荒川区の相続と税理士事情
東京都23区内の北東部に位置し、下町文化が色濃く残る荒川区。特に、地名のように川が区境や県境になっているところもあり、自然があふれる地域として人気を集めています。住民が増え住宅街が広く形成されている荒川区では、どのような特徴の相続が起きているのでしょうか?
1.荒川区の相続事情
東京都荒川区の1年間の相続税申告件数は274件、実際に課税された件数は193件です。相続1件あたりの納付税額は約2,900万円、課税割合は9.41%となります。東京都23区内の相続税に関する平均データでは、1件あたりの納付税額は約3,000万円、課税割合は16.78%となっています。
この平均データと比べてみると、1件あたりの納付税額は平均並みの金額ですが、一方で課税割合は半分程度と低い数字です。特に、課税割合の低さは特徴的で、23区内で10%を下回っているところは5箇所しかありません。つまり、荒川区は数少ない課税割合が極端に低い地域なのです。
そのため、相続税が課税される頻度は低いものの、しっかりとした金額の相続税が課税されていることが分かります。しかし、課税される可能性が低いからといって対策が不必要というわけではありません。課税される相続税額は非常に高額ですので、しっかりとした対策を講じておくことが求められています。
2.荒川区の地価事情
課税割合に比べて納付税額が高額な荒川区の相続税。どうしてこのような特徴が現れているのか、その背景を地価から探ってみましょう。
2-1.荒川区の代表的な地域と地価
2-1-1.日暮里
唐川区の南西部に位置し、西部では文京区、南部では台東区と隣接している日暮里。日暮里という地名は主に日暮里駅周辺を指していますが、地名としては西日暮里や東日暮里の一部を含んだ地域です。実は、居住表示のためにに西と東に分けられた背景があり、もともとは全体で日暮里という地域に属していました。
現在の日暮里は町工場や商店街、住宅というさまざまな施設が密集している地域になっています。そのため、下町文化が残る地域として紹介されることもあり、どこか懐かしい雰囲気が漂う地域です。
日暮里の地価平均は約85万円で、荒川区の中で最も地価が高額な地域です。加えて、西日暮里の地価平均は約67万円になっており、区内では2番目に地価の高額な地域でもあります。つまり、日暮里地域だけで区内の地価の高額な場所を占めていることが分かります。
そして、日暮里は住宅地としての色合いが濃いことから、住宅地であっても地価が高額な傾向が見られており、相続税が課される可能性が極めて高い地域であると考えられます。さらに、日暮里駅の東部の地域は、北部に三河島駅が存在し交通の利便性が高いため、高水準で地価が推移し値が下がりにくいことにも注意が必要です。
2-1-2.三ノ輪橋、南千住
日暮里の北東部、三河島の東部に位置している三ノ輪橋。そして、三ノ輪からさらに東へ向かったところ、荒川区の北東部には南千住があります。荒川区の東部はもともと南千住地域と呼ばれており、今でもこの辺り一帯は密接な関係にある地域です。
この地域内は主に住宅街やマンション街が形成されており、駅前などには大きな繁華街が形成されており、多くの人が賑わっています。ですので、繁華街と住宅街が共存した地域として、住みやすさが高く人気が高まっている地域になっています。
三ノ輪橋の地価平均は約62万円、南千住の地価平均は約43万円です。荒川区の東部を表す地域の中でも三ノ輪橋のほうが地価が高額になっており、特に区内3番目という高額な地域でもあります。この地価の差は、台東区にある三ノ輪駅の影響が大きいと考えられます。
三ノ輪橋駅は区内での移動を手軽にしてくれますが、都心部などへの移動が難しい路線となっています。その結果、都心部や南千住などへ移動がしやすい三ノ輪駅の方が使いやすく、この周辺地域の地価が上昇しています。三ノ輪橋駅と三ノ輪駅の間は徒歩やバスなどで手軽に移動ができるため、三ノ輪橋駅周辺の地価が高額化しているのだといえます。
2-1-3.三河島(荒川)
荒川区の中心部に位置し、区役所などが建設された荒川区の行政の中心部になっている三河島。地名としては荒川と東日暮里の一部が含まれた地域で、主に荒川がメインとなっている地域です。
この地域には、区役所だけでなく警察署や都税事務所、保健所などが建設されており区民にとっては重要な地域になっています。一方で、こうした行政施設が中心の街づくりが行われている背景が住みやすさに繋がり、住宅地として人気を集めている地域です。
三河島の地価平均は約54万円で区内では5番目に地価が高額な地域です。加えて、荒川区役所周辺では約52万円と区内でも高額な地域がこの周辺に集中しています。また、地価平均約40万円と中心部よりも金額は下がっていますが、住宅街の地価も高い水準を記録しています。
そのため、地域全体で地価が高いことが三河島のとkつようといえるでしょう。特に、行政施設が集まっていることから治安もよく、荒川公園や三河島公園など緑が多い地域でもありますので、今後も住宅地としての需要は伸びていくと予想されます。
2-2.荒川区の地価の特徴
荒川区全体の地価平均は約53万円で、23区内の中では16番目という低い順位の金額です。決して低い地価ではないのですが、価格が伸び悩んでいる背景には駅周辺の開発が関係していると考えられます。
荒川区の中でも日暮里や南千住などには、駅周辺に商業施設が立ち並ぶ繁華街が形成されています。しかし、他の地域では住宅街が広く形成されており、駅周辺でも商業施設が建設されていない地域が多いのです。そのため、駅周辺でも繁華街が形成されておらず、企業からの需要が低いので、地価が伸び悩んでいると考えられるのです。
また、住宅地としての人気は非常に高く、減少していた人口も現在では徐々に増加しており、ピーク時に次ぐ人口まで増加しています。これは、南千住地域が都内最大規模の再開発が行われたことが原因で、緑が多く住みやすい住宅街が形成されたことが影響しています。
ただし、同時に大規模なマンションの建設ラッシュが続いており、一軒家を購入する人よりもマンションで暮らす人が急増しています。その結果、地価が高額なため相続税額は高額になりやすい傾向にありながら、相続する自宅を所有する世帯が少ないため課税割合が低くなっていると考えれます。
3.荒川区の所得と富裕層
次は、荒川区の所得から相続の特徴を考えてみましょう。2016年の荒川区の所得税納税義務者数は約10万2,500人、課税対象所得は約3,720万円です。1人あたりの所得額を計算すると約363万円で、東京都内では35番目の高さになります。2017年では約362万円とほぼ横ばいで推移しています。
この所得額は都内では平均よりもやや低めの金額ですので、都内から見れば富裕層は少ないといえるかもしれません。この背景にあるのは、おそらく荒川区が住宅街として発展してきたからだと考えられます。
高所得者が集まる要因として、企業が集まるビジネス街が形成されていること、ビジネス街へのアクセスが手軽であることが関係しています。しかし、荒川区の場合は都心部に近いのですがアクセス経路が限られています。もともと住宅街として発展している荒川区では、このような要因を満たさない地域のため、高所得者が集まりにくく全体の所得が低くなっているのでしょう。
ただ、1,000以上ある全国の自治体の中では、100位前後と上位10%に含まれるほどの高所得です。つまり、全国的に見れば富裕層が集まる地域でもあるのです。ですので、財産に課税される相続税額が低くなることはありません。ずば抜けた高所得者が少なく、全体の所得はやや高めであるという状況から、課税割合に比べて課税額が高いという相続の特徴が生まれているのだと考えられます。
4.荒川区の税理士事情
課税割合は低いものの、高額な相続税が課税されている荒川区。全体の所得が都内ではやや低いため、課税金額によっては大きな負担となってしまうこともあります。そこで、相続税対策には欠かせない税理士の実情を確かめていきましょう。
荒川区に在籍している税理士数は246名です。一見すると少なく不足しているように見えますが、荒川区の1年間の申告件数は274件、課税件数は193件ですので、実際に依頼できなくなるような事態に陥ることはないでしょう。
そのため、時間をかけて相続に強く信頼できる税理士を見つけることが大切です。特に、荒川区では各地で地価の上昇が見られており、一軒家が多い住宅街でも地価が上昇しています。ですので、不動産鑑定士と連携していること、再開発など都市の状況に敏感に反応できる税理士がより力になるでしょう。
また、荒川区が住宅地であるということは、東京都の都市部や他の県で生活している人の中には荒川区に実家がある人も多いということも意味しています。荒川区に実家ある場合、その相続税に関する手続きなどを荒川区内で行わなければいけないものもあります。こうしたケースの場合でも地元の税理士の力が重要になりますので、もし実家が荒川区内にある場合にも、同様に少しずつ税理士を探し、実力のある税理士を見つけましょう。
【参考】荒川区内の相続関連機関一覧
荒川区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年4月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
荒川税務署 | 〒116-8588 東京都荒川区西日暮里6丁目7番2号 | 03-3893-0151 (代表) |
北都税事務所 | 〒116-8586 東京都荒川区西日暮里2-25-1 | 03‐3802‐8111 (代表) |
荒川区役所 | 〒116-8501 東京都荒川区荒川二丁目2番3号-22 | 03-3802-3111 (代表) |
東京法務局 北出張所 | 〒114-8531 東京都北区王子6丁目2番66号 | 03-3912-2608 (代表) |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京司法書士会 北・荒川支部 | 〒115-0041 東京都荒川区西日暮里2丁目20番1号 ステーションポートタワー306 | 03-3806-3823 (代表) |
東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館6階 | 03-3581-2201 (代表) |
第一東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館11~13階 | 03-3595-8585 (代表) |
第二東京弁護士会 ひまわり | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館9階 | 03-3581-2255 (代表) |