1.福生市の相続税申告の特徴
米軍横田基地がある「基地の街」として有名な国分寺市は、多摩地区の中央寄り西部に位置しており、市域の32%を基地が占めています。
東側には立川市、昭島市、武蔵村山市、西側は多摩川を境にしてあきる野市、南側は八王子市、北側は羽村市、瑞穂町に隣接しており、都心から約40キロメートル圏にあります。
奥多摩の美しい山並み、多摩川の野鳥など、ひと言でいうと田舎ですが交通利便性は極めて高く、長年ベッドタウンとして発展しています。横田基地以外は市域の大半が、住居系に利用されています。
今回は、そんな福生市の相続税申告について詳しく解説していきます。
1-1.福生市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、福生市を管轄する青梅税務署、東京都、全国における相続税申告状況は次の通りです。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
青梅税務署 管轄エリア | 12.64% | 9.31% | 1,570万円 |
東京都平均 | 22.56% | 16.25% | 3,029万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万円 |
1-2.青梅税務署は4市3町1村を管轄している
青梅税務署は、福生市の他にも青梅市、羽村市、あきる野市、瑞穂町、日の出町、檜原村、奥多摩町の4市3町1村の多くのエリアを管轄しています。したがって、上記の数値は、これらの平均値となります。
市単独の数値は公表されていませんが、これらの市町村は多摩地区でも田舎に該当するエリアであり、特に町村では地方都市並みの課税割合となっていることが予想されます。
福生市はこの中では都心寄りに位置しており、平均値を底上げしていると考えられます。
1-2.福生市は相続税課税に油断できないエリア
青梅税務署の数値は、東京都の数値より全国平均寄りになっています。だからといって、安心してはいけません。
まず、東京都の課税割合16.25%は、全国47都道府県中において圧倒的トップの数値であり、2位の愛知県は13.93%となっています。
そして、全国の課税割合8.35%というのは、東京都が底上げしているからこその数値であり、青梅税務署管轄エリアの課税割合の数値を全国47都道府県ランキングにあてはめてみると、12位の大阪府8.40%に次ぐ13位の位置にあたります。課税割合が全国平均並みであっても全国的には上位にあり、相続税課税が多く行われているエリアであるということなのです。
相続税の課税について、福生市は、全国的に見ると十分注意を払わなければならないエリアです。
2.福生市の特徴
福生市の面積は10.16㎢、人口は56,138人(令和4年3月1日現在)です。
狭い市域のうえに、その32%が横田基地に利用されているため、基地を除いた市域は6.92㎢しかなく、人口密度が極めて高い街となっています。
昭和40代からベッドタウンとして発展してきたため、現在では都市基盤はほぼ充足し、完成した街並みとなっています。目立つ再開発は行われておらず、現状維持が続くと考えていいでしょう。
それでは、福生市の特徴とそれが相続税の課税に対してどのように影響しているのかを見ていきましょう。
2-1.都心から遠いが優れた交通アクセスでカバー
狭い市域の中には、JR青梅線、五日市線、八高線の3路線が走っており、5つの駅がちょうどよい距離で点在しています。
都心から約40キロメートル圏にあるため、ベッドタウンとしては少し遠く、福生駅から新宿までは乗り換えなしで45分ほど、東京駅までは1時間ほどかかるのが難点ではありますが、その通勤時間が許容できるのであれば居住地として良い環境と言えるでしょう。
2-2.中心地は福生駅
中心駅となるのはJR青梅線のみが乗り入れている福生駅です。
駅前には24時間営業のスーパー西友や、スターバックス、マクドナルドなど、生活の不便を感じさせない商業施設が広がっています。大規模な商業施設やタワーマンションなどはなく、混雑することもないため、中心駅ではありますが人が生活しやすい環境です。
福生駅西口側は閑静な住宅街が広がっており、新興住宅街もあります。都心に比べて地価が格段に低いため、広い庭付き戸建て購入の夢が叶うエリアです。都内の一般的なサラリーマンが多く居住していると考えられます。
2-3.福生市の地価
福生市の平均地価は1㎡あたり18万3,000円で、東京都全59位中43位の金額となっています。
市内で最も地価が高いエリアは、中心駅の福生駅で1㎡あたり20万円となっています。
反対に最も地価が低いエリアは、市の北西部に位置する東福生で、1㎡あたり14万円であり、福生市の地価は、さほど高低差がないといえます。
福生駅周辺の新築戸建ての相場は3,000万円台前半となっており、年収400万円程度あれば手が届きます。広い庭付きだとしても4,000万円あれば十分に購入可能でしょう。
相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、福生市の場合には自宅のみでの相続税課税は起こりにくいと思われ、相続税課税の有無は、預貯金などに左右されることが多いと考えられます。
2-4.福生市の地価から課税割合を考える
青梅税務署の同管轄エリアにある福生市以外の市町村の地価を、東京都内の地価ランキング全59位に当てはめると次の通りになります。
エリア | 地価(1㎡当たり) | 順位 |
---|---|---|
羽村市 | 15万円 | 46位 |
青梅市 | 10万円 | 48位 |
瑞穂町 | 9万円 | 49位 |
あきる野市 | 8万円 | 50位 |
日の出町 | 5万円 | 51位 |
奥多摩町 | 2万円 | 52位 |
檜原村 | 1万円 | 54位 |
順位だけを見ると、エリア内すべてが近い位置にありますが、金額を見ると福生市と羽村市の2市の地価が突出して高いことが分かります。
一方で、地価が5万円以下となる50位以下は、ベッドタウンとしては不便な立地にあることから、所得は低いと考えられ、相続税の課税はほとんどないと推定されます。
これらのエリアを含めても課税割合9.31%という結果になっているということは、福生市の相続税の課税の多さが推測できるでしょう。
3.福生市の税理士情報
全国には80,054人(令和4年2月末日時点)の税理士がおり、その3割にあたる23,841人が東京都にいます。そしてそのうち福生市には、わずか26人しかいません。
東京税理士会青梅支部は青梅税務署と同じ市町村を管轄していますが、その周辺4市3町1村あわせても税理士は130人となっています。
青梅税務署管轄内は相続税申告件数が少なく、令和元年では611件でした。しかし、それを税理士130人で分担しているとした場合の、税理士1人あたりの相続税申告数は0.21件となり、年間5件もの相続税申告を行っている計算になります。
東京都全体では0.76件であり、0.21件という数値は税理士が少ない多摩地区の中でも税理士が少ないエリアになります。
それでは税理士の少ない福生市で、相続税に強い税理士を探す方法について解説します。
3-1.可能であれば東京23区
福生市内の税理士は26人しかいないため、地元税理士に限定してしまうと相続税に強い税理士は見つけにくく、少ない選択肢の中から無理に選ばなければならなくなってしまいます。
そこで、都内の税理士の9割が集中している東京23区をおすすめします。
東京23区には高級住宅街が数多く点在しており、福生市内ではなかなかないような複雑な相続税申告が多発します。東京23区で相続税申告を年間100本以上こなしている税理士は、相続税に強い税理士であると判断して良いでしょう。
さらに東京23区には福生市の1,000倍にもなる税理士がいるため、相続税に強い税理士の数も桁違いです。
相続税への実力とその人数から、1時間かけてでも東京23区で行う税理士探しはメリットが大きいです。
契約後の打合せは税理士の方から出向くこともできるため、東京23区の税理士に依頼するからといって、地元税理士に依頼した場合とでそこまで大きな労力にはならないはずです。
3-3.相続財産に見合った税理士を選ぶことも重要
相続税に強ければ強い税理士であるほど、相続税申告を安心して任せることができるということは間違いありません。
しかし、福生市に多いと考えられる、相続税がかかるか否かギリギリのラインの相続財産の場合には、相続税専門の都内のブランド税理士に依頼するのは勿体ない可能性もあります。その税理士の底力まで発揮されない申告であるにもかかわらず、税理士報酬は高額だからです。
税理士選びでは、相続財産と税理士報酬も検討材料にすることも重要です。
【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、東京税理士会HP、東京税理士会 青梅支部HP