死亡保険金の受取方法と相続税がかかる場合

 もしもの時のために加入する「生命保険」。加入者が亡くなった時に死亡保険金が受け取れるため、家族の生活費などに充てるケースも多いです。しかし、意外と生命保険や死亡保険金について知られていないこともあります。そこで、確実に死亡保険金を受取るためにはどうしたら良いのか、押さえておくべきポイントを解説します。

1.死亡保険金は請求が必要

加入者が亡くなった時に受取れる死亡保険金ですが、受取るためには適切な手続きが必要です。ですので、死亡保険金を受取るために必要な手続きや、どうしても受取れないケースなど、見落としがちなポイントを確かめていきましょう。

1-1.自動的に振り込まれない

初めに確認しておきたい大きなポイントが、死亡保険金を受取るためには「請求」が必要だということです。間違って覚えている方が多いのですが、加入者が亡くなったからといって、死亡保険金が自動的に振り込まれる訳ではありません。きちんと手続きをして請求しなければ受け取れないことを、しっかり覚えておきましょう。

また、請求というのは「連絡」することとは違います。加入者が亡くなったことを生命保険会社へ連絡するだけでは、死亡保険金は受け取れません。後日届く必要書類を全て記入して送付することが、正しい請求となります。

これは、生命保険会社が亡くなった事実をきちんと把握し、適切に死亡保険金を支払うために必要な手続きとなります。ですので、少し手間だと感じるかもしれませんが、きちんと適切な手続きを行いましょう。

1-2.保険金が支払われない場合

死亡保険金は請求しなければ受取れませんが、場合によっては請求しても受け取れないことがあります。では、どのような場合に死亡保険金が受け取れないのでしょうか?

死亡保険金が受け取れないケースとして当てはまる場合、亡くなった状況が大きく関わっています。加入している生命保険や会社ごとに変わることもありますが、大きく分けて3つのケースに当てはまると受け取れないことが多いです。
そのケースとは、

  • 自殺
  • 受取人による殺害
  • 戦争

などです。死亡保険金を目当てに加入者を殺害したときは、どんな場合でも死亡保険金が支払われることはありません。しかし、自殺の場合は加入後の一定期間内(1~3年)の場合は支払われませんが、この期間外であれば支払われることもあるそうです。どちらも故意には起きない、起きてほしくない状況ですが、念の為にもきちんと覚えておきましょう。

また、戦争などで亡くなった場合、他にも多くの人が亡くなっていることが予想できます。すると、保険会社だけでは全て対応できないため支払えません。ただし、この場合も状況に応じて、全額、または一部受け取れることはあります。ですが、特殊な場合ですので細かく覚えておく必要はないかもしれません。

1-3.日頃から保険の手続き方法を確認しておきましょう!

生命保険は、就職や結婚など、人生の重要なイベントを迎える時に加入するケースが多いです。掛け金や条件、死亡保険金の金額など、いくつも見比べて加入する保険を選択します。ですが、皆さんは加入した後にどんな条件の生命保険なのかを日頃から確認していますか?

実は、多くの人は加入後に細かくチェックすることがないそうです。その結果、加入者が亡くなっても請求できずに、どうやって受け取れば良いのか分からないケースが増えています。ですので、日頃からあなたや家族が加入している生命保険の内容をチェックしておき、もしもの場合にどのような手続きが必要なのかを把握しておきましょう。

住所を変更したら保険会社への住所変更届も必須です。そうしないと重要な書類を受け取れなくなります。

ただし、毎日確認する必要はありません。誕生日や元旦など決められた日になったら、定期的に確認するようにするだけでもOKです。また、少し酷な話ですが、死期が近いと感じた場合にも改めて再確認しておくことが大切です。加入者の年齢や病気、状態などから判断して、できるだけ早めの準備を行いましょう。

相談

2.死亡保険金の受取りの流れと請求方法

死亡保険金を受取るためには生命保険会社への請求が必要ですが、亡くなってから確認しようとするとかなり大変です。それは、葬儀や遺産相続など、多くの手続きを行わなければいけないからです。ですので、どのように死亡保険金を受け取ればよいのか、事前に流れや請求方法について確かめておきましょう。

2-1.請求から受取りまでの流れ

死亡保険金を受取る場合、以下のような流れで手続きを行います。ただし、保険会社によって細かい手続きが異なることがありますので、あくまでも一般的なケースの紹介です。

  1. 加入者が亡くなったことを保険会社へ連絡する
  2. 保険会社より死亡保険金の受取に必要な書類(請求書類)が送付される
  3. 届いた書類に必要事項を記入し、生命保険へ送付する
  4. 保険会社が請求書類を確認し、死亡保険金の支払の可否を判断する
  5. 死亡保険金が支払われる

大まかですが、一般的にはこのような流れで死亡保険金を受取ります。実際に、私たちが行うのは、初めの連絡と請求書類への記入・送付のみです。特別難しいことはありませんが、注意すべきことがあるため忘れずにチェックしておきましょう。

2-2.保険金の請求者になれるのは誰か?

死亡保険金の請求を行う場合、亡くなった方の家族が請求します。この点については多くの人が把握していますが、誰が行うべきなのかまではあまり知られていません。実は、死亡保険金の請求が行える人は決められているため、家族なら誰でも請求できるわけではないのです。

死亡保険金の請求が行えるのは、原則「受取人」のみです。この受取人はこちらの都合で決めるのではなく、生命保険の契約時などに書類へ記入した受取人が当てはまります。加入者が亡くなった後からは変更できないので、あらかじめ誰が受取人となっているのか確認しておきましょう。

また、受取人が死亡してしまった場合や、結婚・離婚をした場合などは、忘れずに受取人の変更手続きを行いましょう。この手続きを忘れてしまうと、死亡保険金を残したい人にきちんと渡せないことがありますので注意してください。

2-3.請求に必要な書類

死亡保険金を受取るためには、請求書類に記入し提出します。請求書類は保険会社から送られてきますが、他にも用意しておくべき書類があります。
保険会社によって必要になる書類は変わりますが、請求書類以外に必要になるのは以下のような書類です。

  • 死亡診断書または死体検案書
  • 住民票(加入者の死亡事実の記載があるもの)
  • 請求人(受取人)の本人確認資料

交通事故などによって亡くなった場合には、この他にも「交通事故証明書」などが必要になります。加えて、保険会社によっては死亡診断書なども所定の用紙が用意されていることもありますので、初めの連絡時や前もって保険会社への請求方法を確かめておきましょう。

また、亡くなったことを連絡する場合、加入者の契約番号などを伝える必要があります。ですので、連絡をする際には亡くなられた本人の保険証券などを手元に用意しておくとスムーズに手続きができます。

生命保険

3.死亡保険金にかかる税金

何かしらお金を受取ると必要になるのが「税金」です。実は、見落としがちなポイントですが、死亡保険金も課税対象となり税金を納めなければいけないことがあります。そこで、どのような場合に、どんな税金が必要になるのか解説します。

3-1.所得税

死亡保険金に関わる税金は、主に「保険料の負担者」と「死亡保険金の受取り者」の組み合わせによって変化します。所得税は、どちらも同一の人物の場合に必要となります。
この場合、死亡保険金は受取り方法によって「一時所得」または「雑所得」のどちらかに分類されます。死亡保険金を一時金として受取る(そのまま受取る)場合は一時所得、年金として受取る場合が雑所得です。

一時所得となる場合、死亡保険金の総額から既に支払った保険料や掛金、特別控除額50万円を差し引いた金額を1/2にしたものが課税対象額となります。
雑所得の場合は、その年中に受け取った年金の額から、その金額に対応する保険料や掛金の額を差し引いた金額が課税対象です。ただし、雑所得の場合は源泉徴収されるという特徴がありますので、忘れずに覚えておきましょう。

また、所得税のほかに住民税もかかります。

一時所得の計算例

たとえば、受け取った保険金が1,000万円、支払った保険料の合計が500万円とすると、

一時所得=1,000万円-500万円-50万円=450万円となります。
そして、450万円×1/2=225万円が、他の所得と合算されます。

3-2.相続税

相続税が発生するのは、亡くなった方が保険料を負担し、その家族が受取人となっている場合です。

加入者の相続人が受取る場合は相続により取得したもの、受取人が相続人以外の場合は遺贈により取得したものとみなされます。このように、受取人と亡くなられた方との関係により、取り扱いが少し異なりますが、最終的な意味合いとしては変わりません。

一時金で受け取り

一時金として保険金の全額を受け取る場合は、その受け取る保険金がみなし相続財産として遺産総額にプラスされて、相続税の計算をします。
ただし、法定相続人の人数に応じた非課税額があります。

非課税額:500万円×法定相続人の数

例として、受け取った保険金が4,000万円、法定相続人の数が3人としますと、
非課税額は500万円×3人=1,500万円ですので、
4,000万円ー1,500万円=2,500万円が相続税の課税対象となります。

年金形式で受け取り

年金として死亡保険金を受け取る場合は、ややこしいですが、相続税と所得税の両方がかかります。

まず、相続時に年金受給権に対して相続税を納めます。年金受給権とは将来受け取れる金額の合計のことです。実際の課税対象はそれより少し少ない金額になります。
そして、年金受給時に所得税を納めます。最初の年は全額非課税、2年目以降は少しずつ納める金額が増加していきます。
二重課税とならないように、最初に支払った相続税分は除かれて、残った分を所得税として払います。

【出典】国税庁:相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係

死亡保険金が所得税の対象となる場合と計算方法などが違っているため注意が必要ですが、源泉徴収されるという点は変わりません。

3-3.贈与税

最後に「贈与税」です。被保険者、保険金を負担した方、受取人がそれぞれ異なっている場合に該当します。贈与税率は相続税率よりも高いためご注意ください。

【関連】相続税・贈与税の税率

年金で受け取る場合は、「年金形式で受け取り」の項目で説明したのと同様に、毎年受け取る年金に対して所得税がかかります。

死亡保険金と税金のまとめ

死亡保険金とかかる税金の関係を表にまとめました。

税金の種類被保険者保険料の負担者保険金の受取人特徴
所得税AさんBさんBさん負担者=受取人
相続税AさんAさんBさん負担者=被保険者
贈与税AさんBさんCさん全員異なる

4.死亡保険金の請求にも時効がある

4-1.請求の時効

死亡保険金は請求がないと受取れませんが、亡くなったらいつでも請求できるではありません。把握していない人も多いのですが、死亡保険金の請求には時効があります。時効となる期間を過ぎてしまうと請求できず、請求しても死亡保険金を受取れなくなってしまうのです。

死亡保険金の時効は、「権利発生時の翌日から3年間行わなかった場合」と保険法第95条に定められています。つまり、加入者が亡くなった日の翌日から3年以内に請求しないと、死亡保険金を受取ることはできません。

保険金請求に時効があるのは、保険契約者の公平性を保つためです。保険金請求がされると保険会社は正当な請求であるかどうか調査しますが、時間が経ってしまうと調査が難しくなります。そのため、一定期間内に保険金請求をするように、法律で時効を設けています。

4-2.時効の例外

ただし、例外として時効が過ぎても受取れるケースがあります。
というのも、この時効はあくまでも法律上の定義となっていますので、保険会社によっては時効を設けていないところもあるのです。また、状況によっては死亡保険金が受け取れることを時効後に知った場合でも、死亡保険金を受取れたケースもあります。

そのため、もし時効後に生命保険に加入していたことを知った場合などは、諦めてしまう前に保険会社へ連絡してみましょう。可能性としては低いですが、きちんと対応してもらえるかもしれません。もちろん、日頃から生命保険について家族で確認し、亡くなったら早めに保険金を請求することが大切です。

監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
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