[図説]平成29年分、医療費控除の改正と確定申告書の書き方

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医療費控除 確定申告

税制改正により平成29年分の医療費控除から、領収書の添付に代わって明細書を提出するようになりました。また、セルフメディケーション税制も導入されます。
これらの変更点を中心に、意外と気が付かない医療費控除対象となる支出についてもパターン別に解説します。

1.医療費控除について

所得税を納めているほとんどの人は、医療費控除という言葉は聞いたことがあるでしょう。しかし、実際に適用を受けたことがある人は意外と少ないはずです。
今回の医療費控除の改正により、医療費控除が非常に受けやすいものに変わりました。今まで医療費控除を受ける機会がなかった人にとっても有益な改正となっています。

まずは、従来の医療費控除と、新たに創設されたセルフメディケーション税制の概要を確認しましょう。

1-1.概要

医療費控除とは、納税者が自己や生計を一にしている配偶者及びその他親族の医療費を支払い、その医療費の合計が年間10万円(※)を超える場合に適用を受けることができる所得控除の1つです。これは、納税者の負担を少しでも軽くするために設けられた制度です。

かかった医療費の一部(限度額200万円)を総所得金額から控除することにより、所得税の対象となる課税所得を減らすことができ、結果として所得税が安くなります。
医療費控除は年末調整で受けることはできませんので、確定申告をする必要があります。

※その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%の金額

1-2.計算方法

医療費控除額は200万円を限度として、次の算式により計算した金額となります。
(実際に支払った医療費の合計額-①)-②=医療費控除額

①保険金等の補填金額…控除する保険金等の金額は、その給付の目的となった医療費の額を限度とします。よって、保険金などの金額が医療費の額を超える場合においては、その超える部分の金額については切り捨てとなります。他の医療費から控除する必要はありません。

②10万円(総所得金額等の5%の金額)

上記の算式により算出された金額は200万円を限度とします。

計算例

たとえば、怪我による入院で医療費20万円を支払い、保険で25万円が補填された場合、20万円-25万円<0万円ですから、怪我による医療費に関しては控除できません。それとは別に、肺炎で入院して医療費15万円を支払った場合、この15万円全額が医療費控除の対象となります。
結果的に、医療費控除額=15万円-10万円=5万円となります。

怪我による保険で補填された金額をすべての医療費に適用して、医療費(20万円+15万円)-保険金25万円-10万円=0円という計算は間違いとなります。

1-3.セルフメディケーション税制の創設

平成29年分の確定申告より、上記の従来からある医療費控除の特例という形で、セルフメディケーション税制が導入されました。
この税制は、ドラッグストアなどに売っている風邪薬などの市販薬の年間購入総額が12,000円を超える場合に適用することができ、かかった市販薬代の一部を所得金額から差し引くことができる制度です。上記と同じく、適用を受けるためには確定申告が必要になります。

導入の目的としては、軽い体調不良を自分で市販薬を使って手当てすることで、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを促進し、膨らむ一方である国の医療費の適正化に繋げるためなどが挙げられます。

1-3-1.計算方法

セルフメディケーション税制による医療費控除額は88,000円を限度として、次の算式により計算した金額となります。

セルフメディケーション税制の対象になる医療費-12,000円=医療費控除額

薬

1-4.併用不可、どちらかを選択

医療費控除とセルフメディケーション税制は、併用できません
セルフメディケーション税制の対象となっている市販薬は、医療費控除の対象にもなっている点に注意しましょう。
医療費控除のハードルは10万円で最大控除額は200万円、セルフメディケーション税制のハードルは12,000円で最大控除額は88,000円です。

この点に着目すると、年間10万円以上の医療費は使わず市販薬の購入が多い場合にはセルフメディケーション税制が有利であり、大きな医療費を使う人は最大控除額が大きい医療費控除が有利となるでしょう。
どちらを選択した方が有利であるかは、それぞれの家庭の事情により異なりますので、両者の試算をしてみて控除額が大きい方を選択するようにしましょう。控除額が大きいということはそちらの方が最終的な所得税が安くなるということです。

試算する際にはこちらを利用すると、簡単に減税額のシミュレーションができます。
【外部サイト】国税庁:重要なお知らせ <医療費控除が変わります>

2.従来からの改正内容

従来と平成29年分以降の医療費控除では、具体的に何が変わったのでしょうか。

2-1.医療費の領収書の提出が不要に

従来の医療費控除は、確定申告書と一緒に医療費の領収書を提出する必要がありましたが、平成29年分以降は不要になりました。
その代わり、確定申告期限の翌日から5年を経過する日までの間、該当の領収書を保管することが義務付けられました。5年を過ぎれば破棄して問題ありません。
保管の目的は、税務署が明細書の記入内容に疑問が出たときなどに領収書の確認要請をしてきた場合や、税務調査に備えるためです。

ただし、後述しますが、「医療費のお知らせ」を確定申告書に添付する場合は、「医療費のお知らせ」に記載されている医療費については、領収書の保存の必要はありません。

2-2.医療費控除の明細書の提出が必要に

医療費控除の領収書提出が不要になったことに伴って、「医療費控除の明細書」の提出が必要になりました。
従来においても「医療費等の明細書」というものを作成できましたが、あくまで集計表のような形でサブとしての位置づけでした。これが平成29年分以降は明細書の方がメインに昇格しています。

また、従来は利用することができなかった「医療費のお知らせ(※)」が、平成29年分以降は積極的に利用されることになりました。このお知らせを確定申告書に添付する場合には、お知らせに記載されている医療費についての明細書への記載は合計額のみで済み、その内容を細かく記載する必要がなくなります。
ただし、平成31年までは、従来の「医療費等の明細書」での提出も認められています。その場合には添付書類も従来の方法によります。

※医療費のお知らせとは、健康保険を利用して支払った一定期間の医療費を集計した明細書で、健康保険証を発行する健康保険組合などの医療保険者から届きます。一般的には、ハガキ・封筒のような形で勤務先から直接渡される場合が多いです。

2-3.注意:「医療費へのお知らせ」にすべての受診が記載されているとは限らない

「医療費へのお知らせ」に関して注意ですが、「医療費へのお知らせ」にすべての受診が記載されているとは限りません

たとえば、主に中小企業で加入している協会けんぽの「医療費へのお知らせ」の場合、確定申告対象の年度の前年10月から当年10月までの間に医療機関で受診された分が主に記載されていますが、11月/12月分や、10月以前に受診したものであっても審査中のものは記載されていません(平成29年度分の場合は、平成28年10月から平成29年10月まで記載)。

前年10月~12月分の医療費は除外する必要があり、また、記載されていない医療費については、別途、「医療費控除の明細書」に記載する必要があります。保管しておいた領収書と「医療費へのお知らせ」を一件づつ丁寧に照らし合わせると良いでしょう。

3.確定申告の方法

医療費控除を受ける場合には確定申告が必須です。申告に必要な書類は次の通りです。

  • 確定申告書AまたはB
  • 医療費控除の明細書
  • 医療費のお知らせ
  • 源泉徴収票(会社員の場合)

セルフメディケーション税制の適用を受ける場合の必要書類は上記とは異なりますので注意してください。

【参考】セルフメディケーション税制を受けるには?確定申告書の書き方と添付書類

3-1.確定申告書の記入方法

確定申告書は所得の状況に応じて、確定申告書AまたはBを使います。
確定申告書A確定申告書B

様式はこちらから入手することができます。
【外部サイト】
国税庁:確定申告書A
国税庁:確定申告書B

確定申告書 医療費控除

① 区分は空欄のままにします。
平成29年分からこの区分欄が設けられました。医療費控除は「空欄」、セルフメディケーション税制は「1」と記載します。
②下記「医療費控除の明細書」の⑲の金額を転記します。

確定申告書 医療費控除③下記「医療費控除の明細書」の⑬の金額を転記します。
④下記「医療費控除の明細書」の⑭の金額を転記します。

3-2.医療費控除の明細書の記入方法

従来の医療費等の明細書とは形式が変わっています。記入の際には、「医療費のお知らせ」と「医療費の領収書」を手元に置いてから始めましょう。
医療費控除明細書
様式はこちらから入手することができます。
【外部サイト】国税庁:医療費控除の明細書

3-2-1.医療費通知に関する事項(「医療費のお知らせ」を添付する場合)

確定申告書に「医療費のお知らせ」を添付する場合には次の欄を記入します。
「医療費のお知らせ」は原本提出に限ります。コピーでの提出はできませんので注意しましょう。
医療費控除明細書①「医療費のお知らせ」に記載されている、自分が負担した医療費の合計額を記入します。お知らせが複数枚ある場合には全て合計しましょう。
②①に記入した金額のうち、その年に支払った金額の合計額を記入します。「医療費のお知らせ」に記載された金額は、実際に支払った金額とズレている場合がありますので、領収書と照らし合わせて確認しましょう。
③②に記入した金額のうち、保険金や給付金が支払われた金額を記入します。その給付の目的となった医療費の額を限度とします。

3-2-2.医療費の明細(上記1以外の医療費)

ここには、上記の「1医療費通知に関する事項」に記入した医療費については記入しません。

医療費控除明細書④医療を受けた人の氏名を記入します。
⑤受信した医療機関や、医薬品を購入した薬局などの名称を書きます。
⑥医療費の内容として該当する項目すべてに✓マークを記入します。
⑦医療費控除の対象となる支払金額を記入します。
⑧生命保険金や健康保険法などの給付金を受け取った場合には、その金額を記入します。
⑨⑦の合計額を記入します。
⑩⑧の合計額を記入します。
⑪②と⑨の合計額を記入します。
⑫③と⑩の合計額を記入します。

3-2-3.控除額の計算

医療費控除の金額を計算していく欄です。
医療費控除明細書⑬⑪の金額を転記します。この金額が上記の確定申告書の③の金額になります。
⑭⑫の金額を転記します。この金額が上記の確定申告書の④の金額になります。
⑮⑬から⑭を差し引いた金額を記入します。
⑯確定申告書の「所得金額の合計」の金額を転記します。
⑰⑯に0.05を乗じた金額を記入します。
⑱⑰と10万円を比べて少ない方の金額を記入します。
⑲⑮から⑱を差し引いた金額を記入します。この金額が上記の確定申告書の②の金額になります。

4.医療費控除の対象となる医療費

医療費控除の対象となる医療費の範囲は、主に治療目的のものであり一般的に支払われる水準を大きく超えない部分の金額となっています。

4-1.医療費になるもの/ならないものの違い

大きな解釈として、医療費になるものは病気などの治療を目的としているものです。
これに対して医療費にならないものは美容目的や予防、健康増進などに関するものです。

4-2.判断のポイント

医療費は多岐にわたるため、所得税法においてもその全てが例示として書かれてはいません。
全てに該当するわけではありませんが、医療費になるものか否かを判断する基準として、次のキーワードが挙げられます。これらが当てはまるような医療費は、治療目的であるということが読み取れます。

  • 医師または歯科医師
  • 治療または療養
  • 病院、診療所、助産所

4-3.具体例

医療費に該当するのかどうかを、よくある具体例ごとに確認しましょう。

4-3-1.バスや電車などの通院のための交通費

バスや電車などの公共交通機関…OK
タクシー…バスや電車での移動が困難な場合にはOK
ガソリン代…NG
駐車場代…NG
高速道路通行料…NG

4-3-2.往診してもらった医師の送迎タクシー代

OK

4-3-3.薬局での風邪薬の購入費用

OK
風邪や怪我などを治すために購入した薬は医療費となりますが、健康増進や美容を目的とするサプリメントなどの購入は対象外です。

4-3-4.仕送りをしている一人暮らしの子供の医療費

OK
医療費控除は、生計を一にする親族の医療費についても対象となっています。この生計を一にするとは必ずしも同居が条件ではなく、簡単に言うと1つの財布で生活をしているということです。
よって、1人暮らしをしている子供であっても仕送りをしている以上は生計一と認められます。一人暮らしの子供にも受診したら領収書を保管しておくように言い聞かせ、一年分の医療費を知らせてもらうようにしましょう。

4-3-5.就職して独立した子が在学中に払った医療費

OK
就職して所得を得るようになり扶養を外れることになった子供であっても、在学中で所得がなかった期間に親が支払った医療費は、親の医療費控除の対象となります。1月~3月の在学中の期間に子供が受診していないか確認すると良いでしょう。

4-3-6.出産までの定期健診や検査の費用

OK

4-3-7.出産のための分娩入院費

OK
現在、分娩や入院費用については出産育児一時金として、42万円が加入している健康保険組合から支給されるようになっています。この金額は、出産分娩費用から差し引くようになります。

4-3-8.入院中の病院の食事代

OK
ただし、病室に出前をとったり外食をした場合の食事代や、おやつ代など病院で出される食事以外の費用は対象外となります。

4-3-9.インフルエンザなどの予防接種代

NG
予防接種は治療ではありませんので対象外です。

4-3-10.不妊治療の費用

OK
補助金を受け取っている場合には、その金額は差し引きます。

4-3-11.健康診断や人間ドックの費用

NG
ただし、その健康診断や人間ドックで病気が見つかって治療をする場合には、発見された病気の治療に先立った診察とみなされ、医療費として認められます。

4-3-12.サプリメントや健康食品

NG
健康増進に関するものですので、対象外です。

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