1.品川区の相続税申告の特徴
令和元年の相続税申告状況のデータによると、品川区がある東京都全体の申告割合は23.75%、課税割合は16.76%、1件当たり納付税額3,029万円となっています。
東京23区に限定した数値は、申告割合24.30%、課税割合は17.44%、1件当たり納付税額3,287万円で、全体平均より上昇します。
全国平均は、申告割合10.71%、課税割合8.35%、納付税額1,714万円であることから、東京都の数値の高さが分かるでしょう。
全国47都道府県の課税割合順位では、2位の愛知県13.93%を大きく上回り、東京都は断トツの1位となっています。
品川区は東京23区の中でも中心的なエリアであり、東京都の平均をさらに上回るでしょう。
今回は、東京都品川区の相続税申告状況について解説します。
1-1.品川区の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、品川区を管轄している品川税務署の申告割合は24.53%、課税割合は18.13%、相続1件当たりの納付税額は2,002万円となっています。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
品川税務署 管轄エリア | 24.53% | 18.13% | 2,002万円 |
東京都 23区平均 | 24.30% | 17.44% | 3,287万円 |
東京都平均 | 22.56% | 16.25% | 3,029万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万円 |
課税割合の全国平均は8.35%であり、10%を超えているだけでも高率な部類に入りますが、品川区の場合には18.13%と、死亡した人の2割近くに相続税が発生している状況です。
相続税課税が非常に身近な区であるといえ、生前の相続税対策が重要になります。
2.品川区の特徴
品川区は東京都の東南部に位置し、北側に港区、南側に大田区、西側に目黒区と隣接し、東側は東京湾に面しています。
区域は約23平方キロメートル、人口は約39万人で23区内順位ではいずれも10位、人口密度11位、所得水準11位、事業所数は11位など、様々な分野において平均的な水準の街であるといえるでしょう。
品川区は、古くから東海道の中継地の宿場、交通の要として栄えてきました。明治時代に入ってからは、京浜工業地帯発祥の地として発展し、現在では各地で再開発が行われ、洗練された新しい街へと発展し続けています。
品川区は大きく次の5つの地区に分けられます。
- 品川地区
- 大崎地区
- 大井地区
- 荏原地区
- 八潮地区
地区それぞれに違った特徴があり、相続税への対応も異なることになります。
次項で確認していきましょう。
2-1.品川地区
品川地区は旧東海道が通り、今でもその歴史の風情が残っています。品川駅周辺や臨海部は埋め立てが進み、積極的な再開発によって整備された商業施設と高層ビルが立ち並ぶ街へと一変しました。
品川駅は、2027年以開業予定のリニア中央新幹線の始発駅になる予定となっており、まだまだ将来的な伸びしろがあるエリアになります。
しかし、人の居住地というよりはビジネス地としての性格が強く、相続税が課税される被相続人の数は多くないと考えられます。
2-2.大崎地区
大崎地区は品川区の仕事、居住、遊び、学びの拠点になっているエリアです。
工場などが多かった大崎駅前は、この数年でオフィスビルやマンションなどの高層ビルが続々と建設され、数多くの大手企業が本社を構える都内有数の高層ビル街へと進化しました。
品川駅から五反田駅、目黒駅にかけての高台にある、御殿山、島津山、八つ山、花房山、池田山は「城南五山」と呼ばれており、東京都を代表する高級住宅街が広がっています。
特に五反田駅に近い池山田は、美智子上皇后のご実家があった場所としても有名で、城南五山を代表するエリアであり、品のある豪邸が立ち並ぶ別世界となっています。
東京都の富裕層、超富裕層が集中しているエリアであり、相続税対策が必要なエリアであると考えて間違いないでしょう。
2-3.大井地区
大井地区は品川地区の南側にあります。
古くから住宅地として活用されており、古い木造住宅も垣間見えますが、大井町駅周辺は、大型のスーパーや家電量販店などの商業施設、高層マンションなどが立ち並び、近代的な街並みとなっています。
大井町駅には、JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線が乗り入れているため、品川駅まで4分、自由ヶ丘駅まで10分、国際展示場駅まで11分などと主要駅へ出やすいこと、レジャースポットとして人気のあるしながわ水族館、大井公園など子育てをしやすい環境が整っていることなどから、子育て世代に人気のあるエリアです。
2-4.荏原地区
荏原地区は町工場や木造住宅が密集しているエリアで、都会というよりも下町情緒漂う庶民的な顔をしており、どの世代も暮らしやすい街づくりがなされています。
武蔵小山、戸越銀座、中延など活気のある商店街が、荏原地区の魅力であり、特に戸越銀座商店街は全長が1.3キロもあり、関東一長い商店街といわれています。
品川区内にしては地価や家賃が低いにも関わらず、東急線の他、都営浅草線も利用できる交通アクセスの良さから、一人暮らしにも人気のエリアです。
このようなエリアの性格上、相続税の課税対象となる方は少ないと考えられます。
2-5.八潮地区
八潮地区は品川区の東端、臨海部に位置しています。
主にベッドタウンとして活用されており、埋立地に計画的に開発された大規模団地「八潮パークタウン」の佇まいは圧巻です。
ビジネス地としても多くの企業が本社を置いており、日立、パナソニック、楽天などは有名です。
ただ、品川区の中では街はずれの位置にあることから、他のエリアに比べてアクセスに若干時間を要します。そのため、品川区全体の人口は増加傾向にあるものの、この八潮地区は減少傾向にあり、相続税の課税対象となる方は少ないと考えられます。
2-6.品川区の地価
品川区の平均地価は1㎡あたり100万2,347円で、東京23区中10位の金額となっています。
最も地価が高いエリアは品川地区の品川駅周辺で1㎡あたり331万円と、2位の大崎広子路の244万円に大差をつけています。リニア中央新幹線の開業へ向けて、まだまだ上昇していくと思われます。駅周辺のマンションなどを所有している場合には、地価の動向に十分な注意が必要です。
最も地価が低いエリアは、八潮地区の大井競馬場前で、1㎡あたり41万円となっています。
一方、高級住宅街として確固たるブランドを保持している池田山の平均値地価は、1㎡あたり125万円です。
100坪の土地でも4億円を軽く超えることになるため、相続税の生前対策は必須なエリアです。
3.品川区の税理士事情
東京都には令和4年1月末日時点で税理士が23,809人おり、全国の税理士数80,011人の約3割がいる計算になります。
ただ東京都はその分、税理士の需要も多いため、税理士1人あたりの相続税申告数にしてみると0.76件となり、相続税申告1件に1人の税理士もいないという結果になります。
他県に比べて格段に事業所数が多いことや、富裕層の多さを考えると、相続税に強い税理士を見つけ出すとなると、さらに低い数値になるでしょう。
それでは品川区では、税理士をどのように探すのが最も効率的なのでしょうか。
3-1.品川区の税理士の探し方
東京税理士会は以下8つのブロックに分かれています。
第1ブロック | 千代田区、中央区、港区 |
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第2ブロック | 品川区、大田区 |
第3ブロック | 新宿区、中野区、杉並区 |
第4ブロック | 文京区、台東区 |
第5ブロック | 世田谷区、目黒区、渋谷区 |
第6ブロック | 板橋区、練馬区、豊島区、北区、荒川区 |
第7ブロック | 足立区、墨田区、葛飾区、江戸川区、江東区 |
第8ブロック | 23区以外 |
税理士は東京23区に集中して所属しており、第1~7ブロックには全体の9割がいます。
そしてさらに、第1ブロック、第3ブロック、第5ブロックにはその9割の半数が所属しています。
特に第1ブロックに属している千代田区、中央区、港区の課税割合は、23区内トップレベルの数値が揃っており、日本一といっても過言ではないほどの高レベルな相続税申告が行われているでしょう。
品川区の北部は港区に隣接しており、千代田区と新宿区は港区の周辺にあります。
都内抜群の交通アクセスを誇る品川区からであれば、30分もかからず行ける距離であるため、税理士探しは、地元品川区をはじめ千代田区、中央区、港区で行うことをおすすめします。
もちろん東京23区内の税理士であれば、東京税理士会第1ブロックの税理士以外にも、相続税に強い税理士はたくさんいます。余力があれば、他の区でも探してみましょう。
【参考サイト】税理士登録者数 | 日本税理士会連合会、東京税理士会公式サイト