中央区(東京都)の相続と税理士事情
名前のように東京都のほぼ中央に位置する中央区。港に面し都心を構成する中央区は、古くからの伝統と近代的なビジネス街が融合した街です。そんな中央区ではどのような相続の特徴あるのでしょうか?そして、在籍税理士数など税理士の現状についても併せて確かめていきましょう。
1.中央区の相続事情
東京都中央区の相続税の申告件数は275件、実際に課税された件数は205件です。相続1件あたりの納付税額は約5,200万円、課税割合は23.98%となっています。東京都23区内の平均データでは、1件あたりの納付税額が約3,000万円、課税割合が16.78%です。
平均データと比較してみると、納付税額と課税割合ともに平均を大きく上回っていることが分かります。実際に、1件あたりの納付税額はは23区内で2番目に高額な数字となっていますので、より高額な相続税が課されやすい地域といえるでしょう。
しかし、課税割合については、中央区は9番目に高い数字となっています。23区内では課税割合が30%を超えている地域が多く、それらに比べると課税割合は低くなってしまうのです。
ただ、23区内では課税割合が10%以下の地域も見られているため、中央区の割合が特別低いわけではありません。むしろ、全国的に見れば高い数字ですので、中央区で生活する人は相続税対策についてしっかり考えておく必要があるでしょう。
2.地価事情
納付税額が高額である背景には、地価が高騰していることが考えられます。そこで、中央区の各地の地価を見比べながら、地価の特徴を探っていきましょう。
2-1.代表的な地域と地価
2-1-1.銀座
東京都の地名は全国的に知られているところも多いですが、中でも有名なのが銀座です。日本有数の繁華街であり、高級な品物だけを取り扱っているイメージがある街です。実際に、海外の高級ブランドが出店したり、歴史ある飲食店が多かったりすることから、地名すらブランド化している程です。
ただ、もともと銀座は若者の街として人気を集めており、下町の商店街だったといわれています。江戸から明治、戦前、戦後と時代が移ろう中で、震災や大火事、世界恐慌などを経験し、それらからの復興と発展を続けてきた結果、現在のようなハイブランドなイメージの商店街として成長してきたのです。
銀座の地価平均は約2,156万円で、中央区で最も高額な地域です。特に、駅前などは3,000万円を超える地域もあり、少しイメージしづらい地価かもしれません。しかし、地価が1,000万円を超える地域は商店街が多く、直接相続の対象とはならないでしょう。
銀座で生活している人は、2017年のデータによると全体で2,439世帯、3,544人です。世帯と人口を比べてみると、単身者などが多行ことも分かります。現在の銀座では一軒家よりもマンションが多く、そのマンションもほとんどがオフィスとして使用されているため、相続が頻繁に起こっている地域ではありません。
2-1-2.八重洲
東京都の玄関口として毎日多くの人々が訪れる八重洲。東京都の中心部に東京駅が建設され、今では日本の玄関口としても知られています。八重洲は東京駅の東側を指す地域で、中央区との区境に面しています。
八重洲の特徴は、何と言っても東京駅に面していることです。東京都だけでなく全国からアクセスが可能であることから、数多くのオフィスビルが建設され日本屈指のビジネス街が形成されています。
八重洲の地価平均は約1,022万円で、中央区では5番目に高額な地域です。東京駅に近づくほど地価が高額になり、東京駅周辺では2,000万円を超える地価の地域も存在しています。さらに、八重洲の南部にある京橋も地価平均が1,000万円を超えており、この地域一帯の地価が非常に高騰しています。
ただし、銀座と同じようにこの地域で生活する人は非常に少ないです。八重洲と京橋を合わせても305世帯、人口412人となっています。そのため、この地域で相続が起きることはめ滅多にないでしょう。
2-1-3.日本橋
八重洲からさらに北東部へ進むと、ビジネス街から少しずつ住宅が多くなっていきます。そんな、繁華街と住宅地が融合している地域が日本橋です。日本橋には、日本銀行本店や東京証券取引所がある日本を代表する金融街でありながら、老舗百貨店なども多く立ち並んでいる繁華街です。
一方で、日本橋は甲州街道や東海道のメイン通りであったことから、商人文化が根付いており、宿場町として発展していました。そのため、商業地としてだけでなく、住宅地としても人気があり、現在でも繁華街を過ぎると下町文化の残る住宅街が広がっています。
日本橋の地価平均は約360万円で、中央区では10番目に高額な地域です。前の2地域と比べると大きく地価が下がっています。ですが、東京駅や日本橋駅に近いところでは1,000万円を超える地域もあります。
実は、日本橋に該当する地域はとても広く、繁華街だけでなく住宅街の地価までを取り込んだ地価平均が算出されています。ですので、実際には地域によって地価に大きな差が現れています。ただ、住宅街でも地価が100万円を超えているところが多く、相続が起きる可能性が極めて高い地域でもあります。
2-1-4.月島
より住宅街の様相が濃くなっているのが月島です。この地域は、東京湾を埋め立てて作られており、開発が行われた当時は重工業地帯として発展していました。現在では、その名残からか工場や商店も多くありますが、マンションなども多く建設されるようになりました。
月島というと有名なのがもんじゃ焼きです。この地域の伝統的な食べ物として全国にファンが多いのですが、日本文化が注目され始めたことで、世界中からもんじゃ焼き目当てに月島を訪れる人が増えています。
月島の地価平均は約120万円です。下町のイメージがある月島ですが、東京メトロの開通などで駅前は大きく発展し市街地化が進んでいます。ただ、都心部に比べると企業など需要が少ないこと、埋立地であることなどが関係し、地価が安くなっています。
また、勝どきや晴海などの周辺地域も同様に地価が安い傾向にあります。しかし、住宅地であるこの地域の地価は全国的に見れば非常に高額で、住宅地であるからこそ相続が起きる可能性が高い地域です。銀座や八重洲などよりも、相続税への対策が重要な地域といえるでしょう。
2-2.地価の特徴
中央区全体の地価平均は約660万円で、23区内で最も地価が高額な地域です。さらに、東京都の中でも最も高額で、東京都は全国で最も地価が高額な都市です。つまり、中央区は日本一地価が高額な地域といえるのです。
これは、東京駅周辺や銀座などの地価が1,000万円を超える場所が多いため、中央区全体の地価が押し上げられていると考えられます。ただし、相続の観点から見ると、こうした地価がずば抜けて高額な地域は、住民が少ないため相続が起きにくい地域です。
一方で、中央区では地価の安い100万円前後の地域は、住宅が多いため相続が起きやすい地域となっています。そのため、都心部よりも都心から離れた地域ほど相続税には注意が必要です。
また、100万円前後の地価というのは、中央区では確かに安いのですが、全国的に見ると地方の都市部よりも高額です。そこで、中央区では安いからと安心できず、むしろ中央区で生活している人のほとんどが相続税が課される可能性があり、適切な対策を講じれるよう準備しておくことが必要なのです。
3.所得と富裕層
中央区の所得税の納税義務者数は約8万4,000人、課税対象所得は約5,200億円です。1人あたりの所得は約620万円となっています。この所得金額は東京都内で4番目に高額であり、全国で6番目の金額です。
つまり、中央区で生活している人は総じて富裕層といえるでしょう。さらに、注目なのは所得を受け取っている割合です。年収500万円未満の世帯は全国平均を下回っており、500万以上の割合は全国平均を上回っています。
年収1,000万円を受け取っている世帯が約20%という驚くべき数字も出ています。世帯ごとに収入格差は少なく、ほとんどの世帯が平均に近い、またはそれ以上の所得を受け取っていることが分かります。そのため、地価も所得も高額な中央区では相続税対策が急務になっているといえるでしょう。
また、課税割合が低いのは、都市化が進んだことでマンションなどの需要が増え、土地の相続などが起きていない可能性があるからです。そのため、割合は低いものの相続が開始すると非常に高額な相続税額が課される場合が多いのです。
4.中央区の税理士事情
中央区に在籍している税理士は1,000名を超えており、日本橋だけでも914名の税理士が在籍しています。中央区の年間の課税件数が205件ですので、税理士が不足するという事態は考えられないでしょう。
これだけの税理士が中央区に集まっている背景には、やはり東京駅があることで、東京都各地へのアクセスがよいからだといえます。さらに、東京都周辺でオフィスを構える企業を対象にした営業活動が行えるため、税理士が事務所を構えるにはうってつけの好立地といえるでしょう。
ただ、税理士が多くても「相続に強い税理士」となると、その数は少なくなります。特に、税理士事務所が多いからこそ、どこが相続に強く優れているのか比較するのが難しく、迷いやすいというデメリットもあります。
そのため、税理士探しに時間をかけられるように早めに行動を始めましょう。また、数が多いためインターネットなどで情報収集を行うのも税理士探しには必須となります。ただし、インターネットの情報だけで決めるのではなく、必ず事務所まで赴いて無料相談を活用しながら税理士との相性などを確かめてから、依頼する税理士を決定しましょう。
【参考】中央区内の相続関連機関一覧
中央区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年2月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
日本橋税務署(日本橋地区) | 〒103-8551 東京都中央区日本橋堀留町2丁目6番9号 | 03-3663-8451 (代表) |
京橋税務署(京橋地区) | 〒100-8129 東京都千代田区大手町1丁目3番3号 大手町合同庁舎3号館6階・7階 | 03-4434-0011 (代表) |
東京都中央都税事務所 | 〒104-8558 東京都中央区入船1-8-2 | 03-3553-2151 (代表) |
中央区役所 | 〒104-8404 東京都中央区築地一丁目1番1号 | 03-3543-0211 (代表) |
東京法務局 | 〒102-8225 東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎 | 03-5213-1234 |
日本橋公証役場 | 〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町1-10 日証館ビル1階 | 03-3666-3089 |
京橋公証役場 | 〒104-0031 東京都中央区京橋1-1-10 西勘本店ビル6階 | 03-3271-4677 |
銀座公証役場 | 〒104-0061 東京都中央区銀座2-2-6 第2DKビル5階 | 03-3561-1051 |
八重洲公証役場 | 〒103-0028 東京都中央区八重洲1-7-20 八重洲口会館6階 | 03-3271-1833 |
昭和通り公証役場 | 〒104-0061 東京都中央区銀座4-10-6 銀料ビル2階 | 03-3545-9045 |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京司法書士会 中央支部 | 〒103-0016 東京都中央区日本橋小網町18番20-905号 (松岡義明事務所) | 03-3663-5728 |