江戸川区の相続と税理士事情
東京都23区の東部に位置しており、近年急激な人口増加が起きている江戸川区。名前の通り川に囲まれたこの地域は南部を東京湾と隣接しており、水資源との関わり合いが深い地域です。そんな江戸川区の相続では、相続税額や課税割合など、どのような相続の特徴があるのでしょうか?
1.江戸川区の相続事情
江戸川区の1年間の相続税申告件数は766件、実際に課税された件数は530件です。相続1件あたりの納付税額が約3,000万円、課税割合は9.75%となっています。東京都23区内の相続税に関する平均データは、1件あたりの納付税額は約3,000万円、課税割合は16.78%です。
江戸川区の相続データを平均データと比較してみると、1件あたりの納付税額は平均並みですが、課税割合は大きく下回っていることが分かります。特に、東京都では課税割合が10%を下回る地域は5地点しかありませんので、一際低くなっていることが分かります。
そのため、確率は低いものの都の平均並みの相続税が課されていることが、江戸川区の相続の特徴といえるでしょう。ただ、9.75%は一見低いように見えますが、約10世帯に1世帯は3,000万円の相続税が課税されるということです。ですので、相続税への対策をしっかりと行なっておくことが重要なのです。
2.江戸川区の地価事情
課税額に比べて課税割合が低い江戸川区の相続データ。そこで、どうしてこのようなデータが現れているのか、その特徴を地価から考えていきましょう。
2-1.江戸川区の代表的な地域と地価
2-1-1.葛西地区
江戸川区の南部に位置している葛西。現在の地名では、北葛西や中葛西、西葛西、東葛西などを含めた広い地域を指しています。そのため、地区のそれぞれにさまざまな特色があり、総面積からも江戸川区の中心地域になっています。
東葛西が区内で1位、西葛西が区内で2位の人口を記録しています。さらに、中葛西は区内で4位の人口となっており、葛西地区全体で非常に多くの人が生活していることが分かります。その結果、人口密度が非常に高い地域もあり、住宅地の急速な整備などが求められています。
葛西地区の中で、地価が最も高いのが平均約55万円の西葛西です。次いで、約46万円の葛西駅周辺の地域です。特に、西葛西の地価は非常に高額で、区内で1位の地価となっています。西葛西の地価が一際高いのは、西葛西が葛西地区の各部と隣接しており、葛西地区の中心部となっているからです。
また、葛西地区では葛西駅や西葛西駅周辺は商業施設などが多く建設されており市街地化しています。しかし、地区の大半は住宅街が広がっており、現在の人口増加も相まって今後も住宅街が拡大していく可能性が高いです。
2-1-2.平井
江戸川区の西部に位置し、墨田区や葛飾区と隣接している平井。旧中川と荒川の2つに囲まれたこの地域は、川が区境にもなっており境目がはっきりしている地域でもあります。加えて、川に囲まれていることから平井だけが江戸川区から独立した印象を持っている人も多いかもしれません。
平井の地域のほとんどは住宅地として活用されていますが、駅前などにはビルや商業施設が多く建設されており、駅周辺は市街地として大きく発展しています。さらに、製造業の工場もいくつか建てられており、規模は地域の北側には小規模ですが工業地帯が形成されています。
平井の地価平均は約41万円で江戸川区の中で3番目に高額な地域になっています。平井のほとんどは住宅街が形成されているのですが、工業地帯も作られていることから全体的に地価が高額な水準を記録しているのかもしれません。
さらに、葛西などの江戸川区の中心部よりも東京都の都市部に近く、平井駅からのアクセスがとても手軽です。ですので、住宅地と工業地帯がきちんと整備されていることに加えて、こうしたアクセスの良さも魅力となり人気が高まったことで、一際地価が高くなっているとも考えられます。
2-1-3.小岩
江戸川区の北東部に位置している小岩地区。細かくは北小岩、西小岩、東小岩、南小岩に分けられ、町ごとに特徴が現れている地域です。小岩地区は北部で葛飾区、東では千葉県と隣接しており、北小岩は江戸川区の最北端となっています。
小岩の地価平均は約39万円で、江戸川区で4番目に高額な地域になっています。小岩地区は小岩駅周辺には市街地が形成されており、他は住宅地として活用されています。特に、住宅街は地域の大半を占めるほど広く形成されており、西小岩の北部は葛飾区内の住宅街へと続いています。
ただ、地域の中では地価の格差があまりなく、大半の地域がほぼ横ばいの地価となっています。ですので、小岩地区ではどこでも土地に課税される相続税額が変わらない可能性が高い地域といえるのです。
さらに、住宅街が広く形成されていることから相続が発生しやすく、それに伴って相続税が課税される可能性も高い地域といえるでしょう。ですので、住宅地でありながら地価が下がりにくい小岩地区では、高額な相続税が課税される相続を見越して必ず相続税対策を講じておく必要があるのです。
2-2.江戸川区の地価の特徴
江戸川区の地価平均は約37万円で、23区内の中では21位と23区内では地価が安い地域です。その要因としては、住宅地としての活用がメインのため、今から商業施設やオフィスビルなどの建設需要が少ないことが挙げられます。人口が急増している地域もあり、住宅地の整備が急務となっていることも、地価が大きく伸びない要因に拍車をかけていると考えられます。
また、人口過密などにより東京湾を埋め立てて地域面積を広げてきた歴史があり、南部の大半は埋立地が大半を締めています。埋立地の地価はどの地域でも地価が安くなる傾向があります。江戸川区の場合、南部の埋め立て地には葛西臨海公園や葛西臨海水族園などがあり人気を集めているものの、やはり地価はそこまで高額ではありません。
また、江戸川区は23区内での区民の平均年齢が最も若く、合計特殊出生率も最も高くなっています。ですので、子育て世帯の若い年代の方々が多く生活しており、直接的に相続とは結びつかないことがあります。
加えて、江戸川区ではインドからの移住者が増えており、都内で暮らすインド人の大半は江戸川区で生活をしています。特に、葛西地区で集中して生活をしておりインド人が経営している飲食店なども増えています。こうした海外からの移住者や若い世帯が多いことが江戸川区の住人が相続人になりにくくなる要因となり、その結果課税割合が低くなっているのかもしれません。
3.江戸川区の所得と富裕層
次は、地価と同じく相続税額へ大きな影響を与える要因である江戸川区の所得の状況から相続の特徴について考えていきましょう。江戸川区の2016年の所得税納税義務者数は約32万7,000人、課税対象所得が1兆1,680億円です。
1人あたりの所得を計算すると約357万円になります。この所得金額は62自治体中38番目と、中位よりもやや低めの金額です。加えて、2017年の1人あたりの所得金額もほぼ横ばいとなっています。これは、区内に工業地帯が形成されており、しっかりとした経済活動ができていることが、所得に影響を及ぼさず大きな変動が起きていないと考えられます。
また、全国の自治体と比較すると2016年の所得では103位となっており、上位10%の高所得者層に入っています。ですので、都内では低い所得ですが、全国的に見れば高所得者が集まった地域であるため富裕層が多く、その結果が相続税額にも影響していると考えられます。
さらに、世帯年収500万円~1,000万円を受け取っている世帯の割合は全国の平均割合よりも多く、300万円未満の世帯は低いというデータもあります。つまり、地価も所得も相続税額が低くなる要因が江戸川区には少ないために、都の平均と同額の相続税額が課税されているのです。
4.江戸川区の税理士事情
地価も所得も高い水準である江戸川区は、今後人口増加により相続が多発する可能性のある地域です。そのため、現在よりも相続税対策の重要性が高くなり、若い世代の世帯では今のうちから税理士探しなどの対策を講じておく必要があります。
江戸川区に在籍している税理士数は407件です。江戸川区の1年間の申告件数は766件、課税件数は530件となっていますので、相続税に関する依頼が殺到するという事態が起きることは少ないでしょう。
また、江戸川区の在籍税理士数は23区内の他の地域と比べてみても比較的多い数字です。実は、人口が多いことが要因となり江戸川区の相続の件数が非常に多く他の案件も増加するため、在籍している税理士も増えているのです。
そして、一般的に課税割合は死亡者数と相続税が発生した件数の割合で求められます。ですので、人口が多く死亡者数の分母が多くなるほど課税割合は減ってしまう傾向にあります。つまり、人口の多い江戸川区では割合の数字は低くなっていますが、実際には数字のイメージ以上に多くの相続で相続税が発生していますので、低い割合に安心せず的確な相続税対策を講じて備えておきましょう。
【参考】江戸川区内の相続関連機関一覧
江戸川区内の相続に関連する各種機関の連絡先一覧をまとめました(2018年4月現在)。ただし、変更される可能性があることをご了承ください。
機関名 | 住所 | TEL |
---|---|---|
江戸川北税務署 (小岩地区など) | 〒132-8668 東京都江戸川区平井1丁目16番11号 | 03-3683-4281 (代表) |
江戸南税務署 (葛西地区など) | 〒134-8567 東京都江戸川区清新町2丁目3番13号 | 03-5658-9311 (代表) |
江戸川都税事務所 | 〒132-8551 東京都江戸川区中央4-24-19 | 03‐3654‐2151 (代表) |
江戸川区役所 | 〒132-8501 東京都江戸川区中央一丁目4番1号 | 03-3625-1151 (代表) |
東京法務局 江戸川出張所 | 〒132-8585 東京都江戸川区中央1丁目16番2号 | 03-3654-4156 (代表) |
小岩公証役場 | 〒133-0056 東京都江戸川区西小岩3-31-14 ジブラルタ生命小岩ビル5階 | 03-3659-3446 |
東京家庭裁判所 | 〒100-8956 東京都千代田区霞が関1-1-2 | 案件により異なる HP参照 |
東京司法書士会 江戸川支部 | 〒134-0083 東京都江戸川区中葛西5丁目15番13号 | 03-3353-9191 (東京司法書士会) |
東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館6階 | 03-3581-2201 (代表) |
第一東京弁護士会 | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館11~13階 | 03-3595-8585 (代表) |
第二東京弁護士会 ひまわり | 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3 弁護士会館9階 | 03-3581-2255 (代表) |