「みなし相続」を使った相続税の節税対策について解説
相続税にはいくつか特例が設けられており、その特例を活用することにより事前の節税対策が可能です。ここでは、中でも、特例…[続きを読む]
生命保険を契約する際には、一般的に、生命保険会社と契約し、保険料を負担する「保険契約者」、怪我や病気、死亡などにより保険の対象になる「被保険者」、保険金・給付金・年金などを受け取る「保険金受取人」を決めなければなりません。
これら3つの名義は全て別人を指定することも、同人とすることもでき、「保険契約者」や「受取人」は、契約途中であっても、名義変更が可能です。
ここでは、生命保険の個人から個人への名義変更について、その方法や、必要書類、税制上の注意点などについて解説します。
目次
保険契約者の名義変更をするのは、例えば以下のようなケースが該当します。
契約者が被保険者と同一で、保険金受取人が相続人の場合には、被保険者が死亡すると、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
そのため、契約者と被保険者が親で、保険金受取人が子供の場合に、契約者の名義を親から子へ変更しておけば、親は保険の対象のまま、死亡保険金に相続税がかからなくすることができます。
ただし、民法上、死亡保険金は遺産分割の対象にならず、非課税枠もあることから、死亡保険金は、相続税対策には有効です。
親が子を被保険者・保険金の受取人として、親自身が生命保険を契約し、保険料を負担することも多いでしょう。こうしたケースでは、子供が結婚をすると、氏名や住所変更の手続きをしなければなりません。
しかし、結婚を契機に、親から子供へと契約者の名義変更をすることもできます。ただし、契約者の変更には、被保険者の同意が必要で、ご自分が被保険者であれば、ご自分で被保険者が記入する欄を書くことになります。
夫が被保険者となり、妻が被保険者兼保険金の受取人として生命保険に加入し、保険料を負担することは多々いでしょう。
しかし、このままの状態では、離婚しても、妻が引き続き保険の対象者となり、給付金や元夫の死亡保険金は、元妻が受け取ることになります。
そこで、保険契約者である夫が、保険金の受取人の名義変更や、保険契約者の名義を妻にする変更を検討することになるでしょう。
次に、生命保険の名義変更についての注意点を簡単にご説明します。
契約者の名義変更には、生命保険会社と被保険者の同意が必要です。これらの同意なしに勝手に変更することはできません。
保険金受取人のみの名義変更変更には、生命保険会社の同意は不要ですが、被保険者の同意が必要になります。
現在は、保険金受取人の変更が、遺言でも可能になっています。
生命保険では「被保険者の変更」はできません。被保険者を変更すると、保険契約の条件そのものが変わってきてしまうからです。
ここでは、生命保険の名義変更手続きや、必要書類についてご紹介します。
ただし、名義変更手続きは、生命保険会社によって取り扱いが異なるため、概要についてお伝えします。契約者の名義変更をする場合にも、保険金の受取人の名義を変更する場合も、手続きや必要書類の概要に変わりありません。
契約者の名義を変更をする際には、一般的に次の1~4のような流れになります。
インターネットでの書類請求ができる保険会社もあれば(ただし、インターネットでは、手続きが完結できない保険会社がほとんどです)、窓口での手続のみを受け付けている保険会社もあります。
名義変更手続きに伴う主な必要書類は、生命保険会社によって異なりますが、概ね以下の通りです。手続きには、必要書類のほかに、印鑑が必要になります。
実際に名義変更を行う場合には、直接、保険会社にお問い合わせください。
生命保険の名義変更を行う際には、課税に注意しなければなりません。
現在契約している養老保険の契約者および保険金受取人の一部を、夫から妻に次のように変更する場合を例に、どのような場合に、どのような税金が発生するのかを考えてみます。
名義変更時点では、保険金の支払いは発生していないため、税金は発生しません。
名義変更完了後、保険金を受け取ると、以下の税金が課税されます。
名義変更完了後に、新しく契約者となった妻が養老保険を解約し、解約返戻金を受け取った場合には、次の通り課税されます。
名義変更完了後に、支払事由の発生前に前契約者である夫が死亡すると、夫は被保険者ではないので保険金の支払いは発生しません。
しかし、相続発生時に「生命保険契約に関する権利」として評価された金額のうち、前契約者(夫)が負担した保険料に相当する部分に相続税が課税されます。
また、その後、妻が満期保険金を受け取れば、前契約者(夫)が負担した保険料に相当する部分には、新契約者(妻)が保険料を負担したものとみなされ、満期保険金の全額に所得税(一時所得)・住民税が課税されます。
【参考外部サイト】国税庁:「質疑応答事例」(贈与財産の範囲)5.生命保険契約について契約者変更があった場合
(相続税法第5条第2項、相続税法基本通達3-36)
最後に、生命保険会社が税務署に提出する、支払調書の取扱い変更についても触れておきます。
支払調書の見直しが行われ、2018年1月1日から支払調書には、名義変更前の契約者名や、契約者変更の回数、支払時の契約者の既払込保険料などについても記載されることになりました。
また、契約者の死亡により契約者が変更された場合の「保険契約者の異動に関する調書」が創設され、解約返戻金が100万円を超えると、生命保険会社は、新旧の契約者名や解約返戻金相当額などを調書に記し、税務署へ提出することになっています。
保険契約者が亡くなって、新たに契約者の変更をすれば、新契約者が解約返戻金を受け取る権利を継承したことになり、相続税が課税されます。一方、税務署は、保険会社からの「保険契約者の異動に関する調書」によって契約変更の通知がなされるため、相続税の申告漏れのチェックが容易にできます。
くれぐれも、名義変更による相続税の申告漏れがないようにしなければなりません。
生命保険は、名義変更時点で税金が発生しないため、後でトラブルが生じるケースも多いのが実情です。
生命保険の名義変更については、高度な税務知識を必要とする場合も多いので、わからないことがあれば実行前に税理士に相談することをお勧めします。