相続時精算課税制度で2500万円までの贈与が非課税に
贈与者の生前に財産を受贈者が承継する生前贈与は、贈与税の課税対象となりますが、贈与税の課税方法には、「暦年贈与」と「…[続きを読む]
相続時精算課税制度を上手に使うと、相続税の節税対策になります。ただし、相続時精算課税制度を使うためには、「相続時精算課税選択届出書」や「贈与税の申告書」などの必要書類・添付書類を所轄の税務署に提出する必要があります。また、さまざまなケースで贈与税の申告書等の記載方法や記載箇所が異なります。
ここでは、相続時精算課税制度を初めて適用する場合と、適用中の場合における贈与税申告書の書き方を解説します。
目次
相続時精算課税制度を初めて適用する場合は、「相続時精算課税選択届出書」と贈与税の申告書を作成する必要があります。
相続時精算課税選択届出書の全体図です。書き方の詳細を詳しく解説していきます。
用紙左上に、提出年月日と住所地を所轄する税務署名を記載します。
提出年月日については受付印に受領日が印字されているため、記載を省略することもできます。
贈与を受けた人(贈与税の申告をする人)の住所や氏名、電話番号などの情報を記載します。特定贈与者との続柄は「長男」や「長女」、「孫」等を記載します。
特定贈与者とは、「贈与者:直系尊属、受贈者:1月1日時点で20歳以上」の場合の贈与者のことを言います。
相続時精算課税制度の要件は、「60歳以上の直系尊属から20歳以上の子供/孫への贈与」ですので、贈与者は必然的に特定贈与者に該当します。
前項で説明した、特定贈与者の住所や氏名、電話番号などの情報を記載します。
こちらは、養子等で年の途中で特定贈与者の推定相続人、または孫となった場合で、その後の贈与に対して、相続時精算課税制度を選択する場合のみ記載します。
該当しない場合は記載しません。
(1)~(4)までの全ての書類が必要です。書類の添付を確認しチェックを付けます(※)。特定贈与者の住民票の写しはマイナンバーの記載のないものを添付します。
※複数の特定贈与者(贈与をした人)から贈与で相続時精算課税制度を利用する場合は、特定贈与者ごとに、相続時精算課税選択届出書を作成して提出する必要があります。
相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与税の申告書の第一表と第二表を作成する必要があります。
第一表
第二表
作成手順は、次の通りです。
それでは、第二表から見ていきましょう。
受贈者(申告した人)の氏名を記載します。
また、その下にあるチェック欄に「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」を受ける場合のみ、チェックを付けます。それ以外はチェックの必要はありません。
贈与をした人の住所や氏名、生年月日などの情報を記載します。
特定贈与者が複数いる場合は、その人数分第二表の作成が必要です。
左の欄に、贈与された財産の明細を記載します。贈与を受けた財産が複数ある場合は財産ごとに記載します。
右の欄に、財産を取得した年月日と財産の価格を記載します。記載漏れが多い箇所のため注意しましょう。
相続時精算課税制度を利用する贈与財産の価格(課税価格)の合計額を記載します。
相続時精算課税制度を初めて適用する場合(非課税範囲内)に記載が必要な箇所は、以下の通りです。
特別控除額の残高を記載します。計算方法は、以下の通りです。
2500万円 − ㉔過去の年分の申告において控除した特別控除額の合計額(※)
※初めて適用する場合は㉔の項目はありません
この欄には、「㉓財産の価格の合計額」と「㉕特別控除額の残高」のいずれか低い金額を記載します。
特別控除額2500万円のうち、この年度で使いきれなかった残高を記載します。計算方法は、以下の通りです。
2,500万円 - ㉔過去の年分の申告において控除した特別控除額の合計額 - ㉖翌年以降に繰り越される特別控除額
上記のように、項目ごとに簡単に見ていきます。なお、非課税範囲内の贈与の場合は記載の必要はありません。
この項目には、㉖特別控除額の控除後の課税価格を記載します。計算方法は、以下の通りです。
㉓財産の価格の合計額(課税価格) - ㉖特別控除額
※1,000円未満は切り捨て
上記㉘でもとめた、特別控除額の控除後の課税価格の税額を記載します。税額の求め方は、以下の通りです。
㉘ × 税率20%
この項目は、外国にある財産の贈与を受けた場合で、外国で贈与税を課されたときのみ記載します。
ここでは、㉙から㉘の値を引いた額を記載します。
この項目では、この項目には、上記で記載した特定贈与者からの贈与によって取得した財産の、過去の相続時精算課税分の贈与税の申告状況を記載します。
記載内容は、「申告した税務署」、「控除を受けた年分」、「受贈者の住所及び氏名」です。
この欄は、税務署が記入するので記載不要です。
第二表の作成が終わったら、第一表を作成します。
申告者の住所や氏名、電話番号、マイナンバーなどの情報を記載します。
ここは、記載不要です。
相続時精算課税制度のみの場合は、記載不要です。
相続時精算課税制度を初めて適用する場合(非課税範囲内)に記載が必要な箇所は、以下の通りです。
特定贈与者ごとの、第二表の㉓財産の価格の合計額(課税価格)の金額を転記します。
合計額の計算方法は、以下の通りです。
①特例贈与財産の価額の合計額 + ②一般贈与財産の価額の合計額 + ⑪相続税精算課税分の課税価格の合計額
相続時精算課税制度を適用中(2回目以降)の場合は、基本的に、贈与税の申告書のみ作成します。
「相続時精算課税選択届出書」は、新たに特定贈与者が増えた場合のみ作成が必要となります。前回以前と特定贈与者が変わらない場合は、作成不要です。
初回の適用時と同様に、贈与税の申告書の第一表と第二表を作成する必要があります。手順としてはまず第二表を作成し、第二表の数字を第一表に転記します。
まずは第二表から見ていきましょう。
途中までは、初めて相続時精算課税制度を適用する場合と同じですので省略します。
・特別控除額の計算
相続時精算課税制度を適用中(2回目以降)のケース(非課税範囲超)で、記載が必要な箇所は、以下の通りです。
過去の年分の申告で控除した特別控除額の合計額を記入します。なお、過去の年分の申告で控除した住宅資金特別控除額は、特別控除額に含まれません。ご注意ください。
不明な場合は、2,500万円から前年分の贈与税の申告書第二表の㉗の数字を差し引いた金額を記載します。
そのほかの項目に関しては、初回の適用時と同じです。
第二表の作成が終わったら、第一表を作成します。
こちらも途中までは、初めて相続時精算課税制度を適用する場合と同じですので省略します。
相続時精算課税制度を適用中(2回目以降)のケース(非課税範囲超)に記載が必要な箇所は、以下の通りです。
第二表の㉛差引税額を転記します。
ここには、差引税額の合計額(納付すべき額)を記載します。計算方法は、次の通りです。
⑩差引税額 + ⑫相続税精算課税分の差引税額の合計額
ここの金額が納付する贈与税の金額です。計算方法は以下の通りです。
⑭差引税額の合計額 - ⑮ - ⑯ - ⑰ - ⑱ - ⑲
⑮~⑲までの額がない場合は、⑭の額を記載します。
受贈者が相続時精算課税選択届出書を提出する前に死亡している場合、制度の適用を受けるためには、受贈者の相続人(包括受遺者を含み、特定贈与者を除きます。)全員が相続時精算課税選択届出書をその死亡を知った日の翌日から 10 か月以内に提出することになります。
この場合は、「相続時精算課税選択届出書付表」も併せて提出することとなります
今回は、相続時精算課税制度を利用した贈与税申告書の書き方を図を用いて解説しました。相続時精算課税制度は、非常に便利な制度です。
しかし、その手続きには、多少難易度が高い箇所も含まれています。申告を自分で行って、少しでも難しいと感じた場合は、ご自身で判断するのではなく、相続税に強い税理士に依頼してみることをお勧めします。