【2020年版】横浜市の路線価と公示価格の特徴、18区の地域事情

2020年7月1日に国税庁より最新の路線価が公表されました。
対象となる1月1日時点は、新型コロナウイルスの影響を受ける直前ではありますが、路線価の全国平均は前年比で1.6%の上昇、神奈川県では1.1%の上昇となりました。
今回は神奈川県の人気都市横浜の公示価格と路線価についてご紹介します。
目次
- 1.公示価格と路線価
- 2.横浜市18区の地域事情と地価について
- 2-1.鶴見:鶴見市場、花月園前、生麦
- 2-2.神奈川区:東神奈川、白楽、反町、新子安
- 2-3.西区:横浜駅、みなとみらい、新高島
- 2-4.中区:山下町、元町・中華街、桜木町、関内
- 2-5.南区:井土ヶ谷、小金町
- 2-6.保土ヶ谷区:天王町、保土ヶ谷、星川、和田町
- 2-7.磯子区:根岸、磯子、新杉田、洋光台
- 2-8.金沢区:能見台、金沢文庫、金沢八景
- 2-9.港北区:新横浜、日吉、綱島
- 2-10.戸塚区:上倉田町、東戸塚、戸塚
- 2-11.港南区:上大岡、港南台、港南中央
- 2-12.旭区:南万騎が原、二俣川、鶴ヶ峰
- 2-13.緑区:長津田、十日市場、中山
- 2-14.瀬谷区:三ツ境、桜ケ丘
- 2-15.栄区:大船、本郷台
- 2-16.泉区:緑園都市、弥生台、いずみ野、いずみ中央
- 2-17.青葉区:美しが丘、たまプラーザ、あざみ野、市が尾、青葉台
- 2-18.都筑区:仲町台、港北ニュータウン(センター北、センター南)
- 3.まとめ
1.公示価格と路線価
公示価格とは、国土交通省が毎年3月に公表する土地の標準価格のことで、土地を取引する際の基準になります。
横浜市の公示価格は全体的に上昇傾向にあり、特に住宅地においては2013年(平成25年)から2020年(令和2年)までの7年間で8.7%も上昇しています。
路線価とは、国税庁が毎年7月に公表する相続税や贈与税の土地評価の基準価格になるものです。横浜市の路線価の上昇は7年連続で、下落した地点は6年連続でありません。
最も上昇率が高かったのは、2020年6月に「JR横浜タワー」が開業した「横浜駅西口バスターミナル前通り」で34.5%となっており、東京国税局管内においても最も高い上昇率となりました。
2.横浜市18区の地域事情と地価について
横浜市の最新公示地価は平均33万2060円/㎡、坪単価では平均109万7720円/坪となっており全国40位です。
横浜市は近年、商業店舗と企業の集積化を進めており、横浜駅周辺地区、みなとみらい21地区、関内北仲通地区等の中心エリア、新横浜駅周辺地区では地価の上昇が顕著である一方、都心から遠のく西部や南部の上昇率は低くなっています。
横浜市には18の行政区が設けられていますので、それぞれの行政区の地域事情と公示地価(基準地価)についてポイントを抜き出してみます。
2-1.鶴見:鶴見市場、花月園前、生麦
鶴見区は横浜市内でも有数の生活拠点に指定されています。
港南区に次いで人口が多く、東海道本線が通っていて東京に近いため、ベッドタウンとしての一面を有していると言えるでしょう。しかし田舎というわけでもなく、鶴見駅を中心に商業施設も多いため生活利便性の良い地域です。
また京浜工業地帯の一角を担っており、森永製菓や麒麟麦酒、日産自動車など日本を代表する大手企業の工場等も多数建設されています。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 265,800 | 482,000 | 190,000 |
鶴見駅周辺の路線価
鶴見駅周辺の路線価は2013年(平成25年)から上昇の一途をたどっています。
要因としては、鶴見駅はJR東海道線・鶴見線・武蔵野線・南武線(支線)の4路線の乗り入れがあり、また鶴見駅東口にある大型複合施設、その周りの動線の整備などで人の流入が盛んな点が挙げられ、今後も上昇傾向が続くものと思われます。
2-2.神奈川区:東神奈川、白楽、反町、新子安
横浜市内で最初にできた行政区が神奈川区で、西部に広がる丘陵地、東部に広がる埋立地、その間には丘と平地が点在しています。
横浜の中心街から電車で1駅の距離にあり、国道1号線も通る便が良い場所です。駅を中心に再開発がおこなわれており、大型ショッピングセンターや高層ビルなどが立ち並び、商業的な一面が強いエリアとなっています。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 273,200 | 652,800 | 125,000 |
神奈川区の路線価
東急東横線白楽駅周辺の路線価は、2012年(平成24年)に一旦下落しましたが、その後は上昇の一途です。
住宅地に高い人気がある点、商店街などの商業エリアが近くに位置していることなどの立地環境から、今後も上昇傾向を続けると思われます。
2-3.西区:横浜駅、みなとみらい、新高島
西区は横浜市の中で面積、人口ともに最も小さな区ですが、市内の中核都市です。中心駅となる横浜駅はターミナル駅として、JR・私鉄・地下鉄の各線が集結し、県下全域を商圏としています。
商業地としての地価は市内で1㎡当たり200万円近くとなっており、高所得者が多い超高級エリアとして位置づけられています。どちらかというと商業地が多く住宅地は少ないため、相続税の課税割合は低めとなっています。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 291,300 | 1,986,700 | - |
西区の路線価
今回の最新の路線価では、東京国税局管内(※)で横浜駅西口が最も上昇率の高い地点となりました。神奈川県内では42年連続での最高額です。
横浜市が特に力を入れて開発している地域であるため、来年以降もしばらく上昇していくでしょう。
※東京都、神奈川県、千葉県、山梨県
2-4.中区:山下町、元町・中華街、桜木町、関内
神奈川県の行政機関が集中している地域が中区です。また、「横浜中華街」、「馬車道」、「横浜スタジアム」、「みなとみらい」、「横浜大さん橋」など横浜市の中でも有名な観光地が多く、賑わいのある街です。
オフィス街、商業施設、住宅街と仕事をするにも生活するにも適した地域と言えます。県内随一に住宅地価が高く、人気の居住スポットとしても知られているエリアです。
西区と同じく商業地がメインであり、相続税の課税割合は高くありません。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 353,600 | 750,800 | 178,300 |
中区の路線価
横浜の中心であり、路線価も安定した上昇傾向にあります。
2-5.南区:井土ヶ谷、小金町
横浜市内で最も人口密度が高いエリアとして知られています。
東京都心や横浜都心へ通じる京浜急行線が通る4駅と、横浜市内を結ぶ市営地下鉄線が通る4駅があり、区外への通勤や通学などのアクセスが良い地域となっています。
平地と丘陵地には住宅エリアが広がっており、横浜市内の中では比較的住みやすい地域となっています。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 219,900 | 358,000 | - |
南区の路線価
路線価は吉野町駅や蒔田駅などの駅周辺ほど上昇率が高い傾向にあります。
2-6.保土ヶ谷区:天王町、保土ヶ谷、星川、和田町
横浜市の中でも住宅街が広がっているエリアです。生活するための商業施設はありますが、大規模な工場・ビル等はあまり見られません。横浜駅にアクセスが良いにもかかわらず、地価は比較的低いため人気の地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 192,000 | 306,500 | - |
保土ヶ谷区の路線価
路線価も上昇傾向ではありますが、横浜市内では比較的上昇率が緩やかな地域です。
保土ヶ谷駅から横浜駅に近いエリアでの上昇は顕著ですが、駅から離れたエリアでは下落傾向にあります。
2-7.磯子区:根岸、磯子、新杉田、洋光台
横浜市内のベッドタウンの1つで、区内全域に住宅街が広がっています。
交通網が発展している一方で産業があまり活発ではなく、新規分譲住宅地も少ないです。商業地の地価の向上があまり期待できない地域ではありますが、自然が豊かで伸び伸びと生活できる地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 186,800 | 296,600 | - |
磯子区の路線価
路線価はわずかに上昇傾向ではありますが、ほぼ横ばいに近い状況です。
根岸駅、磯子駅、洋光台駅などの駅周辺は、区内では上昇率が高い方です。
2-8.金沢区:能見台、金沢文庫、金沢八景
金沢区は横浜市の中でも最南端に位置した区で、マリンスポーツが盛んな地域です。どちらかというと史跡が多く残っている地域で、文化的な街並みをしています。
住宅街が広がっており、県下でも3番目に住宅地の地価が安いエリアなので、緑や海に恵まれた穏やかな暮らしを求めている人には最高の地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 182,100 | 327,400 | 123,000 |
金沢区の路線価
路線価は小幅な上昇で、横ばいに近い状況です。
能見台駅や金沢文庫駅の周辺の上昇率が高くなっていますが、駅から離れた丘陵地では下落傾向にあります。
若い世代が少ないエリアなので、今後は人口減少による需要減も心配されます。
2-9.港北区:新横浜、日吉、綱島
今でも再開発の真っ只中にある港北区には、かつての工業地帯の名残が見られながらも、宅地や商業施設などの新たな開発が進められています。
新横浜駅を中心としてビル街やマンション等が軒を連ねており、オフィス街・住宅街を形成しています。県下でも屈指の地価が高いエリアで、高所得者が多数見られる地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 303,600 | 670,500 | 258,800 |
港北区の路線価
区内全域で上昇傾向が強く、特に都心に近い日吉駅周辺の上昇率が顕著です。
今後も開発が続いていくことから、しばらく強く上昇していくでしょう。
2-10.戸塚区:上倉田町、東戸塚、戸塚
戸塚区は横浜市内でのベッドタウンの1つで、区内において最も面積が大きく、居住人口も比較的多い地域です。東京へのアクセスがしやすいことから、都内で働く人も生活拠点を戸塚区に構える人もいます。
現在では、戸塚駅を中心として商業施設と住宅街との複合タウンを目指した開発が進んでおり、商業的な一面も見せ始めるようになりました。戸塚駅周辺をはじめ地価は上昇傾向です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 196,300 | 400,100 | 146,000 |
戸塚区の路線価
路線価は横浜市内では中程度の上昇率です。
全域で上昇傾向ですが、特に東戸塚駅、戸塚駅周辺の上昇率は高くなっています。
2-11.港南区:上大岡、港南台、港南中央
横浜市内で再開発が続いている地域の1つです。複数の鉄道が走り、高速道路への乗り入れもスムーズです。主要駅がいくつかあり、港南台駅周辺には商業施設が多数建設され、港南中央駅周辺には行政機関が集中しています。
地価はそれほど高くなく、「都会過ぎず田舎過ぎず」という言葉がぴったりな生活拠点にできる地域です。
住宅地 | 商業地 | 工業地 | |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 202,000 | 449,600 | - |
港南区の路線価
路線価の上昇率は横浜市内においては中程度です。
上大岡駅や上永谷駅の周辺の上昇率は高いですが、芹が谷地区や、野庭団地周辺などの駅から遠いエリアでは下落傾向にあります。
2-12.旭区:南万騎が原、二俣川、鶴ヶ峰
横浜市の西部に位置しており、市の中心部や京浜工業地帯への通勤者の多くのベッドタウンとして、重要な生活拠点となっています。地価はそれほど高くなく、住みやすい地域です。
なお、近年では再開発の計画も立てられており、今後は商業地としての繁栄も期待できます。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 187,000 | 311,000 | - |
旭区の路線価
路線価は毎年微弱な上昇を続けています。特に2018年からの2年間では微弱ながらも上昇率が高くなっています。
ほぼ全域で上昇傾向ですが、特に二俣川駅周辺の上昇率が顕著です。
2-13.緑区:長津田、十日市場、中山
横浜市内でも比較的農業が盛んなエリアで、かつ交通の便にも優れています。
商業施設も多数立地していますが、たくさんの緑と川がある自然豊かな地域として知られています。工業地としても一面もあり、様々な産業が入り混じっている行政区です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 216,200 | 363,200 | 159,000 |
緑区の路線価
十日市場駅周辺の路線価をみますと、2012年(平成24年)に一旦下落し、2013年からは上昇傾向で2016年からは更に強く上昇しています。
学園都市としての側面もあり商業施設の出店が盛んな点、住宅地の開発も進んでおり横浜市の注目エリアとなっており、今後も上昇傾向は続くでしょう。
2-14.瀬谷区:三ツ境、桜ケ丘
横浜市内で栄区に次いで、住宅地が安い行政区です。
横浜市は基本的に丘陵地帯なので坂道が多いですが、瀬谷区は平野の入り口にあたり、地勢が平坦であるということが最大の特徴で、徒歩や自転車移動がしやすい地域です。
地価の上昇率は高くなく安定しており、駅から徒歩5分で戸建て住宅街が広がっていますので、戸建てのマイホームを持ちたいという人には特にお勧めの地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 173,000 | 286,000 | 172,000 |
瀬谷区の路線価
路線価は小幅な上昇傾向です。
瀬谷駅、三ツ境駅周辺の上昇率は高く、他は安定的です。
2-15.栄区:大船、本郷台
横浜市内で最も住宅地の地価が安いエリアです。
本郷台駅や大船駅を中心として栄えており、駅前エリアには商業施設や繁華街が広がっています。丘陵地を中心に住宅開発が進んでおり、人口も増加中です。
大規模な商業施設や娯楽施設などはありませんが、自然に触れながらゆっくり生活できる地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 170,100 | 224,500 | 118,000 |
栄区の路線価
路線価はわずかに上昇傾向ですが、横ばいに近い状況です。
大船駅、本郷台駅の周辺の上昇率は高いですが、駅が遠くなるほど下落傾向が強くなります。
2-16.泉区:緑園都市、弥生台、いずみ野、いずみ中央
泉区は農地面積、農業に従事している人の人口が市内で最大の地域です。また、戸建ての割合が市内で最も高い住宅都市となっています。
地価が高くないためベッドタウンである一方、都市部に出るには少し不便さがある地域です。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 198,300 | 253,800 | - |
泉区の路線価
路線価は横浜市の平均的な上昇率となっています。
住宅地の上昇が顕著ですが、駅からあまり離れてしまうと上昇率はわずかとなってしまいます。
2-17.青葉区:美しが丘、たまプラーザ、あざみ野、市が尾、青葉台
東京都へのアクセスが非常に便利で、ベッドタウンとして栄えている地域が青葉区です。都内への通勤者は市内最多となっており、東京都内に住んでいるような感覚になるほどの近さです。
立地条件が良いため、住宅地・商業地ともに比較的地価が高くなっており、鉄道のメインとなる東急田園都市線の沿線には超高級住宅地があることでも有名です。横浜市内では相続税の課税割合が最も高い地域となっています。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 294,800 | 465,700 | - |
青葉区の路線価
路線価は横浜市の平均を上回る上昇率です。
全域で上昇していきますが、たまプラーザ駅など都心に近い北側ほど上昇率は高い傾向にあります。
2-18.都筑区:仲町台、港北ニュータウン(センター北、センター南)
開発がどんどん進んでいる地域です。
都筑区の中でも東京駅から25km圏内、横浜駅から15km圏内に位置する、「港北ニュータウン」は、豊かな自然のなかにお洒落で閑静な住宅街が形成されており、若いファミリー層に絶大な人気となっています。
発展途中の地域なので地価は市内でも高い方で、今後もまだまだ発展していくことが見込まれるため、地価も上昇していくでしょう。
公示地価 | 住宅地 | 商業地 | 工業地 |
---|---|---|---|
平均価格 (円/㎡) | 273,300 | 497,500 | 193,700 |
都筑区の路線価
路線価は横浜市の平均を上回る上昇率で、ほぼ全域が大幅に上昇しています。
特にセンター北駅、センター南駅周辺の上昇傾向は強いです。
【参考資料】地価のあらまし(地価公示・県地価調査) 横浜市
3.まとめ
今年公表された最新の公示価格と路線価では、横浜市は全体的に好調な上昇傾向にありました。
しかしこれは2020年1月1日時点での金額である点に注意しましょう。この後のコロナ渦が地価にどう影響を与えるのかにも注目しなければなりません。
コロナによる経済活動の低迷や不動産の不買などで、地価の下落は全国で避けられないと考えられるため、国税庁は10月以降に路線価の補正を行う可能性を発表しました。これまで大規模災害での補正を行うことはありましたが、経済の低迷による補正は前代未聞になります。国土交通省の「地価LOOKレポート」も重要な参考資料とされるので、その動向に注目が集まります。
【参考資料】土地・建設産業:♦~地価LOOKレポート~これまでの発表資料 - 国土交通省