稲城市の相続税申告の特徴
稲城市は東京都の中央南部、多摩ニュータウンの東の入り口に位置しているベッドタウンで、緑が多い住みやすい街として注目され始めています。
Jリーグの東京ヴェルディのホームタウン、よみうりランドなどで有名な市です。
丘陵地を生かした農業やゴルフ場も多く、市域に占めるゴルフ場面積は国内最大となっています。東京23区に近いことからも、週末には多くの行楽客が訪れるエリアです。
そんな稲城市の相続税申告について詳しく解説していきます。
1-1.稲城市の相続税申告状況
令和元年の相続税申告状況のデータによると、稲城市を管轄している日野税務署、東京都平均、全国平均における相続税申告状況は次の通りです。
申告割合 | 課税割合 | 相続1件当 納付税額 | |
---|---|---|---|
武蔵野税務署 管轄エリア | 18.79% | 13.94% | 2,220万円 |
東京都平均 | 22.56% | 16.25% | 3,029万円 |
全国平均 | 10.71% | 8.35% | 1,714万円 |
1-2.日野税務署管轄エリアの課税割合は全国的に見ると高い
日野税務署は稲城市、多摩市、日野市を管轄しており、上記の数値はこれら3市の平均値になっています。
日野税務署管轄エリアの数値は、全国平均と比較を大きく上回っていますが、東京都の申告割合を4%近く、課税割合を2%強下回り、納付税額も80万円程低くなっています。
これだけを見ると、「稲城市は全国平均よりは高いけれども、東京都の中では低い方であり、相続税課税はそれほど心配ないのでは?」、「相続税課税への注意度は、全国的には中の上くらい?」と思われるかもしれません。
しかし、実情はまったく異なります。
その理由は、全国平均の数値が、東京都の数値によって底上げされているため、全国平均並みの課税割合があるだけで十分に相続税の課税対象が多いエリアになるからです。
その証拠に、全国47都道府県における課税割合ランキングでは、全国平均の8.35%は13位と高い位置にあたるのです。
1-3.中でも稲城市は相続税が課税されやすいエリア
なお、3市の位置を地図で見てみると、稲城市が最も東京23区に近いことから、都心のベッドタウンとしては最も需要が高いと思われます。
その分、3市の中では高所得者の割合が多くなると考えられるため、稲城市単体での課税割合は、日野税務署の数値よりも高い可能性があります。
稲城市は、相続税の課税に十分な注意を払わなければならない市であるということが推測できます。
2.稲城市の特徴
稲城市は都心部から約25キロメートル圏に位置し、面積17.97㎢、約9万人が暮らす街です。
周辺は、神奈川県川崎市、多摩市、府中市、調布市に囲まれ、北側には多摩川、中央部には多摩川の支流である三沢川が流れ、市域を南北に分断しています。
市の北部は平坦地で中心街、南部は多摩川に並行して多摩丘陵という坂が多い地形をしており、住宅街や農地、ゴルフ場や遊園地などがあります。
それでは稲城市の特徴と、それが相続税の課税にどのように影響しているのかを見ていきましょう。
2-1.多摩ニュータウンと青葉台
市内には多摩ニュータウンと青葉台という大きな住宅地が2つあります。
多摩ニュータウン
まず市の中央部にある多摩ニュータウンは、多摩市、八王子市、町田市、稲城市の4市に渡る日本最大規模のニュータウンです。
完成から半世紀以上たち、2021年時点で多摩ニュータウン人口の25.7%を高齢者が占めるようになっているため、稲城市における相続税の課税は、このエリアを中心に起こっていると考えられます。
青葉台
西南部にある青葉台は、大規模住宅が多くみられる住宅地で、ベッドタウンとしての色が濃いエリアになります。
のんびりとした自然に囲まれて過ごしたい人向けの街であり、近年の働き方の多様化の波もあって、需要が増加しているエリアになります。
駅周辺には、新しいマンションが次々に建っており、街の緑とで清々しい街並みが広がっています。
若いファミリー層が多いエリアになるでしょう。
2-2.住宅開発は現在でも続いている
多摩ニュータウンや若葉台の間にある平尾地区や南山地区などの未開発の多摩丘陵では、現在でも新興住宅地などの造成が続々と行われています。
学校の新築も同時に行われるなど、住宅用地だけではなく周辺の環境整備も充実しており、今後も人口の増加傾向は続くと考えられます。
このようなエリアは坪単価が高く設定されており、100万円を超える区画もあるようです。
職場に近い都心のマンションよりも、子供を伸び伸びと育てられる首都近郊の戸建てに注目が集まっている今、まさにうってつけの場所であり、都心の富裕層が購入しているのでしょう。
50年後には相続税の課税の中心地になっていくと考えられます。
2-3.2つの路線と5つの駅がある
コンパクトな市域には、北部をJR南部線、中央部を京王相模原線が走っており、5つの駅が点在しています。神奈川県川崎市にある青葉台駅は、ちょうど市境に位置しているため市内の駅としてカウントされていませんが、利用者のほとんどは稲城市民となっています。
新宿駅まで30分程度で行くことができ、この交通利便性の高さも稲城市が住宅地として注目を集めている理由の1つです。
2-4.特産品は梨とぶどう
稲城市の丘陵地では梨やぶどうの栽培が行われており、特産品となっています。特に梨は市のイメージキャラクターにもなっているほど、力を入れています。
住宅地の開発によって栽培面積は減ってはいますが、現在でも市内にはいくつもの果樹園があります。
農業に携わる方は、宅地と違って、桁違いの土地面積を所有しているため、相続税の評価額には十分に注意しなければなりません。
【出典サイト】「稲城の特産品」| 稲城市ホームページ
2-5.稲城市の地価
稲城市の平均地価は1㎡あたり24万5,625円で、東京都全59位中35位の金額となっています。
東京都にしては低い部類にあたりますが、新築の建売戸建て住宅の相場は5,000万円前後となっており、駅徒歩数分のエリアでは8,000万円を超える物件もあります。
南山地区の新興住宅地では6,500万円前後が主流で、年収1,000万円はないと厳しいでしょう。
市内で最も地価が高いエリアは稲城長沼で、1㎡あたり25万円です。市の中心地であり、地価も強い上昇傾向にあります。
最も地価が低いエリアは若葉台で、1㎡あたり20万円です。
最も高いエリアと、最も低いエリアとの差額は5万円しかなく、稲城市の地価はほぼ全域で20万円を超えているということになります。
稲城市にマイホームを構えている時点で、相続税が課税される可能性が十分あるのです。
3.稲城市の税理士情報
全国の税理士数は80,054人(令和4年2月末日時点)で、その3割にあたる23,841人が東京都に所属しています。
そしてそのうち、稲城市に所属している税理士は20人(令和4年3月1日時点)で、日野市と多摩市を合わせた3市の税理士が所属している東京税理士会日野支部には191人が所属しています。
多摩市81人、日野市90人となっていることから、稲城市は特別に税理士が少ない市といえるでしょう。
日野税務署の令和元年における相続税申告数685件と、東京税理士会日野支部の税理士数191人で税理士1人あたりの相続税申告数を計算すると0.27件になります。
東京都全体の同じ数値が0.76件であることから、稲城市の深刻な税理士不足の状況がわかります。これは東京都にいる9割の税理士が東京23区に集中していることが原因です。
多摩地区の税理士探しは、東京都の狭さと優れた交通網の活用がポイントになります。
3-1.相続財産が少ない場合には日野支部内で
各種特例などを使わずとも相続財産が基礎控除額を若干超える程度で、相続税に大きな心配がいらないような場合は、相続税に強い税理士を厳選して探すことまでは必要ないでしょう。したがって、地元の税理士から探すと良いでしょう。
ただし、稲城市の税理士数は極端に少なすぎるため、東京税理士会日野支部内の税理士を候補にしましょう。
3-2.節税対策が必要な場合には東京23区で
相続税が発生する可能性が高く、節税対策が必要な場合には、相続税に強い税理士が必要になります。
東京23区は、多摩地区とは比較できない数の相続税申告が発生し、その内容も格段に複雑なものが多くなります。税理士の腕も相応に磨かれており、相続を専門としている税理士の多くは、相続税に強い税理士といって良い力を持っています。
【参考サイト】「税理士登録者数」 | 日本税理士会連合会、東京税理士会HP、東京税理士会日野支部HP