。駅が中心部にあることから、北部を阿佐ヶ谷北、南部を阿佐谷南と2つ地域に大きく分かれています。駅が中心の街並みですが、青梅街道、早稲田通りなどの道路が整備されているため、自動車での移動者も多くの交通の利便性が非常に高い地域です。
北部には阿佐ヶ谷商和会、南部には阿佐谷パールセンターという代表的な商店街があり、どちらも商店街を起点にした街づくりが行われています。さらに、商店街が地域の生活拠点となっているからこそ、毎年各商店街でイベントが行われており、多くの人で賑わっています。
阿佐谷の地価平均は約72万円で、杉並区の中では最も高額な地価となっています。駅周辺の地域では100万円を超えるところもあり、需要の高さがよく分かります。ただ、阿佐谷は駅を離れると住宅地が広がっており、多くの住宅が密集していますので、駅から離れるほど地価が安くなる傾向にあります。
また、北端と南端の地域を比べてみると、南端の方が地価がやや高額になっています。実は、阿佐谷の南端には南阿佐ヶ谷駅が建設されており、駅から離れても交通の利便性が損なわれません。そのため、僅かな差ではありますが、南部で生活している方々のほうが相続税への注意がより必要といえるでしょう。
2-1-2.荻窪
杉並区の中央部に位置する荻窪。もともと荻窪は広い範囲を指し示しているため、南荻窪、上荻、西荻北、西荻南などの地域も含めて考えられることもあります。荻窪は大正から昭和初期頃には東京に近いことから別荘地として人気を集め、名だたる文豪や芸術家が別荘を構えていたといわれています。
その後、別荘地としての住みやすさが定着し、移住者が増えたことで人口も増加していきました。ただ、現在では別荘地としてではなくベッドタウンとしての機能が注目されており、多くの人が生活している住宅街として発展しています。
荻窪の地価平均は約70万円で、区内では2番目に高額な地域です。特に駅周辺の地価は高く、200万円を超える地域も見られます。さらに、駅から離れた住宅街でも40~50万円程度の地価が確認されている地域も多く、区内全体で地価が高くなっています。
また、ここ数年地価の上昇が続いていることもにも注目が必要です。2016年から2017年にかけて荻窪全体の地価が5.8%も上昇しています。さらに、各地で地価が上がっているため、特定の地域だけでなく全域で地価の上昇に気をつけなければいけません。
2-1-3.高円寺
寺院の名前が地名の由来となっている高円寺。高円寺北、高円寺南と、こちらも南北で地域が大きく2つに分けられています。高円寺駅を中心とした街づくりが行われている一方で、駅周辺以外には閑静な住宅地が広がっています。
駅周辺には商店街が複数形成されており、昔ながらの街並みが今でも残っています。ただ、店舗の入れ替わりは激しく、古くからのお店を構えているところは多くありません。しかし、その時代に合わせた店舗が入っているため、現在では古着屋や安価な飲食店などが増えており、若者の街にもなっています。
高円寺の地価平均は約64万円で、区内で4番目に地価が高額な地域です。商店街は多いものの、基本的には住宅街であるため、駅周辺を離れると徐々に地価は減少傾向になります。そして、一軒家だけでなくアパートやワンルームマンションなども多く建てられており、若者からの人気も高くなっています。
また、高円寺の西武は阿佐谷と隣接しており、東部は中野区の中心部と隣接しています。人気の地域に囲まれた立地であるため、地価も順調に上昇を続けており、今後も住宅街としての需要は伸びていくと予想されています。
2-2.地価の特徴
杉並区の特徴として、駅周辺が大きく発達しており、それ以外はほぼ住宅地が形成されています。土地の活用方法が固定化されているため、地価が大きく高騰することはありませんが、低くなることもないため比較的安定して推移しています。
また、杉並区全体の地価平均は約57万円となっておりますが、全体的に40~70万円程度で推移しており、地域内にそこまで大きな差はありません。つまり、どの地域の地価も高額であるため、土地にかかる相続税には油断が出来ません。
そして、地価の上昇率にも気を配っておかなければいけません。杉並区は2016年から2017年にかけて4.26%も地価が上昇しています。特に、ほぼ全域で地価の上昇が見られており、中には10%以上も上昇している地域もあるため、地域によってはこれからも上昇を続ける可能性があります。
こうした特徴から、もともと杉並区では相続が起きやすく、地価が下がりにくいため土地の相続にかかる相続税が課されやすい地域といえます。また、生活の拠点だからこそ、実家が杉並区にある人は多いと思います。代々相続している自宅だと、土地が広いこともありますので、このような場合は一度相続税について調べておきましょう。
3.所得と富裕層
地価と同じように相続税と深く関係しているのが所得です。住宅地として活用されている杉並区の所得は、どのような状況なのでしょうか?
杉並区の所得税の納税義務者数は約30万人、課税対象所得は約1兆4,000億円です。1人あたりの所得が約470万円となります。この所得は東京都の中では11番目に高額な所得で全国的に見ても15番目の所得金額です。
つまり、杉並区で生活している人の多くが富裕層だと考えられます。ただ、杉並区はビジネスがメインの都市ではありません。そのため、高所得の背景には杉並区で生活し、ビジネス街が形成されている他の区へ通勤しているのが杉並区民の代表的な働き方といえるでしょう。
また、所得が高いにも関わらず他地域よりも1件あたりの納付税額が低いのは、所得ではなく地価が影響していると考えられます。東京都はビジネス街になるほど地価が高くなる傾向があり、人口が少なくても相続税が課されやすく、税額も高額になっています。そのため、杉並区と他地域の地価の差が、そのまま1件あたりの納付税額に現れているといえるでしょう。
4.杉並区の税理士事情
高所得者が集まっていることや住宅が多いことから相続税への警戒が重要な杉並区。そこで、有効な相続税対策を行うためにも税理士の力を借りることが大切です。では、杉並区に在籍している税理士はどのくらいいるのでしょうか?
杉並区に在籍している税理士は635名です。杉並区の1年間の課税件数は1,113件ですから、税理士の数は不足気味であることが分かります。635名という在籍税理士数は比較的多い数字なのですが、課税件数が多い杉並区だからこそ不足気味になってしまうのです。
また、杉並区に税理士が集中することで、隣接する他地域では税理士が不足している可能性があります。東京都内は比較的簡単に各地へ移動できますので、他地域からの依頼によって頼みたい税理士へ依頼できないこともあり得ます。
そのため、実際に依頼したい税理士を見つける場合には、第2、第3候補まで探しておくのが効果的です。いくつも候補の税理士事務所を周り比較しながら、急に始まる相続にしっかりと備えておきましょう。
【参考】相続関連機関一覧
杉並区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年1月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
杉並税務署 | 〒166-8501 東京都杉並区成田東4丁目15番8号 | 03-3313-1131(代表) |
杉並都税事務所 | 〒166-8502 東京都杉並区成田東5-39-11 | 03-3393-1171(代表) |
杉並区役所 | 〒166-8570 東京都杉並区阿佐谷南1丁目15番1号 | 03-3312-2111(代表) |
東京法務局 杉並出張所 | 〒167-0035 東京都杉並区今川2丁目1番3号 | 03-3395-0255(代表) |
杉並公証役場 | 〒167-0032 東京都杉並区天沼3-3-3 澁澤荻窪ビルディング4階 | 03-3391-7100 |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京司法書士会 杉並支部 | 〒168-0082 東京都杉並区久我山4丁目2番29号 リベスト久我山ビル301(久我山司法書士事務所) | 03-6427-8831 |
東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館6階 | 03-3581-2201(代表) |